四隅-1-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(だいがくいっかいせいのしょしゅう。)

大学1回生の初秋。

(おかるとけいのねっとなかまと「がっしゅく」とめいうっておふかいをひらいた。)

オカルト系のネット仲間と「合宿」と銘打ってオフ会を開いた。

(さんかんのきゃんぷちで、「でる」といううわさのろっじにとまることにしたのである。)

山間のキャンプ地で、「出る」という噂のロッジに泊まることにしたのである。

(おふかいはふだんからよくあったのだが、とまりとなるとじょせいがおおいこともあり、)

オフ会は普段からよくあったのだが、泊まりとなると女性が多いこともあり、

(あまりへんなめんばーをいれたくなかったので、ごくうちわの)

あまり変なメンバーを入れたくなかったので、ごく内輪の

(ちゅうしんめんばーのみでのがっしゅくとなった。さんかしゃはりーだーかくのcocoさん、)

中心メンバーのみでの合宿となった。参加者はリーダー格のCoCoさん、

(きょうすけさん、みかっちさんのじょせいじんに、おれをふくめたけいよにん。)

京介さん、みかっちさんの女性陣に、俺を含めた計4人。

(いってしまえばにもつもち&ちからしごとせんようのおれなわけだが、よばれたことは)

言ってしまえば荷物持ち&力仕事専用の俺なわけだが、呼ばれたことは

(すなおにうれしかった。にっていはいっぱくふつか。れんたかーをかりてのりこんだのだが、)

素直に嬉しかった。日程は1泊2日。レンタカーを借りて乗り込んだのだが、

(しーずんをはずしたおかげできゃんぷちはわりにあいていて、)

シーズンを外したおかげでキャンプ地はわりに空いていて、

(うまいくうきすいほうだい、のらねこなでほうだい、やりたいほうだいだったはずだが、)

うまい空気吸い放題、ノラ猫なで放題、やりたい放題だったはずだが、

(みかっちさんが「かくれんぼをしよう」といいだしてはじめたはいいものの、)

みかっちさんが「かくれんぼをしよう」と言い出して始めたはいいものの、

(cocoさんがぜんぜんみつからずそのままひがくれた。ゆうはんどきになったので)

CoCoさんが全然見つからずそのまま日が暮れた。夕飯時になったので

(ほっておいてかれーをつくりはじめたらどこからともなくでてきたのだが、)

放っておいてカレーを作り始めたらどこからともなく出てきたのだが、

(おれはますますcocoさんがわからなくなった。)

俺はますますCoCoさんがわからなくなった。

(ちなみにおれいがいはぜんいんにじゅうだいのはずだったが・・・・・・そのよるのことである。)

ちなみに俺以外は全員20代のはずだったが・・・・・・その夜のことである

(「でる」とうわさのろっじもさけがはいるとただのうたげのかいじょうとなった。)

「出る」と噂のロッジも酒が入るとただの宴の会場となった。

(かれーをたべおわったあたりからきゅうにてんきがくずれ、おもいもかけずつよいあめに)

カレーを食べ終わったあたりから急に天気が崩れ、思いもかけず強い雨に

(とじこめられてしまい、よるのろっじはちいさなしょうめいがゆれるなか、)

閉じ込められてしまい、夜のロッジは小さな照明が揺れる中、

(ごーごーというぶきみなかぜあめのおとにつつまれている、というすばらしい)

ゴーゴーという不気味な風雨の音に包まれている、という素晴らしい

など

(おかるとてきかんきょうであったにもかかわらず、さけのまりょくはそれをうわまわっていた。)

オカルト的環境であったにも関わらず、酒の魔力はそれを上回っていた。

(さんざんげいをやらされつかれはてたおれがかべぎわにへたりこんだとき、)

さんざん芸をやらされ疲れ果てた俺が壁際にへたり込んだ時、

(まえぶれもなくしょうめいがきえた。やたらげらげらわらっていたみかっちさんも)

前触れもなく照明が消えた。やたらゲラゲラ笑っていたみかっちさんも

(くちをとじ、いっしゅんちんもくがろっじにおりた。ていでんだぁ、とだれかがつぶやいてまただまる。)

口を閉じ、一瞬沈黙がロッジに降りた。停電だぁ、と誰かが呟いてまた黙る。

(やねをたたくあめとかぜのおとがおおきくなった。)

屋根を叩く雨と風の音が大きくなった。

(しょうめいのきえたしつないはまっくらになり、へたれのおれはきゅうにこわくなった。)

照明の消えた室内は真っ暗になり、ヘタレの俺は急に怖くなった。

(「これは、あれ、やるしかないだろう」ときょうすけさんのこえがきこえた。)

「これは、アレ、やるしかないだろう」と京介さんの声が聞こえた。

(「あれって、なんですか」「だいがくのさんがくぶのよにんが)

「アレって、なんですか」「大学の山岳部の4人が

(そうなんしてやまごやでひとばんをすごすはなし。かな」)

遭難して山小屋で一晩をすごす話。かな」

(cocoさんがこたえた。くらやみのなかからだをあたため、ねむけをさますために)

CoCoさんが答えた。暗闇のなか体を温め、眠気をさますために

(よにんのがくせいがへやのよすみにそれぞれたち、とけいまわりにさいしょのひとりが)

4人の学生が部屋の四隅にそれぞれ立ち、時計回りに最初の一人が

(かべぎわをあるきはじめる。つぎのすみのひとにさわると、さわられたひとがつぎのすみへ)

壁際を歩き始める。次の隅の人に触ると、触られた人が次の隅へ

(あるいていってそこのひとにさわる。これをひとばんじゅうくりかえしてやまごやのなかを)

