黒い手-2-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(そういえば、たてながのはこがおかれたときそのかたほうのはしがこのおんなのほうを)

そういえば、縦長の箱が置かれたときその片方の端がこの女の方を

(むいていた。はこのなかで、くろいてがゆびをさしているというのだろうか。)

向いていた。箱の中で、黒い手が指を差しているというのだろうか。

(そうおもっていると、おんなのみょうにつめたいいきがみみにながれこんできた。)

そう思っていると、女の妙に冷たい息が耳に流れ込んできた。

(「それがね、ゆびさされてるのははこからじゃないのよ。せなかから、だれかに」)

「それがね、指差されてるのは箱からじゃないのよ。背中から、誰かに」

(そこまでいうとみつあみおんなはいきをつまらせて、にげるようにさっていた。)

そこまで言うと三つ編み女は息を詰まらせて、逃げるように去っていた。

(みせのなかでひとりのこされたぼくは、はこをかかえたままぼうだちになっていた。)

店の中で一人残された僕は、箱を抱えたまま棒立ちになっていた。

(ことというかわいたおとがして、はこのなかみのいちがずれた。ぼくはなまつばをのみこんだ。)

コトという乾いた音がして、箱の中身の位置がずれた。僕は生唾を飲み込んだ。

(なにこのくうき。しかして、あとでこうかいしたりする?ふとしせんをかんじると、)

なにこの空気。しかして、あとで後悔したりする?ふと視線を感じると、

(みせのそとからがらすごしにくろのわんぴーすすがたのおんきょうがこっちをみていた。)

店の外からガラス越しに黒のワンピース姿の音響がこっちを見ていた。

(あぱーとのへやにかえりつき、はこをあらためてみているときみのわるいかんかくに)

アパートの部屋に帰りつき、箱をあらためて見ていると気味の悪い感覚に

(おそわれる。くろいてのうわさはついさいきんはじまったはずなのに、このはこはふるい。)

襲われる。黒い手の噂はつい最近始まったはずなのに、この箱は古い。

(ふるすぎる。すすけたようなきのはこで、うらにめいがほってあっても)

古すぎる。煤けたような木の箱で、裏に銘が彫ってあっても

(おかしくないたたずまいである。このなかにほんとうにくろいてがはいっているのだろうか。)

おかしくない佇まいである。この中に本当に黒い手が入っているのだろうか。

(だいたいうわさには、はこにはいってるなんてはなしはなかった。)

だいたい噂には、箱に入ってるなんて話はなかった。

(おんきょうとなのるあのしょうじょにかつがれたようなきもする。)

音響と名乗るあの少女に担がれたような気もする。

(でもかわいかったなぁ。と、おもわずかおがにやける。)

でも可愛かったなぁ。と、思わず顔がにやける。

(たぶんきょうはおかるとずきがあつまったのではなくて、すくなくともおとこどもは)

たぶん今日はオカルト好きが集まったのではなくて、少なくとも男どもは

(おんきょうめあてでさんかしたのではないかというかんぐりをしてしまう。)

音響めあてで参加したのではないかという勘繰りをしてしまう。

(そうでなければ、あけろこーるくらいおきるだろう。)

そうでなければ、開けろコールくらい起きるだろう。

(くろいてがみたくてあつまったはずならば。ぼくははこのふたにてをかけた。)

黒い手が見たくて集まったはずならば。僕は箱の蓋に手をかけた。

など

(そのしゅんかんに、さまざまなおもいやらかんじょうやらがこうさくする。)

その瞬間に、さまざまな思いやら感情やらが交錯する。

(まあ、いまでなくてもいいんじゃない。いっしゅうかんあるんだし。)

まあ、今でなくてもいいんじゃない。1週間あるんだし。

(ぼくは、つまり、にげたのだった。)

僕は、つまり、逃げたのだった。

(そしてはこをほんだなのうえにおくと、よみかけのまんがをひらいた。)

そして箱を本棚の上に置くと、読みかけの漫画を開いた。

(それからふつかかんはなにごともなくすぎた。)

それから2日間はなにごともなく過ぎた。

(みっかめ、ししょうとしんれいすぽっとにいって、またげんなりするような)

3日目、師匠と心霊スポットに行って、またゲンナリするような

(こわいめにあってかえってきたとき、へやのとびらをあけるとてーぶるのうえに)

怖い目にあって帰って来た時、部屋の扉を開けるとテーブルの上に

(はこがのっていた。これははんそくだ。へやはあんぜんちたい。)

箱が乗っていた。これは反則だ。部屋は安全地帯。

(このるーるをまもってもらわないと、しんれいすぽっとめぐりなんてできない。)

