自動ドア-1-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(せんじつ、あるみせにはいろうとしたときにじどうどあがひらかないということがあった。)

先日、ある店に入ろうとしたときに自動ドアが開かないということがあった。

(さっきでたばかりのどあなのに、もどろうとするとはんのうがない。)

さっき出たばかりのドアなのに、戻ろうとすると反応がない。

(くしょうしてべつのどあからまわりこんではいった。)

苦笑して別のドアから回り込んで入った。

(こういうときはえてしてべつのもくげきしゃがいない。)

こういうときはえてして別の目撃者がいない。

(あるしゅ、こじんてきなけいけんだとじちょうぎみにかんがえる。)

ある種、個人的な経験だと自嘲気味に考える。

(そのとき、ふとだいがくじだいのことをおもいだした。)

そのとき、ふと大学時代のことを思い出した。

(がくせいのころは、じどうどあがひらかないことがにちじょうさはんじだった。)

学生のころは、自動ドアが開かないことが日常茶飯事だった。

(ひとりぐらしのだいがくせいなんてものは、まいにちさんかいいじょうは)

一人暮らしの大学生なんてものは、毎日3回以上は

(こんびににいくものとそうばがきまっている。)

コンビニに行くものと相場が決まっている。

(おれもきゃんぱすちかくのがくせいのまちといえるばしょにすんでいたために、)

俺もキャンパス近くの学生の街といえる場所に住んでいたために、

(しゅうへんはこんびにだらけ。なにがたのしいのかあさからばんまでことあるごとに)

周辺はコンビニだらけ。なにが楽しいのか朝から晩までことあるごとに

(じかんをつぶしがてらいりびたっていた。)

時間を潰しがてら入り浸っていた。

(そんなとき、だいがくいっかいせいのなつごろからだろうか、)

そんなとき、大学1回生の夏ごろからだろうか、

(じどうどあがひらかないということがおおくなった。)

自動ドアが開かないということが多くなった。

(きのうとおなじこんびににきのうとおなじふくをきてはいろうとしているのに、)

昨日と同じコンビニに昨日と同じ服を着て入ろうとしているのに、

(なぜかひらかない。おもわずどあじょうぶのせんさーらしきところをみあげながら、)

なぜか開かない。思わずドア上部のセンサーらしきところを見上げながら、

(かおをうごかしてみる。ひらかない。からだをぜんごさゆうにうごかしてみる。ひらかない。)

顔を動かしてみる。開かない。体を前後左右に動かしてみる。開かない。

(いちどはなれて、まるでべつじんがとおりがかったかのようにやりなおしてみる。)

一度離れて、まるで別人が通りがかったかのようにやり直してみる。

(やっとひらいた。というようなことが、ままあったのだった。)

やっと開いた。というようなことが、ままあったのだった。

(これもまただいがくせいのつねで、しゃかいのなかでじぶんがひどくちいさいにんげんに)

これもまた大学生のつねで、社会のなかで自分がひどく小さい人間に

など

(かんじられて、おのれのそんざいいぎなんてものになやみ、うつうつとしていたりするときに)

感じられて、己の存在意義なんてものに悩み、鬱々としていたりするときに

(こんなことがあると、なにかしょうちょうてきなできごとのようにおもわれて、しょうしょうへこむ。)

こんなことがあると、なにか象徴的な出来事のように思われて、少々へこむ。

(どあのまえでどうしようもなくたたずむおれのよこをとおり、)

ドアの前でどうしようもなく佇む俺の横を通り、

(こぎゃるがphsでばかばなしをしながらあっけなく)

コギャルがPHSでバカ話をしながらあっけなく

(どあのなかへきえていくのをみると、なんともいえない)

ドアの中へ消えていくのを見ると、なんともいえない

(はいぼくしゃのきぶんになったりする。)

敗北者の気分になったりする。

(「おまえはじんけんごきゅうだからじどうどあをつかうけんりがありません」)

「おまえは人権5級だから自動ドアを使う権利がありません」

(そんなことをいわれているようなきがする。)

そんなことをいわれているような気がする。

(「またどあがひらかなかった」)

「またドアが開かなかった」

(というじちょうぎみのせりふは、いちじのおれのあいさつのようなものになっていた。)

という自嘲気味のセリフは、一時の俺の挨拶のようなものになっていた。

(そんなひびも、とうじのねつびょうのようなおかるとざんまいのせいかつとは)

そんな日々も、当時の熱病のようなオカルト三昧の生活とは

(むかんけいではなかったようにおもう。そのころのおれは、)

無関係ではなかったように思う。そのころの俺は、

(だいがくのさーくるのせんぱいでもある、おれにおかるとのいろはを)

大学のサークルの先輩でもある、俺にオカルトのイロハを

(たたきこんでくれたししょうにまるできんぎょのふんのごとくついてまわっていた。)

叩き込んでくれた師匠にまるで金魚の糞のごとくついて回っていた。

(ふぁみまにはいろうとしてふたりでならんでじどうどあのまえにたつも、)

ファミマに入ろうとして二人で並んで自動ドアの前に立つも、

(まるでただのがらすのようにひらくけはいがない。)

まるでただのガラスのように開く気配がない。

(しばしつったっているが、やがてししょうが「ちょっとうごいてみ」というので)

しばし突っ立っているが、やがて師匠が「ちょっと動いてみ」というので

(はんのうするばしょをさがそうと、からだをあちこちうごかしてみる。)

反応する場所を探そうと、体をあちこち動かしてみる。

(ひらかない。そしてふたりして、うごいたりはなれたりまたもどったり、)

開かない。そして二人して、動いたり離れたりまた戻ったり、

(おそろしくまぬけなうごきをくりかえしたすえに、なんのまえぶれもなくどあが)

