エレベーター-2-
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | tetsumi | 5155 | B+ | 5.3 | 97.0% | 832.0 | 4425 | 136 | 78 | 2024/11/11 |
2 | 1 | 3296 | D | 3.4 | 94.8% | 1238.4 | 4314 | 232 | 78 | 2024/11/11 |
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問題文
(ふたりとも、なんとはなしにそちらからめをそらす。)
二人とも、なんとはなしにそちらから目を逸らす。
(そとからこどものはしゃぐこえとはしりまわるあしおとがひびいてきた。)
外から子どものはしゃぐ声と走り回る足音が響いて来た。
(わきのたかさのへいからかおをだしてしたをのぞいてみると、)
脇の高さの塀から顔を出して下を覗いてみると、
(すうにんのしょうがくせいくらいのこどもがおもちゃのけんらしいものを)
数人の小学生くらいの子どもがおもちゃの剣らしいものを
(ふりまわしながらしきちないのほそうれんがのみちをいったりきたりしている。)
振り回しながら敷地内の舗装レンガの道を行ったり来たりしている。
(しばらくそれをながめたあとで、「じょうほうしゅうしゅうしてみよう」)
しばらくそれを眺めたあとで、「情報収集してみよう」
(といっておれはしせんをもどし、ひとさしゆびをしたにむけた。)
と言って俺は視線を戻し、人差し指を下に向けた。
(「おっけー。でもさきににもつおいてくる」)
「オッケー。でも先に荷物置いてくる」
(ゆうじんはどあのかぎをあけるとふたりぶんのばっぐをげんかんさきにほうりこんでもどってきた。)
友人はドアの鍵を開けると二人分のバッグを玄関先に放り込んで戻ってきた。
(そしてえれべーたーのまえにふたたびたつ。はこのげんざいいちははちかいにかわっている。)
そしてエレベーターの前に再び立つ。箱の現在位置は8階に変わっている。
(こんどはなかなかやじるしぼたんをおさない。すこしきんちょうしているようだ。よこめでいう。)
今度はなかなか矢印ボタンを押さない。少し緊張しているようだ。横目で言う。
(「その、へんなことがおこるかくりつはどのくらい?」)
「その、変なことが起こる確率はどのくらい?」
(「あー、ご・・・・・・ごかいにいっかいくらいかな。いや、10かいにいっかいかも。)
「あー、ご……5回に一回くらいかな。いや、10回に一回かも。
(・・・・・・わかんねえや」おれはしつもんをかえた。「きのうときょうは?」)
……わかんねえや」俺は質問を変えた。「昨日と今日は?」
(「・・・・・・あった。きのうのよる、さけかいにおりようとしたらよ・・・・・・」)
「……あった。昨日の夜、酒買いに降りようとしたらよ……」
(そこまでいったところで、「ちょっとごめんなさーい」)
そこまで言ったところで、「ちょっとごめんなさーい」
(というこえとともに40だいくらいのしゅふとおぼしきとしかっこうのひとが)
という声とともに40代くらいの主婦と思しき年恰好の人が
(おれたちのたちいちにわりこんできた。まるでえれべーたーのまえで)
俺たちの立ち位置に割り込んできた。まるでエレベーターの前で
(たちばなしをしているおれたちをじゃまだといわんばかりに。)
立ち話をしている俺たちを邪魔だと言わんばかりに。
(あとずさりしてばしょをあけたおれたちのめのまえでしゅふは)
後ずさりして場所を空けた俺たちの目の前で主婦は
(したむきやじるしをすばやくおし、えれべーたーじょうぶのかいすうひょうじらんぷをみあげた。)
下向き矢印を素早く押し、エレベーター上部の階数表示ランプを見上げた。
(なな,ろく,ごとらんぷがさがってきてよんのひょうじがひかろうかというとき、)
7,6,5とランプが下がって来て4の表示が光ろうかという時、
(おれたちはかおをみあわせて(このおばさんといっしょにおりるべきか))
