緋のエチュード 34
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問題文
(「ほしょうのきょうかいせんをこえているところだ。そくどがすべてだ。いそげ!」)
「歩哨の境界線を越えているところだ。速度がすべてだ。急げ!」
(かんせんどうろにでると、かれらのあしどりははやくなった。いちどだけ、)
幹線道路に出ると、彼らの足取りは速くなった。一度だけ、
(だれかとであったが、なんとかはたけのなかににげこみもくげきされなかった。)
誰かと出会ったが、なんとか畑の中に逃げ込み目撃されなかった。
(まちにつくとちゅう、かりうどはわきにそれ、やまにむかうけわしくせまいみちにはいった。)
街に着く途中、狩人は脇にそれ、山に向かう険しく狭い道に入った。
(くろいごつごつしたさんちょうがふたつ、よぞらにたかくそびえたっていた。)
黒いゴツゴツした山頂が二つ、夜空に高くそびえ立っていた。
(そのさんかんのけいこくが、うまをつないであるいーぐるけいこくだった。)
その山間の渓谷が、馬をつないであるイーグル渓谷だった。
(じぇふぁーそんほーぷはてきかくなちょっかんりょくで、きょせきのあいだをぬけ、)
ジェファーソン・ホープは的確な直観力で、巨石の間を抜け、
(ひあがったかしょうをとおり、いわにかくれておくまったいっかくにたどりつくまで、)
干上がった河床を通り、岩に隠れて奥まった一角にたどり着くまで、
(みちをまちがえなかった。ちゅうじつなどうぶつはそこにつながれていた。)
道を間違えなかった。忠実な動物はそこに繋がれていた。
(じょせいをろばにのせ、かねのふくろをもったふぇりあーろうじんをうまにのせると、)
女性をロバに乗せ、金の袋を持ったフェリアー老人を馬に乗せると、
(じぇふぁーそんは、もういっとうのうまにのって)
ジェファーソンは、もう一頭の馬に乗って
(きりたったきけんなみちをせんどうした。)
切り立った危険な道を先導した。
(そこは、きばをむくしぜんとたいじするのになれていないにんげんにとっては、)
そこは、牙を剥く自然と対峙するのに慣れていない人間にとっては、
(めまいがするようなみちだった。かたがわは、)
めまいがするような道だった。片側は、
(せんふぃーといじょうのそびえたつぜっぺきだ。くろく、きびしく、いあつてきで、)
千フィート以上のそびえたつ絶壁だ。黒く、厳しく、威圧的で、
(ごつごつしたいわはだにみえるながいげんぶがんのはしらは、)
ゴツゴツした岩肌に見える長い玄武岩の柱は、
(せきかしたかいぶつのあばらぼねのようだった。はんたいがわは、)
石化した怪物のあばら骨のようだった。反対側は、
(きょせきとがれきがごちゃまぜになりぜんしんをはばんでいた。)
巨石と瓦礫がごちゃ混ぜになり前進を阻んでいた。
(そのあいだにふきそくなみちがあった。ばしょによってみちはひじょうにほそくなり、)
その間に不規則な道があった。場所によって道は非常に細くなり、
(かれらはいちれつじゅうたいですすまねばならなかった。)
彼らは一列縦隊で進まねばならなかった。
(そしてひじょうにあれたみちのために、)
そして非常に荒れた道のために、
(そこをこえていけるのはじゅくれんののりてだけだった。しかし、)
そこを越えていけるのは熟練の乗り手だけだった。しかし、
(あらゆるきけんとこんなんにもかかわらず、とうぼうしゃたちのこころはあかるかった。)
あらゆる危険と困難にも関わらず、逃亡者達の心は明るかった。
(いっぽすすむごとに、かれらと、)
一歩進むごとに、彼らと、
(かれらがだっしゅつしたきょうふのせんせいこくのきょりはましていった。)
彼らが脱出した恐怖の専制国の距離は増して行った。
(しかしまもなくかれらはじぶんたちが)
しかしまもなく彼らは自分たちが
(まだせいじゃたちのしはいけんのなかにいるしょうことであった。)
まだ聖者たちの支配権の中にいる証拠と出会った。
(かれらはもっともあらあらしくこうはいしたみちにさしかかっていた。そのとき、)
彼らは最も荒々しく荒廃した道に差し掛かっていた。その時、
(じょせいがおどろいてさけびごえをあげ、ずじょうをゆびさした。)
女性が驚いて叫び声をあげ、頭上を指差した。
(みちをかんしできるばしょにある、)
道を監視できる場所にある、
(くっきりとそらにむかってそびえたつくろいいわのうえに、)
くっきりと空に向かってそびえ立つ黒い岩の上に、
