鍵の行方
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ちゅけ | 5615 | A | 5.7 | 97.7% | 637.7 | 3665 | 84 | 66 | 2024/11/12 |
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問題文
(だいがくにかいせいのなつやすみ。)
大学2回生の夏休み。
(おかるとまにあのせんぱいに「おもしろいものがあるから、おいで」といわれた。)
オカルトマニアの先輩に「面白いものがあるから、おいで」といわれた。
(ししょうとあおぐそのじんぶつにそんなことをいわれたらいかざるをえない。)
師匠と仰ぐその人物にそんなことを言われたら行かざるを得ない。
(のこのこといえにむかった。ししょうのげしゅくはぼろいあぱーとのいっかいで、)
ノコノコと家に向かった。師匠の下宿はぼろいアパートの一階で、
(あいかわらずかぎをかけていない。どあをのっくしてはいると、)
あいかわらず鍵をかけていない。ドアをノックして入ると、
(たたみのうえにすわりこんでなにかをこねくりまわしている。といれっとぺーぱーくらいの)
畳の上に座り込んでなにかをこねくり回している。トイレットペーパーくらいの
(おおきさのえんとうけい。きんぞくせいのはこのようだ。ひょうめんにさびがういている。)
大きさの円筒形。金属製の箱のようだ。表面に錆が浮いている。
(「そのはこがおもしろいんですか」ときくと、「あけたらしぬらしい」)
「その箱が面白いんですか」と聞くと、「開けたら死ぬらしい」
(このひとはいっぺんしなないとわからないとおもった。)
この人はいっぺん死なないとわからないと思った。
(「あけるんですか」「あけたい。けどあかない」)
「開けるんですか」「開けたい。けど開かない」
(みるとはこからはちいさなぼたんのようなでっぱりがぜんめんにでていて、)
見ると箱からは小さなボタンのようなでっぱりが全面に出ていて、
(えんとうのじょうぶにはかぎあなのようなものもある。)
円筒の上部には鍵穴のようなものもある。
(「ぼたんをただしいじゅんじょでおしこまないとだめらしい」)
「ボタンを正しい順序で押し込まないとダメらしい」
(ししょうはそういってむちゅうではことかくとうしていた。)
師匠はそう言って夢中で箱と格闘していた。
(「あけたら、どうしてしぬんですか」「さあ」「どこでてにいれたんですか」)
「開けたら、どうして死ぬんですか」「さあ」「どこで手に入れたんですか」
(「まるまるしのこっとうひんや」「あけたいんですか」「あけたい。けどあかない」)
「〇〇市の骨董品屋」「開けたいんですか」「開けたい。けど開かない」
(しぬとこみてみてぇ。)
死ぬトコ見てみてェ。
(おれはぱずるのたぐいはすきなので、やってみたかったががまんした。)
俺はパズルの類は好きなので、やってみたかったが我慢した。
(「ぼたんはごじゅっこある。なんこれんぞくでただしくおさないといけないのか)
「ボタンは50個ある。何個連続で正しく押さないといけないのか
(わからないけど、おときいてるかぎりだいぶせいかいにちかづいてるきがする」)
わからないけど、音聞いてる限りだいぶ正解に近づいてる気がする」
(「そのかぎあなはなんですか」「そこなんだよ」ししょうはためいきをついた。)
「その鍵穴はなんですか」「そこなんだよ」師匠はため息をついた。
(にじゅうのろっくになっていて、さいしゅうてきにはかぎがないとあかないらしい。)
2重のロックになっていて、最終的には鍵がないと開かないらしい。
(「ないんですか」「いや。せっとでてにいれたよ」でもおとした。)
「ないんですか」「いや。セットで手に入れたよ」でも落とした。
(とかなしそうにいう。「どこに」ときくと「へや」さがせばいいでしょ。)
と悲しそうに言う。「どこに」と聞くと「部屋」探せばいいでしょ。
(こんなくそせまいへや。ししょうはくびをふった。)
こんなクソ狭い部屋。師匠は首を振った。
(「ひろっちゃったんだよ」「はぁ?」いみがわからない。)
「拾っちゃったんだよ」「ハァ?」意味がわからない。
(「だから、ぽけっとにいれてたのをへやのどっかにおとしてさ。)
「だから、ポケットに入れてたのを部屋のどっかに落としてさ。
(まあいいや、あしたさがそ、とねたわけ。そのよる、ゆめのなかでげんかんに)
まあいいや、明日探そ、と寝たわけ。その夜、夢の中で玄関に
(おちてるのをみつけてさ、ひろったの」ばかかこのひとは。)
落ちてるのを見つけてさ、拾ったの」バカかこの人は。
(「それでめがさめて、まさゆめかもとおもうわけ。で、げんかんをさがしたけど、)
「それで目が覚めて、正夢かもと思うわけ。で、玄関を探したけど、
(ない。あれー?とおもってへやじゅうさがしたけどでてこない。こまってたら、)
ない。あれー?と思って部屋中探したけど出てこない。困ってたら、
(そのひのばん、ゆめみてたらでてきたのよ。ぽけっとのなかから」)
その日の晩、夢見てたら出てきたのよ。ポケットの中から」
(ちょっとぞくっとした。なんだかほうこうせいがあやしくなってきた。)
