怪物 「起」-3-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(いや、はじまりはきのうではない。こわいゆめをみたというばくぜんとしたきおくは、)

いや、始まりは昨日ではない。怖い夢を見たという漠然とした記憶は、

(かなりまえからはじまっていた。このなつがはじまるころ、いやあるいはもっとまえから、)

かなり前から始まっていた。この夏が始まるころ、いやあるいはもっと前から、

(ゆるやかにそれはわたしのにちじょうをしんしょくし、)

緩やかにそれは私の日常を侵食し、

(そしてこのまちのなかにしみこんでいたのかもしれない。だれにもそのいみを)

そしてこの街の中に染み込んでいたのかも知れない。誰にもその意味を

(きづかれないままに・・・・・・さんほんめのたばこをはこからだしたときだった。)

気づかれないままに……3本目の煙草を箱から出した時だった。

(とつぜんきーんというみみなりにおそわれた。)

突然キーンという耳鳴りに襲われた。

(まるで、しゅういのこうどがげきてきにかわったかのようだった。)

まるで、周囲の高度が劇的に変わったかのようだった。

((まずい。なにかおこる)そうちょっかんして、とっさにしせいをひくくする。)

(まずい。なにか起こる)そう直感して、とっさに姿勢を低くする。

(ぜんしんをきょうふがつらぬいた。けれどいつまでまってもなにもおこらなかった。)

全身を恐怖が貫いた。けれどいつまで待っても何も起こらなかった。

(おそるおそるからだをおこして、しゅういをみまわす。じめんにも、こうしゃのかべにもいへんはない。)

恐る恐る身体を起こして、周囲を見回す。地面にも、校舎の壁にも異変はない。

(そらをみても、さっきとなにもかわらない。にゅうどうぐもがたかくそびえているばかりだ。)

空を見ても、さっきとなにも変わらない。入道雲が高くそびえているばかりだ。

(むねはまだどきどきしている。そういえばみみなりがしたあのしゅんかん、)

胸はまだドキドキしている。そういえば耳鳴りがしたあの瞬間、

(どこかとおくでかみなりのようなおとがなったようなきがする。)

どこか遠くで雷のような音が鳴ったような気がする。

(めをとじてみみをすましてみたが、いまはもうなにもきこえない。)

目を閉じて耳を澄ましてみたが、今はもう何も聞こえない。

(みみなりもいつのまにかおさまっていた。「なんなんだ」)

耳鳴りもいつの間にかおさまっていた。「なんなんだ」

(じぶんにといかけて、それからだしかけたたばこをはこにもどす。)

自分に問いかけて、それから出しかけた煙草を箱に戻す。

(じゅぎょうにもどろうかとかんがえて、やっぱりやめることにした。)

授業に戻ろうかと考えて、やっぱりやめることにした。

(さっきのみみなりがなにかはんぷくせいのもののようなきがして、)

さっきの耳鳴りがなにか反復性のもののような気がして、

(とっさににげばのないきょうしつにはもどりたくなかったのだ。)

とっさに逃げ場のない教室には戻りたくなかったのだ。

(つぎにがっこうからぬけだしてみようかとおもった。)

次に学校から抜け出してみようかと思った。

など

(それはすばらしいおもいつきにかんじられて、いてもたってもいられなくなり、)

それは素晴らしい思いつきに感じられて、いてもたってもいられなくなり、

(がっこうのしきちからでるためにへいをよじのぼることさえくにならなかった。)

学校の敷地から出るために塀をよじ登ることさえ苦にならなかった。

(だれにもみつからずぬけだすことにせいこうしたわたしは、かわのほうにいってみるか、)

誰にも見つからず抜け出すことに成功した私は、川の方に行ってみるか、

(それともとしょかんにあしをのばすかしあんした。)

それとも図書館に足を伸ばすか思案した。

(まっぴるまにせいふくだとめだつな、とおもいながらあるいていると、)

真っ昼間に制服だと目立つな、と思いながら歩いていると、

(とおくからさいれんのおとがきこえてきた。きゅうきゅうしゃのおとだ。)

遠くからサイレンの音が聞こえてきた。救急車の音だ。

(そうおもったしゅんかん、かけだしていた。)

そう思った瞬間、駆け出していた。

(それはさっきみみなりがしたしゅんかんにかみなりのようなおとがなったほうがくに)

それはさっき耳鳴りがした瞬間に雷のような音が鳴った方角に

(むかっているようなきがしたからだ。)

向かっているような気がしたからだ。

(そのときにはどこからきこえたのかわからなかったのに。)

その時にはどこから聞こえたのか分からなかったのに。

(きゅうきゅうしゃのさいれんにきょろきょろとしているつうこうにんをおいぬき、)

救急車のサイレンにキョロキョロとしている通行人を追い抜き、

(おおどおりをとおりすぎて、ろじうらにはいっていく。10ふんほどもはしっただろうか。)

大通りを通り過ぎて、路地裏に入っていく。10分ほども走っただろうか。

(ざわざわとしたひとのけはいがつよくなり、かどをまがったときに)

ざわざわとした人の気配が強くなり、角を曲がった時に

(そのこうけいがとびこんできた。しょうぎょうちからじゅうたくちにすこしはいったあたりの、)

その光景が飛び込んできた。商業地から住宅地に少し入ったあたりの、

(さびれたにかいだてのたてものがならぶいっかくにきゅうきゅうしゃのあかいらいとが)

寂れた2階建ての建物が並ぶ一角に救急車の赤いライトが

(くるくるとまわっている。しゅういにはわれたがらすがさんらんし、)

