10円-1-
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | tetsumi | 5355 | B++ | 5.5 | 97.0% | 750.4 | 4147 | 128 | 78 | 2024/10/01 |
2 | Shion | 3102 | E++ | 3.1 | 97.6% | 1293.9 | 4114 | 100 | 78 | 2024/10/03 |
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問題文
(だいがくいっかいせいのはる。きゅうじつにぼくはじてんしゃでまちにでていた。)
大学1回生の春。休日に僕は自転車で街に出ていた。
(まだそのあたらしいまちになれていないころで、ふるぎやなど)
まだその新しい街に慣れていないころで、古着屋など
(きのきいたみせをしらないぼくは、とりあえずちゅうしんがいのおおきなひゃっかてんにはいり)
気の利いた店を知らない僕は、とりあえず中心街の大きな百貨店に入り
(めんずふくなどをぶっしょくしながらうろうろしていた。)
メンズ服などを物色しながらうろうろしていた。
(そのてなんとのひとつにちいさなぺっとしょっぷがあり)
そのテナントの一つに小さなペットショップがあり
(なにげなくたちよってみると、みおぼえのあるひとがはむすたーのこーなーにいた。)
何気なく立ち寄ってみると、見覚えのある人がハムスターのコーナーにいた。
(こしをかがめて、おちつきのないちいさなどうぶつのうごきを)
腰を屈めて、落ち着きのない小さな動物の動きを
(ねっしんにめでおいかけている。いっしゅんだれだったかおもいだせなかったが、)
熱心に目で追いかけている。一瞬誰だったか思い出せなかったが、
(すぐについこのあいだおふかいであったひとだとわかる。)
すぐについこのあいだオフ会で会った人だと分かる。
(じもとのおかるとけいねっとけいじばんにでいりしはじめたころだった。)
地元のオカルト系ネット掲示板に出入りし始めたころだった。
(かのじょもこちらのしせんにきづいたようで、かおをあげた)
彼女もこちらの視線に気づいたようで、顔を上げた
(「あ、こないだの」「あ、どうも」)
「あ、こないだの」「あ、どうも」
(とりあえずそんなあいさつをかわしたが、かのじょがひとさしゆびをみけんにあてて)
とりあえずそんな挨拶を交わしたが、彼女が人差し指を眉間にあてて
(「あー、なんだっけ。はんどるねーむ」というので、ぼくはほんみょうをなのった。)
「あー、なんだっけ。ハンドルネーム」と言うので、僕は本名を名乗った。
(かのじょのはんどるねーむはたしかきょうすけといったはずだ。)
彼女のハンドルネームは確か京介と言ったはずだ。
(すこしとしうえでせのたかいじょせいだった。)
少し年上で背の高い女性だった。
(かいものかときくので、みてるだけですとこたえると)
買い物かと聞くので、見てるだけですと答えると
(「ちょっとつきあわないか」といわれた。どきどきした。)
「ちょっとつきあわないか」と言われた。ドキドキした。
(おとこからみてもかっこよくて、いっしょにあるいているだけでなんだか)
男から見てもカッコよくて、一緒に歩いているだけでなんだか
(じまんげなきもちになるようなひとだったから。)
自慢げな気持ちになるような人だったから。
(「はい」とこたえたものの「ちょっとまて」とてでせいされ、)
「はい」と答えたものの「ちょっと待て」と手で制され、
(ぼくはかのじょがなっとくいくまではむすたーをかんさつするのをまつはめになった。)
僕は彼女が納得いくまでハムスターを観察するのを待つはめになった。
(へんなひとだ、とおもった。)
変な人だ、と思った。
(きょうすけさんは「のどがかわいたな」といい、ひゃっかてんないのきっさてんに)
京介さんは「喉が渇いたな」と言い、百貨店内の喫茶店に
(ぼくをつれていった。むかいあってせきにすわり、せんじつのおふかいで)
僕を連れて行った。向かい合って席に座り、先日のオフ会で
(ぼくがこうむったきょうふたいけんのことをしばしかたりあった。)
僕がこうむった恐怖体験のことを暫し語り合った。
(きさくなふんいきのひとではないが、ききじょうずというのか、)
気さくな雰囲気の人ではないが、聞き上手というのか、
(そのさばさばしたあいづちにこちらのいいたいことが)
そのさばさばした相槌にこちらの言いたいことが
(すむーずにながれでるようなかんじだった。けれど、ぼくはかのじょのひょうじょうに)
スムーズに流れ出るような感じだった。けれど、僕は彼女の表情に
(ふとしたしゅんかんにうかぶかげのようなものをかんじて、)
ふとした瞬間に浮かぶ陰のようなものを感じて、
(それがかいわのびみょうないわかんになっていった。)
それが会話の微妙な違和感になっていった。
(はなしがとぎれ、ふたりともじぶんののみものにてをのばす。)
話が途切れ、二人とも自分の飲み物に手を伸ばす。
(きゅうにしゅういのざつおんがおおきくなったきがした。)
急に周囲の雑音が大きくなった気がした。
(もともとひとみしりするほうで、こういうきんちょうかんにたえられないたちのぼくは、)
もともと人見知りするほうで、こういう緊張感に耐えられないたちの僕は、
(なんとかわだいをさがそうとあたまをかいてんさせた。)
なんとか話題を探そうと頭を回転させた。
(そしてとくにふかいかんがえもなく、こんなことをくちばしった。)
そして特に深い考えもなく、こんなことを口走った。
(「ぼく、れいかんがつよいほうなんですけど、このびるにはいったときから)
「僕、霊感が強いほうなんですけど、このビルに入った時から
