鋏-4-(完)

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プレイ回数530難易度(4.5) 2817打 長文 長文モード推奨
師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 tetsumi 4944 B 5.2 94.6% 548.3 2874 163 49 2024/10/27
2 上半身が痛い 4243 C 4.5 93.6% 616.7 2806 189 49 2024/11/07

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問題文

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(いっしゅんちゅうちょしたあと、ひろいあげる。のーとのきれはしにえがかれたいらすとに)

一瞬躊躇したあと、拾い上げる。ノートの切れ端に描かれたイラストに

(そっくりだ。やまにはいったときとはべつのはさみをじーんずのぽけっとに)

そっくりだ。山に入ったときとは別のハサミをジーンズのポケットに

(おさめて、おれはきとをいそいだ。みみは、きこえるはずのないしょきしょきという)

納めて、俺は帰途を急いだ。耳は、聞こえるはずのないショキショキという

(おんのまぼろしをしめったかぜのなかにとらえていた。そのつぎのひ、おれはこのまえの)

音の幻を湿った風の中にとらえていた。その次の日、俺はこの前の

(こーひーしょっぷでひとりおんきょうをまっていた。たぶんかいけつした。)

コーヒーショップでひとり音響を待っていた。たぶん解決した。

(そういってよびだしたのだが、あながちまちがいでもないようにおもう。)

そう言って呼び出したのだが、あながち間違いでもないように思う。

(このてにあるあかいはさみがそのしょうちょうのようなきがした。)

この手にある赤いハサミがその象徴のような気がした。

(てんないのこうどをおさえたしょうめいにそっとかざしてみる。)

店内の光度を抑えた照明にそっとかざしてみる。

(いったいなぜじぞうにそなえられたはずのはさみがあそこにおちていたのか、)

一体なぜ地蔵に供えられたはずのハサミがあそこに落ちていたのか、

(おれにはしるよしもなかったがこうしてみるとなにごとごともないただの)

俺には知るよしもなかったがこうして見ると何事ごともないただの

(ありふれたはさみにしかみえなかった。)

ありふれたハサミにしか見えなかった。

(「おそせぇな」ひとりごとをいってしまったことにきづいてしゅういをきにする。)

「遅せぇな」独り言をいってしまったことに気づいて周囲を気にする。

(さすがにこーひーしょっぷにはさみをもったおとこがひとりでいては)

さすがにコーヒーショップにハサミを持った男がひとりでいては

(きもちがわるいだろう。そうおもっていちおうねんのためにかもふらーじゅようの)

気持ちが悪いだろう。そう思って一応念のためにカモフラージュ用の

(ぶんぼうぐいしきとだいがくのーとをわきにおいてあった。)

文房具一式と大学ノートを脇に置いてあった。

(ふとおもいついて、あせをかいたこーらのぐらすをもちあげ、)

ふと思いついて、汗をかいたコーラのグラスを持ち上げ、

(しろいかみでできたこーすたーをつまんだ。)

白い紙でできたコースターをつまんだ。

(みぎてでもったはさみをえんのふちにあてがう。)

右手で持ったハサミを円のふちにあてがう。

(ふかいいとがあったわけではない。ただぜんかい、おんきょうがやぶいたこーすたーの)

深い意図があったわけではない。ただ前回、音響が破いたコースターの

(きれはしにのこっていたえいりなだんめんがきになっていたからだった。)

切れ端に残っていた鋭利な断面が気になっていたからだった。

など

(かるくちからをこめて、はをかみあわせる。そのとき、よそうがいのことがおきた。)

軽く力を込めて、刃を噛み合わせる。そのとき、予想外のことが起きた。

(ぐにょりというにぶいかんしょくとともに、こーすたーがきれもせず)

ぐにょりという鈍い感触とともに、コースターが切れもせず

(はさみのはのあいだにへんけいしてはさまったのだ。くびすじにあたりがぞわっとした。)

ハサミの刃の間に変形して挟まったのだ。首筋にあたりがゾワっとした。

(ぎちょん。というおとをさせてはさみをひらく。)

ギチョン。という音をさせてハサミを開く。

(こーすたーがぽとりとてーぶるのうえにおちた。)

