「こころ」1-31 夏目漱石
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | Irene | 6033 | A++ | 6.4 | 93.9% | 171.2 | 1104 | 71 | 25 | 2025/01/16 |
2 | saty | 4858 | B | 5.0 | 95.6% | 215.3 | 1096 | 50 | 25 | 2025/01/29 |
3 | TA | 3489 | D | 3.6 | 96.0% | 302.9 | 1102 | 45 | 25 | 2025/01/16 |
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問題文
(「どんなことですか」)
「どんな事ですか」
(おくさんはいいしぶってひざのうえにおいたじぶんのてをながめていた。)
奥さんはいい渋って膝の上に置いた自分の手を眺めていた。
(「あなたはんだんしてくだすって。いうから」)
「あなた判断して下すって。いうから」
(「わたくしにできるはんだんならやります」)
「私にできる判断ならやります」
(「みんなはいえないのよ。みんないうとしかられるから。)
「みんなはいえないのよ。みんないうと叱られるから。
(しかられないところだけよ」)
叱られないところだけよ」
(わたくしはきんちょうしてつばきをのみこんだ。)
私は緊張して唾液を呑み込んだ。
(「せんせいがまだだいがくにいるじぶん、たいへんなかのいいおともだちがひとりあったのよ。)
「先生がまだ大学にいる時分、大変仲の好いお友達が一人あったのよ。
(そのかたがちょうどそつぎょうするすこしまえにしんだんです。)
その方がちょうど卒業する少し前に死んだんです。
(きゅうにしんだんです」)
急に死んだんです」
(おくさんはわたくしのみみにささやくようなちいさなこえで、)
奥さんは私の耳に私語くような小さな声で、
(「じつはへんししたんです」)
「実は変死したんです」
(といった。)
といった。
(それは「どうして」とききかえさずにはいられないようないいかたであった。)
それは「どうして」と聞き返さずにはいられないようないい方であった。
(「それっきりしかいえないのよ。けれどもそのことがあってからのちなんです。)
「それっ切りしかいえないのよ。けれどもその事があってから後なんです。
(せんせいのせいしつがだんだんかわってきたのは。)
先生の性質が段々変って来たのは。
(なぜそのかたがしんだのか、わたしにはわからないの。)
なぜその方が死んだのか、私には解らないの。
(せんせいにもおそらくわかっていないでしょう。)
先生にもおそらく解っていないでしょう。
(けれどもそれからせんせいがかわってきたとおもえば、そうおもわれないこともないのよ」)
けれどもそれから先生が変って来たと思えば、そう思われない事もないのよ」
(「そのひとのはかですか、ぞうしがやにあるのは」)
「その人の墓ですか、雑司ヶ谷にあるのは」
(「それもいわないことになっているからいいません。)
「それもいわない事になっているからいいません。
(しかしにんげんはしんゆうをひとりなくしただけで、そんなにへんかできるものでしょうか。)
しかし人間は親友を一人亡くしただけで、そんなに変化できるものでしょうか。
(わたしはそれがしりたくってたまらないんです。)
私はそれが知りたくって堪らないんです。
(だからそこをひとつあなたにはんだんしていただきたいとおもうの」)
だからそこを一つあなたに判断して頂きたいと思うの」
(わたくしのはんだんはむしろひていのほうにかたむいていた。)
私の判断はむしろ否定の方に傾いていた。