俺たちは顔を見合わせて(このおばさんと一緒に降りるべきか)
(とわずかにしあんした。が、つぎのしゅんかんおどろくことがおこった。)
とわずかに思案した。が、次の瞬間驚くことが起こった。
(よんのすうじがひかるたいみんぐがきてもえれべーたーのとびらはひらくけはいもみせず、)
4の数字が光るタイミングが来てもエレベーターの扉は開く気配も見せず、
(ひょうじらんぷはそのままよん、さんとさがっていったのだった。)
表示ランプはそのまま4、3と下がっていったのだった。
(あっけにとられたおれのまえでしゅふは「ちっ」とあまりじょうひんでないしたうちを)
あっけにとられた俺の前で主婦は「チッ」とあまり上品でない舌打ちを
(したかとおもうと、かかとをかえしてさっさとかいだんのほうへさっていってしまった。)
したかと思うと、踵を返してさっさと階段の方へ去って行ってしまった。
(とりのこされたおれたちは、ふたたびにんきのなくなったくうかんに)
取り残された俺たちは、再び人気のなくなった空間に
(たたずんでかおをみあわせた。「これか」おれのことばにゆうじんはしんみょうにうなずく。)
たたずんで顔を見合わせた。「これか」俺の言葉に友人は神妙に頷く。
(ぞわっとせすじがさむくなったきがした。)
ぞわっと背筋が寒くなった気がした。
(けれど、れいせいにかんがえるとやはりただのこしょうのようなきがしてくる。)
けれど、冷静に考えるとやはりただの故障のような気がしてくる。
(くちをあきかけたとき、ゆうじんがしわくがいのことをいいはじめた。)
口を開きかけた時、友人が思惑外のことを言い始めた。
(「あのおばさん、なんかにがてなんだよ。)
「あのおばさん、なんかニガテなんだよ。
(たぶんきゅうかいにすんでるんだけど、よんかいにともだちがいるみたいで)
たぶん9階に住んでるんだけど、4階に友だちがいるみたいで
(ときどきすれちがったりすんだよ。さいしょにあったとき、なんていうかあいさつする)
時々すれ違ったりすんだよ。最初に会った時、なんていうか挨拶する
(たいみんぐみたいなのって、あるじゃん。)
タイミングみたいなのって、あるじゃん。
(それがなんかどっちもかみあわなかったっていうのか、)
それがなんかどっちも噛み合わなかったっていうのか、
(まあしかとみたいになっちゃって。)
まあシカトみたいになっちゃって。
(それから、こないだあいさつしなかったのに、こんかいはするってへんなかんじがして、)
それから、こないだ挨拶しなかったのに、今回はするって変な感じがして、
(けっきょくまいかいしかとみたいになってて。いや、そういうのあるだろ。)
結局毎回シカトみたいになってて。いや、そういうのあるだろ。
(わかるよな」たしかにわかる。おれもきんじょづきあいとか、にがてなほうだ。)
わかるよな」確かにわかる。俺も近所づきあいとか、苦手なほうだ。
(「こないだなんか、いっかいからえれべーたーのったらよ。)
「こないだなんか、1階からエレベーター乗ったらよ。
(さきにあのおばさんがのってて、おれのかおみるなりちっってしたうちしたんだぜ。)
先にあのおばさんが乗ってて、オレの顔見るなりチッって舌打ちしたんだぜ。
(こっちにはきこえてないつもりだったかもしんないけど、かんじわるいわぁ」)
こっちには聞こえてないつもりだったかも知んないけど、感じ悪いわぁ」
(ゆうじんはくびをひねってあくたいをついた。)
友人は首を捻って悪態をついた。
(えれべーたーのひょうじはいっかいでとまったままうごかない。)
エレベーターの表示は1階で止まったまま動かない。
(この4かいをすどおりしたあと、だれかがはこをおりたのだろうか。)
この4階を素通りしたあと、誰かが箱を降りたのだろうか。
(のるためにはこをよんでいたのなら、いっかいからふたたびあがってきているはずだから。)
乗るために箱を呼んでいたのなら、1階から再び上ってきているはずだから。
(ということは、さっきおれたちのまえをすどおりしていったはこには、)
