廃病院の足音

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってしまっていたので、作成しました。

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問題文

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(こどものころ、ばったのくびをもいだことがある。)

子どものころ、バッタの首をもいだことがある。

(もがれたくびはきょろきょろとしょっかくをうごかしていたが、どうたいのほうも)

もがれた首はキョロキョロと触覚を動かしていたが、胴体のほうも

(ぴょんぴょんととびまわりつづけた。こわくなったおれはくびをほうりだして)

ピョンピョンと跳び回り続けた。怖くなった俺は首を放り出して

(にげだしてしまった。そのきおくがあるしゅのとらうまになっていたが、)

逃げだしてしまった。その記憶がある種のトラウマになっていたが、

(だいがくじだいにそのことをおもいだすようなできごとがあった。)

大学時代にそのことを思い出すような出来事があった。

(こわがりのくせにこわいものみたさがこうじて、よくしんれいすぽっとにいった。)

怖がりのくせに怖いもの見たさが高じて、よく心霊スポットに行った。

(おれにおかるとをてほどきしたせんぱいがいて、おれはししょうとよび、そんけいしたり)

俺にオカルトを手ほどきした先輩がいて、俺は師匠と呼び、尊敬したり

(けなしたりしていた。だいがくいっかいせいのあきごろ、そのししょうとそうとうやばいという)

貶したりしていた。大学1回生の秋ごろ、その師匠と相当やばいという

(うわさのはいおくにしのびこんだときのこと。もとはびょういんだったというそこには、)

噂の廃屋に忍び込んだ時のこと。もとは病院だったというそこには、

(よなかにだれもいないはずのろうかであしおとがきこえる、といういつわがあった。)

夜中に誰もいないはずの廊下で足音が聞こえる、という逸話があった。

(そのはなしをしこんできたおれは、ししょうがまんぞくするにちがいないと、たのしみだった。)

その話を仕込んできた俺は、師匠が満足するに違いないと、楽しみだった。

(しかし「だれもいないはずはないよ。きいてるひとがいるんだから」)

しかし「誰もいないはずはないよ。聞いてる人がいるんだから」

(そんなもりのなかできをきりたおすはなしのようなあげあしとりをされて、すこしむっとした。)

そんな森の中で木を切り倒す話のような揚足取りをされて、少しムッとした。

(しかるにかつーん、かつーんというおとがほんとにひびきはじめたときには、)

しかるにカツーン、カツーンという音がほんとに響き始めた時には、

(こわいというより「やった」というかんじだった。ししょうのれいかんのつよさは)

怖いというより「やった」という感じだった。師匠の霊感の強さは

(はんぱではないので、「でる」といううわさのばしょならまずかくじつにでる。)

ハンパではないので、「出る」という噂の場所ならまず確実に出る。

(それどころかひのないところにまでけむりがたつほどだ。)

それどころか火のない所にまで煙が立つほどだ。

(「しっ」いきをひそめてししょうとおれは、たしょうしつとおぼしきびょうしつにみをかくした。)

「しっ」息を潜めて師匠と俺は、多床室と思しき病室に身を隠した。

(まっくらなろうかのおくからあしおとがきんいつなりずむでちかづいてくる。)

真っ暗な廊下の奥から足音が均一なリズムで近づいてくる。

(「こどもだ」とししょうがささやいた。)

「こどもだ」と師匠が囁いた。

など

(ほはばでわかる。とつづける。だれもいないのにあしおとがきこえる、)

歩幅で分かる。と続ける。誰もいないのに足音が聞こえる、

(なんていうかいきげんしょうにあって、そのあしおとからあしのもちぬしをすいそくする)

なんていう怪奇現象に会って、その足音から足の持ち主を推測する

(なんていうはっそうは、さすがというべきか。やがて、ふたりがかくれている)

なんていう発想は、さすがというべきか。やがて、二人が隠れている

(びょうしつのまえをあしおとが。あしおとだけが、とおりすぎた。)

病室の前を足音が。足音だけが、通り過ぎた。

(もちろんうごくもののかげも、けはいさえもなかった。ほんとだった。)

もちろん動くものの影も、気配さえもなかった。ほんとだった。

(ひざはがくがくふるえているが、のりきでなかったししょうにかったような)

