怪物 「起」-5-(完)

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(そして1820ねんいぎりすのさうすうっどふぉーどでは、)

そして1820年イギリスのサウスウッドフォードでは、

(あるいえにいしのあめがふり、つうほうによってけいさつかんがはいちされるじたいになったが、)

ある家に石の雨が降り、通報によって警察官が配置される事態になったが、

(けっきょくそのいしがどこからやってくるのかわからなかったというじれい。)

結局その石がどこからやって来るのか分からなかったという事例。

(1922ねんかりふぉるにあしゅうちこのまちのかたすみにふったいしのあめは、そのげんしょうが)

1922年カリフォルニア州チコの町の片隅に降った石の雨は、その現象が

(すうかげつにもおよんだがだいがくのちょうさちーむにもそのしょうたいがわからなかった。)

数ヶ月にも及んだが大学の調査チームにもその正体が分からなかった。

(まだまだあったが、どれにもきょうつうしているのはいしのあめが)

まだまだあったが、どれにも共通しているのは石の雨が

(こうはんいにわたってふったというわけではなく、)

広範囲に渡って降ったというわけではなく、

(むしろきわめてせまいはんいにしゅうちゅうしてたということだろう。)

むしろ極めて狭い範囲に集中してたということだろう。

(1820ねんこいしかわのたかさかなべごろうのやしきだとか、)

1820年小石川の高坂鍋五郎の屋敷だとか、

(1600ねんだいにゅーはんぷしゃーのじょーじうぉるとんのやしきだとか)

1600年代ニュー・ハンプシャーのジョージ・ウォルトンの屋敷だとか

(というきろくをみると、じつにそのこじんにたいしていしのあめという)

という記録を見ると、実にその個人に対して石の雨という

(こうげきがおこなわれているようなかんそうをおぼえる。)

攻撃が行われているような感想を覚える。

(まるでそのいえのもちぬしにうらみをもつにんげんのしぎょうであるかのようなきがする。)

まるでその家の持ち主に恨みを持つ人間の仕業であるかのような気がする。

(いしがどこからくるのかわからないといっても、だれかがみはっているときには)

石がどこから来るのか分からないと言っても、誰かが見張っている時には

(そのいたずらをけっこうしなければいいだけのはなしだ。)

その悪戯を決行しなければいいだけの話だ。

(そしてかんしがないときをみはからって、ものかげからとうせきをする。)

そして監視がない時を見計らって、物陰から投石をする。

(そのばにいあわせないにんげんがかんがえるとたんじゅんなこうぞうにおもえるけれど、)

その場に居合わせない人間が考えると単純な構造に思えるけれど、

(じっさいはどうなのだろうか。その「せかいのかいきげんしょうふぁいる」には、)

実際はどうなのだろうか。その『世界の怪奇現象ファイル』には、

(このふぁふろつきーずげんしょうについてのいくつかのかせつがしょうかいされていた。)

このファフロツキーズ現象についてのいくつかの仮説が紹介されていた。

(ちゃーるずふぉーとはちじょうからのてれぽーてーしょんによって)

チャールズ・フォートは地上からのテレポーテーションによって

など

(いどうしたさかなやかえるなどがたいきけんちゅうのあるくうかんにたくわえられ、)

移動した魚やカエルなどが大気圏中のある空間に蓄えられ、

(それがときにきかいなあめとなってちじょうにふりそそぐのだとかんがえた。)

それが時に奇怪な雨となって地上に降り注ぐのだと考えた。

(ほかにもぷらずまやくうちゅうけいきょといったこうとうむけいなせつもあったが、)

他にもプラズマや空中携挙といった荒唐無稽な説もあったが、

(げんじつてきにおもえたのはひこうきからのらっかせつとたつまきせつだった。)

現実的に思えたのは飛行機からの落下説と竜巻説だった。

(ひこうきせつはほとんどのらっかぶつをせつめいしうるかのうせいをもっているが、)

飛行機説はほとんどの落下物を説明しうる可能性を持っているが、

(ここのじれいにおいてそのひこうきのもくげきがひていされるけーすがおおく、)

個々の事例においてその飛行機の目撃が否定されるケースが多く、

(ぎょかいるいのらっかなどじだいてきにひこうきのとうじょうのぜんごにあっても)

