図書館-1-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(だいがくにかいせいのとき、しゅっせきしなくてもれぽーとだけていしゅつすれば)

大学2回生のとき、出席しなくてもレポートだけ提出すれば

(すくなくともかはくれるというきょうじゅのこうぎをとっていた。)

少なくとも可はくれるという教授の講義をとっていた。

(ききとしてりしゅうとどけをだしたにもかかわらず、いざれぽーとのていしゅつじきになると)

嬉々として履修届けを出したにも関わらず、いざレポートの提出時期になると

(「なんでこんなことしなきゃいけないんだ」とむかむかしてくる。)

「なんでこんなことしなきゃいけないんだ」とムカムカしてくる。

(さいていのがくせいだったとわれながらじゅっかいする。)

最低の学生だったと我ながら述懐する。

(ともかく、いついらいかというだいがくふぞくとしょかんにさんこうしりょうをさがしにいった。)

ともかく、何時以来かという大学付属図書館に参考資料を探しに行った。

(idかーどをとおしてげーとをくぐり、どうしてみなこんなにべんきょうねっしんなんだ)

IDカードを通してゲートをくぐり、どうして皆こんなに勉強熱心なんだ

(とおもうほどのがくせいでごったがえすふろあをうろうろする。こんなにくらかったっけ。)

と思うほどの学生でごった返すフロアをうろうろする。こんなに暗かったっけ。

(ふとおもった。いや、たかいてんじょうからしょうめいはめいめいとふろあじゅうをてらしている。)

ふと思った。いや、高い天井から照明は明々とフロア中を照らしている。

(めをこする。きょうどしりょうがおいてあるいっかくの、ひかりのかげんがおかしい。)

目を擦る。郷土資料が置いてある一角の、光の加減がおかしい。

(みょうにくらいきがする。うえをみても、けいこうとうがきれているぶぶんはない。)

妙に暗い気がする。上を見ても、蛍光灯が切れている部分はない。

(おれがくびをかしげているそのとき、めがねをかけただんしがくせいがそのいっかくをよこぎった。)

俺が首を傾げているその時、眼鏡をかけた男子学生がその一角を横切った。

(すっと、おれのめにくらくみえるぶぶんをさけて。)

スッと、俺の目に暗く見える部分を避けて。

(けっしてふしぜんではないあしはこびだった。)

けっして不自然ではない足運びだった。

(ほんにんもどうしてそんなうごきをしたのか、いちびょうごにはおもいだせないだろう。)

本人もどうしてそんな動きをしたのか、1秒後には思い出せないだろう。

(ぜんぜんきょうみのないきょうどしをてにとろうと、ちかづいてみる。)

全然興味のない郷土史を手に取ろうと、近づいてみる。

(そのほんだなのかすかなかげにみぎあしがはいったとたん、すごく、いやなかんじがした。)

その本棚のかすかな陰に右足が入った途端、すごく、嫌な感じがした。

(いやなよかんというのはきっとだれでもけいけんしたことがあるだろう。)

嫌な予感というのはきっと誰でも経験したことがあるだろう。

(そのいやなよかんを、なんいうか、はらのしたのあたりに)

その嫌な予感を、なんいうか、腹の下のあたりに

(ゆっくりとおろしてきたような、そんなかんかく。)

ゆっくりと降ろしてきたような、そんな感覚。

など

(けっしてぜったいてきにきょぜつしたいわけではないけれど、)

けっして絶対的に拒絶したいわけではないけれど、

(ふれずにすむならそれにこしたことはない。)

触れずに済むならそれにこしたことはない。

(ひとさしゆびまでかけたぶあついそうていのほんをもとのいちにもどす。これはなんだろう。)

人差し指まで掛けた分厚い装丁の本を元の位置に戻す。これはなんだろう。

(れぽーとのためのしりょうさがしなどすっかりわすれて、おれはとしょかんないを)

レポートのための資料探しなどすっかり忘れて、俺は図書館内を

(あるきまわった。そしてそんなえあぽけっとのようなばしょをいくつかはっけんした。)

歩き回った。そしてそんなエアポケットのような場所をいくつか発見した。

(とおくからそうしたばしょをかんさつしていると、あしをふみいれるひとが)

遠くからそうした場所を観察していると、足を踏み入れる人が

(やはりすくないことにきづく。もくてきのほんがあってまよいなく)

やはり少ないことに気づく。目的の本があって迷いなく

(そちらへむかうひともいるが、ただたんにどんなほんがあるかみてまわっているだけと)

そちらへ向かう人もいるが、ただ単にどんな本があるか見て回っているだけと

(おぼしきひとは、ほぼれいがいなくそのえあぽけっとをさけている。)

思しき人は、ほぼ例外なくそのエアポケットを避けている。

(そのすぽっとのほんのしゅるいはさまざまだ。これはいったいなんなのだろう。)

そのスポットの本の種類は様々だ。これは一体なんなのだろう。

(いっかいせいのころにはかんじられなかった。おれはだいがくにゅうがくいらいおかるとずきがこうじて、)

1回生の頃には感じられなかった。俺は大学入学以来オカルト好きが高じて、

(いろいろなこわいものにくびをつっこみつづけたけっか、)

