人間が死んだらどこへ行くと思う?

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってしまっていたので、作成しました。

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問題文

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(だいがくじだい、よくさんぽをしたこうえんにははとがたくさんいた。)

大学時代、よく散歩をした公園にはハトがたくさんいた。

(ほそうされたみちに、いったいなにがそんなにおちているのか、)

舗装された道に、一体なにがそんなに落ちているのか、

(やたらあるきまわってはじめんをくちばしでつついていく。)

やたら歩き回っては地面をくちばしでつついて行く。

(なかでも、よくおれがこしかけてぼーっとしていたべんちのちかくに、)

なかでも、よく俺が腰掛けてぼーっとしていたベンチの近くに、

(いつもはとがむれをなしているいっかくがあった。なんわものはとが)

いつもハトが群れをなしている一角があった。何羽ものハトが

(しきりにじめんをつついては、なにかをついばんでいる。)

しきりに地面をつついては、何かをついばんでいる。

((このべんちにすわって、べんとうののこりかすでもなげているひとでもいるんだろう))

(このベンチに座って、弁当の残りカスでも投げている人でもいるんだろう)

(とおもっていた。にかいせいのはる。さーくるのしんにゅうせいかんげいこんぱをかね、)

と思っていた。2回生の春。サークルの新入生歓迎コンパを兼ね、

(そのこうえんのしばふにじんどってはなみをした。きれいなさくらがさいていた。)

その公園の芝生に陣取って花見をした。綺麗な桜が咲いていた。

(べつにへんなさーくるではなかったが、ひとりおかるとのかみのようなせんぱいがいて、)

別に変なサークルではなかったが、ひとりオカルトの神のような先輩がいて、

(おれはししょうとよんでしたったりみくだしたりしていた。)

俺は師匠と呼んで慕ったり見下したりしていた。

(そのししょうがめずらしくよっぱらって、だうんしていた。だれかがびーるかたてに)

その師匠がめずらしく酔っ払って、ダウンしていた。誰かがビール片手に

(「さいしょにさくらのしたにはしたいがうまってるっていったのは、)

「最初に桜の下には死体が埋まってるって言ったのは、

(だれなんだろうなあ」といった。するとししょうがむくっとおきあがって、)

誰なんだろうなあ」といった。すると師匠がムクっと起き上がって、

(「さくらのしたにうまってるしあわせなやつばかりとはかぎるまい」と、)

「桜の下に埋まってる幸せなヤツばかりとは限るまい」と、

(ろれつのまわらないしたでまくしたてた。)

ろれつの回らない舌でまくしたてた。

(すぐにほかのせんぱいたちがししょうをとりおさえた。)

すぐに他の先輩たちが師匠を取り押さえた。

(ぼうそうさせると、しんにゅうせいがひくからだ。おれはすこしざんねんだった。)

暴走させると、新入生がヒクからだ。俺は少し残念だった。

(「ちょっとやすませてきますよ」といって、いつもすわっているべんちまで)

「ちょっと休ませてきますよ」と言って、いつも座っているベンチまで

(つれていき、よこにならせた。しばらくしてから、みずをもってとなりにこしかけた。)

連れて行き、横にならせた。しばらくしてから、水を持って隣に腰掛けた。

など

(「さっきはなにをいおうとしたんです?」ししょうはあらいいきをはきながら、)

「さっきはなにを言おうとしたんです?」師匠は荒い息を吐きながら、

(「そこ、はとがいるだろ」とゆびをさした。)

「そこ、ハトがいるだろ」と指をさした。

(ふとみると、すでにひがおちてくらいこうえんのなかにはとらしいかげがうごめいていた。)

ふと見ると、すでに日が落ちて暗い公園の中にハトらしい影がうごめいていた。

(いっせいにはとたちはかおをあげて、ちいさなふたつのひかりがたくさんこちらをみた。)

一斉にハトたちは顔を上げて、小さなふたつの光がたくさんこちらを見た。

(「おまえにだいじなことをおしえてやろう」よっているせいか、)

「おまえに大事なことを教えてやろう」酔っているせいか、

(ししょうがいつもとちがうくちょうでおれにはなしかけた。おもわずみがまえる。)

師匠がいつもと違う口調で俺に話しかけた。思わず身構える。

(「いや、まえにもいったかな・・・にんげんがしんだらどこへいくとおもう?」)

「いや、前にも言ったかな・・・人間が死んだらどこへ行くと思う?」

(「はぁ?あのよですか」ししょうはふかいためいきをついた。)

「はぁ?あの世ですか」師匠は深いため息をついた。

(「どこにもいけないんだよ。なくなるか、そこにあるかだ」)

「どこにも行けないんだよ。無くなるか、そこに在るかだ」

(よくわからない。ししょうはいろいろなことをおしえてくれはするが、)

よくわからない。師匠はいろいろなことを教えてくれはするが、

(こんなてつがくてきなというか、しゅうきょうがかったことをいうのはめずらしかった。)

こんな哲学的なというか、宗教がかったことをいうのは珍しかった。

(「だから、となりにいるんだ」にんげんにとってのゆうれいとか、)

「だから、隣にいるんだ」人間にとっての幽霊とか、

(そういうもののことをいっているのだときづくまですこしじかんがかかった。)

そういうもののことを言っているのだと気づくまで少し時間がかかった。

(「そこではとにくわれてるやつだって、なくなるまであって、)

「そこでハトに食われてるヤツだって、無くなるまで在って、

(それで、おわりだ」え?めをこすったが、なにもみえない。)

それで、終わりだ」え?目をこすったが、なにも見えない。

(「すごくよわいやつだ。もうきえかかってる。はとはなにをくってるか)

「すごく弱いやつだ。もう消えかかってる。ハトはなにを食ってるか

(わかってないけど、くわれてるほうは「くわれたら、なくなる」っておもってる。)

分かってないけど、食われてる方は『食われたら、無くなる』って思ってる。

(だからきえる」「わかりません」たいていのとりはふつうにひとのれいこんが)

だから消える」「わかりません」たいていの鳥はふつうにヒトの霊魂が

(みえるんだぜ、とししょうはつぶやいた。いつもはとがあつまっていたところで、)

見えるんだぜ、と師匠はつぶやいた。いつもハトが集まっていたところで、

(むかしひとがしんだというんだろうか。「ほんのすこしはなれてるだけなのになあ」)

むかし人が死んだと言うんだろうか。「ほんの少し離れてるだけなのになあ」

(はとにくわれるより、さくらにくわれたほうがましだ。)

ハトに食われるより、桜に食われた方がマシだ。

(さけくさいためいきをつきながらそういったきり、ししょうはだまった。)

酒くさいため息をつきながらそう言ったきり、師匠は黙った。

(しばふのむこうではばかさわぎがつづいている。)

芝生の向こうではバカ騒ぎが続いている。

(「ししょうはじぶんがしぬときのことをかんがえたことがありますか」)

「師匠は自分が死ぬときのことを考えたことがありますか」

(いつもききたくて、なんとなくきけなかったことをくちにした。)

いつも聞きたくて、なんとなく聞けなかったことを口にした。

(「おんなじさ。とんでもないあくりょうになって、なくなるまであって、)

「おんなじさ。とんでもない悪霊になって、無くなるまで在って、

(それで、おわり」わんすてっぷおおかったが、おれはながした。)

それで、終わり」ワンステップ多かったが、俺は流した。

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