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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってしまっていたので、作成しました。

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問題文

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(だいがくいっかいせいのなつごろ。)

大学1回生の夏ごろ。

(きょうすけさんというおかるとけいのねっとなかまのせんぱいにふしぎなはなしをきいた。)

京介さんというオカルト系のネット仲間の先輩に不思議な話を聞いた。

(しないのあるじょしこうのしきちによなか、いっかしょだけせまいはんいにあめがふることが)

市内のある女子高の敷地に夜中、一箇所だけ狭い範囲に雨が降ることが

(あるという。きょうすけさんはじもとみんで、そのじょしこうのそつぎょうせいだった。)

あるという。京介さんは地元民で、その女子高の卒業生だった。

(「きょうすけ」ははんどるねーむで、おれよりもせがたかいが、れっきとしたじょせいだ。)

「京介」はハンドルネームで、俺よりも背が高いが、れっきとした女性だ。

(「うそだー」というおれをにらんで、じゃあこいよ、とつれていかれた。)

「うそだー」と言う俺を睨んで、じゃあ来いよ、と連れて行かれた。

(まよなかにじょしこうにせんにゅうするとは、さすがにかくごがいったが、たてもののなかに)

真夜中に女子高に潜入するとは、さすがに覚悟がいったが、建物の中に

(はいるわけじゃなかったことと、せきゅりてぃーがあまいというきょうすけさんの)

入るわけじゃなかったことと、セキュリティーが甘いという京介さんの

(いいぶんをしんじてついていった。ばしょはこうしゃのかげになっているところで、)

言い分を信じてついていった。場所は校舎の影になっているところで、

(もとはしょうきゃくろがあったらしいが、いまはちかよるひともあまりいないという。)

もとは焼却炉があったらしいが、今は近寄る人もあまりいないという。

(「どうしてあめがふるんですか」とこえをひそめてきくと、)

「どうして雨が降るんですか」と声をひそめて聞くと、

(「むかしこうしゃのおくじょうから、ここへとびおりたせいとがいたんだと。)

「むかし校舎の屋上から、ここへ飛び降りた生徒がいたんだと。

(そのときとびちってじめんにしみこんだちをあらうためにあめがふるんだとか」)

その時飛び散って地面に浸み込んだ血を洗うために雨が降るんだとか」

(「いわゆるななふしぎですよね。うそくせー」きょうすけさんはむっとして、)

「いわゆる七不思議ですよね。ウソくせー」京介さんはムッとして、

(あしをとめた。「ついたぞ。そこだ」こうしゃのかべと、しきちをかこむぶろっくべいの)

足を止めた。「ついたぞ。そこだ」校舎の壁と、敷地を囲むブロック塀の

(あいだのさびしげないっかくだった。くらくてよくみえない。)

あいだの寂しげな一角だった。暗くてよく見えない。

(ちかづいていったきょうすけさんが「おっ」とこえをあげた。「みろ。じめんがぬれてる」)

近づいていった京介さんが「おっ」と声をあげた。「見ろ。地面が濡れてる」

(ぼくもさわってみるが、たしかにいちめーとるしほうくらいのはんいでしめっている。)

僕も触ってみるが、たしかに1メートル四方くらいの範囲で湿っている。

(そらをみあげたが、つきがちゅうてんにのぼり、くもはでていない。「あめがふったあとだ」)

空を見上げたが、月が中天に登り、雲は出ていない。「雨が降った跡だ」

(きょうすけさんのことばに、しゃくぜんとしないものをかんじる。)

京介さんの言葉に、釈然としないものを感じる。

など

(「ほんとにあめですか?だれかがみずをまいたんじゃないですか」)

「ほんとに雨ですか? 誰かが水を撒いたんじゃないですか」

(「どうしてこんなところに」くびをひねるが、おもいつかない。まわりをみわたしても、)

