緋のエチュード 27

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プレイ回数547難易度(4.2) 5123打 長文 かな
タグ小説 文学
シャーロックホームズシリーズ第一弾

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問題文

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(りーだーのくちからここがやくそくのちであり、)

リーダーの口からここが約束の地であり、

(このしょじょちがえいえんにかれらのものになるとしらされたとき、)

この処女地が永遠に彼らのものになると知らされた時、

(こころからのいのりにひざまずかないものは、だれひとりいなかった。)

心からの祈りにひざまずかない者は、誰一人いなかった。

(やんぐはすぐにきぜんとしたしゅちょうであるとどうじに)

ヤングはすぐに毅然とした首長であると同時に

(ゆうのうなぎょうせいかんであることをしょうめいした。ちずがえがかれみとりずがじゅんびされ、)

有能な行政官である事を証明した。地図が描かれ見取り図が準備され、

(そこにみらいのとしがえがかれた。)

そこに未来の都市が描かれた。

(のうちはすべておのおののたちばによるわりあいにおうじてわりあてられ、)

農地はすべて各々の立場による割合に応じて割り当てられ、

(しょうにんはしょうばいにつき、しょくにんはじぶんのてんしょくについた。)

商人は商売につき、職人は自分の天職についた。

(まちではまほうのようにみちとがいくがしゅつげんした。のうそんでは、はいすいろといけがき、)

街では魔法のように道と街区が出現した。農村では、排水路と生垣、

(しょくじゅとかいたくによって、つぎのなつがくるまでに、)

植樹と開拓によって、次の夏が来るまでに、

(こむぎのみのりでのうちぜんたいがきんいろになった。このきみょうなにゅうしょくちでは、)

小麦の実りで農地全体が金色になった。この奇妙な入植地では、

(なにもかもがはんえいをきわめた。とりわけ、)

何もかもが繁栄を極めた。とりわけ、

(としのまんなかにたてられたきょだいなきょうかいは、)

都市の真中に建てられた巨大な教会は、

(どんどんとたかくおおきくなっていった。)

どんどんと高く大きくなっていった。

(よあけにさいしょのひのひかりがさしてから、たそがれのひかりがきえるまで、)

夜明けに最初の日の光が差してから、たそがれの光が消えるまで、

(はんまーのかんかんいうおとと、のこぎりのぎーぎーいうおとは、)

ハンマーのカンカンいう音と、鋸のギーギーいう音は、

(いっしゅんたりともとだえなかった。)

一瞬たりとも途絶えなかった。

(それはおおくのくなんをとおりぬけてしんじゃをみちびくかみのため、)

それは多くの苦難を通り抜けて信者を導く神のため、

(にゅうしょくしゃがたてたものだ。)

入植者が建てたものだ。

(じょんふぇりあー、)

ジョン・フェリアー、

など

(そしてかれとうんめいをわかちあってようじょとなったしょうじょは、ふたりとも、)

そして彼と運命を分かち合って養女となった少女は、二人とも、

(かれらのながいじゅんれいにさいごまでどうこうした。)

彼らの長い巡礼に最後まで同行した。

(るーしーふぇりあーはどうちゅうずっとすたんがーそんちょうろうのほろばしゃのなかで)

ルーシー・フェリアーは道中ずっとスタンガーソン長老の幌馬車の中で

(かいてきなたびをした。かのじょはもるもんきょうとのさんにんのつまとむすこ、)

快適な旅をした。彼女はモルモン教徒の三人の妻と息子、

(わがままででしゃばりのじゅうにさいのしょうねんだった、)

わがままででしゃばりの十二歳の少年だった 、

(といっしょにくらした。こどものてきおうりょくによって、)

と一緒に暮らした。子供の適応力によって、

(ははのしによるしょっくからげんきをとりもどすと、)

母の死によるショックから元気を取り戻すと、

(しょうじょはすぐにじょせいたちのおきにいりとなり、)

少女はすぐに女性達のお気に入りとなり、

(しょうじょじしんもいどうするほろやねのいえのあたらしいくらしになじんでいった。)

少女自身も移動する幌屋根の家の新しい暮らしに馴染んでいった。

(そのあいだ、ふぇりあーはたいりょくをかいふくし、やくにたつがいど、)

その間、フェリアーは体力を回復し、役に立つガイド、

(ふくつのしゅりょうかとしてゆうめいになった。)

不屈の狩猟家として有名になった。

(かれはきゅうそくにあたらしいなかまたちのそんけいをかちとり、)

彼は急速に新しい仲間達の尊敬を勝ち取り、

(いっこうがたびのもくてきちにつくころには、ほかのいじゅうしゃのだれよりも、)

