病院-1-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 tetsumi 5389 B++ 5.5 97.4% 997.7 5521 144 90 2024/09/11
2 Shion 3251 D 3.3 98.0% 1647.4 5466 109 90 2024/10/03

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問題文

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(だいがくにかいせいじ、きゅうたんい。さんかいせいじぜろたんい。すべてゆうりょうかのりょう。おれのせいせきだ。)

大学2回生時、9単位。3回生時0単位。すべて優良可の良。俺の成績だ。

(そのころこねこをあぱーとでかっていたのであるが、いわゆるへやかいで)

そのころ子猫をアパートで飼っていたのであるが、いわゆる部屋飼いで

(いっさいそとにはださずにそだてていて、こんなことをかたりかけていた。)

一切外には出さずに育てていて、こんなことを語りかけていた。

(「おまえはでかなるで。このへやのはんぶんくらい。くわんでや、おれ」)

「おまえはデカなるで。この部屋の半分くらい。食わんでや、俺」

(しかしそんなきょういくのかいなくこねこはぴったりねこさいずでせいちょうをとめた。)

しかしそんな教育の甲斐なく子猫はぴったり猫サイズで成長を止めた。

(そのころ、まったくただしくねこはねこになり。いぬはいぬになり。はるはなつになった。)

そのころ、まったく正しく猫は猫になり。犬は犬になり。春は夏になった。

(しかしながらおれのだいがくせいかつはめいそうをつづけて、いったいなにになるのやら)

しかしながら俺の大学生活は迷走を続けて、いったい何になるのやら

(むかうさきがみえないのだった。そのなつである。だいがくにかいせいだった。)

向かう先が見えないのだった。その夏である。大学2回生だった。

(おれのめいそうのげんいんとなっているせんぱいのしょうかいで、おれはびょういんでばいとをしていた。)

俺の迷走の原因となっている先輩の紹介で、俺は病院でバイトをしていた。

(そのせんぱいとは、おれをおかるとどうへひきずりこんだげんきょうのおかただ。)

その先輩とは、俺をオカルト道へ引きずり込んだ元凶のお方だ。

(いや、そのおかたはたんしょにすぎずけっきょくはじぶんのほんのうのままにおれは)

いや、そのお方は端緒にすぎず結局は自分の本能のままに俺は

(おれになったのかもしれない。「ししょう、なんかいいばいとないですかね」)

俺になったのかもしれない。「師匠、なんかいいバイトないですかね」

(そのひとことが、そのなつもおかるといっしょくにそめあげるもとになったのはたしかだ。)

その一言が、その夏もオカルト一色に染め上げる元になったのは確かだ。

(びょういんのばいととはいっても、せいかくにいうと「ほうもんかんごすてーしょん」)

病院のバイトとは言っても、正確にいうと「訪問看護ステーション」

(といういりょうきかんのじむだ。ほうもんかんごすてーしょんとは、)

という医療機関の事務だ。訪問看護ステーションとは、

(ざいたくりょうようするにんげんのかんごやりはびりのために、かんごし(なーす)や)

在宅療養する人間の看護やリハビリのために、看護師(ナース)や

(りがくりょうほうし(pt)、さぎょうりょうほうし(ot)がでむいて)

理学療法士(PT)、作業療法士(OT)が出向いて

(そのこういをするちいさなきかんだ。なーすさんにんにptotひとりずつ。)

その行為をする小さな機関だ。ナース3人にPT・OT1人ずつ。

(そしてじむひとりのけいろくにん。このろくにんがいるしょくばがびょういんのなかにあった。)

そして事務1人の計6人。この6人がいる職場が病院の中にあった。

(もちろんけいえいぼたいはどういつだったから、なーすやptなども)

もちろん経営母体は同一だったから、ナースやPTなども

など

(そのびょういんのしゅっしんで、どくりつしたいりょうきかんとはいえ、)

その病院の出身で、独立した医療機関とはいえ、

(ただのびょういんのいちぶしょみたいなかんかくだった。)

ただの病院の一部署みたいな感覚だった。

(そのじむたんとうのしょくいんがびょうけつでやすんでしまって、ふっきするまでのあいだに)

その事務担当の職員が病欠で休んでしまって、復帰するまでの間に

(れせぷとせいきゅうのしょりをするにはどうしてもひとでがたりないということで、)

レセプト請求の処理をするにはどうしても人手が足りないということで、

(おれにおこえがかかったのだった。なーすのひとりがしょちょうをかねていて、)

俺にお声がかかったのだった。ナースの一人が所長を兼ねていて、

(かのじょがししょうとはしりあいらしい。60ちかかったがきびきびしたひとで、)

彼女が師匠とは知り合いらしい。60近かったがキビキビした人で、

(もともとこのびょういんのふちょう(いまはしちょうというらしい)をしていたという。)

もともとこの病院の婦長(今は師長というらしい)をしていたという。

(そのしょちょうがいう。「よるははやくかえりなさいね」あたりまえだ。)

