田舎 中編-10-(続)
中編の続きです。
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | tetsumi | 5358 | B++ | 5.5 | 95.9% | 569.7 | 3189 | 136 | 59 | 2024/10/16 |
関連タイピング
-
プレイ回数2.7万歌詞1030打
-
プレイ回数10万歌詞200打
-
プレイ回数25万長文786打
-
プレイ回数74万長文300秒
-
プレイ回数1万313打
-
プレイ回数38歌詞193打
-
プレイ回数15万長文2381打
-
プレイ回数6.7万長文かな313打
問題文
(まるでくみあげたばかりのいどみずのように。)
まるで汲み上げたばかりの井戸水のように。
(「あれはじしんじゃないな。いえがゆれたんだよ」)
「あれは地震じゃないな。家が揺れたんだよ」
(せんせいのいえをなかばおいだされて、にわさきにとめていたくるまにのりこむ。)
先生の家を半ば追い出されて、庭先にとめていた車に乗り込む。
(「いぬかみということばにあきらかにはんのうしていた」)
「犬神という言葉に明らかに反応していた」
(こいつは、なんとしてもさがしださないとな。)
こいつは、なんとしても探し出さないとな。
(ししょうはえんじんをかけながらそういう。)
師匠はエンジンをかけながらそう言う。
(しかしきょうすけさんのきっぱりしたこえが、それをさえぎった。)
しかし京介さんのきっぱりした声が、それを遮った。
(「まった。さがしだしてどうするつもりだ」)
「待った。探し出してどうするつもりだ」
(いちれんのできごとはふつうじゃない。ありえないようなことがたてつづけにおきている。)
一連の出来事は普通じゃない。ありえないようなことが立て続けに起きている。
(へたにくびをつっこみすぎると、きけんだ。)
へたに首を突っ込みすぎると、危険だ。
(ししょうはめのまえにならべられるそんなことばにうすらわらいをうかべて、)
師匠は目の前に並べられるそんな言葉に薄ら笑いを浮かべて、
(「こわいんだ」とあおるようなことをいう。)
「怖いんだ」と煽るようなことを言う。
(きょうすけさんはさすようなしせんをむけると、「そうだよ」といった。)
京介さんは刺すような視線を向けると、「そうだよ」と言った。
(こんこん。くるまのまどをばいくにまたがったままゆきおがたたき、ういんどをおろすと)
コンコン。車の窓をバイクにまたがったままユキオが叩き、ウインドをおろすと
(「さっきはすまざった。せんせい、きょうはきげんがわるかったみたいじゃき。)
「さっきはすまざった。先生、今日は機嫌が悪かったみたいじゃき。
(でもこのあとどうする?ゆかりのしせきとかやったらあんないするけんど」)
でもこのあとどうする? ゆかりの史跡とかやったら案内するけんど」
(とくびをつきだした。すこしかんがえてから、きょうすけさんは)
と首を突き出した。少し考えてから、京介さんは
(「それと、ほかにいざなぎりゅうにくわしいひとがいたらしょうかいしてほしい」といった。)
「それと、他にいざなぎ流に詳しい人がいたら紹介してほしい」と言った。
(「ああ、よしさんやったらたぶんうちにおるき、いってみようか」)
「ああ、ヨシさんやったらたぶん家におるき、いってみようか」
(おれはおもわずししょうをみたが、しあんきなかおをしたあと「ひとりでもどってるよ」という。)
俺は思わず師匠を見たが、思案気な顔をしたあと「一人で戻ってるよ」と言う。
(ばいくかしてくれる?とゆきおにこえをかけながらうんてんせきからおりた。)
バイク貸してくれる?とユキオに声をかけながら運転席から降りた。
(なにもいわず、きょうすけさんがいれかわりにうんてんせきにすわる。)
なにも言わず、京介さんが入れ替わりに運転席に座る。
(じょしゅせきにのりこみながら、ゆきおが「あのいえにとめといてくれたらいいすから」)
助手席に乗り込みながら、ユキオが「あの家にとめといてくれたらいいスから」
(となぜかもうしわけなさそうにいった。)
となぜか申し訳なさそうに言った。
(「ぼくがいないほうが、はなしをきけそうだしな」じゃ、へやでねてるから。)
「僕がいないほうが、話を聞けそうだしな」じゃ、部屋で寝てるから。
(ししょうはそういっててをふった。)
師匠はそう言って手を振った。
(そのとき、ずしんというかるいしんどうがおしりのあたりにひびいた。おもわずしゅういをみまわす。)
その時、ズシンという軽い振動がお尻のあたりに響いた。思わず周囲を見回す。
