怪物 「承」-1-
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | daifuku | 3810 | D++ | 4.0 | 94.7% | 954.8 | 3853 | 215 | 71 | 2024/11/15 |
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問題文
(こわいゆめをみていたきがする。あさのひかりがやけにそうぞうしくかんじる。)
怖い夢を見ていた気がする。朝の光がやけに騒々しく感じる。
(てんじょうをみあげながら、りょうてをあたまのうえにあげてのびをする。)
天井を見上げながら、両手を頭の上に挙げて伸びをする。
(じぶんがいやなあせをかいていることにきづく。)
自分が嫌な汗を掻いていることに気づく。
(かけぶとんをはねのけてからだをおこす。ゆめのざんさいがまだあたまのなかにのこっている。)
掛け布団を跳ね除けて身体を起こす。夢の残滓がまだ頭の中に残っている。
(げんじつのめはとじられていたのに、しかくじょうほうとして)
現実の眼は閉じられていたのに、視覚情報として
(きおくにきざみこまれたゆめのこうけい。いままでふしぎだとはおもわなかったのに、)
記憶に刻み込まれた夢の光景。今まで不思議だとは思わなかったのに、
(きょうはそれがひどくきみょうなことにおもえた。)
今日はそれが酷く奇妙なことに思えた。
(ゆめのなかでわたしは、やけにくらいへやにひとりでいる。)
夢の中で私は、やけに暗い部屋に一人でいる。
(ちらかったかべぎわに、じっとすわってなにかをまっている。)
散らかった壁際に、じっと座ってなにかを待っている。
(やがてそとからあしおとがきこえてわたしはうごきだす。)
やがて外から足音が聞こえて私は動き出す。
(げんかんにたち、どあにみみをつけていきをころす。あしおとがしたからのぼってくる。)
玄関に立ち、ドアに耳をつけて息を殺す。足音が下から登ってくる。
(わたしはそのあしおとが、ははおやのだとしっている。やがてそのおとがどあのまえでとまる。)
私はその足音が、母親のだと知っている。やがてその音がドアの前で止まる。
(どんどんどんというどあをたたくしんどう。せのびをして、ちぇーんをはずす。)
ドンドンドンというドアを叩く振動。背伸びをして、チェーンを外す。
(そしてろっくをかちりとひねる。)
そしてロックをカチリと捻る。
(どあがあけられ、わたしはそのむこうにたっているにんげんにはなしかけることも、)
ドアが開けられ、私はその向こうに立っている人間に話しかけることも、
(わらいかけることも、みみをかたむけることもしなかった。)
笑いかけることも、耳を傾けることもしなかった。
(ただつきだけがそのせなかごしにさえている。)
ただ月だけがその背中越しに冴えている。
(そしてちしぶきがまって、わたしのしかいをまっかにそめる。)
そして血飛沫が舞って、私の視界を真っ赤に染める。
(せかいがたったのひとつのいろになる。)
世界がたったの一つの色になる。
(ははおやはくずれおち、もうこきゅうをしなくなる・・・・・・)
母親は崩れ落ち、もう呼吸をしなくなる……
(「うああ」べっどのしーつをにぎりしめながら、おもわずそんなこえがでた。)
「うああ」ベッドのシーツを握り締めながら、思わずそんな声が出た。
(じぶんでもおどろいた。それはきょうふしんをからだのうちがわから)
自分でも驚いた。それは恐怖心を身体の内側から
(にがすためのじこぼうえいほんのうだったのかもしれない。)
逃がすための自己防衛本能だったのかも知れない。
(すぐにれいせいになる。なまなましいゆめだった。)
すぐに冷静になる。生々しい夢だった。
(ははおやとはさいきんしょうとつすることがおおいが、まさかころしてしまうゆめをみるなんて。)
母親とは最近衝突することが多いが、まさか殺してしまう夢を見るなんて。
(これがわたしのせんざいいしきのそこにあるがんぼうなのだろうかとおもうと、さむけがしてくる。)
これが私の潜在意識の底にある願望なのだろうかと思うと、寒気がしてくる。
(このあいだからずっとみていたこわいゆめは、このゆめだったのだろうか?)
この間からずっと見ていた怖い夢は、この夢だったのだろうか?
