緋のエチュード 30

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タグ小説 文学
シャーロックホームズシリーズ第一弾

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問題文

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(そのよるしゅつげんするかもしれなかった。すべてのにんげんがりんじんをおそれたので、)

その夜出現するかもしれなかった。全ての人間が隣人を恐れたので、

(だれもこころのおくそこのひみつをかたるものはいなかった。)

誰も心の奥底の秘密を語る者はいなかった。

(あるはれたあさ、じょんふぇりあーはこむぎばたけにでかけようとしていた。)

ある晴れた朝、ジョン・フェリアーは小麦畑に出かけようとしていた。

(そのときかけがねがなるおとがきこえた。まどごしにのぞくと、がっしりした、)

その時掛け金が鳴る音が聞こえた。窓越しに覗くと、がっしりした、

(すないろのかみのちゅうねんだんせいがにわのみちをあるいてくるのがみえた。)

砂色の髪の中年男性が庭の道を歩いてくるのが見えた。

(ふぇりあーのしんぞうはくちまでとびあがった。それがだれあろう、)

フェリアーの心臓は口まで跳びあがった。それが誰あろう、

(ぶりがむやんぐそのひとだったからだ。おそれおののいて、)

ブリガム・ヤングその人だったからだ。恐れおののいて、

(このようなほうもんがかれにとってよいことは、)

このような訪問が彼にとって良いことは、

(ほとんどありえなかったふぇりあーはとぐちにはしっていき、)

ほとんどありえなかった フェリアーは戸口に走って行き、

(もるもんきょうのしどうしゃをでむかえた。しかしかれは、)

モルモン教の指導者を出迎えた。しかし彼は、

(このあいさつをよそよそしくうけとめ、)

この挨拶をよそよそしく受け止め、

(きびしいかおでふぇりあーのあとにつづいていまにはいった。)

厳しい顔でフェリアーの後に続いて居間に入った。

(「ふぇりあーきょうだい」かれはすわりながらいった。)

「フェリアー兄弟」彼は座りながら言った。

(そしてあわいいろのまつげのしたからするどくのうふをにらみつけた。)

そして淡い色のまつげの下から鋭く農夫を睨みつけた。

(「しんのしんじゃはおまえのよきともであった。)

「真の信者はお前のよき友であった。

(われわれはおまえがさばくでうえているときにひろいあげた。)

我々はお前が砂漠で飢えている時に拾い上げた。

(われわれはしょくもつをおまえとわかちあった。)

我々は食物をお前と分かち合った。

(われわれはおまえをあんぜんにえらばれしたににつれていった。)

我々はお前を安全に選ばれし谷に連れて行った。

(われわれはおまえにきまえよくとちをあたえ、)

我々はお前に気前よく土地を与え、

(われわれのひごのもとでゆたかになるのをゆるした。ちがうか?」)

我々の庇護の元で豊かになるのを許した。違うか?」

など

(「そのとおりです」じょんふぇりあーはこたえた。)

「そのとおりです」ジョン・フェリアーは答えた。

(「これらすべてのみかえりに、われわれがようきゅうしたじょうけんはたったひとつだ。)

「これら全ての見返りに、我々が要求した条件はたった一つだ。

(それは、おまえがただしいしんこうをもつことだ。)

それは、お前が正しい信仰を持つ事だ。

(そしてすべてのめんできょうぎにしたがうことだ。おまえはそうするとやくそくした。)

そして全ての面で教義に従う事だ。お前はそうすると約束した。

(そしてこれを、もしちまたでいわれていることがほんとうなら、)

そしてこれを、 もし巷で言われていることが本当なら 、

(おまえはむししている」)

お前は無視している」

(「どのようにわたしがむししているでしょう?」)

「どのように私が無視しているでしょう?」

(ふぇりあーはなだめるようにりょうてをあげてたずねた。)

フェリアーはなだめるように両手を上げて尋ねた。

(「きょうゆうしきんにししゅつしませんでしたか?)

「共有資金に支出しませんでしたか?

