『妖怪博士』江戸川乱歩6
○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | berry | 6562 | S+ | 6.7 | 96.9% | 682.5 | 4623 | 144 | 100 | 2024/10/04 |
2 | ひよこまめ | 5866 | A+ | 6.0 | 96.9% | 768.9 | 4658 | 147 | 100 | 2024/11/17 |
3 | daifuku | 3784 | D++ | 4.0 | 94.2% | 1158.9 | 4672 | 286 | 100 | 2024/10/05 |
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問題文
(はかせはめがねをはずしてだいのうえにおくと、りょうてではくはつ)
博士は眼鏡を外して台の上に置くと、両手で白髪
(まじりのかみのけをつかみ、まるでぼうしでもぬぐ)
交じりの髪の毛をつかみ、まるで帽子でも脱ぐ
(ように、すっぽりととりはずしたかとおもうと、こんどは)
ように、スッポリと取り外したかと思うと、今度は
(くちひげとさんかっけいのあごひげにてをかけ、これも)
口ひげと三角形のあごヒゲに手をかけ、これも
(めりめりとひきはがしてしまいました。ああ、なんと)
メリメリと引き剥がしてしまいました。 ああ、なんと
(いうことでしょう。はかせはにじゅうのへんそうをしていた)
いうことでしょう。博士は二重の変装をしていた
(のです。さっきまではきたないこじきじいさんにばけて)
のです。さっきまでは汚い乞食じいさんに化けて
(いて、そのへんそうをといたかとおもうと、そのしたにまだ)
いて、その変装をといたかと思うと、その下にまだ
(かつらやつけひげがあったのです。それをとりさって)
カツラや付けヒゲがあったのです。 それを取り去って
(しまったいまのすがたこそ、ほんとうのひるたはかせにちがい)
しまった今の姿こそ、本当のヒルタ博士に違い
(ありません。みればくろぐろとしたかみのけに、つやつや)
ありません。見れば黒々とした髪の毛に、ツヤツヤ
(としたかおのいろをしています。ろうじんどころか、まだ)
とした顔の色をしています。老人どころか、まだ
(さんじゅっさいをすこしすぎたばかりのわかものです。はかせはかがみの)
三十歳を少し過ぎたばかりの若者です。 博士は鏡の
(したのひきだしをあちこちひらいて、なにかさがしているようす)
下の引き出しをあちこち開いて、何か探している様子
(でしたが、やがてくしゃくしゃにみだれた、しらがあたまの)
でしたが、やがてクシャクシャに乱れた、しらが頭の
(ろうばのかつらをとりだしててばやくそれをかぶると、)
老婆のカツラを取り出して手早くそれをかぶると、
(つぎにえのぐざらがたくさんならんでいるひきだしを)
次に絵の具皿がたくさん並んでいる引き出しを
(ひらき、そこにあったえふでをとって、かがみをみながらかおに)
開き、そこにあった絵筆をとって、鏡を見ながら顔に
(なにかをかきはじめました。みるみるうちに、おそろしい)
何かをかき始めました。 みるみるうちに、恐ろしい
(しわくちゃなおばあさんのかおができあがって)
シワくちゃなおばあさんの顔が出来上がって
(いきます。まゆげもまっしろにそめられ、はにはところどころに)
いきます。眉毛も真っ白に染められ、歯には所々に
(まっくろなうすいきんぞくのさやのようなものがはめられて、)
真っ黒な薄い金属のさやのような物がはめられて、
(たちまちはぬけばあさんのくちができあがってしまい)
たちまち歯抜けばあさんの口が出来上がってしまい
(ました。かおのへんそうがすむと、はかせはいすからたち)
ました。 顔の変装が済むと、博士はイスから立ち
(あがって、かべにつりさげてあるいしょうのなかから、せいようの)
上がって、壁に吊り下げてある衣装の中から、西洋の
(ろうばがきるようなしろっぽいうわぎと、ひだのおおい)
老婆が着るような白っぽい上着と、ひだの多い
(すかーとをえらびだして、てぎわよくみにつけ、そのうえ)
スカートを選び出して、手際よく身に付け、その上
(からおおきなちゃいろのかたかけをはおりました。あしには)
から大きな茶色の肩かけを羽織りました。足には
(くつしたもはかず、そこにあったいっそくのぶさいくなきぐつを)