「どうしてこんなところに」首をひねるが、思いつかない。周りを見渡しても、

(なにもない。しきちのすみで、とくにここにようがあるとはおもえない。)

なにもない。敷地の隅で、とくにここに用があるとは思えない。

(「そのうわさをつくるための、いたずらとか」)

「その噂を作るための、イタズラとか」

(だいたい、そんなせまいはんいであめがふるはずがない。「わたしがいちねんのとき、)

だいたい、そんな狭い範囲で雨が降るはずがない。「私が1年の時、

(さんねんのせんぱいにきいたんだ「いちねんのとき、さんねんのせんぱいにきいた」って」)

3年の先輩に聞いたんだ『1年の時、3年の先輩に聞いた』って」

(つまりずっとまえからあるうわさだという。)

つまりずっと前からある噂だという。

(めをつぶって、ここにほそいほそいあめがふることをそうぞうしてみる。)

目をつぶって、ここに細い細い雨が降ることを想像してみる。

(つきのまひるのそらからちじょうのただいってんをめがけてふるあめ。)

月のまひるの空から地上のただ一点を目がけて降る雨。

(こわいというより、げんそうてきで、やはりげんじつかんがない。)

怖いというより、幻想的で、やはり現実感がない。

(「ながいきかんつづいているということは、つまりはんにんはせいとではなく、)

「長い期間続いているということは、つまり犯人は生徒ではなく、

(きょういんということじゃないですか」「どうしてもじんいてきにしたいらしいな」)

教員ということじゃないですか」「どうしても人為的にしたいらしいな」

(「だって、ふってるとこをみせられるならまだしも、これじゃあ・・・)

「だって、降ってるとこを見せられるならまだしも、これじゃあ・・・

(たとえばざんぎょうちゅうのせんせいがやしょくのらーめんにつかったおゆののこりをまどからざーっと」)

たとえば残業中の先生が夜食のラーメンに使ったお湯の残りを窓からザーッと」

(そういいながらうえをみあげると、くろぐろとしたこうしゃのかべはのっぺりして、)

そう言いながら上を見上げると、黒々とした校舎の壁はのっぺりして、

(まどひとつないことにきづく。こうしゃのなかでもはしっこで、まどがないくかくらしい。)

窓一つないことに気づく。校舎の中でも端っこで、窓がない区画らしい。

(あめ。あめ。あめ。ぶつぶつとつぶやく。どうしてもなぞをときたい。)

雨。雨。雨。ぶつぶつとつぶやく。どうしても謎を解きたい。

(ふってくるみず。ふってくるみず。)

降ってくる水。降ってくる水。

(そのじめんのぬれたぶぶんはこうしゃのかべからいちめーとるくらいしかはなれていない。)

その地面の濡れた部分は校舎の壁から1メートルくらいしか離れていない。

(またみあげる。やはりこうしゃのどこかからおちてくる、そんなきがする。)

また見上げる。やはり校舎のどこかから落ちてくる、そんな気がする。

(「あのうえはおくじょうですか」「そうだけど。だからってだれがみずをまいてるってんだ」)

「あの上は屋上ですか」「そうだけど。だからって誰が水を撒いてるってんだ」

(めをこらすと、おくじょうのふちはらっかぼうしのてすりのようなものでかこまれている。)

目を凝らすと、屋上の縁は落下防止の手すりのようなもので囲まれている。

(さらにみると、いっかしょ、そのてすりがきれているぶぶんがある。このまうえだ。)

さらに見ると、一箇所、その手すりが切れている部分がある。この真上だ。

(「ああ、あそこだけなんでかむかしからてすりがない。だからそこから)

「ああ、あそこだけ何でか昔から手すりがない。だからそこから

(とびおりたってはなし」それをきいて、ぴーんとくるものがあった。)

飛び降りたってハナシ」それを聞いて、ピーンとくるものがあった。

(「おくじょうはそうじをしてますか?」「そうじ?いや、してたかなあ。)

