あの世から便りをする話3(終) 海野十三

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「心霊研究会の怪」の続きとなります。
あの世から便りをする話 座談会より/海野十三 著
青空文庫より引用

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問題文

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(そのいんちきしんれいけんきゅうかいがあとになりまして、ひじょうにこうみょうをたてたという)

そのインチキ心霊研究会が後になりまして、非常に功名を立てたという

(はなしがあります。つまりどくをもってどくをせいしたはなしです。)

話があります。つまり毒を以て毒を制した話です。

(ちょうどいまごろのしょかどきでした。わたしのところへきゅうしゅうからほうもんきゃくがありました。「ぜひひとつ)

丁度今頃の初夏時でした。私の所へ九州から訪問客がありました。「是非一つ

(せんせいにたすけていただきたい」と、わたしがせんせいになったんですが、「じつは、せんせいがこのまえ)

先生に助けて戴きたい」と、私が先生になったんですが、「実は、先生がこの前

(おかきなったでんぱびょうというのにかかりまして、でんぱがきこえてしようがない。げんに)

お書きなった電波病というのに罹りまして、電波が聴えて仕様がない。現に

(せんせいのまえにすわっておりますが、わたしのところへでんぱがかかっているのがよくきこえます。)

先生の前に坐って居りますが、私の所へ電波が掛って居るのが能く聴えます。

(さかんにただいまやっております。そのためにわたしはしつぎょうしました。そうしてしんたいは)

さかんに只今やって居ります。そのために私は失業しました。そうして身体は

(やせおとろえるばかりで、ひじょうにでんぱにぼうがいされております。せんせいのおちからをもって)

痩せ衰えるばかりで、非常に電波に妨害されて居ります。先生のお力を以て

(このでんぱをとめていただきたい」というのです。これはいっしゅのびょうにんでありまして、)

この電波を止めて戴きたい」と言うのです。これは一種の病人でありまして、

(そのころつとめさきのやくしょへも、たびたびそういうとうしょがきました。わたしのところへくるでんぱは、)

その頃勤め先の役所へも、度々そういう投書が来ました。私の所へ来る電波は、

(こちらからみていると、ほうそうきょくのまいくろふぉんのまえでさんにんのおとこがならんでいる。)

こちらから見て居ると、放送局のマイクロフォンの前で三人の男が並んで居る。

(ふたりはひげがないが、ひとりはひげがある。めがねをかけたのがふたりとひげのあるのが)

二人は髭がないが、一人は髭がある。眼鏡を掛けたのが二人と髭のあるのが

(ひとりいて、それがいつもわたしにむかってばりぞうごんをいたします。いくらやめろと)

一人いて、それが何時も私に向って罵詈雑言を致します。いくら止めろと

(いってもやめませぬ。しかもじゅしんきがなくてこれがきこえるから、まことに)

言っても止めませぬ。しかも受信機がなくてこれが聴えるから、洵に

(しまつがわるい。あんみんもできないから、おやめをねがいたいというのであります。)

始末が悪い。安眠も出来ないから、お止めを願いたいというのであります。

(さて、のりこんできたじんぶつをみると、まことにめつきからなにからただものでない。)

さて、乗込んで来た人物を見ると、洵に眼つきから何から只者でない。

(あいにくわたしのへやなるものが、ふくろこうじのつきあたりみたいなへやでして、どうにも)

生憎私の部屋なるものが、袋小路の突当りみたいな部屋でして、どうにも

(にげるすきがない。そこでいろいろかんがえたのですが、ちょうどさっきのともだちがしんで)

逃げる隙がない。そこでいろいろ考えたのですが、丁度最前の友達が死んで

(まもなくであったものですから、とっさにおもいついてそのともだちのはなしをすることに)

間もなくであったものですから、咄嗟に思いついてその友達の話をすることに

(したのです。それからわたしはおちつきはらったようなかっこうをして「それはまことに)

したのです。それから私は落ち着き払ったような恰好をして「それは誠に

など

(おきのどくである。じつはそういうでんぱがあります。これはしんれいはとなづけますが、)

お気の毒である。実はそういう電波があります。これは心霊波と名付けますが、

(にんげんのうちでもまことにかんどのよいひとでないと、このでんぱはわからぬ。じつはわたしのもっとも)

人間のうちでも誠に感度の良い人でないと、この電波は分らぬ。実は私の最も

(しんようするともだちで、さいきんしんれいはのけんきゅうをするためにみずからじさつしたのがあります」)

信用する友達で、最近心霊波の研究をするために自ら自殺したのがあります」

(というはなしにうつりまして、「あのよとこのよとのこうつうがしんれいはでむすばれ、)

という話に移りまして、「あの世とこの世との交通が心霊波で結ばれ、

(そのためにれいばいというじゅしんきみたようなものもある。けっきょくこれはしんれいはの)

そのために霊媒という受信機みたようなものもある。結局これは心霊波の

(もとじめをやっているしゅごじんというものにたのんで、そのでんぱをとめてもらうより)

元締をやって居る守護神というものに頼んで、その電波を止めて貰うより

(しようがない、あなたをひとつしんれいけんきゅうかいへごしょうかいするから、いってごらんに)

仕様がない、あなたをひとつ心霊研究会へ御紹介するから、行ってごらんに

(なったらよかろう」とそのかんじゃさんにめいしをわたしてむこうへいってもらうとどうじに、)

なったら宜かろう」とその患者さんに名刺を渡して先方へ行って貰うと同時に、

(わたしはしんれいけんきゅうかいへでんわをかけまして「いまこうこうしたひとがいくから、)

私は心霊研究会へ電話を掛けまして「今斯う斯うした人が行くから、

(よろしくたのむ」とやりました。これできなんをのがれたかたちですが、とうとういちねんほど)

宜しく頼む」とやりました。これで危難を逃れた形ですが、到頭一年ほど

(たちまして、そのおとこがげんきになってやってまいり、「わたしはいよいよくにへかえろうと)

経ちまして、その男が元気になってやって参り、「私は愈々郷里へ帰ろうと

(おもいます。くにのほうもたいへんいそがしく、それにでんぱももうこのごろじゃほとんど)

思います。郷里の方も大変忙がしく、それに電波ももうこの頃じゃ殆んど

(きこえない。そのうえしんれいけんきゅうかいへいちにちにいちえんずつはらって(しょうせい)やっても)

聴えない。その上心霊研究会へ一日に一円ずつ払って(笑声)やっても

(いられませぬから、いちおうくにへかえってまいります」と、ひじょうにせかせかとわたしに)

居られませぬから、一応郷里へ帰って参ります」と、非常にせかせかと私に

(れいをいってかえりましたが、たぶんそれはしょうきになってしまったんだろうと)

礼を言って帰りましたが、多分それは正気になってしまったんだろうと

(おもうんです。けっきょくそうしてみると、これはやはりしんれいけんきゅうかいの)

思うんです。結局そうして見ると、これは矢張り心霊研究会の

(いりょくであったんだろうとおもうのです。)

威力であったんだろうと思うのです。

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