ちょっとゾクっとした。なんだか方向性が怪しくなってきた。
(「そのつぎのあさ、めがさめてから)
「その次の朝、目が覚めてから
(ぽけっとをさぐっても、もちろんかぎなんかはいってない。そこでおもった。)
ポケットを探っても、もちろん鍵なんか入ってない。そこで思った。
(「ゆめのなかでひろってしまうんじゃなかった」」やっぱこぇぇよこのひと。)
『夢の中で拾ってしまうんじゃなかった』」やっぱこぇぇよこの人。
(「それから、そのかぎがぼくのゆめのなかからでてきてくれない。)
「それから、その鍵が僕の夢の中から出てきてくれない。
(いつもゆめのぽけっとのなかにはいってる。ゆめのなかで、かぎをつくえのひきだしに)
いつも夢のポケットの中に入ってる。夢の中で、鍵を机の引き出しに
(しまっておいて、めがさめてからつくえのひきだしをあけてみたことも)
しまっておいて、目が覚めてから机の引き出しを開けてみたことも
(あるんだけど、やっぱりはいってない。どうしようもなくて、ちょっとこまってる」)
あるんだけど、やっぱり入ってない。どうしようもなくて、ちょっと困ってる」
(しんじられないはなしをしている。おとしたかぎをゆめのなかでひろってしまったから、)
信じられない話をしている。落とした鍵を夢の中で拾ってしまったから、
(げんじつからかぎがしょうめつしてゆめのなかにしかそんざいしなくなったというのか。)
現実から鍵が消滅して夢の中にしか存在しなくなったというのか。
(そしてゆめのなかからげんじつへかぎをもどすほうほうを、もさくしてるというのだ。)
そして夢の中から現実へ鍵を戻す方法を、模索してると言うのだ。
(どうかんがえても、きちがいっぽいはなしだが、ししょうがいうと)
どう考えても、キチ○ガイっぽい話だが、師匠が言うと
(あながちそうおもえないからこわい。「あー!またしっぱい」)
あながちそう思えないから怖い。「あー!また失敗」
(といってししょうははこをゆかにおいた。いいかんじだったおとがもとにもどったらしい。)
と言って師匠は箱を床に置いた。いい感じだった音がもとに戻ったらしい。
(「ぼたんのぱずるをといても、かぎがないとひらかないんでしょ」)
「ボタンのパズルを解いても、鍵がないと開かないんでしょ」
(とつっこむと、ししょうはきみわるくわらった。)
と突っ込むと、師匠は気味悪く笑った。
(「ところが、わざわざきょうよんだのは、あけるきまんまんだからだよ」)
「ところが、わざわざ今日呼んだのは、開ける気満々だからだよ」
(なにやらおかんがして、おれはすこしあとずさった。)
なにやら悪寒がして、俺は少し後ずさった。
(「どうしてもかぎがゆめからでてこないなら、おもったんだよ。)
「どうしても鍵が夢から出てこないなら、思ったんだよ。
(ゆめのなかでこれ、あけちまえって」なに?なに?なにをいってるのこのひと。)
夢の中でコレ、開けちまえって」なに?なに?なにを言ってるのこの人。
(「でさ、あとはぱずるさえとければあくわけよ」ちょっと、ちょっとまって。)
「でさ、あとはパズルさえ解ければ開くわけよ」ちょっと、ちょっと待って。
(あおざめるおれをよそに、ししょうはじーぱんのぽけっとをさぐりはじめた。そして・・・)
青ざめる俺をよそに、師匠はジーパンのポケットを探り始めた。そして・・・
(「この、かぎがあれば」そのてにはさびついたはいいろのかぎがにぎられていた。)
「この、鍵があれば」その手には錆ついた灰色の鍵が握られていた。
(そのしゅんかん、こうしつなきんぞくがくだけるようなものすごいおとがした。)
その瞬間、硬質な金属が砕けるような物凄い音がした。
(ゆかぬけ、せかいがあんてんして、わけがわからなくなった。)
床抜け、世界が暗転して、ワケがわからなくなった。
(だれかにかたをゆすられて、ひかりがもどった。ししょうだった。「じょうだん、じょうだん」)
誰かに肩を揺すられて、光が戻った。師匠だった。「冗談、冗談」
(おれはまだあたまがぼーっとしていた。ししょうのてにはまだかぎがにぎられている。)
俺はまだ頭がボーッとしていた。師匠の手にはまだ鍵が握られている。
(「いまのできをうしなうなんて・・・」と、おれのわきをかかえておこし、)
「今ので気を失うなんて・・・」と、俺の脇を抱えて起こし、
(「さすがだ」といった。やたらうれしそうだ。)
「さすがだ」と言った。やたら嬉しそうだ。
(「さっきのかぎのいみがいっしゅんでわかったんだから、すごいよ。)
「さっきの鍵の意味が一瞬でわかったんだから、凄いよ。
(もっとあんじにかかりやすいひとなら、ぼくのめのまえでしょうめつしてくれたかもしれない」)
もっと暗示に掛かりやすい人なら、僕の目の前で消滅してくれたかも知れない」
(・・・おれはなにもいえなかった。かぎをゆめでひろったしかじかはうそだったらしい。)
・・・俺はなにも言えなかった。鍵を夢で拾った云々はウソだったらしい。
(そのひはおれをからかっただけで、けっきょくししょうははこのぱずるをとけなかった。)
その日は俺をからかっただけで、結局師匠は箱のパズルを解けなかった。
(そのはこがどうなったか、そのあとはしらない。)
その箱がどうなったか、その後は知らない。