田舎 前編-2-(完)

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(「う~ん」といったあと、もうたねあかしをするのはもったいないな、)

「う~ん」と言ったあと、もう種明かしをするのはもったいないな、

(というふうをよそおいながらも、ししょうはおれのいなかにつたわる)

という風を装いながらも、師匠は俺の田舎に伝わる

(みんかんしんこうのなまえをあげた。なんだ。そんなひょうしぬけするようなかんじがした。)

民間信仰の名前を挙げた。なんだ。そんな拍子抜けするような感じがした。

(いなかでせいかつするなかでわりとみみにするきかいのあるなまえだった。)

田舎で生活する中でわりと耳にする機会のある名前だった。

(べつだんとくべつなものといういんしょうはない。)

別段特別なものという印象はない。

(ぐたいてきにどんなものかといわれるとすこしでてこないが、)

具体的にどんなものかと言われると少し出てこないが、

(まあこまったことがあったら、たゆう(たゆう)さんをよんで)

まあ困ったことがあったら、太夫(たゆう)さんを呼んで

(おがんでもらうというようないめーじだ。)

拝んでもらうというようなイメージだ。

(それはいなかでのせいかつのなかにしぜんにそんざいしていたもので、)

それは田舎での生活の中に自然に存在していたもので、

(べつだんあやしげなものでもない。)

別段怪しげなものでもない。

(もっとも、いちどかにど、ちいさいときになにかのぎしきをみたきおくがあるだけで、)

もっとも、一度か二度、小さいときになにかの儀式を見た記憶があるだけで、

(どういうものかはじっさいはよくわからない。)

どういうものかは実際はよくわからない。

(どうしてししょうがそんなまいなーなじもとのしんこうをしっているのだろうと、)

どうして師匠がそんなマイナーな地元の信仰を知っているのだろうと、

(ふとおもった。きょうすけさんもやっぱりそれにたいしてはんのうしたのだろうか。)

ふと思った。京介さんもやっぱりそれに対して反応したのだろうか。

(「それ、なんですか」まどのそとにひろがるうみをほおづえをついて)

「それ、なんですか」窓の外に広がる海を頬杖をついて

(みていたししょうのくびすじに、ひものようなものがみえた。)

見ていた師匠の首筋に、紐のようなものが見えた。

(「あくせ」こっちをみもせずにそういったものの、)

「アクセ」こっちを見もせずにそう言ったものの、

(ししょうがあくせさりーのるいをつけるところをみたことがないおれはくびをひねった。)

師匠がアクセサリーの類をつけるところを見たことがない俺は首を捻った。

(おれのしせんをかんじたのかむなもとにてをあてて、ししょうはかすかにわらった。)

俺の視線を感じたのか胸元に手をあてて、師匠はかすかに笑った。

(そのしゅんかん、なんともいえないいやなよかんにおそわれたのだった。)

その瞬間、なんとも言えない嫌な予感に襲われたのだった。

など

(がたんがたんとでんしゃがせんろのれんけつぶではねるおとがおおきくなったきがして、)

ガタンガタンと電車が線路の連結部で跳ねる音が大きくなった気がして、

(おれはりゆうもなくしゃないをみまわした。)

俺は理由もなく車内を見回した。

(いくつかのえきでとまったあと、でんしゃはとりあえずのもくてきちについた。)

いくつかの駅で停まったあと、電車はとりあえずの目的地についた。

(「ひどいえき」とかいこういちばん、ししょうはわがこきょうのえきをばかにした。)

「ひどイ駅」と開口一番、師匠は我が故郷の駅をバカにした。

(えきしゅうへんにあるやしのきをゆびさしてげらげらわらうししょうをつれてまちをあるく。)

駅周辺にある椰子の木を指差してゲラゲラ笑う師匠を連れて街を歩く。

(「おくれて」くるcocoさんをまつあいだ、ひるめしをはらにいれるためだ。)

「遅れて」来るCoCoさんを待つ間、昼飯を腹に入れるためだ。

(とちゅう、ぼーりんぐじょうのまえにあるでんしんばしらにたちよった。)

途中、ボーリング場の前にある電信柱に立ち寄った。

(じもとではつうのあいだでゆうめいなしんれいすぽっとだ。)

地元では通の間で有名な心霊スポットだ。

(よなか、そのまえをあるくとでんしんばしらによりそうようにたつかげをみるという。)

夜中、その前を歩くと電信柱に寄り添うように立つ影を見るという。

(みたあとどんなめにあうかというぶぶんは、さまざまなヴぁりえーしょんがそんざいする。)