ということは、さっき俺たちの前を素通りしていった箱には、
(だれかがのっていたことになる。)
誰かが乗っていたことになる。
(いったいだれが・・・・・・いまからだっしゅでかいだんをおりてもきっと、)
いったい誰が…… 今からダッシュで階段を降りてもきっと、
(たちさったあとだろう。)
立ち去ったあとだろう。
(おれはかおのぶぶんがくろくぬりつぶされたじんぶつがこのまんしょんを)
オレは顔の部分が黒く塗りつぶされた人物がこのマンションを
(はいかいしているいめーじをあたまにうかべ、すこしうすきみがわるくなった。)
徘徊しているイメージを頭に浮かべ、少し薄気味が悪くなった。
(とびらのとうめいなたいぷのえれべーたーなら、このもやもやも)
扉の透明なタイプのエレベーターなら、このもやもやも
(かいしょうされたかもしれないのに。「どうする、かいだんにするか」)
解消されたかも知れないのに。「どうする、階段にするか」
(「いや、えれべーたーにしよう」)
「いや、エレベーターにしよう」
(おれはもういちどしたむきやじるしのぼたんをおそうとして、はたとてをとめた。)
俺はもう一度下向き矢印のボタンを押そうとして、ハタと手を止めた。
(やじるしのぼたんはらんぷがついたままだった。「やっぱりこしょうじゃないか」)
矢印のボタンはランプがついたままだった。「やっぱり故障じゃないか」
(「このかいにきてとびらをあけ」というめいれいをしめすらんぷがてんとうしているのに、)
「この階に来て扉を開け」という命令を示すランプが点灯しているのに、
(はこがいっかいにとまったままなのだから。おれはやじるしぼたんをれんだした。)
箱が1階に止まったままなのだから。俺は矢印ボタンを連打した。
(たぶんきかいがふるくなってほんたいのはんのうがわるくなっているのだろう。)
たぶん機械が古くなって本体の反応が悪くなっているのだろう。
(おれのれんだがきいたのかようやくはこのげんざいいちはうごきはじめ、)
俺の連打が効いたのかようやく箱の現在位置は動き始め、
(おれたちのまえでとびらがあいた。なかにはだれものっていない。ゆうじんをうながしてのりこむ。)
俺たちの前で扉が開いた。中には誰も乗っていない。友人を促して乗り込む。
(そうさばんのいっかいのぼたんをおしてから、”しめ”のぼたんをおす。)
操作盤の1階のボタンを押してから、”閉”のボタンを押す。
(すぅっととびらはしまり、おちていくかんかくがはじまる。)
すぅっと扉は閉まり、落ちていく感覚が始まる。
(はこのなかにわずかにのこるこうすいのようなにおいを、びこうがかんちする。)
箱の中にわずかに残る香水のような匂いを、鼻腔が感知する。
(ふかいだ。かおがくろくぬりつぶされたじんぶつのしるえっとが、)
不快だ。顔が黒く塗りつぶされた人物のシルエットが、
(おれのなかでおばさんぱーまにかわる。)
俺の中でおばさんパーマに変わる。
(いっかいについた。すんなりひらいたとびらをでて、むじんのえれべーたーのなかをふりかえる。)
1階についた。すんなり開いた扉を出て、無人のエレベーターの中を振り返る。
(ほんとうにただのこしょうだろうか。)
ほんとうにただの故障だろうか。
(ゆうひがさすなかを、とびらはかげをつくりながらとじていく。)
夕日が射す中を、扉は影を作りながら閉じていく。
(かんぜんにとびらはしまり、はこのなかはみえなくなった。ふと、おもう。)
完全に扉は閉まり、箱の中は見えなくなった。ふと、思う。
(いまこのばでもういちどぼたんをおしてこのとびらをひらいたとして、)
今この場でもう一度ボタンを押してこの扉を開いたとして、
(なかにだれかがいたら、どうしよう・・・・・・いやなくうそうだ。)
中に誰かがいたら、どうしよう……嫌な空想だ。
(じぶんでかってにきょうふをつくろうとしている。われながらあくへきだとおもう。)
自分で勝手に恐怖を作ろうとしている。我ながら悪癖だと思う。
(けれど、いぜんあるひとがいっていたことをおもいだす。)
けれど、以前ある人が言っていたことを思い出す。