(ひとりのほしょうがたっていた。かれらがきづくとどうじに、)
一人の歩哨が立っていた。彼らが気づくと同時に、
(ほしょうもかれらをはっけんした。そしてぐんたいしきの「すいか」が、)
歩哨も彼らを発見した。そして軍隊式の「誰何」が、
(しずかなけいこくにひびきわたった。)
静かな渓谷に響き渡った。
(「ねばだにいくたびのものだ」)
「ネバダに行く旅の者だ」
(じぇふぁーそんほーぷがくらにぶらさげたらいふるにてをおいていった。)
ジェファーソン・ホープが鞍にぶら下げたライフルに手を置いて言った。
(みはりがじゅうをてに、)
見張りが銃を手に、
(かれらのへんとうをうたがうかのようにのぞきおろしているのがみえた。)
彼らの返答を疑うかのように覗き下ろしているのが見えた。
(「だれのゆるしをえて?」かれはたずねた。)
「誰の許しを得て?」彼は尋ねた。
(「よんちょうろうだ」ふぇりあーがこたえた。かれはもるもんきょうととしてのけいけんで、)
「四長老だ」フェリアーが答えた。彼はモルモン教徒としての経験で、
(ひきあいにだせるさいこうのけんいはこれだとしっていた。)
引き合いに出せる最高の権威はこれだと知っていた。
(「きゅうからなな」ほしょうがさけんだ。)
「九から七」歩哨が叫んだ。
(「ななからご」すぐにじぇふぁーそんほーぷが)
「七から五」すぐにジェファーソン・ホープが
(にわでみみにしたおうとうをおもいだしておうとうした。)
庭で耳にした応答を思い出して応答した。
(「とおれ、かみがともにあらんことを」ずじょうのおとこがいった。)
「通れ、神が共にあらんことを」頭上の男が言った。
(ほしょうのもちばをすぎるとみちはひろがっていた。)
歩哨の持ち場を過ぎると道は広がっていた。
(そしてうまはしだいにかけることができるようになった。ふりかえると、)
そして馬は次第に駆けることが出来るようになった。振り返ると、
(みはりのおとこがじゅうによりかかっているすがたがめにはいった。)
見張りの男が銃に寄りかかっている姿が目に入った。
(そしてかれらはえらばれしたみのきょうかいてんをつうかし、)
そして彼らは選ばれし民の境界点を通過し、
(めのまえにじゆうがひろがっていることをしった。)
目の前に自由が広がっていることを知った。
(だいごしょうふくしゅうのてんしたち)
第五章 復讐の天使達
(かれらはひとばんじゅう、ふくざつなけいこくをすぎ、)
彼らは一晩中、複雑な渓谷を過ぎ、
(いわがごろごろするふきそくなみちをこえていった。なんどとなくみちにまよった。)
岩がごろごろする不規則な道を越えていった。何度となく道に迷った。
(しかしほーぷがやまにせいつうしていたおかげで、)
しかしホープが山に精通していたおかげで、
(ただしいみちにもどることができた。よがあけたとき、)
正しい道に戻る事ができた。夜が明けた時、
(あらあらしいがすばらしいこうけいがもくぜんにあらわれた。みまわすと、)
荒々しいが素晴らしい光景が目前に現われた。見回すと、
(ゆきをいただいたきょだいなさんちょうが、)
雪を頂いた巨大な山頂が、
(すいへいせんのかなたからおたがいのやまかたをのぞきこむようにとりかこんでいた。)
水平線の彼方からお互いの山肩を覗き込むように取り囲んでいた。
(かれらのりょうがわにあるいわだらけのどてはひじょうにけわしく、)
彼らの両側にある岩だらけの土手は非常に険しく、
(からまつもまつもいただきからつるされたようにみえ、)
唐松も松も頂から吊るされたように見え、
(ちょっととっぷうがふけばかれらのずじょうからころげおちてきそうだった。)
ちょっと突風が吹けば彼らの頭上から転げ落ちてきそうだった。
(これはまったくこんきょのないおそれではなかった。)
これはまったく根拠のない恐れではなかった。
(ふもうのたににはにたようなけいかでおちたきやきょせきが、)
不毛の谷には似たような経過で落ちた木や巨石が、
(ぶあつくたいせきしていたのだ。かれらがとおりすぎたときでさえ、)
分厚く堆積していたのだ。彼らが通り過ぎた時でさえ、
(ひとつのきょせきがものすごいおとをたててころげおち、)
一つの巨石が物凄い音を立てて転げ落ち、
(しずかなきょうこくにこだまがひびきわたったので、うまがおびえてかけだしたほどだ。)
静かな峡谷に木霊が響き渡ったので、馬が怯えて駆け出したほどだ。
(ひがしのすいへいせんからゆっくりとたいようがのぼり、)
東の水平線からゆっくりと太陽が昇り、
