自動ドア-2-(完)

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(いっかいせいのころ、あるまなつのひるひなかにとけそうになりながら)

1回生のころ、ある真夏の昼ひなかに溶けそうになりながら

(こんびににたどりついた。そのひがそのなつのさいこうきおんだったそうで、)

コンビニにたどり着いた。その日がその夏の最高気温だったそうで、

(あすふぁるとがくつのうらにはりつきそうなさっかくさえおぼえた。)

アスファルトが靴の裏に張り付きそうな錯覚さえ覚えた。

(じどうどあのまえにたち、かんぜんにひらくのもまちきれずになかにすべりこむ。)

自動ドアの前に立ち、完全に開くのも待ちきれずに中に滑り込む。

(さっそく、とくにかうつもりもないのにでざーとこーなーへむかい、)

さっそく、特に買うつもりもないのにデザートコーナーへ向かい、

(ひんやりとただよってくるれいきをかおにあびる。)

ひんやりと漂ってくる冷気を顔に浴びる。

(そういえば、めずらしくあっさりじどうどあがひらいたな。)

そういえば、珍しくあっさり自動ドアが開いたな。

(そうおもってかおをあげると、めのまえにはいようなこうけいがひろがっていた。)

そう思って顔を上げると、目の前には異様な光景が広がっていた。

(いつもとおなじしょうひんはいれつのてんない。いつもとおなじはんとしもさきのこんさーとのぽすたー。)

いつもと同じ商品配列の店内。いつもと同じ半年も先のコンサートのポスター。

(いつもとおなじこうるくすのしょうめい。けれど、ひとのすがたがどこにもなかった。)

いつもと同じ高ルクスの照明。けれど、人の姿がどこにもなかった。

(こんなまっぴるまにきゃくがひとりもいないなんてことはまずなかった。)

こんな真っ昼間に客が1人もいないなんてことはまずなかった。

(ひるどきにはだいがくせいですしづめになるみせなのに。)

昼時には大学生でスシ詰めになる店なのに。

(なによりいじょうなのは、てんいんのかげもなかったことだ。)

なにより異常なのは、店員の影もなかったことだ。

(ふたつあるれじはむじんで、ちんれつやたなおろしなどのさぎょうもしていない。)

二つあるレジは無人で、陳列や棚卸しなどの作業もしていない。

(なんだかきみがわるくなり、ひとことこえをかけてとはりがみがあったのをだしに)

なんだか気味が悪くなり、一言声を掛けてと張り紙があったのをダシに

(「すみませーん、といれかしてください」とれじのおくになげかけた。)

「すみませーん、トイレ貸してください」とレジの奥に投げかけた。

(10びょうまったが、なんのおうとうもなかった。てんないをもういちどみまわす。)

10秒待ったが、なんの応答もなかった。店内をもう一度見回す。

(いつもならつねにたちよみきゃくのいるざっしこーなーにもひとかげはなく、)

いつもなら常に立ち読み客のいる雑誌コーナーにも人影はなく、

(いっさついっさつ、みだれもせずきれいにらっくにならんでいる。)

一冊一冊、乱れもせず綺麗にラックに並んでいる。

(それが、ますますこのじょうきょうのいようさをきょうちょうしていた。)

それが、ますますこの状況の異様さを強調していた。

など

(ていさいをたもつこともなおざりになり、あからさまにきょろきょろしながら)

体裁を保つこともなおざりになり、あからさまにキョロキョロしながら

(「お~い、だれかいませんか」とこえをあげた。)

「お~い、誰かいませんか」と声をあげた。

(そのこえがしんとしずむてんないのつめたいくうきにすいこまれていったとき、)

その声がしんと沈む店内の冷たい空気に吸い込まれていった時、

(おもわずでぐちにむかっていた。そしてじどうどあのまえにたつ。ひらかない。)

思わず出口に向かっていた。そして自動ドアの前に立つ。開かない。

(おい、うそだろとくちにしながらがらすをばんばんとたたくが、)

おい、ウソだろと口にしながらガラスをバンバンと叩くが、

(どあはぴくりともはんのうしなかった。てんないをふりかえるが、さっきとかわりはない。)

ドアはぴくりとも反応しなかった。店内を振り返るが、さっきと変わりはない。

(ひとのけはいもいっさいかんじない。けれどそれゆえにうなじのけがちりちりするような)

人の気配も一切感じない。けれどそれゆえにうなじの毛がチリチリするような

(しずかなあっぱくかんが、くうかんにみちはじめているようなきがした。)

静かな圧迫感が、空間に満ちはじめているような気がした。

((まぎれこんでしまった)そんなことばがのうりにうかび、)