いろいろな怖いものに首を突っ込み続けた結果、

(あきらかにれいかんというのか、あるほうめんにむいたいんすぴれいしょんが)

明らかに霊感というのか、ある方面に向いたインスピレイションが

(たかまっていた。それがげんいんとしかおもえない。)

高まっていた。それが原因としか思えない。

(しかし、このえあぽけっとからはちょくさいてきにれいてきなものはかんじない。とおもう。)

しかし、このエアポケットからは直截的に霊的なものは感じない。と思う。

(でもたんじゅんにおれのちょっかんがいたらないだけなのかもしれない。)

でも単純に俺の直感が至らないだけなのかも知れない。

(そこでいちばんいやなかんじのするばしょに、あえてふみこんでみた。)

そこで一番嫌な感じのする場所に、あえて踏み込んでみた。

(しゅういのめもあるので、てきとうにつかんだほんをひらいてそのばにたちつづける。)

周囲の目もあるので、適当に掴んだ本を開いてその場に立ち続ける。

(いやなよかんをぐるぐるとうずまきじょうにしたようなものが、)

嫌な予感をぐるぐると渦巻状にしたようなものが、

(かはんしんにずーんとたまっていく。だんだんとまわりのひかりがきはくになり、)

下半身にズーンと溜まっていく。段々と周りの光が希薄になり、

(さんそがたりてないときのようにしかいがくらくなって、そしてすぐとなりで)

酸素が足りてない時のように視界が暗くなって、そしてすぐ隣で

(おなじようにほんをたちよみしているひとがとまったまま)

同じように本を立ち読みしている人が止まったまま

(とおざかっていくような、ざつおんがきえていくような、)

遠ざかっていくような、雑音が消えていくような、

(きあつがひくくなっていくような・・・・・・おもわずとびずさった。)

気圧が低くなっていくような……思わず飛びずさった。

(なにもかんじないらしいとなりのひとが、なんだろうというひょうじょうでこちらをみる。)

何も感じないらしい隣の人が、なんだろうという表情でこちらを見る。

(おれはしらぬまにうかんでいたつめたいあせをぬぐって、)

俺は知らぬ間に浮かんでいた冷たい汗を拭って、

(なげるようにほんをたなにもどしてそのままとしょかんをでた。)

投げるように本を棚に戻してそのまま図書館を出た。

(ごじつさーくるのせんぱいにそのはなしをした。)

後日サークルの先輩にその話をした。

(おれをこわいものにくびをつっこませつづけたちょうほんにんであり、)

俺を怖いものに首をつっこませ続けた張本人であり、

(ししょうかぜをやたらとふかせるひとだ。「ああ、きゅうとしょかんか」)

師匠風をやたらと吹かせる人だ。「ああ、旧図書館か」

(したりがおでがてんがてんする。あそこは、いろいろあってね。)

したり顔で合点がてんする。あそこは、いろいろあってね。

(そうつづけて、おれのかおをしょうめんからみすえてから)

そう続けて、俺の顔を正面から見据えてから

(「きょうみがある?」ときいてきた。ないわけはない。)

「興味がある?」と聞いてきた。ないわけはない。

(つれられるままにゆうがた、としょかんのげーとをくぐった。「あそこですけど」)

つれられるままに夕方、図書館のゲートをくぐった。「あそこですけど」

(とおりすぎようとするししょうに、ほんだなのならぶいっかくをしめす。)

通り過ぎようとする師匠に、本棚の並ぶ一角を示す。

(それをむしするようにあしばやにすすむので、しかたなしにおいかけた。)

それを無視するように足早に進むので、仕方なしに追いかけた。

(しょこへむかっていた。)

書庫へ向かっていた。

(なんどかはいったことはあったがうすぐらく、かびくさいような)

何度か入ったことはあったが薄暗く、かび臭いような

(どくとくのくうきがすきになれないばしょだった。)

独特の空気が好きになれない場所だった。

(それに、しょこにあるようなほんはいっぱんのぐーたらがくせいにはえんどおい。)

それに、書庫にあるような本は一般のぐーたら学生には縁遠い。

(「たいみんぐがじゅうようだ」)

「タイミングが重要だ」

(でいりぐちにかぎはかかるが、いまはまだふりーにでいりできる。)

出入り口に鍵は掛かるが、今はまだフリーに出入りできる。

(ししょうはしょこにはいるとおれにめくばせをしながら、あるすぺーすにみをひそめた。)

師匠は書庫に入ると俺に目配せをしながら、あるスペースに身を潜めた。

(おれもつづく。だれにもみられなかったとおもうが、すこしきんちょうした。)

俺も続く。誰にも見られなかったと思うが、少し緊張した。

(ここで、じかんを、つぶす。ししょうがこえをひそめてそういった。)

ここで、時間を、潰す。師匠が声を顰めてそう言った。

(どうやらよるのとしょかんにようがあるらしい。)

どうやら夜の図書館に用があるらしい。

(みまわりのしょくいんのめからろすとするために、すがたをかくしたのだ。)

見回りの職員の目からロストするために、姿を隠したのだ。

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