古い家-4-

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プレイ回数422難易度(5.0) 3918打 長文 長文モード推奨
師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ちゅけ 5364 B++ 5.5 97.6% 709.8 3904 96 68 2024/08/10
2 RIO🩵🐥 5338 B++ 5.6 94.8% 694.2 3921 215 68 2024/08/11
3 じゅん 4140 C 4.4 93.3% 869.7 3875 274 68 2024/09/22

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問題文

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(つぼはあんまりしずかにたっているのですわっているようにみえる、)

壷はあんまり静かに立っているので座っているように見える、

(といったのはだれだったか・・・・・・どちらにしてもきいろいしょうめいがてらすちのそこで)

と言ったのは誰だったか……どちらにしても黄色い照明が照らす地の底で

(ひとりきりつぼにのみこまれたぼくはみをまるめ、おもいいしでそらに)

一人きり壷に呑み込まれた僕は身を丸め、重い石でそらに

(ふたをされるのをみていることしかできない。)

蓋をされるのを見ていることしかできない。

(そうしていっさいのあかりのないせかいにとじこめられたぼくは、)

そうして一切の明かりのない世界に閉じ込められた僕は、

(とおざかっていくあしおとをきく。それからやがて、じぶんのいるばしょが)

遠ざかっていく足音を聞く。それからやがて、自分のいる場所が

(ちのそことはおもえなくなってくる。もっとしたが、あるようなきがしてくるのだ。)

地の底とは思えなくなってくる。もっと下が、あるような気がしてくるのだ。

(「どうした」とよばれ、われにかえる。ししょうがかいちゅうでんとうをしたにむけながら、)

「どうした」と呼ばれ、我に返る。師匠が懐中電灯を下に向けながら、

(そろそろとあしをかいだんにかけていく。ぼくもそれにつづく。)

ソロソロと足を階段に掛けていく。僕もそれに続く。

(ぎい、ぎい、とふるいきがきしむおと。にかいからいっかいにおりるかいだんとはちがう。)

ギイ、ギイ、と古い木が軋む音。2階から1階に降りる階段とは違う。

(たとえそとがみえないたてもののなかでも、ちちゅうへはいっていくかいだんは)

たとえ外が見えない建物の中でも、地中へ入っていく階段は

(たしかにそれとわかる。ひふかんかくで。あるいはぞうきで。かいだんはきゅうだ。)

確かにそれと分かる。皮膚感覚で。あるいは臓器で。階段は急だ。

(いちだんいちだんがものすごくたかく、またあしをおくふみづらもせまい。)

1段1段が物凄く高く、また足を置く踏み面も狭い。

(したをみると、ほとんどすいちょくにおりているようなさっかくさえいだく。)

下を見ると、ほとんど垂直に降りているような錯覚さえ抱く。

(あしをすべらせたら、たいへんだ。そうおもってしんちょうにいっぽいっぽすすめていく。)

足を滑らせたら、大変だ。そう思って慎重に一歩一歩進めていく。

(すぐにかべにつきあたる。)

すぐに壁に突き当たる。

(みぎがわにひらいたくうかんにまわりこむとまたしたにのびるかいだんがつづいている。)

右側に開いた空間に回りこむとまた下に伸びる階段が続いている。

(ただのおりかえしだ。「ちかでしょうゆでもねかせてるのかな」)

ただの折り返しだ。「地下で醤油でも寝かせてるのかな」

(ししょうがつぶやいたが、そうはおもえない。)

師匠が呟いたが、そうは思えない。

(しょうゆがしっけのおおいちかでほぞんするのにてきしたものとはおもえないし、)

醤油が湿気の多い地下で保存するのに適したものとは思えないし、

など

(なによりいりぐちがおしいれにかくされていたというのがふおんとうだ。)

なにより入り口が押入れに隠されていたというのが不穏当だ。

(ちかからふきあがってくるかすかなかぜが、ほおにふれる。)

地下から吹き上がってくる微かな風が、頬に触れる。

(かびくさいにおいがはなにつく。すぐにまたかべにつきあたった。)

黴臭い匂いが鼻につく。すぐにまた壁に突き当たった。

(ししょうがゆっくりとあかりをみぎがわへむけていく。「おい」というこえ。)

師匠がゆっくりと明かりを右側へ向けていく。「おい」という声。

(ぼくもそこにならぶと、したにのびるかいだんがめにはいる。)

僕もそこに並ぶと、下に伸びる階段が目に入る。

(まだしたがあるぞ。とししょうがつぶやく。)

まだ下があるぞ。と師匠が呟く。

(かいちゅうでんとうにてらされるしたには、またおなじようなしっくいのかべが)

懐中電灯に照らされる下には、また同じような漆喰の壁が

(ひかりをはんしゃしている。)

光を反射している。

(そしてまったくおなじようにみぎがわのくうかんがひかりをすいこんでいる。)

そしてまったく同じように右側の空間が光を吸い込んでいる。

(「どこまでちかがあるんだ」ぼくらはそのかいだんをおりていった。)

「どこまで地下があるんだ」僕らはその階段を降りていった。

(ぎいぎいというきのおとと、かぜのおと。うすよごれたしっくいのかべと、)

ギイギイという木の音と、風の音。薄汚れた漆喰の壁と、

(またくるりとおりかえされてつづくみち。にかい。さんかい。よんかい。ごかい。ろっかい。)

またくるりと折り返されて続く道。2回。3回。4回。5回。6回。

(おりかえしのかずをかぞえていたぼくは、あたまのなかにむしがとぶような)

折り返しの数を数えていた僕は、頭の中に虫が飛ぶような

(きみょうなざつおんがはいってだんだんとつぎのすうじがわからなくなる。)