(紛れ込んでしまった)そんな言葉が脳裏に浮かび、

(これはまちがいだ、はやくここからでなくてはというきょうはくかんねんにかられた。)

これは間違いだ、早くここから出なくてはという脅迫観念にかられた。

(どあのまえのたちいちをかえ、たいじゅうをかけるたいみんぐをかえ、)

ドアの前の立ち位置を変え、体重をかけるタイミングを変え、

(ひざのさすぺんしょんでせをかえ、せんさーらしきもののしたをとおる)

膝のサスペンションで背を変え、センサーらしきものの下を通る

(すぴーどをかえ、とにかくあらゆるほうほうでじどうどあをあけようともがいた。)

スピードを変え、とにかくあらゆる方法で自動ドアを開けようともがいた。

(あしたは30ふんたちんぼでもいいですから、いまだけはいっぱつでひらいてくれ!)

明日は30分立ちんぼでもいいですから、今だけは一発で開いてくれ!

(そんないのるようなきもちだった。)

そんな祈るような気持ちだった。

(どあのそとでは、かげろうがたちそうなねっきのなかをおおくのひとがとおりすぎている。)

ドアの外では、陽炎が立ちそうな熱気の中を多くの人が通り過ぎている。

(だれもこちらにちゅういをはらうひとなどいない。)

誰もこちらに注意を払う人などいない。

(なんどもうしろをふりかえるが、てんないにはなんのけはいもなく、)

何度も後ろを振り返るが、店内には何の気配もなく、

(ただしずかになにかよくわからないぶぶんがくるっているようだった。)

ただ静かになにかよくわからない部分が狂っているようだった。

(いようなあっぱくかんをむじんのこうけいにかんじ、おれはつめたいあせをかきながら)

異様な圧迫感を無人の光景に感じ、俺は冷たい汗をかきながら

(どあのまえでひたすらうろたえていた。)

ドアの前でひたすらうろたえていた。

(ふと、うっすらとまどがらすにうつる、はんてんしたてんないのようすがめにはいった。)

ふと、うっすらと窓ガラスに映る、反転した店内の様子が目に入った。

(かおもよくわからないが、てんないにうごめくすうにんのきゃくがたしかにうつっている。)

顔もよくわからないが、店内にうごめく数人の客が確かに映っている。

(だれもいるはずがないのに。きょうこうじょうたいになりかけたとき、)

誰もいるはずがないのに。恐慌状態になりかけた時、

(きゅうになんのまえぶれもなくどあがひらいておれはそとにとびだした。)

急に何の前触れもなくドアが開いて俺は外に飛び出した。

(むっとするようなきょくどにねっされたくうきにつつまれたがむしろここちよく、)

ムッとするような極度に熱された空気に包まれたがむしろ心地良く、

(おれはふりかえることもできずにそのばからにげた。)

俺は振り返ることも出来ずにその場から逃げた。

(さりぎわ、めのはしに、いつもとかわらない、ひとのいるこんびにのてんないが)

去り際、目の端に、いつもと変わらない、人のいるコンビニの店内が

(うつったきがしたが、とにかくにげだしたかった。)

映った気がしたが、とにかく逃げ出したかった。

(ごじつ、ししょうにこのはなしをすると、わらいながら「あつすぎてゆうたいりだつでも)

後日、師匠にこの話をすると、笑いながら「暑すぎて幽体離脱でも

(したんじゃない?」というのだ。「だって、こんびにのかいだんを)

したんじゃない?」と言うのだ。「だって、コンビニの怪談を

(さかさからみたようなたいけんじゃないか」)

逆さから見たような体験じゃないか」

(どあがひらかなかったことをあげつらっているようなかんじだったので、)

ドアが開かなかったことをあげつらっているような感じだったので、

(「いしきだけがこんびにのなかにはいってしまったとしても、)

「意識だけがコンビニの中に入ってしまったとしても、

(てんないにひとがいなかったってのはどういうことです」とぎゃくしゅうすると、)

店内に人がいなかったってのはどういうことです」と逆襲すると、

(ししょうはあっさりといった。「にんげんにれいがみえないように、れいにもにんげんが)

師匠はあっさりと言った。「人間に霊が見えないように、霊にも人間が

(みえないことがあるんだよ」そうしてにほんのひとさしゆびをこうささせ、)

見えないことがあるんだよ」そうして二本の人差し指を交差させ、

(まじわらないせかい、とつぶやいてなにがうれしいのかくちぶえをふいた。)

交わらない世界、と呟いてなにが嬉しいのか口笛を吹いた。

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