靴下もはかず、そこにあった一足の不細工な木靴を
(はいたままです。そうしてできあがったへんそうは、)
はいたままです。そうして出来上がった変装は、
(せいようのどうわにでてくる、まほうつかいのおばあさんに)
西洋の童話に出て来る、魔法使いのおばあさんに
(そっくりでした。おばあさんは、からだをふたつにおった)
ソックリでした。 おばあさんは、体を二つに折った
(ようにこしをかがめ、りょうてをうしろにまわして、はの)
ように腰をかがめ、両手を後ろにまわして、歯の
(ないくちをもぐもぐさせながら、よちよちとあるきはじめ)
ない口をモグモグさせながら、ヨチヨチと歩き始め
(ました。そのちいさなへやのしょだなのはんたいがわには、)
ました。 その小さな部屋の書棚の反対側には、
(ちいさいくぐりどがついています。おばあさんは、)
小さいくぐり戸が付いています。おばあさんは、
(それをかぎでひらいて、そのむこうのあなのような)
それをカギでひらいて、その向こうの穴のような
(まっくらななかへはいっていきました。どうやらそこに、)
真っ暗な中へ入って行きました。どうやらそこに、
(ちていへおりるひみつのかいだんがあるらしく、おばあさんの)
地底へ下りる秘密の階段があるらしく、おばあさんの
(すがたはことんことんと、いちだんずつしたのほうへおりていく)
姿はコトンコトンと、一段ずつ下のほうへ下りていく
(ようにみえました。いっぽう、たいじしょうねんはあっという)
ように見えました。一方、泰二少年はアッという
(まに、あしもとのゆかいたがきえてしまったようなきがして、)
まに、足元の床板が消えてしまったような気がして、
(からだがすーっとちゅうにういたかとおもうと、なにかひどく)
体がスーッと宙に浮いたかと思うと、何かひどく
(つるつるした、こうえんなどにあるすべりだいのようなものの)
ツルツルした、公園などにある滑り台のような物の
(うえにおち、そのままひじょうなはやさでしたのほうへ、すべって)
上に落ち、そのまま非常な早さで下のほうへ、滑って
(いきました。やがて、どしんとなにかかたいものにたたき)
いきました。 やがて、ドシンと何か硬い物に叩き
(つけられたようにかんじましたが、そこはあなのそこ)
つけられたように感じましたが、そこは穴の底
(でした。すこしおしりのへんがいたいくらいで、からだにはべつじょう)
でした。少しお尻のへんが痛いくらいで、体には別条
(ありませんでしたので、すぐたちあがって、あたりを)
ありませんでしたので、すぐ立ち上がって、あたりを
(みまわしました。いまおちてきたあなもふさがれて)
見まわしました。 いま落ちてきた穴もふさがれて
(しまったとみえて、そこはやみよのようにまっくらです。)
しまったとみえて、そこは闇夜のように真っ暗です。
(ただ、あなのなかにはいしでつくったいろりのようなものが)
ただ、穴の中には石で作った囲炉裏のような物が
(あって、そのなかにすこしばかりのたきぎが、ちろちろと)
あって、その中に少しばかりのたきぎが、チロチロと
(あかいしたをだしてもえています。ひかりは、そのほのおだけなの)
赤い舌を出して燃えています。光は、その炎だけなの
(です。しかしめがやみになれると、あなのようすが)
です。 しかし目が闇に馴れると、穴の様子が
(おぼろげにわかってきました。ひろさははちじょうほどもある)
おぼろげに分かってきました。広さは八畳ほどもある
(でしょうか。しほうのかべは、ごろごろとしたおおきないしが)
でしょうか。四方の壁は、ゴロゴロとした大きな石が
(つみあげてあって、ちかしつというよりもおおむかしの、あなで)
積み上げてあって、地下室というよりも大昔の、穴で
(せいかつしていたじだいのあなといったかんじです。ひがもえて)
生活していた時代の穴といった感じです。 火が燃えて
(いるいろりのうえには、さんぼんのきのえだがさんきゃくのように)
いる囲炉裏の上には、三本の木の枝が三脚のように
(くみあわされており、そこにみょうななべがつりさげ)
組み合わされており、そこにみょうな鍋が吊り下げ
(られています。なべのなかにはなにがはいっているのか、)
られています。鍋の中には何が入っているのか、
(したのほのおにあぶられてごとごととにえたっており、しろい)
下の炎にあぶられてゴトゴトと煮え立っており、白い
(ゆげがたちのぼっています。それからいろりのすぐ)