奇妙な雑音が入ってだんだんと次の数字が分からなくなる。

(ななかい。はちかい。きゅうかい。つぎは10かいだ。10かい。10かいだ。ああ。)

7回。8回。9回。次は10回だ。10回。10回だ。ああ。

(またかいだんが。これで11かいだからつぎで。いや、いまので10かいじゃなかったか。)

また階段が。これで11回だから次で。いや、今ので10回じゃなかったか。

(つぎで・・・・・・さきへすすむししょうが、きゅうにあしをとめた。てんじょうにかいちゅうでんとうをむける。)

次で……先へ進む師匠が、急に足を止めた。天井に懐中電灯を向ける。

(「すすだ」てんじょうといっても、それはひくくななめになってしたへのびるもくせいのてんばん。)

「煤だ」天井と言っても、それは低く斜めになって下へ伸びる木製の天板。

(ぼくらがおりてきたかいだんのそこいたが、そのしたのかいのてんばんになっているのだろう。)

僕らが降りてきた階段の底板が、その下の階の天板になっているのだろう。

(そのてんじょういちめんが、うすっすらとくろくくすんでみえる。)

その天井一面が、薄っすらと黒くくすんで見える。

(「きづかなかったけど、あしもともすすでいっぱいだ」)

「気づかなかったけど、足元も煤でいっぱいだ」

(あたまのなかに、ろうそくをもってこのかいだんをおりるにんげんのしるえっとがうかんだ。)

頭の中に、蝋燭を持ってこの階段を降りる人間のシルエットが浮かんだ。

(いったいどれほどのながいじかん、このちかへのかいだんがつかわれていたのか。)

いったいどれほどの長い時間、この地下への階段が使われていたのか。

(ししょうがからだをかがめてふみづらをぎょうしする。)

師匠が身体を屈めて踏み面を凝視する。

(「おい。みてみろ。つもったほこりとすすに、うすっすらふみあらされたあとがある」)

「おい。見てみろ。積もった埃と煤に、薄っすら踏み荒らされた跡がある」

(「そりゃあ、このいえのひとがむかし、でいりしてたでしょうから」)

「そりゃあ、この家の人が昔、出入りしてたでしょうから」

(「でもあのうえのかおくのこうはいっぷりからしたら、このかいだんもつかわれなくなって)

「でもあの上の家屋の荒廃っぷりからしたら、この階段も使われなくなって

(そうとうじかんがたってるはずだ。すすはともかく、ほこりがたまっているはずなんだ。)

相当時間がたってるはずだ。煤はともかく、埃が溜まっているはずなんだ。

(そのうえにどうしてあしあとがついている?」だれか、このしたにいるのか。)

その上にどうして足跡がついている?」誰か、この下にいるのか。

(いまでもここをのぼりおりしているにんげんがいるのだろうか。)

今でもここを昇り降りしている人間がいるのだろうか。

(「このよのものとはおもえないうめきごえがきこえる」といううわさ。)

『この世のものとは思えない呻き声が聞こえる』という噂。

(あれは、このかいだんをふきぬけるかぜのおとではなかったのだろうか。)

あれは、この階段を吹き抜ける風の音ではなかったのだろうか。

(いや、ぼくのあたまはそのとき、どうじにまったくべつのことをそうぞうしていた。)

いや、僕の頭はその時、同時にまったく別のことを想像していた。

(それは、おりかえしのかいすうをかぞえているあいだにのうりをよぎったうすきみのわるいかんがえだ。)

それは、折り返しの回数を数えている間に脳裏をよぎった薄気味の悪い考えだ。

(なんどかふりはらおうとしたが、いま、めのまえのだれのともしれない)

何度か振り払おうとしたが、今、目の前の誰のとも知れない

(かすかなあしあとをみて、それがことばをなした。)

微かな足跡を見て、それが言葉を成した。

(これは、”ぼくらのあしあとではないだろうか”、と。)

これは、"僕らの足跡ではないだろうか"、と。

(そのしゅんかん、ぞわぞわとせすじにいやなかんかくがはしり、ぼくはたちあがった。)

その瞬間、ぞわぞわと背筋に嫌な感覚が走り、僕は立ち上がった。

(「うえ、みてきます」ししょうにそういいおいて、もときたかいだんをのぼりはじめる。)

「上、見てきます」師匠にそう言い置いて、もと来た階段を昇り始める。

(まるでかべのようにたちふさがるきゅうしゅんないちだんいちだんを、)

まるで壁のように立ち塞がる急峻な1段1段を、

(りょうてをつきながらのぼっていく。ひとつ。ふたつ。みっつ。よっつ。)

両手をつきながら昇っていく。1つ。2つ。3つ。4つ。

(おりかえしをいくつくりかえせば、もとのおしいれにでるのか。)

折り返しをいくつ繰り返せば、元の押入れに出るのか。

(ぼくらはおりつづけていたはずのに、なぜかおなじばしょを)

僕らは降り続けていたはずのに、何故か同じ場所を

(ぐるぐるとまわっていたのではないか?そんなはずはない。)

ぐるぐると回っていたのではないか?そんなはずはない。

(そうおもいながら、ばたばたとおとをたてながらかけのぼっていく。)

そう思いながら、バタバタと音を立てながら駆け昇っていく。

(くるしい。いきがきれる。そしてくらい。なにもみえない。しまったな。)

苦しい。息が切れる。そして暗い。何も見えない。しまったな。

(あかりをかりてくればよかった。なんどめのおりかえしだっただろう。)

明かりを借りてくれば良かった。何度目の折り返しだっただろう。

(ふいにぼくのみみはじょせいのひめいをききとった。しただ。)

ふいに僕の耳は女性の悲鳴を聞き取った。下だ。

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