その所長が言う。「夜は早くかえりなさいね」あたりまえだ。

(だいたいしふとからして17じ30ふんまでのばいとなんだから。)

大体シフトからして17時30分までのバイトなんだから。

(なんでも、すてーしょんのあるよんかいはもともとにゅういんのためのびょうしょうが)

なんでも、ステーションのある4階はもともと入院のための病床が

(ならんでいたが、けいえいしゅくしょうきのおりにはいしょうされ、そのあとほかのつかいみちも)

並んでいたが、経営縮小期のおりに廃床され、その後ほかの使い道も

(ないままほうちされてきたのだという。いまはなーすすてーしょんが)

ないまま放置されてきたのだという。今はナースステーションが

(あったといういっしつをかいりょうしてじむしょとしてつかっていた。)

あったという一室を改良して事務所として使っていた。

(そのためそのかいではすてーしょんのじむしょいがいはいっさいつかわれておらず、)

そのためその階ではステーションの事務所以外は一切使われておらず、

(いっぽそとにでるとひるまでもくらいろうかがひとけもなくずーっとつづいているという、)

一歩外に出ると昼間でも暗い廊下が人気もなくずーっと続いているという、

(なんともうすきみわるいふんいきをかもしだしているのだった。それだけではない。)

なんとも薄気味悪い雰囲気を醸し出しているのだった。それだけではない。

(なーすたちがささやくことには、このびょうとうはまっきのかんじゃのべっどがおおく、)

ナースたちが囁くことには、この病棟は末期の患者のベッドが多く、

(むかしからおかしなことがよくおこったというのだ。)

昔からおかしなことがよく起こったというのだ。

(だからなーすたちもよるはのこりたくないという。)

だからナースたちも夜は残りたくないという。

(きんむけいけんのあるひとのそのこわがりようは、あるしゅのせっとくりょくをもっていた。)

勤務経験のある人のその怖がり様は、ある種の説得力を持っていた。

(ぜったいはやくかえるぞ。そうこころにきめた。が、これがあまかった。)

絶対早く帰るぞ。そう心に決めた。が、これが甘かった。

(げんきょうはまいつきのあたまにあるれせぷとせいきゅうである。)

元凶は毎月の頭にあるレセプト請求である。

(いちおうのひきつぎしょはあるにはあるが、いりょうじむのしかくもなにもないしろうとには)

一応の引継ぎ書はあるにはあるが、医療事務の資格もなにもない素人には

(むずかしすぎた。とくにほうもんかんごをうけるようなひとは、ややこしいせいどの)

難しすぎた。特に訪問看護を受けるような人は、ややこしい制度の

(たいしょうになっているばあいがおおく、いったいなんわりをどこにせいきゅうしてのこりを)

対象になっている場合が多く、いったい何割をどこに請求して残りを

(どこにせいきゅうすればいいのやら、さっぱりわからなかった。)

どこに請求すればいいのやら、さっぱりわからなかった。

(あたまをかかえながらなんとかがんばってはいたが、みっかめあたりから)

頭を抱えながらなんとか頑張ってはいたが、3日目あたりから

(ざんぎょうしないとむりだということにきづき、しめきりである10にちまでには)

残業しないと無理だということに気づき、締め切りである10日までには

(しあがるようにと、まいにちのきたくじかんがのびていった。「たいへんねえ」といいながら)

仕上がるようにと、毎日の帰宅時間が延びていった。「大変ねえ」と言いながら

(しごとをおえてかえるなーすたちにあいそわらいでこたえたあと、)

仕事を終えて帰るナースたちに愛想笑いで応えたあと、

(だれもいないじむしょにはおれだけがのこされる。)

誰もいない事務所には俺だけが残される。

(とっくにひはくれて、まどからはすずしげなよかぜがいりこんでくる。)

とっくに陽は暮れて、窓からは涼しげな夜風が入り込んでくる。

(しずかなへやで、でんたくをたたくおとだけがひびく。ああ。いやだ。いやだ。)

静かな部屋で、電卓を叩く音だけが響く。ああ。いやだ。いやだ。

(むかしはこのへやでよなか、なーすこーるがよくなったそうだ。)

昔はこの部屋で夜中、ナースコールがよく鳴ったそうだ。

(すぐにすぐにかけつけると、せんじつなくなったばかりの)

すぐにすぐにかけつけると、先日亡くなったばかりの

(かんじゃのへやだったりしたとか・・・・・・そんなはなしをひるまにきかされた。)

患者の部屋だったりしたとか・・・・・・そんな話を昼間に聞かされた。

(いちじきかんぜんにむじんになっていたはずのよんかいで、まよなかによびだしおんが)

一時期完全に無人になっていたはずの4階で、真夜中に呼び出し音が

(なったこともあるとか。なーすこーるのききなんてとっくに)

鳴ったこともあるとか。ナースコールの機器なんてとっくに

(はずされていたにもかかわらず。たしかにびょういんはかいだんばなしのほうこだ。)