見たあとどんな目に会うかという部分は、様々なヴァリエーションが存在する。

(はなしをきいたししょうは「ふーん」とはなでへんじをしてしゅういをかんさつしていたかとおもうと、)

話を聞いた師匠は「ふーん」と鼻で返事をして周囲を観察していたかと思うと、

(やがてきょうみをなくしてくびをふった。)

やがて興味を無くして首を振った。

(さきにすすみながらししょうをふりかえり、「どうでした」ときくと、)

先に進みながら師匠を振り返り、「どうでした」と聞くと、

(tしゃつのえりもとをぱたぱたさせながら「なにかいるっぽい」といった。)

Tシャツの襟元をパタパタさせながら「なにかいるっぽい」と言った。

(なにかいるっぽいけど、よくわかんない。)

なにかいるっぽいけど、よくわかんない。

(よくわかんないってことは、たいしたことない。)

よくわかんないってことは、大したことない。

(たいしたことないってことは、よけいにあるいてあついってことだよ。)

大したことないってことは、よけいに歩いて暑いってことだよ。

(ふまんげにそういうのだった。たしかにあついひだった。)

不満げにそう言うのだった。確かに暑い日だった。

(ほんかくてきなあきがくるまえのさいごのじねつがそこかしこから)

本格的な秋が来る前の最後の地熱がそこかしこから

(ふきあがってきているようだった。)

吹き上がって来ているようだった。

(ししょうが「さわちりょうりがくいたい」と、まるでとるこにりょこうした)

師匠が「サワチ料理が食いたい」と、まるでトルコに旅行した

(にほんじんがいきなりししけばぶをたべたがるようなことをいうので、)

日本人がいきなりシシケバブを食べたがるようなことを言うので、

(ひるからたべるものではないということをくしんしてなっとくさせ、)

昼から食べるものではないということを苦心して納得させ、

(ふたりでそばをたべた。あーけーどがいをぶらぶらとさんさくしたあとえきにもどると、)

二人で蕎麦を食べた。アーケード街をぶらぶらと散策したあと駅に戻ると、

(わんぴーすすがたのcocoさんといつもとおなじじゃけっと&じーんずの)

ワンピース姿のCoCoさんといつもと同じジャケット&ジーンズの

(きょうすけさんがちょうどかいさつをでてくるところだった。)

京介さんがちょうど改札を出て来る所だった。

(「よお」とてをあげかけて、きょうすけさんのうごきがとまる。ししょうもとまる。)

「よお」と手を上げかけて、京介さんの動きが止まる。師匠も止まる。

(とおもったのもつかのま、いっしゅんのすきをつかれてちょーくすりーぱーにとられる。)

と思ったのもつかの間、一瞬の隙をつかれてチョークスリーパーに取られる。

(「なんどひっかけるんだおまえは」あたまのうしろからししょうのこえがする。)

「何度引っ掛けるんだお前は」頭の後ろから師匠の声がする。

(くちょうがわらってない。「なんどひっかかるんですか」)

口調が笑ってない。「何度引っ掛かるんですか」

(おれはみぎてをひっしにうでのすきまにいれようとしながらもつよきにそういった。)

俺は右手を必死に腕の隙間に入れようとしながらも強気にそう言った。

(むこうでは、きびすをかえそうとするきょうすけさんをcocoさんがおしとどめている。)

向こうでは、踵を返そうとする京介さんをCoCoさんが押しとどめている。

(おれとcocoさんのせつめいをちゅうしんに、ししょうがよけいなことをいって)

俺とCocoさんの説明を中心に、師匠がよけいなことを言って

(きょうすけさんがほんきでおこるばめんなどをへて、じつに15ふんご。)

京介さんが本気で怒る場面などを経て、実に15分後。

(「あついし、もういいよ」というきょうすけさんのつかれたようなひとことで、)

「暑いし、もういいよ」という京介さんの疲れたような一言で、

(どうこうよにんというじょうきょうがついにんされることになった。)

同行四人という状況が追認されることになった。

(おもうにこのふたり、きょうつうてんがおおいのがどうぞくけんおとなっているのではないだろうか。)

思うにこの二人、共通点が多いのが同族嫌悪となっているのではないだろうか。

(むるいのおかるとずきであり、じーんずをこよなくあいし、)

無類のオカルト好きであり、ジーンズをこよなく愛し、

(おれというきょうつうのおとうとぶんをもち、それからこのあとにしったのであるが)

俺という共通の弟分を持ち、それからこの後に知ったのであるが

(ふたりともけんどうのゆうだんしゃだった。)

