緋のエチュード 31

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タグ小説 文学
シャーロックホームズシリーズ第一弾

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問題文

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(・・・よげんしゃにさからったひとたちのおそろしいはなしを。)

・・・・預言者に逆らった人たちの恐ろしい話を。

(なにかおそろしいことがかならずおきると」)

何か恐ろしいことが必ず起きると」

(「まだわたしたちはさからっていない」ちちはこたえた。「そうするまでに、)

「まだ私達は逆らっていない」父は答えた。「そうするまでに、

(きけんにそなえるじかんがある。まるいっかげつある。それがすぎれば、)

危険に備える時間がある。丸一ヶ月ある。それが過ぎれば、

(わたしとおまえはゆたをさるのがいちばんだとおもう」)

私とお前はユタを去るのが一番だと思う」

(「ゆたをすてるの!」)

「ユタを捨てるの!」

(「まあ、そういうことだ」)

「まあ、そういうことだ」

(「でものうじょうは?」)

「でも農場は?」

(「できるかぎりかねにかえる。のこりはおいていく。じつはな、るーしー、)

「出来る限り金に替える。残りは置いていく。実はな、ルーシー、

(そうしようとおもったのはこれがはじめてではない。わたしは、)

そうしようと思ったのはこれが初めてではない。私は、

(ここのれんちゅうがふざけたよげんしゃにするように、)

ここの連中がふざけた預言者にするように、

(だれのあしもとにもひざまずきたいとはおもわない。わたしはじゆうなあめりかじんだ。)

誰の足元にもひざまずきたいとは思わない。私は自由なアメリカ人だ。

(ここのすべてになじめない。)

ここの全てになじめない。

(わたしはいきかたをかえるにはとしをとりすぎているんだろう。)

私は生き方を変えるには年をとりすぎているんだろう。

(もしかれがこののうじょうをうろうろしたら、)

もし彼がこの農場をウロウロしたら、

(もしかしたらしょうめんからくるさんだんとでくわすかもしれないな」)

もしかしたら正面から来る散弾と出くわすかもしれないな」

(「しかしわたしたちをだまってでていかせないわ」むすめははんたいした。)

「しかし私達を黙って出て行かせないわ」娘は反対した。

(「じぇふぁーそんがくるのをまつんだ。そうすれば、)

「ジェファーソンが来るのを待つんだ。そうすれば、

(すぐになんとかなる。むすめよ、それまでのあいだ、みをやつすではない。)

すぐに何とかなる。娘よ、それまでの間、身をやつすではない。

(そしてなみだにくれるではない。そうでないとかれがおまえとあったとき、)

そして涙にくれるではない。そうでないと彼がお前と会った時、

など

(わたしがおこられる。こわがることはなにもない。きけんはまったくないんだ」)

私が怒られる。怖がる事は何もない。危険は全くないんだ」

(じょんふぇりあーはかくしんにみちたくちょうでむすめをこうなぐさめた。)

ジョン・フェリアーは確信に満ちた口調で娘をこう慰めた。

(しかしそのよる、むすめはちちがいつになくしんちょうにとびらをしっかりとしめ、)

しかしその夜、娘は父が何時になく慎重に扉をしっかりと閉め、

(しんしつのかべにかけておいたさびたさんだんじゅうをていねいにそうじし、)

寝室の壁に掛けておいた錆びた散弾銃を丁寧に掃除し、

(たまをこめるのをみずにはいられなかった。)

弾を込めるのを見ずにはいられなかった。

(だいよんしょういのちがけのとうそう)

第四章 命がけの逃走

(もるもんきょうよげんしゃとはなしをしたつぎのあさ、)

モルモン教預言者と話をした次の朝、

(じょんふぇりあーはそるとれいくしてぃにでかけた。)

ジョン・フェリアーはソルトレイクシティに出かけた。

(そしてねばださんみゃくにむかうしりあいをみつけ、)

そしてネバダ山脈に向かう知り合いを見つけ、

(じぇふぁーそんほーぷへのてがみをあずけた。そのなかでかれはせいねんに、)

ジェファーソン・ホープへの手紙を預けた。その中で彼は青年に、

(いかにさしせまったきけんにちょくめんしているか、)

いかに差し迫った危険に直面しているか、

(そしてもどってきてくれることがどれほどじゅうようかを、かきしるした。)

そして戻ってきてくれる事がどれほど重要かを、書き記した。

(これをやりおえて、かれはすこしかたのにをおろしたおもいがした。)

これをやり終えて、彼は少し肩の荷を降ろした思いがした。

(そしてややきもちがはれて、いえにもどった。)