(なんかくびすじがちりちりしてへんなかんじなんですよね」)
なんか首筋がチリチリして変な感じなんですよね」
(でまかせだった。おかるとがすきなひとなら、こういうはなしに)
デマカセだった。オカルトが好きな人なら、こういう話に
(のってくるんじゃないかという、ただそれだけのいとだった。)
乗ってくるんじゃないかという、ただそれだけの意図だった。
(ところがきょうすけさんのめがほそくなり、きゅうにひきしまったようなかおをした。)
ところが京介さんの目が細くなり、急に引き締まったような顔をした。
(「そうか」なにかまずいことをいっただろうか、とふあんになった。)
「そうか」なにか不味いことを言っただろうか、と不安になった。
(「このあたりは」とこーひーをおいてくちをひらく。)
「このあたりは」とコーヒーを置いて口を開く。
(「このあたりはせんじちゅうにはげしいくうしゅうがあったんだ。b29のへんたいが)
「このあたりは戦時中に激しい空襲があったんだ。B29の編隊が
(そらをおおって、しょういだんからのがれてこのみせのちかににげこんだひとたちが)
空を覆って、焼夷弾から逃れてこの店の地下に逃げ込んだ人たちが
(おおぜいいたんだけど、けむりとほのおにまかれて、)
大勢いたんだけど、煙と炎に巻かれて、
(にげばもなくなってみんなしんでいった」)
逃げ場もなくなってみんな死んでいった」
(たんたんとかたるそのくちょうにはひなんめいたものも、こうきも、いかりもなかった。)
淡々と語るその口調には非難めいたものも、好奇も、怒りもなかった。
(ただかたることにしんしだった。)
ただ語ることに真摯だった。
(ぼくはそのとき、このじょせいがじもとのうまれなんだとわかった。)
僕はそのとき、この女性が地元の生まれなんだとわかった。
(「まだよるもあけないじかんだったそうだ」)
「まだ夜も明けない時間だったそうだ」
(そういって、ふたたびかっぷにてをのばす。)
そう言って、再びカップに手を伸ばす。
(こうかいした。むせきにんなことをいうんじゃなかった。なさけなくてきがめいった。)
後悔した。無責任なことを言うんじゃなかった。情けなくて気が滅入った。
(きょうすけさんはしばしてんじょうのあたりにしせんをただよわせていたが、ぼくのようすをみて)
京介さんは暫し天井のあたりに視線を漂わせていたが、僕の様子を見て
(「おい」とみをのりだした。そして、「げんきだせしょうねん」とわらい、)
「オイ」と身を乗り出した。そして、「元気出せ少年」と笑い、
(「いいものみせてやるから」とじーんずのぽけっとをさぐりはじめた。)
「いいもの見せてやるから」とジーンズのポケットを探り始めた。
(なんだろうとおもうぼくのめのまえできょうすけさんはくろいさいふをとりだし、)
なんだろうと思う僕の目の前で京介さんは黒い財布を取り出し、
(なかからこうかをいちまいだしててーぶるのうえにおいた。10えんだまだった。)
中から硬貨を1枚出してテーブルの上に置いた。10円玉だった。
(なんのへんてつもないようにみえる。)
なんの変哲もないように見える。
(うなずくのでてにとってみると、ひょうにはなにもないがじゅうとかいてある)
頷くので手にとってみると、表には何もないが10と書いてある
(うらめんをかえすとそこにはみなれないもようがあった。)
裏面を返すとそこには見慣れない模様があった。
(しょうわごまるねんとこくいんされているそのしたに、なにかえいりなもので)
昭和5○年と刻印されているその下に、なにか鋭利なもので
(つけられたとおぼしききずがある。ちいさくてみえづらいが「k&c」とよめる。)
つけられたと思しき傷がある。小さくて見え辛いが「K&C」と読める。
(これは?ととうと、わたしがほったという。)
これは?と問うと、私が彫ったと言う。
(はんざいじゃないかとおもったが、つっこまなかった。)
犯罪じゃないかと思ったが、突っ込まなかった。
(「こういちだったかな。15さいだったから、なんねんまえだ・・・・・・ろくねんくらいか。)
「高1だったかな。15歳だったから、何年前だ・・・・・・6年くらいか。
(がっこうでともだちとこっくりさんをしたんだよ。)
学校で友だちとこっくりさんをしたんだよ。
(じぶんたちはれいこんさまってよんでたけど。それでつかいおわった10えんをさ、)
自分たちは霊魂さまって呼んでたけど。それで使い終わった10円をさ、
(もってちゃだめだっていうはなしきいたことあるとおもうけど、)
持ってちゃダメだっていう話聞いたことあると思うけど、
(わたしたちのあいだでもすぐにつかわなきゃいけない、なんていうはなしになって)
私たちの間でもすぐに使わなきゃいけない、なんていう話になって
(たしかぱんやでじゅーすかなにかをかったんだよ」)
確かパン屋でジュースかなにかを買ったんだよ」
(ぼくもけいけんがある。ぼくのばあいは、こっくりさんでつかったかみもちかくのいなりで)
僕も経験がある。僕の場合は、こっくりさんで使った紙も近くの稲荷で
(もやしたりした。)
燃やしたりした。
(「つかうまえにちょっとしたいたずらをかんがえた。そのころはやってたうわさに、)
「使う前にちょっとしたイタズラを考えた。そのころ流行ってた噂に、
(そうしてつかったじゅうえんがなんどもじぶんのてもとにかえってくるっていう)
そうして使った10円がなんども自分の手元に還って来るっていう
(かいだんがあった。でもどうして、そのじゅうえんがじぶんがつかったやつだって)
怪談があった。でもどうして、その10円が自分が使ったやつだって
(わかるんだろうとつねづねぎもんだった。だからかえってきたらわかるように、)
わかるんだろうと常々疑問だった。だから還ってきたらわかるように、
(さいんをしたんだ」)
サインをしたんだ」