一行が旅の目的地に着く頃には、他の移住者の誰よりも、

(かれにひろいこえたとちのくいきをあたえることにはんたいするものはいなかった。)

彼に広い肥えた土地の区域を与えることに反対する者はいなかった。

(もちろんやんぐじしんにくわえ、すたんがーそん、けんぼーる、)

もちろんヤング自身に加え、スタンガーソン、ケンボール、

(じょんそん、どればー、のよんちょうろうはべっかくだった。)

ジョンソン、ドレバー、の四長老は別格だった。

(このようにしてかくとくしたのうちに、)

このようにして獲得した農地に、

(じょんふぇりあーはみずからがんじょうなろぐはうすをたてた。)

ジョン・フェリアーはみずから頑丈なログハウスを建てた。

(そのとしいこうもなんどとなくぞうちくをくりかえし、)

その年以降も何度となく増築を繰り返し、

(ひろびろとしたていたくにまでかくちょうした。かれはじつむかのせいしんをもっており、)

広々とした邸宅にまで拡張した。彼は実務家の精神を持っており、

(とりひきはかしこくてさきはきようだった。)

取引は賢く手先は器用だった。

(がんじょうなたいしつのおかげでかれはあさからばんまではたらくことができたので、)

頑丈な体質のおかげで彼は朝から晩まで働く事ができたので、

(のうちをすきたがやしてかいりょうした。こういうせいかつがつづいたけっか、)

農地を鋤き耕して改良した。こういう生活が続いた結果、

(かれののうちやしょゆうぶつはひじょうにりっぱになった。)

彼の農地や所有物は非常に立派になった。

(さんねんでかれはまわりよりゆたかとなり、ろくねんでまんぞくなせいかつができ、)

三年で彼は周りより豊かとなり、六年で満足な生活ができ、

(くねんでかれはゆうふくとなり、そしてじゅうにねんたつと、)

九年で彼は裕福となり、そして十二年経つと、

(そるとれーくしてぃぜんたいでかれにならぶものはろくにんもいないほどになった。)

ソルトレークシティ全体で彼に並ぶ者は六人もいないほどになった。

(おおきなないりくのみずうみからとおくはなれたうぉさっちさんみゃくまで、)

大きな内陸の湖から遠く離れたウォサッチ山脈まで、

(じょんふぇりあーいじょうになのしれたじんぶつはいなくなった。)

ジョン・フェリアー以上に名の知れた人物はいなくなった。

(ただひとつ、かれはなかまのしんじゃのえいきょうにさからっていたてんがあった。)

ただ一つ、彼は仲間の信者の影響に逆らっていた点があった。

(どんないけんやせっとくもかかわらず、)

どんな意見や説得もかかわらず、

(かれはなかまのやりかたにあわせてつまをめとらなかった。)

彼は仲間のやり方に合わせて妻を娶らなかった。

(かれはこのしつこいきょぜつのりゆうをけっしてかたらなかった。しかし、)

彼はこのしつこい拒絶の理由を決して語らなかった。しかし、

(このけついにしゅうちゃくすることにまんぞくをおぼえていた。)

この決意に執着することに満足を覚えていた。

(かいしゅうしたしんこうのふてっていさをりゆうに、かれをきゅうだんするものもいた。)

改宗した信仰の不徹底さを理由に、彼を糾弾する者もいた。

(またべつのものは、それをとみへのどんよくさとしゅっぴをおしむことにきした。)

また別の者は、それを富への貪欲さと出費を惜しむ事に帰した。

(またさらにべつのものは、)

またさらに別の者は、

(かれがわかいころたいせいようぞいのちでやつれてしんだ)

彼が若い頃大西洋沿いの地でやつれて死んだ

(きんぱつじょせいとのれんあいをかたった。りゆうがなんであろうと、)

金髪女性との恋愛を語った。理由がなんであろうと、

(ふぇりあーはがんこにどくしんをとおした。それいがいのてんでは、)

フェリアーは頑固に独身を通した。それ以外の点では、

(かれはあたらしいにゅうしょくちのしんこうにしたがう、)

彼は新しい入植地の信仰に従う、

(せいとうてきでまじめなおとこというひょうばんをえていた。)

正統的で真面目な男と言う評判を得ていた。

(るーしーふぇりあーはこのろぐはうすでせいちょうした。)

ルーシー・フェリアーはこのログハウスで成長した。

(そしてようふのすることはなんでもてつだった。)

そして養父のすることは何でも手伝った。

(さんみゃくのみをきるようなくうきや、まつのきのほうこうが、)

山脈の身を切るような空気や、松の木の芳香が、

(うばやははおやがわりとなった。としがすぎるにつれ、かのじょのせはたかく、)

乳母や母親代わりとなった。年が過ぎるにつれ、彼女の背は高く、

(たいかくはよくなった。ほおはいっそうあかく、)