二人とも剣道の有段者だった。

(おれはよくこのふたりをしょうしてじしゃくのえすきょくとえすきょくといった。)

俺はよくこの二人を称して磁石のS極とS極と言った。

(そのときもおたがいのじばのぶんだけきょりをおいていたので、)

その時もお互いの磁場の分だけ距離を置いていたので、

(そのまんなかでcocoさんにだけきこえるようにそのたとえをみみうちすると、)

その真ん中でCoCoさんにだけ聞こえるようにその例えを耳打ちすると、

(かのじょはなにをおもったのか「ふたりともぜったいmだ」と)

彼女は何を思ったのか「二人とも絶対Mだ」と

(わけのわからないだんげんをして、おれにはそのいみが)

わけのわからない断言をして、俺にはその意味が

(そのひのよるまでわからなかった。よるになにかあったわけではない。)

その日の夜までわからなかった。夜になにかあったわけではない。

(ただおれがそれだけにぶかったというはなしだ。)

ただ俺がそれだけ鈍かったという話だ。

(ただひとつ、そのときにきになることがあった。)

ただ一つ、そのときに気になることがあった。

(さっきししょうにちょーくすりーぱーをかけられたときにかんじたふしぎなかおりが、)

さっき師匠にチョークスリーパーを掛けられた時に感じた不思議な香りが、

(かすかにびこうにのこっている。まさかな。)

かすかに鼻腔に残っている。まさかな。

(そうおもってcocoさんをみたが、あいかわらずなにをかんがえているのか)

そう思ってCoCoさんを見たが、あいかわらず何を考えているのか

(よくわからないひょうじょうをしていた。)

よくわからない表情をしていた。

(そうしているうちに、えきのろーたりーにくるまがついた。)

そうしているうちに、駅のロータリーに車がついた。

(よにんのまえでさぎょうぎをきたしょろうのだんせいがくるまからおりながらてをふる。)

四人の前で作業着を着た初老の男性が車から降りながら手を振る。

(おじだった。ばすなりでんしゃなりでいけるよ、とあれほどいったのに)

伯父だった。バスなり電車なりで行けるよ、とあれほど言ったのに

(「ちょうどこっちにでてくるようじがあるき」とくるまでむかえにきてくれたのだった。)

「ちょうどこっちに出てくる用事があるき」と車で迎えに来てくれたのだった。

(ところどころにまあたらしいよごれのついたさぎょうぎをみて、)

ところどころに真新しい汚れのついた作業着を見て、

(そんなようじなんてなかったことはすぐわかる。)

そんな用事なんてなかったことはすぐわかる。

(ひさしぶりのおれのきせいがうれしかったのだろう。)

久しぶりの俺の帰省が嬉しかったのだろう。

(おれがつれてきたしょたいめんのさんにんとあいそよくあくしゅをして、)

俺が連れてきた初対面の3人と愛想よく握手をして、

(「さあのったりのったり」とわらう。ここからむらまではくるまでさんじかんはかかる。)

「さあ乗ったり乗ったり」と笑う。ここから村までは車で3時間は掛かる。

(しゃないでもおじはよくしゃべり、よくわらい、それまでのけんあくなむーどは)

車内でも伯父はよく喋り、よく笑い、それまでの険悪なムードは

(ひとまずかげをひそめた。ひざしのまぶしいこくどうをきもちよくしっそうするくるまの、)

ひとまず影を潜めた。日差しの眩しい国道を気持ち良く疾走する車の、

(まどのむこうにひろがるけしきをながめながら、おれはきてよかったなあと)

窓の向こうに広がる景色を眺めながら、俺は来て良かったなあと

(きのはやいことをかんがえていた。おもえば、そのむるいのおかるとずきが)

気の早いことを考えていた。思えば、その無類のオカルト好きが

(ふたりそろっておれのきせいについてくるといいだしたじたいのいみを、)

二人揃って俺の帰省について来ると言い出した事態の意味を、

(そのときもうすこしかんがえてみるべきだったのかもしれない。)

その時もう少し考えてみるべきだったのかも知れない。

(こうやのしろばかまとわらわれてもしかたがない。)

紺屋の白袴と笑われても仕方がない。

(おれは、おれのるーつでもあるさんかんぶのいんしゅうとふかいやみを、しらなすぎたのだった。)

俺は、俺のルーツでもある山間部の因習と深い闇を、知らな過ぎたのだった。

(だがとりあえずいまのところは、ひたすらにあついひだった。)

だがとりあえず今のところは、ひたすらに暑い日だった。

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