どうして幽霊は鉄塔にのぼるのか
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | daifuku | 3904 | D++ | 4.1 | 94.9% | 950.1 | 3918 | 208 | 70 | 2024/11/07 |
2 | daifuku | 3791 | D++ | 3.9 | 95.6% | 987.0 | 3919 | 177 | 70 | 2024/09/25 |
3 | daifuku | 3694 | D+ | 3.9 | 94.1% | 995.5 | 3922 | 244 | 70 | 2024/10/18 |
関連タイピング
-
プレイ回数2.7万歌詞1030打
-
プレイ回数10万歌詞200打
-
プレイ回数25万長文786打
-
プレイ回数74万長文300秒
-
プレイ回数16万歌詞かな861打
-
プレイ回数356かな174打
-
プレイ回数3.8万歌詞かな830打
-
プレイ回数15万長文2381打
問題文
(ししょうがへんなことをいうので、おもわずききかえした。)
師匠が変なことを言うので、おもわず聞き返した。
(「だからてっとうだって」だいがくいっかいせいのあきごろだったとおもう。)
「だから鉄塔だって」大学1回生の秋ごろだったと思う。
(とうじのおれはさーくるのせんぱいでもあるおかるとどうのししょうに、)
当時の俺はサークルの先輩でもあるオカルト道の師匠に、
(おかるとのいろはをおそわっていた。べたなはなしもあれば、)
オカルトのイロハを教わっていた。ベタな話もあれば、
(なかにはししょういがいからはあまりきいたことがないようなものもふくまれている。)
中には師匠以外からはあまり聞いたことがないようなものも含まれている。
(そのときも、てっとーというたんごのいみがいっしゅんわからず)
その時も、テットーという単語の意味が一瞬分からず
(にどぎきをしてしまったのだった。「てっとう。てっとう。てつのとう。)
二度聞きをしてしまったのだった。「鉄塔。てっ・と・う。鉄の塔。
(あいあん・・・・・・なんだ、ぴらぁ?とにかくみたことないかな。)
アイアン・・・・・・なんだ、ピラァ?とにかく見たことないかな。
(よなかみあげてると、けっこういるよ」ししょうがいうには、こうがいのてっとうに)
夜中見上げてると、けっこういるよ」師匠が言うには、郊外の鉄塔に
(よるいくとにんげんのれいがのぼっているすがたをみることができるという。)
夜行くと人間の霊がのぼっている姿を見ることが出来るという。
(どうしてゆうれいはてっとうにのぼるのか。そんなぎもんのまえにゆうれいが)
どうして幽霊は鉄塔にのぼるのか。そんな疑問のまえに幽霊が
(てっとうにのぼるというぜんていがおれのなかにはない。のうないのかいだんばなしでーたべーすを)
鉄塔にのぼるという前提が俺の中にはない。脳内の怪談話データベースを
(けんさくしてもゆうれいとてっとうにかんするはなしはなかったようにおもう。)
検索しても幽霊と鉄塔に関する話はなかったように思う。
(ししょうは、えーふつうじゃん。といってまがおでいる。)
師匠は、えー普通じゃん。と言って真顔でいる。
(いわくのあるばしょだからではなく、てっとうというきごうてきなぶぶんに)
曰くのある場所だからではなく、鉄塔という記号的な部分に
(れいがあつまるのだという。きんじょにてっとうはなかったかとおもいかえしたが、)
霊が集まるのだと言う。近所に鉄塔はなかったかと思い返したが、
(こどものころきんじょにあったてっとうがまっさきにあたまにうかんだ。)
子供のころ近所にあった鉄塔がまっさきに頭に浮かんだ。
(ゆうがたがっこうのかえりにそばをとおった、たかくそびえるてっとうとそうでんせん。)