(そうだいなさんみゃくのいただきがしゅくさいのしゃんでりあのように、)
壮大な山脈の頂が祝祭のシャンデリアのように、
(ひとつずつてらしだされ、やがてぜんたいがあかくかがやいた。)
一つずつ照らし出され、やがて全体が赤く輝いた。
(そうかんなけしきにさんにんのとうぼうしゃのこころはふるいたち、あらたなかつりょくがわいてきた。)
壮観な景色に三人の逃亡者の心は奮い立ち、新たな活力がわいてきた。
(かれらは、ほんりゅうがけいこくをあらうばしょでひとやすみし、)
彼らは、奔流が渓谷を洗う場所で一休みし、
(あわててちょうしょくをたべるあいだにうまにみずをあたえた。)
慌てて朝食を食べる間に馬に水を与えた。
(るーしーとちちはもうすこしながくやすんでいたかったかもしれないが、)
ルーシーと父はもう少し長く休んでいたかったかもしれないが、
(じぇふぁーそんほーぷはようしゃしなかった。「このじこくまでに、)
ジェファーソン・ホープは容赦しなかった。「この時刻までに、
(てきはおれらのあとをおいはじめているはずだ」かれはいった。)
敵は俺らの後を追い始めているはずだ」彼は言った。
(「すべてこちらのそくどしだいだ。かーそんであんぜんをかくほすれば、)
「すべてこちらの速度次第だ。カーソンで安全を確保すれば、
(のこりのじんせいぜんぶやすむこともできる」)
残りの人生全部休む事も出来る」
(そのひいちにちじゅう、かれらはけいこくをこえるためにふんとうした。そしてよるまでに、)
その日一日中、彼らは渓谷を越えるために奮闘した。そして夜までに、
(てきを30まいるいじょうはなしたとけいさんした。よるがくると、)
敵を30マイル以上離したと計算した。夜が来ると、
(つめたいかぜをいくらかふせいでくれるはりだしたいわのしたをえらび、そこで、)
冷たい風をいくらか防いでくれる張り出した岩の下を選び、そこで、
(みをよせあってだんをとり、すうじかんのすいみんをとった。しかしよあけまえ、)
身を寄せ合って暖をとり、数時間の睡眠をとった。しかし夜明け前、
(かれらはおきだしてもういちどぜんしんをはじめた。)
彼らは起き出してもう一度前進を始めた。
(あとをおってくるもののけはいはなく、)
後を追って来る者の気配はなく、
(じぇふぁーそんほーぷはかれらにてきいをもった)
ジェファーソン・ホープは彼らに敵意を持った
(おそろしいそしきのてからかんぜんにのがれたとかんがえはじめていた。かれは、)
恐ろしい組織の手から完全に逃れたと考え始めていた。彼は、
(てつのつめがどれほどとおくまでおよび、)
鉄の爪がどれほど遠くまで及び、
(どれほどのはやさでそれがかれらをつかんでおしつぶすかを、)
どれほどの速さでそれが彼らをつかんで押しつぶすかを、
(ほとんどしらなかった。)
ほとんど知らなかった。
(とうひこうのふつかめのひるごろになると、とぼしいしょくりょうがつきはじめた。)
逃避行の二日目の昼頃になると、乏しい食料が尽き始めた。
(しかしかりうどにとって、これはしんぱいすることではなかった。)
しかし狩人にとって、これは心配することではなかった。
(なぜならやまにはしゅりょうできるえものがいて、)
なぜなら山には狩猟できる獲物がいて、
(しょくりょうをえるためにはいぜんからしばしばじゅうにたよるひつようがあったからだ。)
食料を得るためには以前からしばしば銃に頼る必要があったからだ。
(まわりがかこわれてひとめにつかないばしょをえらぶと、)
周りが囲われて人目につかない場所を選ぶと、
(かれはかれきをなんぼんかつみかさね、)
彼は枯れ木を何本か積み重ね、
(おやこがそれにあたってだんをとれるようにあかあかとたきびをおこした。)
親子がそれにあたって暖を取れるように赤々と焚き火を起こした。
(かれらはいまや、ほとんどかいばつごせんふぃーとちかくにまでたっしていたので、)
彼らは今や、ほとんど海抜五千フィート近くにまで達していたので、
(かぜはつめたくみをきるようだった。うまをつなぎ、るーしーにわかれをつげ、)
風は冷たく身を切るようだった。馬を繋ぎ、ルーシーに別れを告げ、
(かれはじゅうをかたにかけ、なにかえものをみつけようとたんさくにでかけた。)
彼は銃を肩にかけ、何か獲物を見つけようと探索に出かけた。
(ふりかえると、)
振り返ると、
(ろうじんとわかいじょせいがたきびのほのおにむかってしゃがんでいるのがみえた。)
老人と若い女性が焚き火の炎に向かってしゃがんでいるのが見えた。