追跡-2-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってしまっていたので、作成しました。

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問題文

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(こころのじゅんびができるまでつぎのぺーじにはいかないほうがよい。)

心の準備が出来るまで次のページには行かないほうが良い。

(そんないちぶんが、ひだりぺーじのらすとにある。)

そんな一文が、左ページのラストにある。

(それまでのてんかいとはかんけいなしにふしぜんなかたちでおりこまれている。)

それまでの展開とは関係なしに不自然な形で織り込まれている。

(おもわずてがとまる。しゅじんこうがさいしょにむかうさきがどこなのか、)

思わず手が止まる。主人公が最初に向かう先がどこなのか、

(つぎのぺーじにいかないとわからない。こころのじゅんびってなんだ?)

次のページに行かないと分からない。心の準備ってなんだ?

(ぺーじをめくるてがかたまる。いやなよかんがする。)

ページをめくる手が固まる。嫌な予感がする。

(つぎのしゅんかん、ぶしつのどあをのっくするおとがきこえて、とびあがるほどおどろいた。)

次の瞬間、部室のドアをノックする音が聞こえて、飛び上がるほど驚いた。

(どあをあけてすべりこむようにはいってきたのは、)

ドアを開けて滑り込むように入ってきたのは、

(まさしくこのさっしのさくしゃとすいそくされるじょせいだった。どうかんがえてもぐうぜんではない。)

まさしくこの冊子の作者と推測される女性だった。どう考えても偶然ではない。

(からからはんぶんでたかたつむりのようなへんなかっこうのおれとこたつをいちべつして)

殻から半分出たカタツムリのような変な格好の俺とコタツを一瞥して

(かのじょは、あのひとをみなかったかという。あのひととは、かのじょのこいびとであり、)

彼女は、あの人を見なかったかと言う。あの人とは、彼女の恋人であり、

(おれのおかるとどうのししょうでもあるさーくるのせんぱいにほかならない。)

俺のオカルト道の師匠でもあるサークルの先輩に他ならない。

(ここにはきていないとこたえると、「そう」といいおいてたちさろうとする。)

ここには来ていないと答えると、「そう」と言い置いて立ち去ろうとする。

(おれはあわてて、もっているさっしをひろげながらこれをかきましたかときいた。)

俺は慌てて、持っている冊子を広げながらこれを書きましたかと聞いた。

(いっしゅんめをみひらいたあと、「おもいだせないりゆうがわかった」)

一瞬目を見開いたあと、「思い出せない理由がわかった」

(といってこちらにもどってきた。かのじょは、せつめいしがたいふしぎなちからをもっている。)

と言ってこちらに戻ってきた。彼女は、説明し難い不思議な力を持っている。

(それは、かんがするどいというひょうげんではなまぬるい、)

それは、勘が鋭いという表現では生ぬるい、

(まるでよちのうりょくとでもいうべきかんせいだった。)

まるで予知能力とでも言うべき感性だった。

(それも、えどがー=けいしーのようによちむのようなものを)

それも、エドガー=ケイシーのように予知夢のようなものを

(みているらしいのだが、めがさめるとそれをわすれてしまっている。)

見ているらしいのだが、目が覚めるとそれを忘れてしまっている。

など

(そしてにちじょうのなかのふとしたひょうしにそれをおもいだすのだという。)

そして日常の中のふとした拍子にそれを思い出すのだという。

(このことをたんてきにいいあらわすなら、”みらいをおもいだす”という)

このことを端的に言い表すなら、”未来を思い出す”という

(きみょうなひょうげんになってしまう。)

奇妙な表現になってしまう。

(いつだったか、まちなかでかさをさしてあるいているかのじょをみかけたことがあった。)

いつだったか、街なかで傘をさして歩いている彼女を見かけたことがあった。

(そらははれていたのに。おれはいそいでこんびににはしり、びにーるがさをかった。)

空は晴れていたのに。俺は急いでコンビニに走り、ビニール傘を買った。

(きっとこれからとつぜんてんきがくずれるにちがいないから。ところが)

きっとこれから突然天気が崩れるに違いないから。ところが

(いつまでたってもあめはふらず、けっきょくびにーるがさはむだになってしまった。)

いつまで経っても雨は降らず、結局ビニール傘は無駄になってしまった。

(つぎのひたまたまかのじょにあい、そのことをひなんめいたくちょうでかたると、)

