声-2-(完)
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | tetsumi | 5065 | B+ | 5.2 | 97.3% | 395.0 | 2056 | 55 | 40 | 2024/09/28 |
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問題文
(おれはなにかぎむかんのようなものにかられて、ふたたびどあへちかづく。)
俺はなにか義務感のようなものに駆られて、ふたたびドアへ近づく。
(のぶにてをかけて、しんこきゅうをする。)
ノブに手をかけて、深呼吸をする。
(あのひめいをきいたときの、しんぞうがひえるようなかんかくがよみがえって、なまつばをのんだ。)
あの悲鳴を聞いたときの、心臓が冷えるような感覚が蘇って、生唾を飲んだ。
(このどあのむこうに、ひめいのあるじか、あるいはかんけいするなにかがある。)
このドアの向こうに、悲鳴の主か、あるいは関係する何かがある。
(そうおもうだけであしがすくみそうになる。)
そう思うだけで足が竦みそうになる。
(「あけますよ」とかのじょにかくにんするようにいった。)
「開けますよ」と彼女に確認するように言った。
(でもそれはきっとじぶんじしんにむけたことばなのだろう。)
でもそれはきっと自分自身に向けた言葉なのだろう。
(めをつぶってのぶをひいた。いや、つぶったつもりだった。)
目をつぶってノブを引いた。いや、つぶったつもりだった。
(しかしなぜかおれはめをあけたままどあをあけはなっていた。)
しかしなぜか俺は目を開けたままドアを開け放っていた。
(すいこまれそうなやみがあり、そのしゅんかんかのじょがおれのはいごで「きゃーっ!!」)
吸い込まれそうな闇があり、その瞬間彼女が俺の背後で「キャーッ!!」
(というぜっきょうをあげたのだった。)
という絶叫を上げたのだった。
(じゅみょうがかくじつにちぢむようなしょうげきをうけて、おれはそれでもどあのぶを)
寿命が確実に縮むような衝撃を受けて、俺はそれでもドアノブを
(はなさなかった。しつないはくらく、なにもみえない。)
離さなかった。室内は暗く、何も見えない。
(くらさになれたはずのめにもみえないのに。いったいかのじょはなににさけんだのか。)
暗さに慣れたはずの目にも見えないのに。一体彼女は何に叫んだのか。
(じっとやみをみつめた。なかにはいろうとするが、じばのようなものに)
じっと闇を見つめた。中に入ろうとするが、磁場のようなものに
(からだがきょひされているようにうごけない。)
体が拒否されているように動けない。
(いや、たんにびびっていただけなのだろう。)
いや、たんにビビッていただけなのだろう。
(おれはしばらくそのままのしせいでいたが、やがてくびだけをめぐらせて)
俺はしばらくそのままの姿勢でいたが、やがて首だけを巡らせて
(うしろをむこうとした。いったいかのじょはなににさけんだのか。)
後ろを向こうとした。一体彼女は何に叫んだのか。
(そのとき、あることにきがついた。このろうかのいっかくは、あまりにしずかだった。)
そのとき、あることに気がついた。この廊下の一角は、あまりに静かだった。
(やってきたときとかわらずに。)
やってきたときと変わらずに。
(さっきのかのじょのさけびごえに、このさーくるとうのだれも、ようすをみにこない。)
さっきの彼女の叫び声に、このサークル棟の誰も、様子を見に来ない。
(ちゅうとはんぱないちでとまったあたまの、そのしせんのはしでかのじょがかべぎわに)
中途半端な位置で止まった頭の、その視線の端で彼女が壁際に
(たっているのがみえる。)
立っているのが見える。
(しかしそのすがたが、うすやみのなかにまじるようにきはくになっていき、おれのしかいの)
しかしその姿が、薄闇の中に混じるように希薄になって行き、俺の視界の
(なかでおともなく、さっきまでひとだったものが、)
中で音も無く、さっきまで人だったものが、
(「けはい」になっていこうとしていた。)
「気配」になって行こうとしていた。
(どあのむこうのやみから、なにかめにみえないてのようなものがのびてくる)
ドアの向こうの闇から、なにか目に見えない手のようなものが伸びてくる
(いめーじがあたまにうかび、おれはどあのぶからてをはなしてにげた。)
イメージが頭に浮かび、俺はドアノブから手を離して逃げた。
(はいごでどあがとじるおとがきこえ、かのじょのけはいが)
背後でドアが閉じる音が聞こえ、彼女の気配が
(そのなかへきえていったようなきがした。)
その中へ消えていったような気がした。
(じぶんのぶしつにもどると、みんなさっきとおなじかっこうでおなじことをしていた。)
自分の部室に戻ると、みんなさっきと同じ格好で同じことをしていた。
(むねをおさえてすわりこむと、ししょうがうすめをあけて「むししろっていったのに」)
胸を押さえて座り込むと、師匠が薄目を開けて「無視しろって言ったのに」
(とつぶやいてまたねはじめた。)
と呟いてまた寝はじめた。
(まりおはたいむおーばーでしんでいた。)
マリオはタイムオーバーで死んでいた。
(そのあと、ときどきあのさーくるとうのはしのいっかくをきにして、)
その後、ときどきあのサークル棟の端の一角を気にして、
(とおりすがりにろうかからのぞきこむことがあった。)
通りすがりに廊下から覗き込むことがあった。
(ひるまはなにごともないが、ひとけのないよるには、あのどあのまえのあたりに)
昼間は何事もないが、ひとけのない夜には、あのドアの前のあたりに
(ひとかげのようなものをみることがあった。)
人影のようなものを見ることがあった。
(しかしだいがくをそつぎょうするまでもうにどとちかづくことはなかった。。)
しかし大学を卒業するまでもう二度と近づくことはなかった。。