このルールを守ってもらわないと、心霊スポット巡りなんてできない。

(どきどきしながら、きのうほんだなからてーぶるのうえにはこを)

ドキドキしながら、昨日本棚からテーブルの上に箱を

(うつしたかどうかおもいだそうとする。)

移したかどうか思い出そうとする。

(むいしきにやったならともかく、そんなきおくはない。)

無意識にやったならともかく、そんな記憶はない。

(へいせいをよそおいながらぼくははこをほんだなのうえにもどした。)

平静を装いながら僕は箱を本棚の上に戻した。

(ふかくかんがえないほうがいいようなきがした。よっかめのよる。)

深く考えない方がいいような気がした。4日目の夜。

(ちょっとねつっぽくて、そうそうにふとんにはいってねているとふしぎなかんかくにおそわれた。)

ちょっと熱っぽくて、早々に布団に入って寝ていると不思議な感覚に襲われた。

(きょくだいのいめーじときょくしょうのいめーじがこうごにやってくるような、)

極大のイメージと極小のイメージが交互にやってくるような、

(すごくとおくてすごくちかいような、それでいてしゅたいとかくたいがなんなのか)

凄く遠くて凄く近いような、それでいて主体と客体がなんなのか

(わからないような。こどものころ、ねつがでるたびかんじていたあのきみょうなかんかくだった。)

わからないような。子供の頃、熱が出るたび感じていたあの奇妙な感覚だった。

(そんなとりっぷちゅうに、かおのいちぶがひんやりするかんじがして、)

そんなトリップ中に、顔の一部がひんやりする感じがして、

(げんじつにひきもどされた。めをあけててんじょうをみながらみぎのほおをなでてみる。)

現実に引き戻された。目を開けて天井を見ながら右の頬を撫でてみる。

(そこだけあいすくりーむをあてられたように、おんどがひくいきがした。)

そこだけアイスクリームを当てられたように、温度が低い気がした。

(ひえしょうだが、ほおがひえるというのはあまりけいけんがない。)

冷え性だが、頬が冷えるというのはあまり経験がない。

(かゆいようなきがして、しきりにそこをなでていると、そのおんどの)

痒いような気がして、しきりにそこを撫でていると、その温度の

(ひくいぶぶんがあるとくちょうてきなかたちをしていることにきづいた。いびつなごかっけいに、)

低い部分がある特徴的な形をしていることに気づいた。いびつな5角形に、

(ぼうじょうのものがごほん。ぼくはふとんをはねとばして、おきあがった。)

棒状のものが5本。僕は布団を跳ね飛ばして、起き上がった。

(きょろきょろとしゅういをみまわし、はこのいちをかくにんする。)

キョロキョロと周囲を見回し、箱の位置を確認する。

(はこのいちをかくにんするのに、どうしてみまわさなければならないのか、)

箱の位置を確認するのに、どうして見回さなければならないのか、

(そのときはおかしいとおもわなかった。ほんだなのうえにあった。)

その時はおかしいと思わなかった。本棚の上にあった。

(おいたときのままのじょうたいで。けれど、ぼくのほおにさわったのはてだった。)

置いた時のままの状態で。けれど、僕の頬に触ったのは手だった。

(それもひどくつめたいてのひらだった。おもわずはこのふたにてをかける。)

それもひどく冷たい手の平だった。思わず箱の蓋に手をかける。

(そしてそのままのしせいでかたまった。)

そしてそのままの姿勢で固まった。

(むかしから「あけてはいけない」といわれたものをあけてしまう)

昔から「開けてはいけない」と言われたものを開けてしまう

(こどもではなかった。さわらぬかみにたたりなしとは、しげんだとおもう。)

子供ではなかった。触らぬ神に祟りなしとは、至言だと思う。

(でも、そんなからをやぶりたくて、ししょうのうしろをついていってるのじゃないか。)

でも、そんな殻を破りたくて、師匠の後ろをついていってるのじゃないか。

(そうだ。それにはこをあけたらだめだとか、そんなことはうわさにはなかった。)

そうだ。それに箱を開けたらダメだとか、そんなことは噂にはなかった。

(おんきょうがいっているだけじゃないか。)

音響が言っているだけじゃないか。

(そんなことをかんがえていると、あることばがのうりにうかんだ。)

そんなことを考えていると、ある言葉が脳裏に浮かんだ。

(ぼくはそれをおもいだしたとたんに、ためらいなくはこのふたをとりはらった。)

僕はそれを思い出したとたんに、躊躇なく箱の蓋を取り払った。

(なかにはがさがさしたかみがあり、それにつつまれるようにくろいてが)