そしてやや気持ちが晴れて、家に戻った。

(のうじょうにもどり、かれはもんちゅうのりょうがわにうまがつながれているのをみておどろいた。)

農場に戻り、彼は門柱の両側に馬がつながれているのを見て驚いた。

(へやにはいってそれいじょうにおどろいたのは、)

部屋に入ってそれ以上に驚いたのは、

(ふたりのわかいおとこがいまをせんきょしていたことだ。ながくあおじろいかおのひとりは、)

二人の若い男が居間を占拠していたことだ。長く青白い顔の一人は、

(ろっきんぐちぇあにふんぞりかえって、)

ロッキングチェアにふんぞり返って、

(すとーぶのうえにあしをつきあげていた。)

ストーブの上に足を突き上げていた。

(がさつでうぬぼれたかおのくびのふといもうひとりは、)

がさつで自惚れた顔の首の太いもう一人は、

(ぽけっとにてをいれてはやりのきょくをくちぶえでふきながら)

ポケットに手を入れて流行りの曲を口笛で吹きながら

(まどのまえにたっていた。ふたりはふぇりあーがはいるとえしゃくした。)

窓の前に立っていた。二人はフェリアーが入ると会釈した。

(そしてろっきんぐちぇあにいたおとこがはなしをはじめた。)

そしてロッキングチェアにいた男が話を始めた。

(「わたしたちのことはごぞんじないでしょうね」かれはいった。)

「私達のことはご存知ないでしょうね」彼は言った。

(「こちらはどればーちょうろうのむすこで、わたしは、)

「こちらはドレバー長老の息子で、私は、

(かみがてをさしのべてあなたをしんのしんこうにひきいれたとき、)

神が手を差し伸べてあなたを真の信仰に引き入れた時、

(あなたといっしょにさばくをたびした、じょせふすたんがーそんです」)

あなたと一緒に砂漠を旅した、ジョセフ・スタンガーソンです」

(「かみがあらゆるたみに、みこころにかなったじきになさるがごとく」)

「神があらゆる民に、御心にかなった時期になさるが如く」

(もうひとりがはなにかかったこえでいった。)

もう一人が鼻にかかった声で言った。

(「かみはゆっくりとこなをひくがひじょうにこまかい」)

「神はゆっくりと粉を引くが非常に細かい」

(じょんふぇりあーはそっけなくおじぎをした。)

ジョン・フェリアーはそっけなくお辞儀をした。

(かれはだれがやってきたのか、よそうがついていた。)

彼は誰がやってきたのか、予想がついていた。

(「わたしたちがきたのは」すたんがーそんはつづけた。「ちちのじょげんで、)

「私たちが来たのは」スタンガーソンは続けた。「父の助言で、

(あなたとおじょうさんにとって、わたしたちのどちらがよりふさわしいか、)

あなたとお嬢さんにとって、私たちのどちらがよりふさわしいか、

(むすめさんにきめていただくためです。わたしはつまがよにんしかいませんが、)

娘さんに決めていただくためです。私は妻が四人しかいませんが、

(どればーはしちにんです。わたしのかんがえでは、)

ドレバーは七人です。私の考えでは、

(じぶんのほうにつよいけんりがあるとおもいます」)

自分の方に強い権利があると思います」

(「ちがう、ちがう、すたんがーそんきょうだい」もうひとりがさけんだ。)

「違う、違う、スタンガーソン兄弟」もう一人が叫んだ。

(「もんだいはなんにんのつまをもっているかではなく、なんにんやしなえるかだ。)

「問題は何人の妻を持っているかではなく、何人養えるかだ。

(わたしはちちからせいふんじょをゆずられていて、きみよりかねもちだ」)

私は父から製粉所を譲られていて、君より金持ちだ」

(「しかししょうらいせいはわたしがうえだ」もうひとりがこうふんしていった。)

「しかし将来性は私が上だ」もう一人が興奮して言った。

(「かみがわたしのちちをめしたとき、なめしじょうとかわこうじょうをうけつぐ。)

「神が私の父を召した時、なめし場と革工場を受け継ぐ。

(それにわたしはねんちょうで、きょうかいのちいもうえだ」)

それに私は年長で、教会の地位も上だ」

(「それはむすめさんのきめることだ」)

「それは娘さんの決める事だ」

(どればーががらすにうつったじぶんにわらいかけながらこたえた。)

ドレバーがガラスに映った自分に笑いかけながら答えた。

(「かのじょのけっていにすべてまかせよう」)

「彼女の決定に全て任せよう」

(このはなしのあいだ、じょんふぇりあーは、)

この話の間、ジョン・フェリアーは、

(このほうもんしゃふたりのせなかをじょうばむちでうちつけたくなるのを)

