10円-2-(完)

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(それがここにあるということは・・・・・・)

それがここにあるということは・・・・・・

(「そう。そんなことがあったなんてかんぺきにわすれてたのに、)

「そう。そんなことがあったなんて完璧に忘れてたのに、

(かえってきたんだよいまごろ」よっかまえにこんびにでもらったおつりのなかに、)

還って来たんだよ今ごろ」4日前にコンビニでもらったお釣りの中に、

(へんなきずがついてるじゅうえんだまがあるとおもったらまさしく)

変な傷がついてる10円玉があると思ったらまさしく

(そのれいこんさまでしようしたじゅうえんだまだったのだという。びみょうだ。とおもった。)

その霊魂さまで使用した10円玉だったのだと言う。微妙だ。と思った。

(じゅうえんだまがせけんになんまいりゅうつうしているのかしらないが、)

10円玉が世間に何枚流通しているのか知らないが、

(しょせんおなじしないのできごとだ。ぼくらはまいにちのようにおかねのやりとりをしてる。)

所詮同じ市内の出来事だ。僕らは毎日のようにお金のやりとりをしてる。

(ろくねんもたてばいちどくらいおなじこうかがてもとにくることもあるだろう。)

6年も経てば一度くらい同じ硬貨が手元に来ることもあるだろう。

(ふだんはじゅうえんだまなんてものをこたいとしてかんがえないから)

普段は10円玉なんてものを個体として考えないから

(いしきしていないだけで、あんがいままあることなのかもしれない。)

意識していないだけで、案外ままあることなのかも知れない。

(ただたしかにそのいわくがついたじゅうえんだまが、というところはきみょうではある。)

ただ確かにその曰くがついた10円玉が、という所は奇妙ではある。

(「どこでつかわれて、なんにんのひとがつかって、わたしのところまで)

「どこで使われて、何人の人が使って、私のところまで

(もどってきたんだろうなあ」かんがいぶかげにきょうすけさんはじゅうえんだまをしょうめいにかざす。)

戻って来たんだろうなあ」感慨深げに京介さんは10円玉を照明にかざす。

(ぼくは、なぜかすくわれたようなきもちになった。)

僕は、なぜか救われたような気持ちになった。

(きっさてんをでるとき、「おごってやる」というきょうすけさんにきょうしゅくしつつも)

喫茶店を出るとき、「奢ってやる」という京介さんに恐縮しつつも

(おことばにあまえようとかまえていると、めをうたがうこうけいをみた。)

お言葉に甘えようと構えていると、目を疑う光景を見た。

(れじでそのじゅうえんだまをつかおうとしていたのだ。)

レジでその10円玉を使おうとしていたのだ。

(「ちょっとちょっと」ととめようとするぼくをせいして)

「ちょっとちょっと」と止めようとする僕を制して

(「いいから」ときょうすけさんはかいけいをすませてしまった。)

「いいから」と京介さんは会計を済ませてしまった。

(ありがとうございましたとおじぎしたてんいんには、どっちがはらうかで)

ありがとうございましたとお辞儀した店員には、どっちが払うかで

など

(もめるきゃくのようにみえたかもしれない。)

揉める客のように見えたかもしれない。

(あるきながらぼくは「どうしてですか」とといかけた。)

歩きながら僕は「どうしてですか」と問いかけた。

(だって、そんなきせきてきなできごとのあかしなのだから、)

だって、そんな奇跡的な出来事の証しなのだから、

(とうぜんじぶんじしんにとってじゅうえんどころのかちではないたからものになるはずだ。)

当然自分自身にとって10円どころの価値ではない宝物になるはずだ。

(しかしきょうすけさんは「またかえってきたら、おもしろいじゃないか」と)

しかし京介さんは「また還って来たら、面白いじゃないか」と

(あっさりといいはなった。)

あっさりと言い放った。

(きくと、そのじゅうえんだまがてもとにもどってきたときからきめていたのだという。)

聞くと、その10円玉が手元に戻って来た時から決めていたのだと言う。

(ただじゅうえんだまをしはらいにつかうきかいがいままでたまたまなかっただけなのだと。)

ただ10円玉を支払いに使う機会が今まで偶々なかっただけなのだと。

(ほはばが、ぼくよりもひろい。すこしはやあしでおいかける。)

歩幅が、僕よりも広い。少し早足で追いかける。

(そのあるきかたに、まよいないいきかたをしてきたひとだという、)

その歩き方に、迷いない生き方をして来た人だという、

(あこがれともそんけいともつかないかんじょうがわきおこったのをおぼえている。)

憧れとも尊敬ともつかない感情が沸き起こったのを覚えている。

(おいついてよこにならんだぼくに、きょうすけさんはおもいついたようにいった。)

追いついて横に並んだ僕に、京介さんは思いついたように言った。

(「おごるひつようがあっただろうか」そんなことをいまさらいわれてもこまる。)

「奢る必要があっただろうか」そんなことを今さら言われても困る。

(「わたしのほうがとしうえだけど、わたしはおんなでそっちはおとこだ」)

「私の方が年上だけど、私は女でそっちは男だ」

(ちょっとまゆにしわをよせてかんがえている。)

ちょっと眉に皺を寄せて考えている。

(そしててつがくをかたるようなまじめなくちょうでいうのである。)

そして哲学を語るような真面目な口調で言うのである。

(「あのこーひーだけだと、じゅうえんだまはつかわなかったはずだ。)

「あのコーヒーだけだと、10円玉は使わなかったはずだ。

(おれんじじゅーすがくわわってはじめてじゅうえんだまがでていくきんがくになる」)

オレンジジュースが加わってはじめて10円玉が出て行く金額になる」

(これはのーふぇいとかもしれない。)

これはノー・フェイトかも知れない。

(そんなことばをつぶやいてにがわらいをうかべている。)

そんな言葉を呟いて苦笑いを浮かべている。

(そのいみはわからなかったけれど、かのじょのくちからおどるそのことばを)

その意味はわからなかったけれど、彼女の口から踊るその言葉を

(とてもきれいだとおもった。おもえばk&cときざまれたじゅうえんだまが)

とても綺麗だと思った。思えばK&Cと刻まれた10円玉が

(きょうすけさんのもとへとかえってきたのは、そのあとにおこったやっかいな)

京介さんのもとへと還って来たのは、そのあとに起こったやっかいな

(できごとのきざしだったのかもしれない。)

出来事の兆しだったのかも知れない。

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