(じいんにさんれつしませんでしたか?わたしは・・・・・?」)

寺院に参列しませんでしたか?私は・・・・・?」

(「おまえのつまたちはどこだ?」やんぐはかれのまわりをみまわしてたずねた。)

「お前の妻達はどこだ?」ヤングは彼の周りを見回して尋ねた。

(「つまたちをよべ。わたしがあいさつしよう」)

「妻達を呼べ。私が挨拶しよう」

(「わたしがけっこんしていないのはほんとうです」ふぇりあーはこたえた。)

「私が結婚していないのは本当です」フェリアーは答えた。

(「しかしじょせいはほとんどおりません。)

「しかし女性はほとんどおりません。

(わたしいじょうにつまがひつようなにんげんがおおぜいいます。)

私以上に妻が必要な人間が大勢います。

(わたしはひとりっきりではありません。)

私は一人っきりではありません。

(わたしのこまっているところをめんどうみてくれるむすめがいます」)

私の困っているところを面倒見てくれる娘がいます」

(「わたしがおまえにいいたいのはそのむすめのことだ」)

「私がお前に言いたいのはその娘の事だ」

(もるもんきょうのしどうしゃはいった。)

モルモン教の指導者は言った。

(「おまえのむすめはゆたのはなとなるまでせいちょうした。)

「お前の娘はユタの花となるまで成長した。

(このちのたくさんのこうとくしゃのめにもこのましくうつっている」)

この地の沢山の高徳者の目にも好ましく映っている」

(じょんふぇりあーはこころのなかでうめいた。)

ジョン・フェリアーは心の中でうめいた。

(「しんじたくないが、おまえのむすめにかんしてこんなはなしがある、)

「信じたくないが、お前の娘に関してこんな話がある、

(かのじょがだれかいきょうととやくそくをかわしたというはなしだ。)

彼女がだれか異教徒と約束を交わしたという話だ。

(これはひまじんのうわさにちがいない。)

これは暇人の噂に違いない。

(せいじょせふすみすのだいじゅうさんのおきてはなんだ?)

聖ジョセフ・スミスの第十三の掟はなんだ?

(「しんのしんこうをもつすべてのじょせいをえらばれしもののひとりとけっこんさせよ。)

『真の信仰を持つ全ての女性を選ばれし者の一人と結婚させよ。

(もしいきょうととけっこんすれば、じゅうざいをおかすことになる」このおきてがあるいじょう、)

もし異教徒と結婚すれば、重罪を犯す事になる』この掟がある以上、

(せいなるきょうじょうをしんぽうするおまえが、)

聖なる教条を信奉するお前が、

(じぶんのむすめにそれをいはんさせておくことはふかのうだ」)

自分の娘にそれを違反させておくことは不可能だ」

(じょんふぇりあーはなにもいわず、しんけいしつにじょうばむちをいじっていた。)

ジョン・フェリアーは何も言わず、神経質に乗馬鞭をいじっていた。

(「このいってんで、おまえのしんこうぜんたいがためされるであろう、)

「この一点で、お前の信仰全体が試されるであろう、

(そうせいよにんかいぎできめられた。むすめはわかい。)

そう聖四人会議で決められた。娘は若い。

(われわれはかのじょにとしよりをあたえはしない。)

我々は彼女に年寄りを与えはしない。

(せんたくけんをいっさいうばうこともしないだろう。)

選択権を一切奪う事もしないだろう。

(われわれちょうろうはおおくのめうしをもっているが、)

我々長老は多くの雌牛を持っているが、

(しかしこどもたちにもあたえねばならない。)

しかし子供たちにも与えねばならない。

(すたんがーそんはむすこがひとりいる。)

スタンガーソンは息子が一人いる。

(そしてどればーにもむすこがひとりいる。)

そしてドレバーにも息子が一人いる。

(りょうほうともよろこんでおまえのむすめをうけいれるだろう。)

両方とも喜んでお前の娘を受け入れるだろう。

(どちらかをえらばせなさい。かれらはわかくてゆたかだ。)

どちらかを選ばせなさい。彼らは若くて豊かだ。

(そしてほんとうのしんこうしんがある。これにかんしておまえのいけんはどうだ?」)

そして本当の信仰心がある。これに関してお前の意見はどうだ?」

(ふぇりあーはみけんにしわをよせてすこしのあいだだまったままだった。)

フェリアーは眉間に皺を寄せて少しの間黙ったままだった。

(「じかんをいただけますか」かれはついにいった。「むすめはとてもわかい、)

「時間を頂けますか」彼は遂に言った。「娘はとても若い、

(まだけっこんできるようなねんれいではありません」)

まだ結婚できるような年齢ではありません」

(「えらぶのにいっかげつあたえよう」)

「選ぶのに一ヶ月与えよう」

(やんぐはいすからたちあがりながらいった。)

ヤングは椅子から立ち上がりながら言った。

(「そのきかんがすぎたらへんじをするのだ」)