コースターがぽとりとテーブルの上に落ちた。

(たしかにすこしあつみがあるとはいえ、ただのかみなのだ。きれないはずはない。)

確かに少し厚みがあるとはいえ、ただの紙なのだ。切れないはずはない。

(もういちどはさみをよくみてみる。そういえばもったときになにかいわかんがあった。)

もう一度ハサミをよく見てみる。そういえば持ったときに何か違和感があった。

(くうちゅうでちょきちょきとすぶりをしてみると、そのしょうたいにきづいた。)

空中でチョキチョキと素振りをしてみると、その正体に気づいた。

(おれはひだりてにはさみをもちかえてもういちどこーすたーにはをたてる。)

俺は左手にハサミを持ち替えてもう一度コースターに刃をたてる。

(こんどはしゅーっというこきみよいおととともにしろいかみにきれめがはいっていった。)

こんどはシューッという小気味よい音とともに白い紙に切れ目が入っていった。

(「ひだりきき」ようだ。あるのはしっていたが、げんぶつをみたのははじめてだった。)

「左利き」用だ。あるのは知っていたが、現物を見たのははじめてだった。

(おれはてもとのあかいはさみとこーすたーとをみくらべながら、)

俺は手元の赤いハサミとコースターとを見比べながら、

(わらいがこみあげてくるのをおさえられなかった。)

笑いが込み上げてくるのを抑えられなかった。

(あのとき、おんきょうはみぎのひらてでおれのほおをたたいた。)

あのとき、音響は右の平手で俺の頬を叩いた。

(こわがらせるようないじのわるいことをいったおれをはんしゃてきにたたいてしまった)

怖がらせるような意地の悪いことを言った俺を反射的に叩いてしまった

(かのじょに、おいめをもったのがこのむぼうなぼうけんのきっかけだ。)

彼女に、負い目を持ったのがこの無謀な冒険のきっかけだ。

(くーるそうなかのじょにそんなことをさせてしまったというおいめ。)

クールそうな彼女にそんなことをさせてしまったという負い目。

(だが、あのときのかのじょにはとっさにききうでではないほうをくりだすだけの、)

だが、あのときの彼女にはとっさに利き腕ではない方を繰り出すだけの、

(りせいのはたらきがたしかにあったのだった。)

理性の働きが確かにあったのだった。

(はめられたのかもしれない。)

はめられたのかも知れない。

(そういえば、のーとにちずをえがくときのかのじょはひだりてでぺんをにぎっていたきがする。)

そういえば、ノートに地図を描く時の彼女は左手でペンを握っていた気がする。

(あのひらてでおれがなにをかんじるか、けいさんずくだったとするなら・・・・・・そのとき)

あの平手で俺がなにを感じるか、計算ずくだったとするなら……そのとき

(そのときはじめておれは、あのくらいふくをこのむしょうじょにこうきいじょうのきょうみをもったのだった。)

はじめて俺は、あの暗い服を好む少女に好奇以上の興味を持ったのだった。

(いっしゅうかんご、れいのおかるとみちのししょうとあおぐだいがくのせんぱいとあうきかいがあった。)

1週間後、例のオカルト道の師匠と仰ぐ大学の先輩と会う機会があった。

(おたがいのきんきょうをこうかんしあうなかで、おれははさみさまのはなしと<くろいて>そうどうのときの)

お互いの近況を交換し合うなかで、俺は鋏様の話と<黒い手>騒動の時の

(しょうじょとふたたびあったことをはなした。ししょうはにやにやときいていたが、)

少女と再び会ったことを話した。師匠はニヤニヤと聞いていたが、

(くちをあいたかとおもうと「ぼくならそのはさみさまとやらのかみのけ、はさみで)

口を開いたかと思うと「僕ならその鋏様とやらの髪の毛、ハサミで

(じょきじょきにしてやったのに」といいはなち、おれはしんそこ)

ジョキジョキにしてやったのに」と言い放ち、俺は心底

(このひとにたよらなくてよかったとむねをなでおろした。)

この人に頼らなくてよかったと胸をなでおろした。

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