夕方学校の帰りにそばを通った、高くそびえる鉄塔と送電線。
(ひがくれるころにはそのいようもぶきみなしるえっとになって、)
日が暮れるころにはその威容も不気味なシルエットになって、
(おれをみおろしていた。たしかによるのてっとうにはみょうなこわさがある。)
俺を見下ろしていた。確かに夜の鉄塔には妙な怖さがある。
(しかしれいをそこでみたことはない、とおもう。)
しかし霊をそこで見たことはない、と思う。
(ししょうのはなしをきいてしまうとやたらきになってしまい、)
師匠の話を聞いてしまうとやたら気になってしまい、
(おれはちかくのてっとうをさがしてじてんしゃをとばした。いざどこにあるか、)
俺は近くの鉄塔を探して自転車を飛ばした。いざどこにあるか、
(となるとじしんがなかったが、なんのことはない。)
となると自信がなかったが、なんのことはない。
(てっとうはとおくからでもまるわかりだった。)
鉄塔は遠くからでも丸分かりだった。
(じゅうたくがいをぬけて、かわのそばにそびえたつすがたをみつけるとちかくに)
住宅街を抜けて、川のそばにそびえ立つ姿を見つけると近くに
(じてんしゃをとめ、きぶのかなあみにかきついた。みあげてみるとそうでんせんがない。)
自転車を止め、基部の金網にかきついた。見上げてみると送電線がない。
(ぼろぼろのぷれーとに「まるばつせん-12」みたいなことがかいてあった。)
ボロボロのプレートに「○×線-12」みたいなことが書いてあった。
(おそらくいせつこうじかなにかでそうでんるーとからはずれてしまったのだろう。)
おそらく移設工事かなにかで送電ルートから外れてしまったのだろう。
(さびがういたあかぐろいとうは、こわいというよりものさびしいかんじがした。)
錆が浮いた赤黒い塔は、怖いというより物寂しい感じがした。
(というか、ひがまだおちていなかった。)
というか、日がまだ落ちていなかった。
(きんじょのこんびにやほんやでじかんをつぶして、ふたたびてっとうへもどった。)
近所のコンビニや本屋で時間をつぶして、再び鉄塔へ戻った。
(くらくなると、がぜんふんいきがちがう。ひとどおりもないこうがいのてっとうは、)
暗くなると、俄然雰囲気が違う。人通りもない郊外の鉄塔は、
(みあげるとそのおおきさがましたようなきさえする。)
見上げるとその大きさが増したような気さえする。
(あかいはずのとうはいまはくろい。それもよるのあんかいしょくのくものなかに、)
赤いはずの塔は今は黒い。それも夜の暗灰色の雲の中に、
(そのかたちのあながあいたような、すいこまれそうなくろだった。)
その形の穴が開いたような、吸い込まれそうな黒だった。
(かぜがでてきたようで、たちいりきんしのかなあみがかさかさとおとをたて、)
風が出てきたようで、立ち入り禁止の金網がカサカサと音を立て、
(そうでんせんのないてっとうからはそのほねぐみをふきぬけるくうきがきみょうなうなりを)
送電線のない鉄塔からはその骨組みを吹き抜ける空気が奇妙なうなりを
(あげていた。しゅういにあかりがなく、めをこらしてみても)
あげていた。周囲に明かりがなく、目を凝らしてみても
(てっとうにはなにもみえない。)
鉄塔にはなにも見えない。
(おかるとはこんきだ。かんたんにはあきらめないおれは、よるなかさんじまですわりこんでねばった。)
オカルトは根気だ。簡単には諦めない俺は、夜中3時まで座り込んで粘った。
(でる、といううわさもいつわもないばしょで、そもそもゆうれいなんか)
出る、という噂も逸話もない場所で、そもそも幽霊なんか
(みられるんだろうかというぎねんもあった。ほねぐみにかげがすわっているような)
見られるんだろうかという疑念もあった。骨組みに影が座っているような
(いめーじをとうえいしつづけたが、なにかみえたきがしてめをするとやっぱり)
イメージを投影し続けたが、なにか見えた気がして目を擦るとやっぱり