「その期間が過ぎたら返事をするのだ」

(かれはとびらをとおりすぎようとしたとき、)

彼は扉を通り過ぎようとした時、

(まっかなかおにぎらぎらしためでふりかえった。)

真っ赤な顔にギラギラした目で振り返った。

(「よんせいじゃのめいれいにたいしてよわごしになるくらいなら、じょんふぇりあー」)

「四聖者の命令に対して弱腰になるくらいなら、ジョン・フェリアー」

(かれはどなった。「おまえとむすめはいま、)

彼は怒鳴った。「お前と娘は今、

(しえらぶらんこではっこつをさらしていたほうがよかったのだ」)

シエラ・ブランコで白骨を晒していた方がよかったのだ」

(てでおどかすようなしぐさをして、かれはとびらにせをむけた。)

手で脅かすような仕草をして、彼は扉に背を向けた。

(そしてふぇりあーのみみに、)

そしてフェリアーの耳に、

(こいしのおおいみちをさっていくざくざくというおもいあしおとがきこえた。)

小石の多い道を去って行くザクザクという重い足音が聞こえた。

(かれはこのことをどうやってむすめにきりだしたものかとしあんしながら、)

彼はこの事をどうやって娘に切り出したものかと思案しながら、

(まだひざにひじをついたまますわっていた。そのとき、)

まだ膝に肘をついたまま座っていた。その時、

(かれのてのうえにやわらかいてがおかれた。みあげると、)

彼の手の上に柔らかい手が置かれた。見上げると、

(むすめがそばにたっていた。むすめのあおざめておそれおののいたかおをひとめみて、)

娘が側に立っていた。娘の青ざめて恐れおののいた顔を一目見て、

(ふぇりあーは、むすめがさっきかわされたかいわをきいていたことがわかった。)

フェリアーは、娘がさっき交わされた会話を聞いていた事が分かった。

(「どうしようもなかったわ」むすめはちちおやのまなざしにこたえていった。)

「どうしようもなかったわ」娘は父親のまなざしに答えて言った。

(「あのこえはいえじゅうにとどろいていたもの。おとうさん、おとうさん、)

「あの声は家中にとどろいていたもの。お父さん、お父さん、

(わたしたちどうしたらいいの?」)

私達どうしたらいいの?」

(「こわがらなくてもいい」かれはむすめをひきよせ、)

「怖がらなくてもいい」彼は娘を引き寄せ、

(なだめるようにくりいろのかみをなでながらこたえた。)

なだめるように栗色の髪を撫でながら答えた。

(「なんとかしてうまいしゅだんをみつける。)

「なんとかして上手い手段を見つける。

(あのおとこにたいするあいじょうがうすれたということはないだろうな?」)

あの男に対する愛情が薄れたということはないだろうな?」

(すすりなきとかれのてをかたくにぎりしめたのがゆいいつのへんじだった。)

すすり泣きと彼の手を堅く握り締めたのが唯一の返事だった。

(「ちがうよな。もちろんそんなはずはない。)

「違うよな。もちろんそんなはずはない。

(そんなことはききたくもない。あいつはみこみのあるおとこだ。)

そんなことは聞きたくもない。あいつは見込みのある男だ。

(そしてくりすちゃんだ。かれはここのれんちゅうよりうえだ。)

そしてクリスチャンだ。彼はここの連中より上だ。

(どんないのりやせっきょうをしていてもだ。あしたねばだにしゅっぱつするいちだんがある。)

どんな祈りや説教をしていてもだ。明日ネバダに出発する一団がある。

(わたしはなんとかしてこのくきょうをしらせるてがみをかれにおくる。)

私は何とかしてこの苦境を知らせる手紙を彼に送る。

(もしわたしのめがねにかなうおとこなら、)

もし私の眼鏡にかなう男なら、

(でんぽうのようにめにもとまらぬはやさでもどってくるさ」)

電報のように目にも止まらぬ速さで戻ってくるさ」

(るーしーはなみだをながしながらも、ちちのせつめいにこえをだしてわらった。)

ルーシーは涙を流しながらも、父の説明に声を出して笑った。

(「かれがきたら、わたしたちにとっていちばんよいほうほうを)

「彼が来たら、私たちにとって一番良い方法を

(ていあんしてくれるでしょう。)

提案してくれるでしょう。

(でもわたしがおそれているのはおとうさんのことなの。きいたことがあるの、)

でも私が恐れているのはお父さんのことなの。聞いた事があるの、

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