トイレ-1-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 Shion 3029 E++ 3.1 97.1% 1166.9 3642 107 63 2024/10/02

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問題文

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(だいがくいっかいせいのはるだった。きゅうじつにぼくはひとりでまちにでて、でぱーとでひとりぐらしに)

大学1回生の春だった。休日に僕は一人で街に出て、デパートで一人暮らしに

(ひつようなこまごまとしたものをかった。れじをすませてから、)

必要なこまごまとしたものを買った。レジを済ませてから、

(ほんやにでもよってかえろうかなとおもいつつといれをさがす。)

本屋にでも寄って帰ろうかなと思いつつトイレを探す。

(てんじょうからつりさがったおとことおんなのまーくをたよりにふろあをうろつき、)

天井から吊り下がった男と女のマークを頼りにフロアをうろつき、

(ようやくすみのほうにさいごのやじるしをみつけた。)

ようやく隅の方に最後の矢印を見つけた。

(かどをまがると、のっぺりしたかべにかこまれたつうろがあり、さらにとちゅうで)

角を曲がると、のっぺりした壁に囲まれた通路があり、さらに途中で

(なんどかみちがおれて、けっきょくといれるーむにいたるまでには)

何度か道が折れて、結局トイレルームに至るまでには

(ひとのけはいはまったくなくなっていた。)

人の気配はまったくなくなっていた。

(ざわざわとしたどくとくのけんそうがどこかとおくへいってしまい、)

ざわざわとした独特の喧騒がどこか遠くへ行ってしまい、

(じぶんのあしおとがやけにおおきくひびいた。ふと、ししょうからきいたはなしをおもいだす。)

自分の足音がやけに大きく響いた。ふと、師匠から聞いた話を思い出す。

(「あのでぱーとのよんかいのといれ、でるぜ」おかるとどうのししょうのいうことだ。)

『あのデパートの4階のトイレ、出るぜ』オカルト道の師匠の言うことだ。

(もちろんごきぶりやなにかのことではないだろう。)

もちろんゴキブリやなにかのことではないだろう。

(ぼくはここがよんかいのふろあだったことをきおくでかくにんし、)

僕はここが4階のフロアだったことを記憶で確認し、

(「よし、ちょうどいい。たしかめてやろう」とおもう。)

「よし、ちょうどいい。確かめてやろう」と思う。

(たしかししょうはこうつづけたはずだ。)

確か師匠はこう続けたはずだ。

(「よんかいのしょうがいしゃようのといれでな、じぶんいがいだれもいないはずなのに)

『4階の障害者用のトイレでな、自分以外誰もいないはずなのに

(ちかくでこえがきこえるんだ。そのこえはちいさくてなにをいっているのか)

近くで声が聞こえるんだ。その声は小さくて何を言っているのか

(とてもききとれない。きょろきょろしたってだめだ。)

とても聞き取れない。キョロキョロしたって駄目だ。

(ちいさいおとをきくために、どうしたらいいか、かんがえるんだ」どきどきしてきた。)

小さい音を聞くために、どうしたらいいか、考えるんだ』ドキドキしてきた。

(つうろをすすむとだんせいようとじょせいようのまーくがはめこまれているかべのてまえに、)

通路を進むと男性用と女性用のマークがはめ込まれている壁の手前に、

など

(くるまいすのまーくのどあがあった。しょうがいしゃようのこしつだ。はいるのははじめてだった。)

車椅子のマークのドアがあった。障害者用の個室だ。入るのは初めてだった。

(くりーむいろのとってをよこにひくと、どあはたいしたちからもいらずに)

クリーム色の取っ手を横に引くと、ドアは大した力もいらずに

(すむーずにすべった。ぱっとあかりがつく。じどうせんさーのようだ。)

スムーズに滑った。パッと明かりがつく。自動センサーのようだ。

(うちがわにはいり、どあからてをはなすとしぜんにしまっていった。)

内側に入り、ドアから手を離すと自然に閉まっていった。

(なかはおもったよりひろい。ふつうのといれのこしつとはかなりちがう。)

中は思ったより広い。普通のトイレの個室とはかなり違う。

(いりぐちからしょうめんにようしきのべんざがあり、みぎてがわにはせんめんだいがある。)

入り口から正面に洋式の便座があり、右手側には洗面台がある。

(そのせんめんだいのじょうぶにとりつけられているかがみをみて、すこしいわかんをおぼえる。)

その洗面台の上部に取り付けられている鏡を見て、少し違和感を覚える。

(かがみのましょうめんにたっているのに、じぶんのかおがみえない。)

鏡の真正面に立っているのに、自分の顔が見えない。

(むなもとがみえているだけだ。よくみるとかがみはまえのめりにかたむけられていた。)

胸元が見えているだけだ。よく見ると鏡は前のめりに傾けられていた。

(なるほど、くるまいすのひとがつかうことをそうていして、)

なるほど、車椅子の人が使うことを想定して、

(ひくいいちからせいたいできるようになっているらしい。)

低い位置から正対できるようになっているらしい。

(かおのみえないかがみのなかのじぶんとむかいあっていると、)