歩いていってそこの人に触る。これを一晩中繰り返して山小屋の中を

(ぐるぐるあるきつづけたというのだが、じつはよにんめがすみへすすむとそこにはだれも)

ぐるぐる歩き続けたというのだが、実は4人目が隅へ進むとそこには誰も

(いないはずなのでそこでとまってしまうはずなのだ。)

いないはずなのでそこで止まってしまうはずなのだ。

(いるはずのないごにんめが、そこにいないかぎり・・・・・・)

いるはずのない5人目が、そこにいない限り・・・・・・

(というはなしをcocoさんはたんたんとかたった。どこかできいたことがある。)

という話をCoCoさんは淡々と語った。どこかで聞いたことがある。

(こどもだましのようなはなしだ。そんなもの、のりでやってもぜったいになにもおきない。)

子供だましのような話だ。そんなもの、ノリでやっても絶対になにも起きない。

(しらけるだけだ。そうおもっていると、きょうすけさんが「るーるをふたつ)

しらけるだけだ。そう思っていると、京介さんが「ルールを二つ

(つけくわえるんだ」といいだした。)

付け加えるんだ」と言い出した。

(1.すたーとそうしゃは、とけいまわりはんとけいまわりどちらでもえらべる。)

1.スタート走者は、時計回り反時計回りどちらでも選べる。

(2.だれもいないすみにきたにんげんが、つぎのすたーとそうしゃになる。)

2.誰もいない隅に来た人間が、次のスタート走者になる。

(つぎのすたーとそうしゃって、それだとごにんめとかいうもんだいじゃなく)

次のスタート走者って、それだと5人目とかいう問題じゃなく

(ふつうにおわらないだろ。そうおもったのだがなんだかおもしろそうなので、)

普通に終わらないだろ。そう思ったのだがなんだか面白そうなので、

(やりますとこたえた。「じゃあ、これ。だれがすたーとかわかんないほうが)

やりますと答えた。「じゃあ、これ。誰がスタートかわかんない方が

(おもしろいでしょ。あたりひいたひとがすたーとね」cocoさんにわたされた)

面白いでしょ。あたり引いた人がスタートね」CoCoさんに渡された

(れもんがたのがむをもって、おれはかべをはうようにへやのすみへむかった。)

レモン型のガムを持って、俺は壁を這うように部屋の隅へ向かった。

(「みんなかどについた?じゃあがむをおもっきしかむ」)

「みんなカドについた?じゃあガムをおもっきし噛む」

(へやのたいかくせんあたりからcocoさんのこえがきこえ、いわれたとおりにすると)

部屋の対角線あたりからCoCoさんの声が聞こえ、言われたとおりにすると

(ほのかなさんみがくちにひろがる。はずれだった。)

ほのかな酸味が口に広がる。ハズレだった。

(あたりははきたくなるくらいすっぱいはずだ。きょうすけさんがどこのすみへ)

アタリは吐きたくなるくらい酸っぱいはずだ。京介さんがどこの隅へ

(むかったかけはいでかんじていたおれは、ぜんいんのいちをはあくできていた。)

向かったか気配で感じていた俺は、全員の位置を把握できていた。

(cocoきょうすけ)

CoCo    京介

(みかっちおれ)

みかっち  俺

(こんなかんじのはずだ。だれがすたーとしゃか、そしてどっちからくるのか)

こんな感じのはずだ。誰がスタート者か、そしてどっちから来るのか

(わからないところがぞくぞくする。つまりじぶんが)

わからないところがゾクゾクする。つまり自分が

(「だれもいないはずのすみ」にむかっていても、それがわからないのだ。)

「誰もいないはずの隅」に向かっていても、それがわからないのだ。

(かどにもたれかかるようにたっていると、ばたばたというかぜのおとをからだでかんじる。)

角にもたれかかるように立っていると、バタバタという風の音を体で感じる。

(いつくるかいつくるかとみがまえていると、いきなりみぎかたをつかまれた。)

いつくるかいつくるかと身構えていると、いきなり右肩を掴まれた。

(みぎからきたということはきょうすけさんだ。しんぞうをばくばくいわせながらも)

右から来たということは京介さんだ。心臓をバクバク言わせながらも

(こえひとつあげずにおれはつぎのすみへとかべづたいにすすんだ。とけいまわりということになる。)

声一つあげずに俺は次の隅へと壁伝いに進んだ。時計回りということになる。

(しぜんとちいさなほはばであるいたが、くらやみのなかではきょりかんがはっきりせずみょうに)

自然と小さな歩幅で歩いたが、暗闇の中では距離感がはっきりせず妙に

(つぎのすみがとおいきがした。ちょっとこわくなってきたときにようやく、)

次の隅が遠い気がした。ちょっと怖くなって来たときにようやく、

(だれかのかたとおぼしきものにてがふれた。みかっちさんのはずだ。)

誰かの肩とおぼしきものに手が触れた。みかっちさんのはずだ。

(いっしゅんびくっとしたあと、ひとのけはいがとおざかっていく。)

一瞬ビクっとしたあと、人の気配が遠ざかって行く。

(おれはそのすみにたちどまると、またかどにもたれかかかった。)

俺はその隅に立ち止まると、また角にもたれか掛かった。

(かべはほんのりとあたたかい。そうだろう。だれだってこんななにもみえないなかで)

壁はほんのりと暖かい。そうだろう。誰だってこんな何も見えない中で

(なんにもさわらずにはたっていられない。)

なんにも触らずには立っていられない。

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