「こころ」1-3 夏目漱石

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(上)先生と私

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(かれはやがてじぶんのわきをかえりみて、そこにこごんでいるにほんじんに、) 彼はやがて自分の傍を顧みて、そこにこごんでいる日本人に、 (ひとことふたことなにかいった。そのにほんじんはすなのうえにおちたてぬぐいを) 一言二言何かいった。その日本人は砂の上に落ちた手拭を (ひろいあげているところであったが、それをとりあげるやいなや、) 拾い上げているところであったが、それを取り上げるや否や、 (すぐあたまをつつんで、うみのほうへあるきだした。そのひとがすなわちせんせいであった。) すぐ頭を包んで、海の方へ歩き出した。その人がすなわち先生であった。 (わたくしはたんにこうきしんのために、ならんではまべをおりていくふたりのうしろすがたをみまもっていた。) 私は単に好奇心のために、並んで浜辺を下りて行く二人の後姿を見守っていた。 (するとかれらはまっすぐになみのなかにあしをふみこんだ。) すると彼らは真直に波の中に足を踏み込んだ。 (そうしてとおあさのいそちかくにわいわいさわいでいるたにんずのあいだをとおりぬけて、) そうして遠浅の磯近くにわいわい騒いでいる多人数の間を通り抜けて、 (ひかくてきひろびろしたところへくると、ふたりともおよぎだした。) 比較的広々した所へ来ると、二人とも泳ぎ出した。 (かれらのあたまがちいさくみえるまでおきのほうへむいていった。) 彼らの頭が小さく見えるまで沖の方へ向いて行った。 (それからひきかえしてまたいっちょくせんにはまべまでもどってきた。) それから引き返してまた一直線に浜辺まで戻って来た。 (かけぢゃやへかえると、いどのみずもあびずに、すぐからだをふいてきものをきて、) 掛茶屋へ帰ると、井戸の水も浴びずに、すぐ身体を拭いて着物を着て、 (さっさとどこかへいってしまった。) さっさとどこかへ行ってしまった。 (かれらのでていったあと、わたくしはやはりもとのしょうぎにこしをおろして) 彼らの出て行った後、私はやはり元の床几に腰をおろして (たばこをふかしていた。そのときわたくしはぽかんとしながらせんせいのことをかんがえた。) 烟草を吹かしていた。その時私はぽかんとしながら先生の事を考えた。 (どうもどこかでみたことのあるかおのようにおもわれてならなかった。) どうもどこかで見た事のある顔のように思われてならなかった。 (しかしどうしてもいつどこであったひとかおもいだせずにしまった。) しかしどうしてもいつどこで会った人か想い出せずにしまった。 (そのときわたくしはくったくがないというよりむしろぶりょうにくるしんでいた。) その時私は屈託がないというよりむしろ無聊に苦しんでいた。 (それでもあくるひもまたせんせいにあったじこくをみはからって、) それでも翌日もまた先生に会った時刻を見計らって、 (わざわざかけぢゃやまででかけてみた。するとせいようじんはこないでせんせいひとり) わざわざ掛茶屋まで出かけてみた。すると西洋人は来ないで先生一人 (むぎわらぼうをかぶってやってきた。せんせいはめがねをとってだいのうえにおいて、) 麦藁帽を被ってやって来た。先生は眼鏡をとって台の上に置いて、
など
(すぐてぬぐいであたまをつつんで、すたすたはまをおりていった。) すぐ手拭で頭を包んで、すたすた浜を下りて行った。 (せんせいがきのうのようにさわがしいよくかくのなかをとおりぬけて、ひとりでおよぎだしたとき、) 先生が昨日のように騒がしい浴客の中を通り抜けて、一人で泳ぎ出した時、 (わたくしはきゅうにそのあとがおいかけたくなった。) 私は急にその後が追い掛けたくなった。 (わたくしはあさいみずをあたまのうえまではねかしてそうとうのふかさのところまできて、) 私は浅い水を頭の上まで跳かして相当の深さの所まで来て、 (そこからせんせいをめじるしにぬきでをきった。) そこから先生を目標に抜手を切った。 (するとせんせいはきのうとちがって、いっしゅのこせんをえがいて、) すると先生は昨日と違って、一種の弧線を描いて、 (みょうなほうこうからきしのほうへかえりはじめた。それでわたくしのもくてきはついにたっせられなかった。) 妙な方向から岸の方へ帰り始めた。それで私の目的はついに達せられなかった。 (わたくしがおかへあがってしずくのたれるてをふりながらかけぢゃやにはいると、) 私が陸へ上がって雫の垂れる手を振りながら掛茶屋に入ると、 (せんせいはもうちゃんときものをきていれちがいにそとへでていった。) 先生はもうちゃんと着物を着て入れ違いに外へ出て行った。 (わたくしはつぎのひもおなじじこくにはまへいってせんせいのかおをみた。) 私は次の日も同じ時刻に浜へ行って先生の顔を見た。 (そのつぎのひにもまたおなじことをくりかえした。けれどもものをいいかけるきかいも、) その次の日にもまた同じ事を繰り返した。けれども物をいい掛ける機会も、 (あいさつをするばあいも、ふたりのあいだにはおこらなかった。) 挨拶をする場合も、二人の間には起らなかった。 (そのうえせんせいのたいどはむしろひしゃこうてきであった。) その上先生の態度はむしろ非社交的であった。 (いっていのじこくにちょうぜんとしてきて、またちょうぜんとかえっていった。) 一定の時刻に超然として来て、また超然と帰って行った。 (しゅういがいくらにぎやかでも、それにはほとんどちゅういをはらうようすがみえなかった。) 周囲がいくら賑やかでも、それにはほとんど注意を払う様子が見えなかった。 (さいしょいっしょにきたせいようじんはそのごまるですがたをみせなかった。) 最初いっしょに来た西洋人はその後まるで姿を見せなかった。 (せんせいはいつもひとりであった。) 先生はいつも一人であった。
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