この訪問者二人の背中を乗馬鞭で打ち付けたくなるのを

(ひっしでこらえながら、とぐちにたっていた。)

必死でこらえながら、戸口に立っていた。

(「いいか」かれはとうとう、ふたりにつかつかとあゆみよるといった。)

「いいか」彼はとうとう、二人につかつかと歩み寄ると言った。

(「わたしのむすめがよんだときは、きてよい。しかしそれまでは、)

「私の娘が呼んだ時は、来てよい。しかしそれまでは、

(おまえらのつらはにどとみたくない」)

お前らの面は二度と見たくない」

(ふたりのわかいもるもんきょうとはおどろいてかれをみつめた。かれらからすれば、)

二人の若いモルモン教徒は驚いて彼を見つめた。彼らからすれば、

(ふたりがきそってむすめにきゅうこんするのは、)

二人が競って娘に求婚するのは、

(ほんにんにとってもちちおやにとってもさいこうのめいよのはずだった。)

本人にとっても父親にとっても最高の名誉のはずだった。

(「へやからでるばしょがふたつある」ふぇりあーはさけんだ。)

「部屋から出る場所が二つある」フェリアーは叫んだ。

(「げんかんか、まどだ。どっちがのぞみだ?」)

「玄関か、窓だ。どっちが望みだ?」

(ふぇりあーのひにやけたかおがひじょうにどうもうで、)

フェリアーの日に焼けた顔が非常に獰猛で、

(やせたてがあまりにもいかくてきだったので、ほうもんしゃははねおき、)

痩せた手があまりにも威嚇的だったので、訪問者は跳ね起き、

(あわててにげだした。としおいたのうふはとぐちまでおいかけた。)

慌てて逃げ出した。年老いた農夫は戸口まで追いかけた。

(「きまったらおしえろ」かれはせせらわらってこういった。)

「決まったら教えろ」彼はせせら笑ってこう言った。

(「こうかいするぞ!」すたんがーそんがいかりにあおざめてさけんだ。)

「後悔するぞ!」スタンガーソンが怒りに青ざめて叫んだ。

(「おまえはよげんしゃとよにんかいぎをむしした。しぬまでこうかいするぞ」)

「お前は預言者と四人会議を無視した。死ぬまで後悔するぞ」

(「かみのてはおまえにてっついをくだす」どればーがさけんだ。)

「神の手はお前に鉄槌を下す」ドレバーが叫んだ。

(「かみはたちあがり、おまえをばっするだろう」)

「神は立ち上がり、お前を罰するだろう」

(「こっちがさきにしょばつをはじめてやる」ふぇりあーはたけりくるってさけんだ。)

「こっちが先に処罰を始めてやる」フェリアーは猛り狂って叫んだ。

(もしるーしーがうでをつかんでひきとめなければ、)

もしルーシーが腕をつかんで引き止めなければ、

(けんじゅうをとりにじょうかいにかけあがっていただろう。)

拳銃を取りに上階に駆け上がっていただろう。

(かれがむすめのてをふりほどくまえに、おいかけてもむだだとわかるほど、)

彼が娘の手を振りほどく前に、追いかけても無駄だと分かるほど、

(ひづめのおとはとおざかっていた。)

蹄の音は遠ざかっていた。

(「もったいぶったわかぞうが!」かれはひたいのあせをぬぐいながらさけんだ。)

「もったいぶった若造が!」彼は額の汗を拭いながら叫んだ。

(「むすめよ。わたしはあのふたりのどちらかのつまになったおまえをみるくらいなら、)

「娘よ。私はあの二人のどちらかの妻になったお前を見るくらいなら、

(むしろはかであいたいくらいだ」)

むしろ墓で会いたいくらいだ」

(「わたしもよ、おとうさん」かのじょはきっぱりとこたえた。)

「私もよ、お父さん」彼女はきっぱりと答えた。

(「しかしじぇふぁーそんがすぐにくるわ」)

「しかしジェファーソンがすぐに来るわ」

(「そうだ。かれがくるまでにそうながくはかからん。はやいほうがいい。)

「そうだ。彼が来るまでにそう長くはかからん。早い方がいい。

(つぎにかれらがどうでるか、わからんでな」)

次に彼らがどうでるか、分からんでな」

(じじつ、このふくつのろうのうふとかれのようじょをすくうために、)

事実、この不屈の老農夫と彼の養女を救うために、

(じょげんやじょりょくをできるのうりょくをもったものがあらわれてもよいころだった。)

助言や助力を出来る能力を持った者が現われても良い頃だった。

(このにゅうしょくのれきしぜんたいで、)

この入植の歴史全体で、

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