くるくると回っている。周囲には割れたガラスが散乱し、

(なんにんかのひとがあたまやうでをおさえてどうろにすわりこんでいた。やじうまが)

何人かの人が頭や腕を押さえて道路に座り込んでいた。野次馬が

(そのまわりをうろうろしている。じめんにはちのあとがぽつぽつとおちている。)

その周りをウロウロしている。地面には血の跡がポツポツと落ちている。

(けれどそれいじょうにわたしのめをひくものがじめんにおちていた。いしだ。)

けれどそれ以上に私の目を惹くものが地面に落ちていた。石だ。

(ぱちんこだまくらいのものから、こどものにぎりこぶしだいのものまで)

パチンコ玉くらいのものから、子どもの握りこぶし大のものまで

(だいしょうさまざまないしがしゅういにちらばっている。「おちてきたって」「ひょうが?」)

大小様々な石が周囲に散らばっている。「落ちてきたって」「雹が?」

(「いしだろ、いし」「ひょうじゃないの」「そらからおちてきたんだって」)

「石だろ、石」「雹じゃないの」「空から落ちてきたんだって」

(そんなことばがあたりをとびかっている。)

そんな言葉が辺りを飛び交っている。

(ひょうというたんごをきいて、おもわずてにとってみたがやはりそれはいしだった。)

雹という単語を聞いて、思わず手に取ってみたがやはりそれは石だった。

(どこにでもあるただのいしだ。こうえんやこうていにころがっていそうな。)

どこにでもあるただの石だ。公園や校庭に転がっていそうな。

(そらをみあげたが、でんせんがひとつよこぎっているだけであとはひこうきぐもひとつない。)

空を見上げたが、電線が一つ横切っているだけであとは飛行機雲一つない。

(そのろじの100めーとるくらいさきまで、いしがらんざつにどうろにひさんしている。)

その路地の100メートルくらい先まで、石が乱雑に道路に飛散している。

(がらすもたてもののまどがいしでわられたものらしい。)

ガラスも建物の窓が石で割られたものらしい。

(よくみるといえのかわらやねがわれているのもめについた。)

よく見ると家の瓦屋根が割れているのも目に付いた。

(ほんとうにいしがこのはれたそらからふったのか?てんきあめのように?)

本当に石がこの晴れた空から降ったのか? 天気雨のように?

(そんなことがあるのだろうか。)

そんなことがあるのだろうか。

(いんせきということばがあたまにうかんだが、どうかんがえてもそんなおおげさなものではない。)

隕石という言葉が頭に浮かんだが、どう考えてもそんな大げさなものではない。

(「どいてどいて」)

「どいてどいて」

(どうろにつったっているとしょうぼうたいいんにじゃけんにどかされた。きゅうきゅうしゃがでるらしい。)

道路につっ立っていると消防隊員に邪険にどかされた。救急車が出るらしい。

(わたしはすこしかんがえてから、そのいしをひとつだけすかーとのぽけっとにいれた。)

私は少し考えてから、その石を一つだけスカートのポケットに入れた。

(そしてむこうからぱとかーがやってきているのにきづき、)

そして向こうからパトカーがやって来ているのに気づき、

(あわててそのばをはなれる。けいさつはまずい。)

慌ててその場を離れる。警察はまずい。

(へいじつのまっぴるまにこうこうのせいふくをきたままだったからだ。)

平日の真っ昼間に高校の制服を着たままだったからだ。

(かれらはれいがいなくみなおせっかいで、そしてちゅうこうせいのあらゆるひこうが)

彼らは例外なく皆お節介で、そして中高生のあらゆる非行が

(がっこうをさぼることからはじまるとかたくしんじている。)

学校をサボることから始まると固く信じている。

(うしろがみをひかれるおもいでそのろじをあとにしたわたしはがっこうにもどろうかともかんがえたが、)

後ろ髪を引かれる思いでその路地を後にした私は学校に戻ろうかとも考えたが、

(ごびょうできゃっかする。しばらくろじうらをもくてきもなくうろうろしていたが、)

5秒で却下する。しばらく路地裏を目的もなくうろうろしていたが、

(はさみをかうつもりだったことをおもいだし、ちかくのぶんぼうぐやにあしをむけた。)

鋏を買うつもりだったことを思い出し、近くの文房具屋に足を向けた。

(そういえばこのあたりはさいきんきていないなとおもいながら、)

そう言えばこの辺りは最近来ていないなと思いながら、

(ささやかなしょうてんがいをあるく。そのあいだもあたまはさっきのいしのあめのことをかんがえていた。)

ささやかな商店街を歩く。その間も頭はさっきの石の雨のことを考えていた。

(たくさんのもくげきしゃもいるようだ。なによりあのわれたがらすやかわらやね、)

たくさんの目撃者もいるようだ。なによりあの割れたガラスや瓦屋根、

(そしてけがをしたにんげんがそのしょうこだ。いしはふった。)

そして怪我をした人間がその証拠だ。石は降った。

(それはまちがいないだろう。だがどこからかなのか。それがもんだいだった。)

それは間違いないだろう。だがどこからかなのか。それが問題だった。

(ちかくにもっとたかいびるでもあればそのうえのほうのかいやおくじょうから)

近くにもっと高いビルでもあればその上の方の階や屋上から

(ばらまかれたかのうせいもあるが、くかくじょうのきせいでもあるのか)

ばら撒かれた可能性もあるが、区画上の規制でもあるのか

(そんなたかいたてものはみあたらなかった。ひこうき?)

そんな高い建物は見当たらなかった。飛行機?

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