『白椿』夢野久作1

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プレイ回数1737難易度(4.5) 2960打 長文
白椿と入れ替わってしまった少女の話
白いツバキの花言葉「完全なる美しさ」

※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

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https://typing.twi1.me/game/306837
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 みき 5971 A+ 6.0 98.0% 480.6 2927 57 54 2024/10/05
2 モロ 3316 D 3.4 96.1% 863.3 2982 119 54 2024/10/04

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問題文

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(ちえこさんはかわいらしくてきれいなこでしたが、)

チエ子さんは可愛らしくてきれいな子でしたが、

(べんきょうがきらいであそんでばかりいたので、がっこうのてすとがなんかいもふごうかくでした。)

勉強が嫌いで遊んでばかりいたので、学校のテストが何回も不合格でした。

(そして、おとうさんやおかあさんにしかられるたびに、)

そして、お父さんやお母さんにしかられるたびに、

(「ああ、いやだいやだ。どうにかしてべんきょうしないでも、)

「ああ、いやだいやだ。どうにかして勉強しないでも、

(がっこうのてすとでごうかくするくふうはないかしら」と、そればかりかんがえておりました。)

学校のテストで合格する工夫は無いかしら」と、そればかり考えておりました。

(あるひ、どうしてもしなくてはならないさんすうをやっておりましたが、)

ある日、どうしてもしなくてはならない算数をやっておりましたが、

(どうしてもわからないうえに、ねむくてたまりませんので、)

どうしても分からない上に、眠くてたまりませんので、

(おおきなあくびをひとつしておにわにでてみると、)

大きなあくびを一つしてお庭に出てみると、

(しろいつばきがたったひとつ、つぼみをひらいておりました。)

白いツバキがたった一つ、つぼみをひらいておりました。

(ちえこさんはそれをみると、「ああ、こんなはなになったらいいだろうに。)

チエ子さんはそれを見ると、「ああ、こんな花になったらいいだろうに。

(がっこうにもどこにもいかずに、はながさけばひとからかわいがられる。)

学校にもどこにも行かずに、花が咲けば人から可愛がられる。

(ああ、はなになりたい」とおもいながら、)

ああ、花になりたい」と思いながら、

(そのはなにかおをちかづけてにおいをかいでみました。)

その花に顔を近づけて匂いをかいでみました。

(そのしろいつばきのかおりのいいこと、めもくらむようでした。)

その白いツバキの香りのいいこと、目もくらむようでした。

(おもわずむせかえって、「はっくしん」とおおきなくしゃみをひとつして、)

思わずむせ返って、「ハックシン」と大きなクシャミを一つして、

(ふっとめをひらいてみると、どうでしょう。)

フッと目をひらいてみると、どうでしょう。

(じぶんはいつのまにかしろいつばきのはなになっていて、)

自分はいつのまにか白いツバキの花になっていて、

(めのまえにはちえこさんそっくりのおんなのこが、)

目の前にはチエ子さんそっくりの女の子が、

(たちながらじぶんをみあげております。)

立ちながら自分を見上げております。

(ちえこさんはびっくりしましたが、どうすることもできませんでした。)

チエ子さんはビックリしましたが、どうすることも出来ませんでした。

など

(ただあきれてしまって、そのこのようすをみておりますと、)

ただあきれてしまって、その子の様子を見ておりますと、

(そのおんなのこはじぶんをみながら、「まあ、なんといううつくしいはなでしょう。)

その女の子は自分を見ながら、「まあ、なんという美しい花でしょう。

(そしてほんとうにいいにおいだこと。これをいちりんざしにさしてべんきょうしたいな。)

そして本当にいい匂いだこと。これを一輪挿しに挿して勉強したいな。

(おかあさまにきいてきましょう」といいながら、ばたばたとかけていきました。)

お母さまに聞いてきましょう」と言いながら、バタバタと駆けて行きました。

(しばらくすると、ちえこさんのおかあさんがはさみをもって、)

しばらくすると、チエ子さんのお母さんがハサミを持って、

(おにわにおりてきました。「まあ、おまえがべんきょうをするなんてめずらしいことねえ。)

お庭に降りて来ました。「まあ、お前が勉強をするなんて珍しいことねえ。

(おまえがべんきょうさえしてくれるんだったら、)