恐ろしく間抜けな動きを繰り返した末に、なんの前触れもなくドアが

(すーっとひらいたかとおもうと、れじぶくろに100えんのむぎちゃのぱっくを)

スーッと開いたかと思うと、レジ袋に100円の麦茶のパックを

(つめこんだふけんこうそうなおとこがでてきて「どいて」といわれたりする。)

詰め込んだ不健康そうな男が出てきて「どいて」と言われたりする。

(こんなことがせいかつけんのこんびにでたびたびあったものだった。)

こんなことが生活圏のコンビニで度々あったものだった。

(あるときししょうがいった。)

あるとき師匠が言った。

(「こんびにのかいだんに、しんやだれもいないはずなのに)

「コンビニの怪談に、深夜だれもいないはずなのに

(どあがひらくってはなしがあるだろう。あれとぎゃくだね」)

ドアが開くって話があるだろう。あれと逆だね」

(そういえばおれもけいけんがあった。あるねぐるしいよるにきんじょのこんびにで、)

そういえば俺も経験があった。ある寝苦しい夜に近所のコンビニで、

(すずみがてらたちよみをしていたときのこと。)

涼みがてら立ち読みをしていたときのこと。

(いらっしゃいませ、というてんいんのこえになにげなくほんからかおをあげると、)

いらっしゃいませ、という店員の声に何気なく本から顔をあげると、

(じどうどあがすーっとひらいたきりだれもはいってこない。)

自動ドアがスーッと開いたきり誰も入ってこない。

(いりぐちをよこぎっただけかとおもい、またほんにめをおとす。)

入り口を横切っただけかと思い、また本に目を落とす。

(しばらくするとこんどは「ありがとうございました」というてんいんのこえ。)

しばらくすると今度は「ありがとうございました」という店員の声。

(いりぐちをみるとまたどあだけがすーっとひらいて、だれのかげもみえない。)

入り口を見るとまたドアだけがスーッと開いて、誰の影も見えない。

(てんないをみわたすと、たちよみきゃくがおれをふくめてふたりだけ。)

店内を見渡すと、立ち読み客が俺を含めて二人だけ。

(てんいんのわかいにいちゃんは、てもとでなにかもくもくとかいている。)

店員の若い兄ちゃんは、手元でなにか黙々と書いている。

(かおもあげずにどあのひらくおとにはんのうしているだけらしい。)

顔も上げずにドアの開く音に反応しているだけらしい。

(なぜか、せすじにきみのわるいかんかくがのぼってくる。もういちどてんないをみまわす。)

なぜか、背筋に気味の悪い感覚がのぼってくる。もう一度店内を見回す。

(しんやとくゆうのだらけたくうきがただよっている。)

深夜特有のだらけた空気が漂っている。

(てんいんもおれたちがいるせいでおくにひっこめず、はやくかえらないかな)

店員も俺たちがいるせいで奥に引っ込めず、はやく帰らないかな

(というおもいでいるにちがいない。)

という思いでいるに違いない。

(そとはくらい。がくせいのまちだから、くらさのわりにしんやでもひとどおりはおおい。)

外は暗い。学生の街だから、暗さのわりに深夜でも人通りは多い。

(だれともしれないひとのかげが、くらいろじをいききするこうけいは、)

誰とも知れない人の影が、暗い路地を行き来する光景は、

(こうしてあかるいてんないからがらすごしにみているとぶきみだった。)

こうして明るい店内からガラス越しに見ていると不気味だった。

(てんいんがあくびをするおとがきこえた。かおをさげたままだ。)

店員があくびをする音が聞こえた。顔を下げたままだ。

(しんや、このみせがひとりきんむたいせいというのはよくしっている。)

深夜、この店が一人勤務体制というのはよく知っている。

(まんびきされてもきがつかないんじゃないか。)

万引きされても気がつかないんじゃないか。

(そうおもったとき、あることにきがついてぞくりとする。)

そう思ったとき、あることに気がついてゾクリとする。

(さいしょにどあがひらいたとき、てんいんはみもしないで「いらっしゃいませ」といった。)

最初にドアが開いたとき、店員は見もしないで「いらっしゃいませ」と言った。

(つぎにどあがひらいたときは「ありがとうございました」。)

次にドアが開いたときは「ありがとうございました」。

(どうしてにどめも「いらっしゃいませ」ではなかったのだろうか。)

どうして2度目も「いらっしゃいませ」ではなかったのだろうか。

(てんいんはそちらをみてもいない。)

店員はそちらを見てもいない。

(そしてじっさいにだれもでいりはしていないのだから、どうしてつかいわけたのか)

そして実際に誰も出入りはしていないのだから、どうして使い分けたのか

(りゆうがわからない。まるでめにみえないだれかがいりこみ、)

理由がわからない。まるで目に見えない誰かが入り込み、

(そしてでていったようではないか。)

そして出て行ったようではないか。

(ここにいたくないというきょうはくめいたかんじがつよくなり、)

ここに居たくないという脅迫めいた感じが強くなり、

(おれはざっしをたなにもどしてあしばやにみせをでた。)

俺は雑誌を棚に戻して足早に店を出た。

(どあがひらいて、そしてとじるとき、てんいんのまぬけな)

ドアが開いて、そして閉じるとき、店員の間抜けな

(「いらっしゃ、ありがとうございました」というこえがせなかにひびいた。)

「いらっしゃ、ありがとうございました」という声が背中に響いた。

(さて、どあのひらかないひびのなかでもきょうれつなおもいでがある。)

さて、ドアの開かない日々の中でも強烈な思い出がある。

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