(そこにはなにもないのだった。けっきょく、みえないものをみようとした)
そこにはなにもないのだった。結局、見えないものを見ようとした
(きんちょうかんからくるつかれで、よあけもまたずにたいさんした。)
緊張感から来る疲れで、夜明けも待たずに退散した。
(よくじつ、さっそくほうこくするとししょうはみょうにうれしそうなかおをする。)
翌日、さっそく報告すると師匠は妙に嬉しそうな顔をする。
(「え?あそこのてっとうにいった?」なぜかじぶんもいくといいだした。)
「え?あそこの鉄塔に行った?」なぜか自分も行くと言いだした。
(「だから、なにもでませんでしたよ」というと、)
「だから、何も出ませんでしたよ」と言うと、
(だからじゃないかとへんなことをつぶやいた。)
だからじゃないかと変なことを呟いた。
(よくわからないまま、ひるひなかにふたりしてあのてっとうにいった。)
よくわからないまま、昼ひなかに二人してあの鉄塔に行った。
(ひるまにみると、あのよるのぶきみさはうすれてただのさびついた)
昼間に見ると、あの夜の不気味さは薄れてただの錆付いた
(ろうへいというふうていだった。するとししょうがあごをさすりながら、)
老兵という風体だった。すると師匠が顎をさすりながら、
(ここはゆうめいなしんれいすぽっとだったんだ、といった。)
ここは有名な心霊スポットだったんだ、と言った。
(あたまからがそりんをかぶってしょうしんじさつをしたひとがいたらしい。)
頭からガソリンをかぶって焼身自殺をした人がいたらしい。
(よなかこのてっとうのまえをとおると、あついあついとすすりなくこえがきこえる)
夜中この鉄塔の前を通ると、熱い熱いとすすり泣く声が聞こえる
(といううわさがあったそうだ。「あのあたりにくろいしみがあった」)
という噂があったそうだ。「あのあたりに黒い染みがあった」
(かなあみごしにししょうがゆびさすそのさきには、いまはしみらしきものはみえない。)
金網越しに師匠が指差すその先には、今は染みらしきものは見えない。
(なにかかんじますか。とししょうにとうも、くびをよこにふる。)
なにか感じますか。と師匠に問うも、首を横に振る。
(「ぼくもみたことがあったんだ」じさつしゃのれいをここで。)
「僕も見たことがあったんだ」自殺者の霊をここで。
(そういうししょうはしょうてんのとおいめをしている。「いまはいない」ひとりごとのようにつぶやく。)
そう言う師匠は焦点の遠い目をしている。「今はいない」独り言のように呟く。
(「そうか。どうしててっとうにのぼるのか、わかったきがする」)
「そうか。どうして鉄塔にのぼるのか、わかった気がする」
(そしてひをあびてにぶくかがやくてつのとうをみあげるのだった。)
そして陽をあびて鈍く輝く鉄の塔を見上げるのだった。
(おれにはわからなかった。きいても「ひみつ」とはぐらかされた。)
俺にはわからなかった。聞いても「秘密」とはぐらかされた。
(ししょうがかってにたて、かってにこたえにたどりついためいだいは、)
師匠が勝手に立て、勝手に答えに辿りついた命題は、
(それきりわだいにのぼることはなかった。けれどいまではてっとうをみるたびおもう。)
それきり話題にのぼることはなかった。けれど今では鉄塔を見るたび思う。
(このよからしょうめつしたがっているれいが、げんせをはなれるために「てっとう」という)
この世から消滅したがっている霊が、現世を離れるために『鉄塔』という
(そらへのびるしんぼりっくなけんちくぶつをのぼるのではないだろうか。)
空へ伸びるシンボリックな建築物をのぼるのではないだろうか。
(ながいかいだんやこうそうびるではだめなのだろう。)
長い階段や高層ビルではだめなのだろう。
(そのさきが、ひとのせかいにつうじているかぎりは。)
その先が、人の世界に通じている限りは。