失踪
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問題文
(ねれないので、さいどとうじょう。)
寝れないので、再度登場。
(ししょうとのはなしをまだいくつかかくつもりだが、おれがとちゅうであきるかもしれんし、)
師匠との話をまだいくつか書くつもりだが、俺が途中で飽きるかもしれんし、
(たたかれてへこんでとめるかもしれないのでさきにいちれんのできごとのおちである、)
叩かれてへこんで止めるかもしれないので先に一連の出来事の落ちである、
(ししょうのしっそうについてかいておく。)
師匠の失踪について書いておく。
(おれがさんかいせいのとき、ししょうはそのだいがくの)
俺が3回生の時、師匠はその大学の
(としょかんししょのしょくについていた。)
図書館司書の職についていた。
(そのころししょうはかなりせいしんてきにまいってて、よく「そこにおんながいる!」とか)
そのころ師匠はかなり精神的に参ってて、よく「そこに女がいる!」とか
(いってはなにもないくうかんにびくびくしていた。)
言っては何も無い空間にビクビクしていた。
(おれはなにもかんじないが、おれはししょうよりれいかんがないのでししょうには)
俺は何も感じないが、俺は師匠より霊感がないので師匠には
(みえるんだとおもっていっしょにびびっていた。)
見えるんだと思って一緒にビビっていた。
(へんだとおもいはじめたのは、さんかいせいのあきごろ。)
変だと思いはじめたのは、3回生の秋頃。
(ししょうとはめったにあわなくなっていたが、あるときがくしょくでいっしょになって)
師匠とはめったに会わなくなっていたが、あるとき学食で一緒になって
(おなじてーぶるについたとき「うしろのせき、なんにんみえる?」といいだした。)
同じテーブルについたとき「後ろの席、何人見える?」と言いだした。
(よるくじまえでがくしょくはがらがら。)
夜九時前で学食はガラガラ。
(うしろのてーぶるにもだれもすわっていなかった。)
後ろのテーブルにも誰も座っていなかった。
(「なにかみえるんすか?」というと「いるだろう?なんにんいる?」と)
「何かみえるんすか?」というと「いるだろう? 何人いる?」と
(がたがたふるえだした。)
ガタガタ震えだした。
(みみなりもないし、でるときどくとくのおかんもない。)
耳鳴りもないし、出る時独特の悪寒もない。
(おれはそのときおもった。)
俺はその時思った。
(つかれてるとおもいこんでるのでは・・・・・)
憑かれてると思いこんでるのでは・・・・・
(おれはおもいついて「だいじょうぶですよ。なにもいませんよ」というと)
俺は思いついて「大丈夫ですよ。なにもいませんよ」というと
(「そうか。そうだよね」とあんしんしたようなかおをしたのだ。)
「そうか。そうだよね」と安心したような顔をしたのだ。
(かくしんした。)
確信した。
(れいはここにいない。)
霊はここにいない。
(ししょうのあたまにすみついてるのだ。)
師匠の頭に住みついてるのだ。
(「はっきょう」ということばがうかんでおれはかなしくなり、むしょうになきたかった。)
『発狂』という言葉が浮んで俺は悲しくなり、無性に泣きたかった。
(ひゃくわものがたりもしたし、きもだめしもしまくった。)
百話物語りもしたし、肝試しもしまくった。
(ばちあたりなこともいっぱいしたし、こうれいじっけんまでした。)
バチ当たりなこともいっぱいしたし、降霊実験までした。
(いいかげんとりつかれてもおかしくない。)
いいかげん取り憑かれてもおかしくない。
(でもたぶんししょうのはっきょうのりゆうはちがう。)
でも多分師匠の発狂の理由は違う。
(しょくじをしたみっかごにししょうはしっそうした。)
食事をした3日後に師匠は失踪した。
(さがすなというおきてがみがあったので、うごけなかった。)
探すなという置手紙があったので、動けなかった。