湯気が立ちのぼっています。 それから囲炉裏のすぐ
(そばには、いっきゃくのおおきいきのいすがおいてあります。)
そばには、一脚の大きい木のイスが置いてあります。
(これもせいようのどうわにでてくるようなきみょうなかたちのふるい)
これも西洋の童話に出て来るような奇妙な形の古い
(いすで、りょうほうのひじかけがへびのかたちにちょうこくして)
イスで、両方のひじ掛けがヘビの形に彫刻して
(あって、まえからみると、にひきのへびがおおきなくちを)
あって、前から見ると、二匹のヘビが大きな口を
(あけて、いまにもこちらへとびかかってきそうに)
あけて、今にもこちらへ跳びかかってきそうに
(おもわれます。それがいろりのかすかなあかいほのおに)
思われます。それが囲炉裏のかすかな赤い炎に
(てらされて、いきているようにもみえます。)
照らされて、生きているようにも見えます。
(たいじくんは、そんないんきでものすごいあなが、とうきょうの)
泰二君は、そんな陰気で物凄い穴が、東京の
(まんなかにあるとは、おもいもよりませんでした。くらやみの)
真ん中にあるとは、思いもよりませんでした。暗闇の
(じごくへでもおちたような、なんともいえないうすきみわるさ)
地獄へでも落ちたような、何ともいえない薄気味悪さ
(です。げんじつみのないけしきなので、ひょっとしたら)
です。現実味のない景色なので、ひょっとしたら
(おそろしいゆめをみているんじゃないかと、うたがうほど)
恐ろしい夢を見ているんじゃないかと、疑うほど
(でした。ところが、そうしてしばらくあなのなかを)
でした。 ところが、そうしてしばらく穴の中を
(みまわしているうちにこんどは、いきなりせなかにつめたい)
見まわしているうちに今度は、いきなり背中に冷たい
(みずをかけられでもしたように、こころのそこからふるえあがる)
水をかけられでもしたように、心の底から震え上がる
(ほどの、おそろしいことがおこりました。ふとみる)
ほどの、恐ろしいことが起こりました。 ふと見る
(と、むこうのくらやみのなかにもうろうと、なにかしらしろい)
と、向こうの暗闇の中にもうろうと、何かしら白い
(もののすがたがあらわれたのです。たいじくんはゆうれいなどしんじない)
物の姿が現れたのです。泰二君は幽霊など信じない
(のですが、でもばしょがこんなうすきみわるいあなのなか)
のですが、でも場所がこんな薄気味悪い穴の中
(ですから、もしやゆうれいがでたのではないかと、)
ですから、もしや幽霊が出たのではないかと、
(ぞーっとみがすくむおもいでした。それはやみのなかで)
ゾーッと身がすくむ思いでした。それは闇の中で
(すこしずつ、こちらへちかづいてきます。ちかづくに)
少しずつ、こちらへ近づいてきます。近づくに
(したがって、だんだんそのすがたがはっきりみえてきました。)
したがって、段々その姿がハッキリ見えてきました。
(あしであるいているので、ゆうれいではないでしょう。)
足で歩いているので、幽霊ではないでしょう。
(しかし、これはゆうれいなどよりもいっそうおそろしくて、)
しかし、これは幽霊などよりも一層恐ろしくて、
(ぶきみなすがたをしています。ぎんいろのはりがねのような)
不気味な姿をしています。 銀色の針金のような
(まっしろなしらががもじゃもじゃともつれ、かたのあたり)
真っ白なしらががモジャモジャともつれ、肩のあたり
(までさがっています。そのしらがのしたには、うすぐろく)
までさがっています。そのしらがの下には、薄黒く
(しわくちゃなおばあさんのかおが、はぬけのくちを)
シワくちゃなおばあさんの顔が、歯抜けの口を
(ひらいて、にやにやとわらっているのです。じょうはんしんを)
ひらいて、ニヤニヤと笑っているのです。 上半身を
(おおいかくしたちゃいろのふるいかたかけのしたから、ひだのおおい)
覆い隠した茶色の古い肩かけの下から、ひだの多い
(すかーとがたれ、あしにはさきのとがったきぐつをはいて)
スカートが垂れ、足には先の尖った木靴をはいて
(います。まるで、せいようのぶきみなろうばです。)
います。まるで、西洋の不気味な老婆です。
(まほうつかいのおばあさんにもみえます。)
魔法使いのおばあさんにも見えます。
(さすがのたいじくんもそれをみると、あっとこえをたてて、)
さすがの泰二君もそれを見ると、アッと声をたてて、
(おもわずへやのすみへにげてしまいました。)
思わず部屋の隅へ逃げてしまいました。