次の日たまたま彼女に会い、そのことを非難めいた口調で語ると、

(あっさりとこういうのである。「あれ、ひがさ」)

あっさりとこう言うのである。「あれ、日傘」

(だつりょくした。じぶんのばかさかげんにわらってしまう。)

脱力した。自分のバカさ加減に笑ってしまう。

(しかしそのひのにゅーすで、ぜんじつのしがいせんりょうがきょねんのさいだいちを)

しかしその日のニュースで、前日の紫外線量が去年の最大値を

(きろくしたひよりもおおかったということをしり、おどろいた。)

記録した日よりも多かったということを知り、驚いた。

(かのじょはじつにふしぎなひとだった。)

彼女は実に不思議な人だった。

(「そのほん、どこからでてきたの」きかれてらっくをゆびさす。)

「その本、どこから出てきたの」聞かれてラックを指さす。

(かのじょは「そんなとこにあったんだ」とくびをかしげてから)

彼女は「そんなとこにあったんだ」と首を傾げてから

(「つくったこともわすれてた」といった。このすうじつ、ししょうとれんらくがとれない、)

「作ったことも忘れてた」と言った。この数日、師匠と連絡がとれない、

(とかのじょ。え?とおれはききかえす。かれをさがしているのにみつからず、)

と彼女。え? と俺は聞き返す。彼を探しているのに見つからず、

(へんなむなさわぎがするのにこれからなにがおころうとしているのかまったく)

変な胸騒ぎがするのにこれから何が起ころうとしているのか全く

(「おもいだせない」のだという。そういえばおれもここさいきんかれをみていない。)

「思い出せない」のだと言う。そういえば俺もここ最近彼を見ていない。

(いわく、けいたいもつうじないしくるまはあるのにいえにいないのだそうだ。そのげんいんが)

曰く、携帯も通じないし車はあるのに家にいないのだそうだ。その原因が

(このほんだ、といってかのじょはゆびをさした。おもわずとりおとしそうになる。)

この本だ、と言って彼女は指をさした。思わず取り落としそうになる。

(「そのひにおこることなら、まえのひのよるにみてる」でも、とかのじょはつづけた。)

「その日に起こることなら、前の日の夜に見てる」でも、と彼女は続けた。

(いわく、けいけんてきにきけんせいがたかいじょうほうほど、てまえでしるのだと。)

曰く、経験的に危険性が高い情報ほど、手前で知るのだと。

(ふんをふみそうになるときはふつかまえにみてるし、かれーうどんのしるが)

糞を踏みそうになるときは二日前に見てるし、カレーうどんの汁が

(ちるときはみっかまえにみてる。)

散るときは3日前に見てる。

(こっせつしそうになるときはにしゅうかんまえ・・・・・・といったぐあいだ。)

骨折しそうになるときは2週間前……といった具合だ。

(もっともかならずというわけでもない。)

もっとも必ずというわけでもない。

(「まえだおし」がおこるのは、たいちょうがわるいときがおおいのだそうだ。)

「前倒し」が起こるのは、体調が悪いときが多いのだそうだ。

(あんまりはやく”おもいだし”てしまうと、それがおこるまでにわすれてしまう。)

あんまり早く”思い出し”てしまうと、それが起こるまでに忘れてしまう。

(「やくにたたないでしょう」)

「役に立たないでしょう」

(やくにたたなかろうが、おれのようなぼんじんにはりかいできないせかいのはなしだ。)

役に立たなかろうが、俺のような凡人には理解できない世界の話だ。

(「それ、はんぶんはびぼうろくなの」と、かのじょはさっしをもういちどゆびさす。)

「それ、半分は備忘録なの」と、彼女は冊子をもう一度指さす。

(かのじょはこういっているのだ。ししょうのゆくえがわからないというこのじたいを、)

彼女はこう言っているのだ。師匠の行方がわからないというこの事態を、

(にねんまえによちしてしまっているからいまはかんがはたらかないのだ、と。)

2年前に予知してしまっているから今は勘が働かないのだ、と。

(「どんなはなしをかいたのか、わすれちゃったけど」はじめてかのじょはすこしわらった。)

「どんな話を書いたのか、忘れちゃったけど」はじめて彼女は少し笑った。

(おれはあらためてどくぶつでもさわるようなおもいでそのさっしをひらく。「「ついせき」ってはなしです」)

俺は改めて毒物でも触るような思いでその冊子を開く。「『追跡』って話です」

(おれがこれからししょうをさがしにいくというすじのようです、というとかのじょは)