(ししょうのかていはふくざつだったらしく、だいがくかられんらくがいっておばとかいうひとが)
師匠の家庭は複雑だったらしく、大学から連絡がいって叔母とかいう人が
(あぱーとをせいりしにきた。)
アパートを整理しに来た。
(すごいかんじわるいばばあで、しんゆうだったといってもすぐおいだされた。)
すごい感じ悪いババアで、親友だったと言ってもすぐ追い出された。
(ししょうのしっそうまえのようすくらいきくだろうに。)
師匠の失踪前の様子くらい聞くだろうに。
(けっきょくそれっきり。)
結局それっきり。
(しかしおれなりにおもうところがある。)
しかし俺なりに思うところがある。
(おれがだいがくにはいったころ、まことしやかにながれていたうわさ。)
俺が大学に入った頃、まことしやかに流れていた噂。
(「あいつはひところしてる」)
「あいつは人殺してる」
(じょうだんめかしてせんぱいたちがいっていたが、あれはたぶんしんじつだ。)
冗談めかして先輩たちが言っていたが、あれは多分真実だ。
(ししょうはよくようといっていたことがある。)
師匠はよく酔うと言っていたことがある。
(「したいをどこにうめるか。それがすべてだ」)
「死体をどこに埋めるか。それがすべてだ」
(このてのじょーくはつっこまないというあんもくのるーるがあったが)
この手のジョークは突っ込まないという暗黙のルールがあったが
(そんなはなしをするときのめがやたらこわかった。)
そんな話をするときの目がやたら怖かった。
(そしていまにしておもい、ぞっとするのだがししょうのくるまで)
そして今にして思い、ぞっとするのだが師匠の車で
(めぐったかずかずのしんれいすぽっと。)
めぐった数々の心霊スポット。
(なかでもあるやま(みなごろしのいえというめいしょ)にいったときこんなことをいっていた。)
中でもある山(皆殺しの家という名所)に行ったときこんなことを言っていた。
(「ふとくていたすうのにんげんがしんや、ひとをしのんでこうどうする。そしてかいきなうわさ。)
「不特定多数の人間が深夜、人を忍んで行動する。そして怪奇な噂。
(えんこんでなければ、こじんはとくていできない」)
怨恨でなければ、個人は特定できない」
(きいたときはなにをいっているのかわからなかったが、たぶんししょうはしんれいすぽっとを)
聞いた時はなにをいっているのか分らなかったが、多分師匠は心霊スポットを
(めぐりながらうめるばしょをさがしていたのではないだろうか。)
巡りながら埋める場所を探していたのではないだろうか。
(おれがなによりぞっとするのは、おれがじょしゅせきにのっているときあのくるまのとらんくの)
俺がなによりぞっとするのは、俺が助手席に乗っているときあの車のトランクの
(なかにそれがあったなら・・・・・・)
なかにそれがあったなら・・・・・・
(いまおもうとあのひとについてはわからないことだらけだ。)
今思うとあの人についてはわからないことだらけだ。
(ただ「みえる」にんげんでもこころのなかにすくうやみにはかてなかった。)
ただ「見える」人間でも心の中に巣食う闇には勝てなかった。
(せいかくがかわった、あのそうめんじけんのころからししょうはじょじょにくるいはじめて)
性格が変わった、あのそうめん事件のころから師匠は徐々に狂いはじめて
(いたのではないだろうか。)
いたのではないだろうか。
(ししょうのわすれられないことばがある。)
師匠の忘れられない言葉がある。
(おれがはじめてほんかくてきなしんれいすぽっとにつれていかれ、)
俺がはじめて本格的な心霊スポットに連れて行かれ、
(びびりきっているときししょうがこういった。)
ビビリきっているとき師匠がこういった。
(「こんなくらやみのどこがこわいんだ。めをつぶってみろ。)
「こんな暗闇のどこが怖いんだ。目をつぶってみろ。
(それがこのよでもっともふかいやみだ」)
それがこの世で最も深い闇だ」