魚介類の落下など時代的に飛行機の登場の前後にあっても

(そのしゅつげんぱたーんがかわらないようにみえるじれいをかいしゃくしづらい。)

その出現パターンが変わらないように見える事例を解釈し辛い。

(また、おなじばしょにちょうきかんにわたってそのげんしょうがつづくけーすのせつめいにはならない。)

また、同じ場所に長期間に渡ってその現象が続くケースの説明にはならない。

(たつまきせつはちじょうのぶったいをくうちゅうにまきあげていどうさせ、)

竜巻説は地上の物体を空中に巻き上げて移動させ、

(べつのばしょにらっかさせるというげんじつにかんそくされるありふれた)

別の場所に落下させるという現実に観測されるありふれた

(しぜんげんしょうなのでもっともゆうりょくなせつにもおもえる。)

自然現象なのでもっとも有力な説にも思える。

(しかしかえるばかりだとか、にしんばかりだとか、とうもろこしばかりだとか、)

しかしカエルばかりだとか、ニシンばかりだとか、トウモロコシばかりだとか、

(いっしゅるいのどうしょくぶつのみがらっかすることのせつめいとなるとくるしい。)

1種類の動植物のみが落下することの説明となると苦しい。

(たつまきがそんなものをよりわけているのならともかく、ちじょうにあっては)

竜巻がそんなものを選り分けているのならともかく、地上にあっては

(ほかのどうしょくぶつやいしやすなをどうじにまきあげているはずだし、うみやかわにあっては)

他の動植物や石や砂を同時に巻き上げているはずだし、海や川にあっては

(みずといっしょにすいちゅうのせいぶつをしゅべつにかかわりなくすいあげているはずだからだ。)

水と一緒に水中の生物を種別に関わりなく吸い上げているはずだからだ。

(くうちゅうにあがったあとで、そのくうきていこうにおうじたらっかのたいみんぐがそれぞれ)

空中に上ったあとで、その空気抵抗に応じた落下のタイミングがそれぞれ

(おなじしゅべつをしぜんとふりわけるのではないかというもっともらしいかいしゃくもあるが、)

同じ種別を自然と振り分けるのではないかというもっともらしい解釈もあるが、

(やはりおなじばしょにふりつづけるけーすのせつめいができないし、)

やはり同じ場所に降り続けるケースの説明が出来ないし、

(しゅういすうひゃっきろけんないにそのどうしょくぶつがそんざいしないというけーすもたたあるのだ。)

周囲数百キロ圏内にその動植物が存在しないというケースも多々あるのだ。

(そんなかいせつをつらつらとよんでいて、おもった。)

そんな解説をつらつらと読んでいて、思った。

(ここのけーすをおなじげんしょうでせつめいしようとするからややこしいんじゃないかと。)

個々のケースを同じ現象で説明しようとするからややこしいんじゃないかと。

(これはたつまき、これはひこうき、これはいたずら、そしてこれはうそ。)

これは竜巻、これは飛行機、これはイタズラ、そしてこれは嘘。

(そんなふうにわけてかんがえれば、あんがいしんぷるなんじゃないか。)

そんな風に分けて考えれば、案外シンプルなんじゃないか。

(たちあがり、かべにかけたすかーとのぽけっとをさぐる。)

立ち上がり、壁に掛けたスカートのポケットを探る。

(そしてひるまにあのろじでひろったいしをとりだして、てーぶるのうえにおいた。)

そして昼間にあの路地で拾った石を取り出して、テーブルの上に置いた。

(「これは、なんだろうな」)

「これは、なんだろうな」

(そうつぶやいてゆびでつつくと、それはことんとおとをたててかたむいた。)

そう呟いて指でつつくと、それはコトンと音を立てて傾いた。

(「せかいのかいきげんしょうふぁいる」をほんだなにしまい、よみつかれためがしらを)

『世界の怪奇現象ファイル』を本棚に仕舞い、読み疲れた目頭を

(てのひらのはらでおさえながらべっどによこになる。)

手の平の腹で抑えながらベッドに横になる。

(そのよる、わたしはははおやをころすゆめをみた。)

その夜、私は母親を殺す夢を見た。

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