俺がこれから師匠を探しに行くという筋のようです、と言うと彼女は

(「ついてく」としゅちょうした。もちろんことわるりゆうはない。かのじょがにねんまえに)

「ついてく」と主張した。もちろん断る理由はない。彼女が2年前に

(しってしまったというそのいみをあまりふかくかんがえないようにした。)

知ってしまったというその意味をあまり深く考えないようにした。

(おれはさっしをもってぶしつをでる。ふゆのさむぞらも、いまはくにならない。)

俺は冊子を持って部室を出る。冬の寒空も、今は苦にならない。

(こころのじゅんびができるまでつぎのぺーじにはいかないほうがよい。)

心の準備が出来るまで次のページには行かないほうが良い。

(というもじをさんかいこころのなかでよんでから、つぎのぺーじをめくった。)

という文字を3回心の中で読んでから、次のページをめくった。

(「・・・・・・まず、げーむせんたーのようです」じっさいにあるばしょのなまえがでてくる。)

「……まず、ゲームセンターのようです」実際にある場所の名前が出てくる。

(おれはかのじょとふたりでじてんしゃにのってそこへむかった。)

俺は彼女と二人で自転車に乗ってそこへ向かった。

(まちなかのおおきなげーむせんたーだ。)

街なかの大きなゲームセンターだ。

(なかにはいり、ひととおりみてまわるがししょうのすがたはない。)

中に入り、一通り見て回るが師匠の姿はない。

(「ついせき」にしゅじんこうがぷりくらをとるびょうしゃがあったので、)

『追跡』に主人公がプリクラを撮る描写があったので、

(いちおうこーなーにいってみたがわかいじょせいたちでごったがえしていて、)

一応コーナーに行ってみたが若い女性たちでごった返していて、

(きおくれしてしまった。それにさきをよむと、けっきょくげーむせんたーでは)

気後れしてしまった。それに先を読むと、結局ゲームセンターでは

(てがかりはなかったということになっているのでむいみだと)

手掛かりはなかったということになっているので無意味だと

(おれはいったが、かのじょは「かいてあるとおりにしたほうがいい」という。)

俺は言ったが、彼女は「書いてある通りにした方がいい」と言う。

(そのとき、いまさらながらさきにさいごのおちのぶぶんをよんだほうが)

そのとき、今更ながら先に最後のオチの部分を読んだ方が

(はやくないかとおもったのだが、かのじょが「そういうことをしたとかいてるの?」)

早くないかと思ったのだが、彼女が「そういうことをしたと書いてるの?」

(というのでくびをふってあきらめる。ふきつなよかんにどきどきしながらも、)

と言うので首を振って諦める。不吉な予感にドキドキしながらも、

(おれはおれなりにこのじょうきょうをたのしんでいたのかもしれない。)

俺は俺なりにこの状況を楽しんでいたのかも知れない。

(けっきょく、れんぞくしてえんえんとおなじめんばーでぷりくらをとっているじょしこうせいたちに)

結局、連続して延々と同じメンバーでプリクラを撮っている女子高生たちに

(いらいらしながらもじゅんばんまちのれつにならび、さいごにはかのじょと)

イライラしながらも順番待ちの列に並び、最後には彼女と

(いっしょにしゃしんにおさまった。)

一緒に写真におさまった。

(「ついせき」にはしゅじんこうにじょせいのつれがいるとはかいてないが、)

『追跡』には主人公に女性の連れがいるとは書いてないが、

(まあこれくらいはいいだろう。)

まあこれくらいはいいだろう。

(でてきたしーるをまじまじとみながら、おれはなんだかひっかかるものを)

出てきたシールをまじまじと見ながら、俺はなんだか引っ掛かるものを

(かんじていた。それがなんだかわからないまま、つぎのばしょをかくにんする。)

感じていた。それがなんだかわからないまま、次の場所を確認する。

(「つぎは、ざっかやです」げーむせんたーからすこしきょりがある。)

「次は、雑貨屋です」ゲームセンターから少し距離がある。

(わかものであふれかえるとおりだが、へいじつなのでひとではさほどでもない。)

若者で溢れかえる通りだが、平日なので人手はさほどでもない。

(じてんしゃをとめて、かじゅあるしょっぷしゅうへんにひろがるこじんまりとした)

自転車をとめて、カジュアルショップ周辺に広がるこじんまりとした

(ちかがいへとおりる。)

地下街へと降りる。

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