(ししょうがおとのしたらしいやまのうえのあたりをにらむようにみあげている。)
師匠が音のしたらしい山の上のあたりを睨むように見上げている。
(ゆきおはいまおもいだしたというひょうじょうでぼそりといった。)
ユキオは今思い出したという表情でぼそりと言った。
(「そういえば、せんしゅうからはっぱやってるなぁ」)
「そういえば、先週から発破やってるなぁ」
(それをきいてきょうすけさんが、にやっとわらいながらいう。)
それを聞いて京介さんが、ニヤっと笑いながら言う。
(「たしかにじしんじゃないな」)
「たしかに地震じゃないな」
(ししょうはくちをゆがめて、なにもいわずにばいくにまたがった。)
師匠は口を歪めて、なにも言わずにバイクにまたがった。
(それからおれたちはたゆうをしているよしさんというおじいさんのうちにおじゃまして、)
それから俺たちは太夫をしているヨシさんというおじいさんの家にお邪魔して、
(いざなぎりゅうのあれこれをきいた。)
いざなぎ流のあれこれを聞いた。
(よしさんはあいそのよいひとで、ゆきおのせんせいとはえらいちがいだったが)
ヨシさんは愛想のよい人で、ユキオの先生とはえらい違いだったが
(かんじんなぶぶんのせつめいではするりとしょうてんをぼかすようにかわし、)
肝心な部分の説明ではするりと焦点をぼかすようにかわし、
(けっきょくそのこうこうやしかとしたしせいをくずさないままに、おれたちのちしきに)
結局その好々爺然とした姿勢を崩さないままに、俺たちの知識に
(なにひとつかちのあるものをくわえてはくれないのだった。)
なに一つ価値のあるものを加えてはくれないのだった。
(「・・・・・・それで、しんしょくのたゆうさんとわがながれのたゆうをくべつするときゃあ、)
「……それで、神職の太夫さんと吾が流の太夫を区別するときゃあ、
(はかしょ(はかせ)というがよ」)
ハカショ(博士)というがよ」
(そこまでかたったところでいえのでんわがなり、よしさんはちゅうざをすると)
そこまで語ったところで家の電話が鳴り、ヨシさんは中座をすると
(しばらくしてからもどってきて、これからでかけるむねをおれたちにつたえた。)
しばらくしてから戻って来て、これから出掛ける旨を俺たちに伝えた。
(「ありがとうございました」)
「ありがとうございました」
(とりあえずそういってじきょしたものの、ふかいというほどでもないが)
とりあえずそう言って辞去したものの、不快というほどでもないが
(いずれはだざわりのわるいばのくうきに、じぶんたちはよそものなのだということを)
いずれ肌触りの悪い場の空気に、自分たちは余所者なのだということを
(またおもいしらされただけだった。)
また思い知らされただけだった。
(それをかんじているゆきおもまた、ますますもうしわけなさそうなひょうじょうになり、)
それを感じているユキオもまた、ますます申し訳なさそうな表情になり、
(そのあとあんないしてもらったいざなぎりゅうゆかりのじしょでも)
そのあと案内してもらったいざなぎ流ゆかりの地所でも
(たいしてえられるものはなかった。なんだかどっとつかれがでて、)
たいして得られるものはなかった。なんだかどっと疲れが出て、
(おれたちはとりあえずいえにかえることにした。)
俺たちはとりあえず家に帰ることにした。
(くねくねとやまみちをのぼり、ようやくたどりついてくるまからおりるとゆきおは)
くねくねと山道をのぼり、ようやくたどり着いて車から降りるとユキオは
(にわさきにとまっていたじぶんのばいくにまたがり、「しごと、すこしのこっちゅうき」)
庭先にとまっていた自分のバイクにまたがり、「仕事、少し残っちゅうき」
(とやはりもうしわけなさそうにさっていた。)
とやはり申し訳なさそうに去っていた。
(いえにはいると「おそうめんたべんかね」とおばにすすめられ、)
家に入ると「おそうめん食べんかね」と叔母にすすめられ、
(「こおりのっけて」というおれのちゅうもんのとおりきんきんにひえたそうめんが)
「氷乗っけて」という俺の注文の通りキンキンに冷えたそうめんが
(すぐにちゃぶだいにならべられた。ししょうをよぼうとしてへやをのぞいたが、)
すぐにちゃぶ台に並べられた。師匠を呼ぼうとして部屋を覗いたが、
(せんぷうきのくびをふらないようにしたじょうたいでまともにかぜをあびながら)
扇風機の首を振らないようにした状態でまともに風を浴びながら
(それでもねぐるしそうにかけぶとんをだきしめてねむっていた。)
それでも寝苦しそうに掛け布団を抱きしめて眠っていた。