体格は良くなった。頬はいっそう赤く、

(あしどりはいっそうじゅうなんになった。)

足取りはいっそう柔軟になった。

(ふぇりあーののうじょうのわきをとおるかんせんどうろをあるいていて、)

フェリアーの農場の脇を通る幹線道路を歩いていて、

(かのじょのしなやかなじょせいらしいすがたがおどるように)

彼女のしなやかな女性らしい姿が踊るように

(こむぎばたけをよぎるのをみたり、かのじょがちちのうまにまたがり、)

小麦畑をよぎるのを見たり、彼女が父の馬にまたがり、

(せいぶうまれのゆうがさでかるがるとそれをあやつるのにであうと、)

西部生まれの優雅さで軽々とそれを操るのに出会うと、

(ながくわすれていたおもいがこころによみがえるのをかんじるにんげんがおおかった。)

長く忘れていた思いが心に蘇るのを感じる人間が多かった。

(このようにつぼみははなへとかいかした。)

このように蕾は花へと開花した。

(ちちおやがもっともゆうふくなのうふとなるためについやしたねんげつは、)

父親が最も裕福な農夫となるために費やした年月は、

(しょうじょをろっきーさんみゃくのたいへいようがわぜんたいでみつけうる、)

少女をロッキー山脈の太平洋側全体で見つけうる、

(もっともみごとなあめりかじょせいのみほんへとせいちょうさせていた。)

最も見事なアメリカ女性の見本へと成長させていた。

(しかししょうじょがじょせいへとせいちょうしていたことをさいしょにきづいたのは)

しかし少女が女性へと成長していた事を最初に気づいたのは

(ちちではなかった。そんなことはまずおきない。しんぴてきなへんかは、)

父ではなかった。そんなことはまず起きない。神秘的な変化は、

(いちにちたんいではかるにはびみょうでちいさすぎた。)

一日単位で計るには微妙で小さ過ぎた。

(だれよりもじょせいじしんがそれをしらない。こえのひびき、ふれあったてが、)

誰よりも女性自身がそれを知らない。声の響き、触れ合った手が、

(こころをふるわせ、そしてじそんしんときょうふのいりまじったきもちで、)

心を振るわせ、そして自尊心と恐怖の入り混じった気持ちで、

(やっとあたらしくそれまでよりおおきななにかが)

やっと新しくそれまでより大きな何かが

(じぶんのなかでめざめたことにきづくのだ。)

自分の中で目覚めたことに気づくのだ。

(そのひをおもいだせないものはほとんどいない。)

その日を思い出せない者はほとんどいない。

(そしてあたらしいじんせいのよあけをつげるちいさなできごとを)

そして新しい人生の夜明けを告げる小さな出来事を

(おぼえていないものもまずいない。るーしーふぇりあーのばあい、)

覚えていない者もまずいない。ルーシー・フェリアーの場合、

(そのできごとはそれじたいでじゅうぶんにしんこくだった。かのじょじしん、)

その出来事はそれ自体で十分に深刻だった。彼女自身、

(そしておおくのにんげんのうんめいがそのできごとによって)

そして多くの人間の運命がその出来事によって

(どうかわっていくのかをべつにしてもである。)

どう変わって行くのかを別にしてもである。

(ろくがつのあたたかいあさのことだった。まつじつせいとたちは、)

六月の暖かい朝のことだった。末日聖徒達は、

(もんしょうにきざまれたすにすむはちのようにいそがしかった。)

紋章に刻まれた巣に住む蜂のように忙しかった。

(きんべんなにんげんたちがかなでるにぎやかなおとが、のにも、とおりにも、)

勤勉な人間たちが奏でるにぎやかな音が、野にも、通りにも、

(みちあふれていた。ほこりっぽいしゅようどうろをとおる、)

満ち溢れていた。埃っぽい主要道路を通る、

(にもつをいっぱいつんだろばのながいたいれつは、)

荷物をいっぱい積んだロバの長い隊列は、

(れいがいなくせいぶをめざしていた。)

例外なく西部を目指していた。

(かりふぉるにあできんこうへのねっきょうがおき、)

カリフォルニアで金鉱への熱狂が起き、

(えらばれしたみのまちをとおってたいりくおうだんるーとがふせつされたためである。)

選ばれし民の街を通って大陸横断ルートが敷設されたためである。

(へんきょうのぼくそうちからやってきたひつじやこうしのむれや、)

辺境の牧草地からやってきた羊や子牛の群れや、

(はてしないたびにじんばともにつかれきったにゅうしょくたいも、つぎつぎにそのみちをとおった。)

果てしない旅に人馬共に疲れきった入植隊も、次々にその道を通った。

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