「こころ」1-42 夏目漱石
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | どんぐり | 5586 | A | 6.0 | 92.9% | 314.7 | 1903 | 145 | 37 | 2024/10/19 |
2 | mame | 5322 | B++ | 5.6 | 94.6% | 336.1 | 1896 | 107 | 37 | 2024/11/10 |
3 | ぽむぽむ | 5314 | B++ | 5.6 | 94.3% | 338.9 | 1915 | 114 | 37 | 2024/10/16 |
4 | daifuku | 3680 | D+ | 3.9 | 94.0% | 487.4 | 1916 | 122 | 37 | 2024/10/17 |
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問題文
(じっさいそのときのわたくしは、じぶんのなすべきすべてのしごとがすでにけつりょうして、)
実際その時の私は、自分のなすべきすべての仕事がすでに結了して、
(これからさきはいばってあそんでいてもかまわないようなはれやかなこころもちでいた。)
これから先は威張って遊んでいても構わないような晴やかな心持でいた。
(わたくしはかきあげたじぶんのろんぶんにたいしてじゅうぶんのじしんとまんぞくをもっていた。)
私は書き上げた自分の論文に対して充分の自信と満足をもっていた。
(わたくしはせんせいのまえで、しきりにそのないようをちょうちょうした。)
私は先生の前で、しきりにその内容を喋々した。
(せんせいはいつものちょうしで、)
先生はいつもの調子で、
(「なるほど」とか、「そうですか」とかいってくれたが、)
「なるほど」とか、「そうですか」とかいってくれたが、
(それいじょうのひひょうはすこしもくわえなかった。)
それ以上の批評は少しも加えなかった。
(わたくしはものたりないというよりも、いささかひょうしぬけのきみであった。)
私は物足りないというよりも、聊か拍子抜けの気味であった。
(それでもそのひわたくしのきりょくは、いんじゅんらしくみえるせんせいのたいどに)
それでもその日私の気力は、因循らしく見える先生の態度に
(ぎゃくしゅうをこころみるほどにいきいきしていた。)
逆襲を試みるほどに生々していた。
(わたくしはあおくよみがえろうとするおおきなしぜんのなかに、せんせいをさそいだそうとした。)
私は青く蘇生ろうとする大きな自然の中に、先生を誘い出そうとした。
(「せんせいどこかへさんぽしましょう。そとへでるとたいへんいいこころもちです」)
「先生どこかへ散歩しましょう。外へ出ると大変好い心持です」
(「どこへ」)
「どこへ」
(わたくしはどこでもかまわなかった。ただせんせいをつれてこうがいへでたかった。)
私はどこでも構わなかった。ただ先生を伴れて郊外へ出たかった。
(いちじかんののち、せんせいとわたくしはもくてきどおりしをはなれて、)
一時間の後、先生と私は目的どおり市を離れて、
(むらともまちともくべつのつかないしずかなところをあてもなくあるいた。)
村とも町とも区別の付かない静かな所を宛もなく歩いた。
(わたくしはかなめのかきからわかいやわらかいはをもぎとってしばぶえをならした。)
私はかなめの垣から若い柔らかい葉をもぎ取って芝笛を鳴らした。
(あるかごしまじんをともだちにもって、そのひとのまねをしつつしぜんにならいおぼえたわたくしは、)
ある鹿児島人を友達にもって、その人の真似をしつつ自然に習い覚えた私は、
(このしばぶえというものをならすことがじょうずであった。)
この芝笛というものを鳴らす事が上手であった。
(わたくしがとくいにそれをふきつづけると、せんせいはしらんかおをして)
私が得意にそれを吹きつづけると、先生は知らん顔をして
(よそをむいてあるいた。)
よそを向いて歩いた。
(やがてわかばにとざされたようにこんもりしたこだかいひとかまえのしたに)
やがて若葉に鎖されたようにこんもりした小高い一構えの下に
(ほそいみちがひらけた。)
細い路が開けた。
(もんのはしらにうちつけたひょうさつになになにえんとあるので、)
門の柱に打ち付けた表札に何々園とあるので、
(そのこじんのていたくでないことがすぐしれた。)
その個人の邸宅でない事がすぐ知れた。
(せんせいはだらだらのぼりになっているいりぐちをながめて、)
先生はだらだら上りになっている入口を眺めて、
(「はいってみようか」といった。)
「はいってみようか」といった。
(わたくしはすぐ「うえきやですね」とこたえた。)
私はすぐ「植木屋ですね」と答えた。
(うえこみのなかをひとうねりしておくへあがるとひだりがわにうちがあった。)
植込の中を一うねりして奥へ上ると左側に家があった。
(あけはなったしょうじのうちはがらんとしてひとのかげもみえなかった。)
明け放った障子の内はがらんとして人の影も見えなかった。
(ただのきさきにすえたおおきなはちのなかにかってあるきんぎょがうごいていた。)
ただ軒先に据えた大きな鉢の中に飼ってある金魚が動いていた。
(「しずかだね。ことわらずにはいってもかまわないだろうか」)
「静かだね。断らずにはいっても構わないだろうか」
(「かまわないでしょう」)
「構わないでしょう」
(ふたりはまたおくのほうへすすんだ。しかしそこにもひとかげはみえなかった。)
二人はまた奥の方へ進んだ。しかしそこにも人影は見えなかった。
(つつじがもえるようにさきみだれていた。)
躑躅が燃えるように咲き乱れていた。
(せんせいはそのうちでかばいろのたけのたかいものをさして、)
先生はそのうちで樺色の丈の高いものを指して、
(「これはきりしまでしょう」といった。)
「これは霧島でしょう」といった。