膝はガクガク震えているが、乗り気でなかった師匠に勝ったような

(きになって、うれしかった。ところがかすかなつきあかりをたよりに)

気になって、嬉しかった。ところが微かな月明かりを頼りに

(ししょうのかおをのぞきこむと、そうはくになっている。「なに、あれ」)

師匠の顔を覗き込むと、蒼白になっている。「なに、あれ」

(おれはしんぞうがとまりそうになった。ししょうがびびっている。はじめてみた。)

俺は心臓が止まりそうになった。師匠がビビッている。はじめてみた。

(おれがどんなやばいしんれいすぽっとにでもいけるのはよこでししょうが)

俺がどんなヤバイ心霊スポットにでも行けるのは横で師匠が

(たいぜんとしてるからだ。どんだけやばいんだよ!おれはないた。「にげよう」)

泰然としてるからだ。どんだけやばいんだよ!俺は泣いた。「逃げよう」

(というので、いちもにもなくにげた。はいおくからでるまで、)

というので、一も二もなく逃げた。廃屋から出るまで、

(あしおとがついてきてるようなきがして、いきたここちがしなかった。)

足音がついて来てるような気がして、生きた心地がしなかった。

(ようやくそとにでて、ししょうのあいしゃにのりこむ。「いったいなんですか」)

ようやく外にでて、師匠の愛車に乗り込む。「一体なんですか」

(「わからない」いわく、あしおとしかきこえなかったと。)

「わからない」曰く、足音しか聞こえなかったと。

(いや、もともとそういうすぽっとだからといったが、)

いや、もともとそういうスポットだからと言ったが、

(「じぶんにみえないはずはない」といいはるのだ。あれだけはっきりしたおとで)

「自分に見えないはずはない」と言い張るのだ。あれだけはっきりした音で

(にんげんのちかくにはたらきかけるれいが、ほんとうにおとだけで)

人間の知覚に働きかける霊が、ほんとうに音だけで

(そんざいしてるはずはないというのである。おれは、(このひとそこまでじぶんのれいかんを)

存在してるはずはないというのである。俺は、(この人そこまで自分の霊感を

(じふしていたのか)というおどろきがあった。)

自負していたのか)という驚きがあった。

(はんとしほどたって、ししょうがいった。)

半年ほどたって、師匠が言った。

(「あのはいびょういんのあしおと、おぼえてる?」こうふんしているようだ。)

「あの廃病院の足音、覚えてる?」興奮しているようだ。

(「なぞがとけたよ。たぶん」ずっときになっていて、すこしづつ)

「謎が解けたよ。たぶん」ずっと気になっていて、少しづつ

(あのできごとのはいけいをしらべていたらしい。「げんしだとおもう」という。)

あの出来事の背景を調べていたらしい。「幻肢だと思う」と言う。

(あのびょういんにむかし、りょうあしをせつだんするようなじこにあったおんなのこが)

あの病院に昔、両足を切断するような事故にあった女の子が

(にゅういんしていたらしい。そのこはげんししょうじょうをずっとうったえていたそうだ。)

入院していたらしい。その子は幻肢症状をずっと訴えていたそうだ。

(なくなったはずのあしがかゆい、とかいうあれだ。そのまぼろしのあしが、いまもあのびょういんに)

なくなったはずの足が痒い、とかいうあれだ。その幻の足が、今もあの病院に

(さまよっているというのだ。おれはくびをもがれたばったをおもいだした。)

さまよっているというのだ。俺は首をもがれたバッタを思い出した。

(「こんなのぼくもはじめてだ。おかるとはおくがふかい」)

「こんなの僕もはじめてだ。オカルトは奥が深い」

(ししょうはやけにうれしそうだった。おれはしんじられないきぶんだったが、)

師匠はやけに嬉しそうだった。俺は信じられない気分だったが、

(「そのこはそのあとどうなったんです?」ときくと、)

「その子はその後どうなったんです?」と聞くと、

(ししょうはじょうだんのようなくちょうでじょうだんとしかおもえないことをいった。)

師匠は冗談のような口調で冗談としか思えないことを言った。

(「きのうころしてきた」)

「昨日殺してきた」

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