中にはガサガサした紙があり、それにつつまれるように黒い手が

(いっぽんよこたわっている。まねきんのてだった。)

1本横たわっている。マネキンの手だった。

(ははははとおもわずわらいがこみあげてくる。こんなものをありがたがっていたなんて。)

ハハハハと思わず笑いがこみ上げてくる。こんなものを有難がっていたなんて。

(てにとって、かざしてみる。なんのへんてつもないくろいまねきんのてだ。)

手にとって、かざしてみる。なんの変哲もない黒いマネキンの手だ。

(ひだりてで、それもゆびのつめがながめにつくられているところをみると、じょせいようだ。)

左手で、それも指の爪が長めに作られているところを見ると、女性用だ。

(あんのじょうだった。あのとき、おんきょうはたしかにいった。)

案の定だった。あの時、音響は確かに言った。

(「けっこんゆびわでもかってやれば・・・・・・」つまり、ひだりてで、じょせいなのだった。)

「結婚指輪でも買ってやれば・・・・・・」つまり、左手で、女性なのだった。

(「あけるな」といっておきながら、おんきょうじしんははこをあけてなかをみている。)

「開けるな」と言っておきながら、音響自身は箱を開けて中を見ている。

(そうかくしんしたからぼくもあけられた。なんだこのいんちきは。)

そう確信したから僕も開けられた。なんだこのインチキは。

(ぼくはまねきんのてをほうりだして、ぱそこんをたちあげた。)

僕はマネキンの手を放り出して、パソコンを立ち上げた。

(いまごろあのすれっどではかつがれたぼくをわらっているだろうか。)

今頃あのスレッドでは担がれた僕を笑っているだろうか。

(むかむかしながらすれっどめいをくりっくすると、よそうがいにもくろいてのはなしは)

ムカムカしながらスレッド名をクリックすると、予想外にも黒い手の話は

(ぜんぜんでてきてなかった。すでにかれらのきょうみはつぎのうわさにうつっていた。)

全然出てきてなかった。すでに彼らの興味は次の噂に移っていた。

(おんきょうはなんといっているだろうとおもってさがしても、かきこみはない。)

音響はなんと言っているだろうと思って探しても、書き込みはない。

(かころぐをみても、あれからいちどもかきこんでないようだ。)

過去ログを見ても、あれから一度も書き込んでないようだ。

(にげたのか、ともおもったがなにもかのじょににげるりゆうはない。)

逃げたのか、とも思ったがなにも彼女に逃げる理由はない。

(おれについきゅうされても「ばーかばーか」とでもかけばいいだけのことだ。)

俺に追及されても「バーカバーカ」とでも書けばいいだけのことだ。

(それにもともとおんきょうは、じょうれんのなかでもしゅつげんひんどがたかくない。)

それにもともと音響は、常連の中でも出現頻度が高くない。

(しゅうにいっかいかおおくてもにかいていどのかきこみぺーすなのだ。)

週に1回か多くても2回程度の書き込みペースなのだ。

(あれからよっかしかたっていないので、あらわれてなくてもとうぜんといえば)

あれから4日しかたっていないので、現れてなくても当然といえば

(とうぜんなのだった。ふいに、まうすをもつてがかたまった。)

当然なのだった。ふいに、マウスを持つ手が固まった。

(しゅうにいっかいかにかいのかきこみ。しんぞうがどきどきしてきた。)

週に1回か2回の書き込み。心臓がドキドキしてきた。

(さっていったきょうふがもういちどもどってくるような、そんなおかんがする。)

去っていった恐怖がもう一度戻ってくるような、そんな悪寒がする。

(きのせいか、みみなりがするようなさっかくさえある。)

気のせいか、耳鳴りがするような錯覚さえある。

(かころぐをめくる。「くろいてをてにいれた」にちようび)

過去ログをめくる。『黒い手を手に入れた』日曜日

(ぼくがめにとめたおんきょうのかきこみだ。)

僕が目に留めた音響の書き込みだ。

(そしてそのつぎのおんきょうのかきこみは・・・・・・「いーよ」きんようび)

そしてその次の音響の書き込みは・・・・・・『いーよ』金曜日

(いつかあいている。ちょうどそんなぺーすなのだ。だから、おかしい。)

5日開いている。ちょうどそんなペースなのだ。だから、おかしい。

(そのよくじつのどようびにおんきょうはくろいてをぼくにくれた。だから、おかしい。)

その翌日の土曜日に音響は黒い手を僕にくれた。だから、おかしい。

(おんきょうがくろいてをてにいれてから、そのどようびでむいかめなのだ。)

音響が黒い手を手に入れてから、その土曜日で6日目なのだ。

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