(かべのかれんだーをみる。もくようび。きょうもがっこうがある。ゆううつだ。)
壁のカレンダーを見る。木曜日。今日も学校がある。憂鬱だ。
(そのころになってようやくまどのそとのおとにきがついた。)
そのころになってようやく窓の外の音に気がついた。
(とおくでくぎをうっているようなおと。)
遠くで釘を打っているような音。
(いや、はんまーでくいをたたいているおとか。どちらにしてもみみざわりだ。)
いや、ハンマーで杭を叩いている音か。どちらにしても耳障りだ。
(いらいらとしながらふくにきがえる。ははおやがおこしにくるまえに。)
イライラとしながら服に着替える。母親が起こしに来る前に。
(きょうもすずめのなきごえはきこえない。かわりのあさのりずむが、)
今日もスズメの鳴き声は聞こえない。かわりの朝のリズムが、
(こんなふかいなおとだなんて。そのせいで、あんなゆめをみたのだろうか。)
こんな不快な音だなんて。そのせいで、あんな夢を見たのだろうか。
(そうだったら、まだいい。そのひのあさのしょくたくは、きまずかった。)
そうだったら、まだいい。その日の朝の食卓は、気まずかった。
(がっこうへむかうとちゅう、わたしはどこでこうじをしているのかとおもい、)
学校へ向かう途中、私はどこで工事をしているのかと思い、
(おとをたよりにきょろきょろとしていたがでどころははんぜんとしなかった。)
音を頼りにキョロキョロとしていたが出処は判然としなかった。
(やがてそのみみざわりなおともとだえる。こんなへいじつのあさはやくからめいわくだな。)
やがてその耳障りな音も途絶える。こんな平日の朝早くから迷惑だな。
(そのときはまだ、そのていどにおもっていただけだった。ちこくすんぜんできょうしつにすべりこんだ)
その時はまだ、その程度に思っていただけだった。遅刻寸前で教室に滑り込んだ
(ちょくごのほーむるーむちゅう、せんせいがいがいなことをいった。)
直後のホームルーム中、先生が意外なことを言った。
(「きのうはへんないちにちだったなぁ。しんぶんみたか。あれ、きんじょなんだよ」)
「昨日は変な一日だったなぁ。新聞見たか。あれ、近所なんだよ」
(いしのあめのことだ。そうおもったけれど、そのすぐあとにせんせいはぼそりといった。)
石の雨のことだ。そう思ったけれど、そのすぐ後に先生はボソリと言った。
(「きがなあ・・・・・・」き?)
「木がなあ……」木?
(くびをかしげていると、さっさとわだいをきりあげてせんせいはきょうしつをでていった。)
首を傾げていると、さっさと話題を切り上げて先生は教室を出て行った。
(いちじかんめがはじまるまえにできるだけじょうほうしゅうしゅうする。)
1時間目が始まる前に出来るだけ情報収集する。
(いつもはあまりくらすめーととかいわをしないわたしだが、)
いつもはあまりクラスメートと会話をしない私だが、
(なりふりかまっていられないきぶんだった。)
なりふり構っていられない気分だった。
(すぐにさっきせんせいがいっていたのがきのうのゆうかんではなく、)
すぐにさっき先生が言っていたのが昨日の夕刊ではなく、
(きょうのちょうかんだったことがわかる。)
今日の朝刊だったことが分かる。
(しまった。よんでいなかった。ははおやにおこられてでもたべながら)
しまった。読んでいなかった。母親に怒られてでも食べながら
(よめばよかった。はなしをそうごうするに、どうやらこんなことがあったらしい。)
読めば良かった。話を総合するに、どうやらこんなことがあったらしい。
(きのうのよるくじすぎ、しないのじゅうたくちのどうろぞいのなみきが15めーとるにわたって)
昨日の夜9時過ぎ、市内の住宅地の道路沿いの並木が15メートルに渡って
(なにものかにほりかえされ、ねっこごとひっこぬかれて)
何者かに掘り返され、根っこごと引っこ抜かれて
(そのばにころがされているのをとおりがかったじゅうみんによってはっけんされた。)
その場に転がされているのを通りがかった住民によって発見された。
(ふきんのじゅうみんによると、よるくじまえにはまちがいなく)
付近の住民によると、夜9時前には間違いなく
(なみきはいつもどおりそろっていたらしい。)
並木はいつも通り揃っていたらしい。
(わずかすうじゅっぷんでろっぽんものなりきをつちからひっこぬくとなると、)
わずか数十分で6本もの成木を土から引っこ抜くとなると、
(じゅうきでもなければふかのうだろう。)
重機でもなければ不可能だろう。
(それが、しゅうへんじゅうみんのだれもそんなそうどうにきづかなかったというのだ。)
それが、周辺住民の誰もそんな騒動に気づかなかったというのだ。
(いったいだれが?というぎもんとともに、)
いったい誰が? という疑問とともに、
(どうやって?というてんもおおきい。そしてなぜ?)
どうやって? という点も大きい。そして何故?
(けれどわたしがもっとおどろいたのはつぎのやすみじかんだった。)
けれど私がもっと驚いたのは次の休み時間だった。
(ちゃいむがなったあと、きょうしつじゅうでこうかんされるじょうほうにみみをそばだてていたわたしは、)
チャイムが鳴った後、教室中で交換される情報に耳をそばだてていた私は、
(このまちできのうおこったことがいしのあめや、)
この街で昨日起こったことが石の雨や、
(なみきのじけんだけではなかったことをしった。)
並木の事件だけではなかったことを知った。
(しみんとしょかんのほんだなのひとつから、おさめられていたほんが)
市民図書館の本棚の一つから、収められていた本が
(いきなりすべてとびだしてゆかじゅうにさんらんしたじけん。)
いきなりすべて飛び出して床中に散乱した事件。
(てんじょうからぶらさがったがそりんすたんどのきゅうゆほーすがかぜもないのに)
天井からぶらさがったガソリンスタンドの給油ホースが風もないのに
(おおゆれをして、いちじかんちかくきゅうゆできなかったじけん。)
大揺れをして、1時間近く給油できなかった事件。
(あーけーどないのだいとけいのたんしんとちょうしんがなにもしていないのに)
アーケード内の大時計の短針と長針が何もしていないのに
(ぐるぐるとこうそくでまわりつづけたじけん。)
ぐるぐると高速で回り続けた事件。