お前が勉強さえしてくれるんだったら、

(つばきのはなくらいなんでもありませんよ」といいながら、)

ツバキの花くらいなんでもありませんよ」と言いながら、

(ちえこさんのしろいつばきをぱちんときって、いちりんざしにさして、)

チエ子さんの白いツバキをパチンと切って、一輪挿しに挿して、

(ちえこさんのつくえのうえにおきました。ちえこさんがつくえのすみからみていますと、)

チエ子さんの机の上に置きました。チエ子さんが机の隅から見ていますと、

(おんなのこはさもうれしそうにかわいらしいめでじぶんをみておりましたが、)

女の子はさもうれしそうに可愛らしい目で自分を見ておりましたが、

(やがてさんすうのきょうかしょをだして、べんきょうをはじめました。)

やがて算数の教科書を出して、勉強を始めました。

(ちえこさんのしろいつばきは、まっかになりたいくらいはずかしくなりました。)

チエ子さんの白いツバキは、真っ赤になりたいくらい恥ずかしくなりました。

(さんすうののーとにはちがうこたえばかりで、ところどころにはつまらないえがかいてあります。)

算数のノートには違う答えばかりで、所々にはつまらない絵が書いてあります。

(おんなのこは、それをけしごむできれいにけして、)

女の子は、それを消しゴムできれいに消して、

(まちがったこたえをみんななおして、あしたのしゅくだいまでもすましてしまいました。)

間違った答えをみんな直して、明日の宿題までも済ましてしまいました。

(それをみているうちに、ちえこさんはけいさんのしかたがだんだんわかってきて)

それを見ているうちに、チエ子さんは計算のしかたが段々分かってきて

(おもしろくてたまらず、じぶんでやってみたくなりましたが、)

面白くてたまらず、自分でやってみたくなりましたが、

(はなになっているのですからしかたがありません。)

花になっているのですから仕方がありません。

(そのうちにおんなのこはさんすうをすまして、こくごのきょうかしょをひらいて、)

そのうちに女の子は算数を済まして、国語の教科書をひらいて、

(ほんにちいさくえんぴつでつけてあるかなを、みんなけしてしまいました。)

本に小さく鉛筆で付けてある仮名を、みんな消してしまいました。

(ふくしゅうとあしたのよしゅうがすむと、ふでばこやかばんをきれいにそうじして、)

復習と明日の予習が済むと、筆箱やカバンをきれいに掃除して、

(えんぴつをじょうずにけずって、じかんわりにあわせたきょうかしょやのーとをかばんにいれて、)

鉛筆を上手に削って、時間割に合せた教科書やノートをカバンに入れて、

(つくえのうえにただしくおきました。それからつくえのひきだしをあけて)

机の上に正しく置きました。それから机の引き出しをあけて

(きちんとかたづけをして、おしこんだいたずらがきのかみくずや)

キチンと片付けをして、押し込んだイタズラ書きの紙くずや

(いとくずをちゃんとのばして、かみはのーとにはり、いとはいとまきにまきました。)

糸くずをちゃんと伸ばして、紙はノートに貼り、糸は糸巻きに巻きました。

(そのあいだのちえこさんのきまりのわるさといったら、)

そのあいだのチエ子さんのきまりの悪さといったら、

(きえてしまいたいくらいでした。)

消えてしまいたいくらいでした。

(おんなのこはそれから、だいどころではたらいていらっしゃるおかあさまのところへはしっていって、)

女の子はそれから、台所で働いていらっしゃるお母さまの所へ走って行って、

(てをだして、「おかあさん、おてつだいさせてちょうだい」といいました。)

手を出して、「お母さん、お手伝いさせてちょうだい」と言いました。

(おかあさまは、しばらくだまっておんなのこのかおをみておりましたが、)

お母さまは、しばらく黙って女の子の顔を見ておりましたが、

(ぬれたままのてで、いきなりしっかりとおんなのこをだきしめて、)

濡れたままの手で、いきなりしっかりと女の子を抱きしめて、

(「まあ、おまえはどうしてそんなによいこになったの」といいながら、)

「まあ、お前はどうしてそんなによい子になったの」と言いながら、

(なみだをはらはらとおながしになりました。)

涙をハラハラとお流しになりました。

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