「屋上は掃除をしてますか?」「掃除?いや、してたかなあ。

(つるつるしたゆかでいつもけっこうきれいだったいめーじはあるけど」)

つるつるした床でいつも結構きれいだったイメージはあるけど」

(おれはこころでがっつぽーずをする。)

俺は心でガッツポーズをする。

(「おくじょうのそうじをしたきおくがないのは、ぎょうしゃにいたくしていたからじゃないですか」)

「屋上の掃除をした記憶がないのは、業者に委託していたからじゃないですか」

(なんねんにもわたってつきにいっかいくらいのひんどで、ほうかご、せいとたちがかえったあとに)

何年にも渡って月に1回くらいの頻度で、放課後、生徒たちが帰った後に

(はけんされるそうじふ。ゆかそうじにつかったみずを、ぶしょうをしておくじょうからすてようとする。)

派遣される掃除夫。床掃除に使った水を、不精をして屋上から捨てようとする。

(しぜん、みをのりださずにすむように、てすりがないところから・・・)

自然、身を乗り出さずにすむように、手すりがないところから・・・

(「つぎのひぬれたじめんをみてうわさずきのじょしこうせいがいうんですよ。)

「次の日濡れた地面を見て噂好きの女子高生が言うんですよ。

(ここにだけあめがふってるって」ぼくはじぶんのすいりにじしんがあった。)

ここにだけ雨が降ってるって」僕は自分の推理に自信があった。

(ゆうれいのしょうたいみたりかれおばな。「おまえ、おかるとずきのくせにゆめがないやつだな」)

幽霊の正体みたり枯れ尾花。「お前、オカルト好きのくせに夢がないやつだな」

(なんとでもいえ。「でも、そのけつろんはまちがってる」)

なんとでも言え。「でも、その結論は間違ってる」

(きょうすけさんはささやくようなこえでいった。)

京介さんはささやくような声で言った。

(「みずでぬれたじめんをみて、ちいさなはんいにふるあめのうわさがたった、)

「水で濡れた地面を見て、小さな範囲に降る雨の噂が立った、

(というぜんていがそもそもちがう」どういうことだろう。きょうすけさんはまがおで、)

という前提がそもそも違う」どういうことだろう。京介さんは真顔で、

(「だって、ふってるところ、みたし」ぼくののうのかいてんはとまった。さきにいって)

「だって、降ってるところ、見たし」僕の脳の回転は止まった。先に言って

(ほしかった。「そんなうわさがあったら、いくわけよ。おかるとしょうじょとしては」)

欲しかった。「そんな噂があったら、行くわけよ。オカルト少女としては」

(こうこうにねんのとき、こんなふうによなかにしのびこんだそうだ。)

高校2年のとき、こんな風に夜中に忍び込んだそうだ。

(そしてめのまえでたきのようにふるあめをみたという。)

そして目の前で滝のように降る雨を見たという。

(すいどうすいのにおいならわかるよ、ときょうすけさんはいった。)

水道水の匂いならわかるよ、と京介さんは言った。

(おれはひざをがくがくいわせながら、「ちなんかもう、ながれきってるでしょうに」)

俺は膝をガクガクいわせながら、「血なんかもう、流れきってるでしょうに」

(「じゃあ、どうしてあめはふるとおもう」わからない。)

「じゃあ、どうして雨は降ると思う」わからない。

(きょうすけさんはくびをかしげるようにわらい、「あらってもあらってもおちない、)

京介さんは首をかしげるように笑い、「洗っても洗っても落ちない、

(ちのかんかくっておとこにはわかんないだろうなあ」)

血の感覚って男にはわかんないだろうなあ」

(そのうわさのこはまるまるされたから、じぶんをけしたかったんだよ。)

その噂の子は〇〇されたから、自分を消したかったんだよ。

(ぼくのめをみつめて、そういうのだった。)

僕の目を見つめて、そう言うのだった。

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