顔の見えない鏡の中の自分と向かい合っていると、

(まるでかがみにうつっているのがみしらぬだれかであるようなきがして、)

まるで鏡に映っているのが見知らぬ誰かであるような気がして、

(きもちがわるかった。ぼくはかがみからめをそらし、べんざにちかづく。)

気持ちが悪かった。僕は鏡から目を逸らし、便座に近づく。

(てすりがかべにとりつけられ、かべからとおいがわにはゆかから)

手すりが壁に取り付けられ、壁から遠い側には床から

(じょうぶそうなぱいぷがのびている。ぐっとたいじゅうをかけててすりとぱいぷを)

丈夫そうなパイプが伸びている。グッと体重をかけて手すりとパイプを

(りょうてでつかみながらからだをはんてんさせる。すとん、とべんざにこしをおとす。しずかだ。)

両手で掴みながら体を反転させる。ストン、と便座に腰を落とす。静かだ。

(かんきせんのまわるしんどうだけがつたわってくる。しんれいすぽっとだからって、)

換気扇の回る振動だけが伝わってくる。心霊スポットだからって、

(いつもいつも「でる」わけでもないだろう。)

いつもいつも「出る」わけでもないだろう。

(ましてこんなにめいめいとしたこしつで、しかもひるまっからだ。)

ましてこんなに明々とした個室で、しかも昼間っからだ。

(ざんねんにおもいながらもすこしほっとしたぼくは、)

残念に思いながらも少しホッとした僕は、

(ついでだからとずぼんをおろし、ようをたした。)

ついでだからとズボンを下ろし、用を足した。

(みずをながすぼたんはどれだ?かべがわをさぐると、あかいぼたんがめについた。)

水を流すボタンはどれだ?壁側を探ると、赤いボタンが目に付いた。

(あやうくおすところでおもいとどまる。「きんきゅうよびだし」そんなもじがかいてあった。)

あやうく押すところで思いとどまる。『緊急呼出』そんな文字が書いてあった。

(あぶない。きんきゅうじのよびだしぼたんらしい。)

危ない。緊急時の呼び出しボタンらしい。

(まぎらわしいところにおくなよ、ともんくをいいそうになるが、)

紛らわしい所に置くなよ、と文句を言いそうになるが、

(すこしかんがえてがてんがいく。たいちょうきゅうへんじのぼたんなのだから、てがとどくところで、)

少し考えて合点がいく。体調急変時のボタンなのだから、手が届くところで、

(かつめだつばしょにないといけないのだろう。)

かつ目立つ場所にないといけないのだろう。

(「せんじょう」のぼたんをそのちかくにみつけて、おしこむ。)

『洗浄』のボタンをその近くに見つけて、押し込む。

(ざーっというみずがながれるおとがして、そしてまたしずかなじかんがもどってくる。)

ザーッという水が流れる音がして、そしてまた静かな時間が戻ってくる。

(が・・・・・・たちあがろうとしたしゅんかん、ぼくのみみはなにかのいへんをとらえた。)

が……立ち上がろうとした瞬間、僕の耳はなにかの異変を捉らえた。

(・・・・・・ぼそ・・・・・・ぼそ・・・・・・ぼそ・・・・・・なにか、ちいさなこえがきこえる。)

……ボソ……ボソ……ボソ……何か、小さな声が聞こえる。

(しゅんかんに、くうきがかわる。おもくねっとりしたくうきに。)

瞬間に、空気が変わる。重くねっとりした空気に。

(ぼくはあたまをうごかさず、めだけでしつないをみまわす。)

僕は頭を動かさず、目だけで室内を見回す。

(てんじょう、しょうめい、かんきせん、どあ、せんめんだい、かがみ、かべ、てすり、ゆか。)

天井、照明、換気扇、ドア、洗面台、鏡、壁、手すり、床。

(なにもへんかはない。おとはめにはみえない。)

なにも変化はない。音は目には見えない。

(ぼそ、ぼそ、というだれかがささやくようなおとはつづいている。ここからにげたい。)

ボソ、ボソ、という誰かが囁く様な音は続いている。ここから逃げたい。

(けれど、あしがすくんでいる。そして、あしがすくんでいることいじょうに、)

けれど、足が竦んでいる。そして、足が竦んでいること以上に、

(ぼくはそのこえのしょうたいをしりたかった。「きょろきょろしたってだめだ」)

僕はその声の正体を知りたかった。『キョロキョロしたって駄目だ』

(ししょうのことばがのうりをかすめる。ぼくはかんがえる。だれかのくちが、うごいているいめーじ。)

師匠の言葉が脳裏を掠める。僕は考える。誰かの口が、動いているイメージ。

(いやほんからなにかがきこえるいめーじ。)

イヤホンから何かが聞こえるイメージ。

(らじおのすぴーかーのむすうのあなからそれがきこえるいめーじ。)

ラジオのスピーカーの無数の穴からそれが聞こえるイメージ。

(そうだ。おとはいつも「あな」からきこえてくる。)

そうだ。音はいつも「穴」から聞こえてくる。

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