外されていたにもかかわらず。確かに病院は怪談話の宝庫だ。

(でもげんばできくのはいやだ。)

でも現場で聞くのはいやだ。

(おれはやっつけしごとでなんとかそのひののるまをおえて、じむしょをでようとする。)

俺はやっつけ仕事でなんとかその日のノルマを終えて、事務所を出ようとする。

(おそるおそるどあをひらくと、しーんとしずまりかえったろうかがどこまでものびている。)

恐る恐るドアを開くと、しーんと静まり返った廊下がどこまでも伸びている。

(じむしょのすぐまえのでんとうがついているだけで、それもやたらにこうりょうがすくない。)

事務所のすぐ前の電灯が点いているだけで、それもやたらに光量が少ない。

(どけちめ。だからびょういんはきらいだ。ろうかをすこしすすんで、かいだんをおりる。)

どけちめ。だから病院はきらいだ。廊下を少し進んで、階段を降りる。

(いっかいまでつくとひとごこちつくのだが、うらぐちからでようとすると)

1階までつくと人心地つくのだが、裏口から出ようとすると

(さいごのかんもんがある。とちゅうでれいあんしつのまえをとおるのだ。)

最後の関門がある。途中で霊安室の前を通るのだ。

(もっとこう、ちかしつとかろうかのいちばんおくとかそんなところにあることを)

もっとこう、地下室とか廊下の一番奥とかそんなところにあることを

(いめーじしていたおれにはいがいだったが、あるものはしかたがない。)

イメージしていた俺には意外だったが、あるものは仕方がない。

(「れいあんしつ」とだけかかれたぷれーとのどあのまえをとおりすぎていると、)

『霊安室』とだけ書かれたプレートのドアの前を通り過ぎていると、

(どうしてもすりがらすのむこうにめをやってしまう。)

どうしても摺りガラスの向こうに目をやってしまう。

(なかをみせたいのかみせたくないのか、どっちなんだとつっこみたくなる。)

中を見せたいのか見せたくないのか、どっちなんだと突っ込みたくなる。

(なかはくらがりなので、もちろんなにもみえない。)

中は暗がりなので、もちろんなにも見えない。

(なにかがうごめいていてもきっとそとからはわからないだろう。)

なにかが蠢いていてもきっと外からはわからないだろう。

(そんなじぶんのはっそうじたいにおびえて、おれはあしばやにとおりすぎるのだった。)

そんな自分の発想自体に怯えて、俺は足早に通り過ぎるのだった。

(そんなあるひ、れせぷとせいきゅうもおいこみにはいったころに、)

そんなある日、レセプト請求も追い込みに入った頃に、

(ゆうがたのほうもんをおえたなーすのひとりがじむしょにかえってきた。)

夕方の訪問を終えたナースの一人が事務所に帰ってきた。

(どあをあけたしゅんかん、おれはおもわずめをつぶった。)

ドアを開けた瞬間、俺は思わず目を瞑った。

(なぜかわからないが、みないほうがいいきがしたのだ。)

なぜかわからないが、見ないほうがいい気がしたのだ。

(そのままうつむいてなまつばをのむおれのまえをなーすはとおりすぎ、しょちょうのせきまでいくと)

そのまま俯いて生唾を飲む俺の前をナースは通り過ぎ、所長の席まで行くと

(しずんだこえで「まるまるさんがなくなりました」といった。)

沈んだ声で「〇〇さんが亡くなりました」と言った。

(しょちょうは「そう」というと、おちついたこえでなーすをいたわった。)

所長は「そう」と言うと、落ち着いた声でナースを労った。

(そしてそのひとのさいごのようすをきき、てをあわせるけはいのあとで)

そしてその人の最期の様子を聞き、手を合わせる気配のあとで

(「おつかれさまでした」とひとこといった。)

「お疲れさまでした」と一言いった。

(ptやotというりはびりちゅうしんのほうもんぎょうむとちがい、なーすはまっきのかんじゃを)

PTやOTというリハビリ中心の訪問業務と違い、ナースは末期の患者を

(ほうもんすることがおおい。びょういんでのしよりも、じぶんのいえでのしをかぞくが、)

訪問することが多い。病院での死よりも、自分の家での死を家族が、

(あるいはじぶんがせんたくしたひとたちだ。おおければねんに10けんいじょうのしに)

あるいは自分が選択した人たちだ。多ければ年に10件以上の死に

(たちあうこともある。そんなことがあると、いまさらながらびょういんは)

立ち会うこともある。そんなことがあると、今更ながら病院は

(ひとのしをあつかうばしょなのだときづく。ふくすうかいほうもんのおおさから)

人の死を扱う場所なのだと気づく。複数回訪問の多さから

(うすうすよかんされたことではあったが、ついさっきまでそのひとのれせぷとを)

薄々予感されたことではあったが、ついさっきまでその人のレセプトを

(しあげていたばかりのおれにはしょっくがおおきかった。)

仕上げていたばかりの俺にはショックが大きかった。

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