『白椿』夢野久作2【完】

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プレイ回数823難易度(4.5) 2618打 長文
白椿と入れ替わってしまった少女の話
白いツバキの花言葉「完全なる美しさ」

※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

↓のURLからの続きですので、未プレイの方はプレイしてから
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https://typing.twi1.me/game/306835

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問題文

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(しろいつばきのちえこさんは、みをふるわしてこのようすをみておりました。)

白いツバキのチエ子さんは、身を震わしてこの様子を見ておりました。

(ちえこさんは、おかあさまからこんなにかわいがられたことは)

チエ子さんは、お母さまからこんなに可愛がられたことは

(いままでいちどもなかったのです。あまりにもうらやましくて、)

今まで一度も無かったのです。あまりにも羨ましくて、

(なさけなくて、くやしくて、おもわずほろほろとすいしょうのような)

情けなくて、悔しくて、思わずホロホロと水晶のような

(すいてきをつくえのうえにおとしました。それからこのおんなのこがすることは、)

水滴を机の上に落としました。それからこの女の子がすることは、

(なにひとつとしてちえこさんをかんしんさせないことは、ありませんでした。)

なに一つとしてチエ子さんを感心させないことは、ありませんでした。

(あそびにきたわるいおともだちはみんな、おかあさまにたのんでことわっていただいて、)

遊びに来た悪いお友達はみんな、お母さまに頼んで断って頂いて、

(よいおともだちとだけあそぶようにしました。)

よいお友達とだけ遊ぶようにしました。

(「ちえこのおおばかやい。ちえこのちえなし、ふごうかくやろう」と)

「チエ子の大馬鹿やい。チエ子の知恵無し、不合格野郎」と

(わるいおとこのせいとがはやしても、いえのなかからわらっていました。)

悪い男の生徒がはやしても、家の中から笑っていました。

(そのほかべんきょういがいには、あみものをおかあさんからならいました。)

そのほか勉強以外には、編み物をお母さんから習いました。

(よるは、おじいさまのかたをもみました。)

夜は、おじいさまの肩をもみました。

(おかあさまやおとうさまのおつかいでも、はいはいとはたらきました。)

お母さまやお父さまのお使いでも、ハイハイと働きました。

(そうしてじぶんのことは、なにひとつおかあさまやおばあさまに)

そうして自分のことは、なにひとつお母さまやおばあさまに

(ごめいわくをかけませんでした。おうちのひとはみなおどろいてかんしんをし、)

ご迷惑をかけませんでした。おうちの人はみな驚いて感心をし、

(ほめちぎって、いろいろなものをかってくださいました。)

ほめちぎって、色々な物を買って下さいました。

(しかしおんなのこはそれをたいせつにしまって、)

しかし女の子はそれを大切にしまって、

(いままでちえこさんがつかっていた、ふるいものばかりつかいました。)

今までチエ子さんが使っていた、古い物ばかり使いました。

(けれど、おうちのひとよりもおどろいたのは、がっこうのせんせいでした。)

けれど、おうちの人よりも驚いたのは、学校の先生でした。

(いままではなにをきいても、うつむいてばかりいたちえこが、)

今まではなにを聞いても、うつむいてばかりいたチエ子が、

など

(こんどはなにをきいてもちゃんとへんじをして、)

今度はなにを聞いてもちゃんと返事をして、

(ときにはせんせいもこまるくらい、よいしつもんをだしました。)

時には先生も困るくらい、よい質問を出しました。

(そればかりでなく、いままでうんどうじょうであそんでいても、)

そればかりでなく、今まで運動場で遊んでいても、

(すぐにないたり、おこったり、すねたり、よけいなわるぐちをいったりして)

すぐに泣いたり、おこったり、すねたり、余計な悪口を言ったりして

(きらわれていたちえこが、きゅうにしんせつにやさしくなって、)

嫌われていたチエ子が、急に親切にやさしくなって、

(どんなあそびでもいやがらずに、それはそれはげんきよく)

どんな遊びでも嫌がらずに、それはそれは元気よく

(ゆかいになかよくあそびますので、ともだちができること、できること。)

愉快に仲よく遊びますので、友達が出来ること、出来ること。

(いままでよりつかなかったよいおともだちが、)

今まで寄り付かなかったよいお友達が、

(みんなあそびたがっておうちにまでくるようになりました。)

みんな遊びたがっておうちにまで来るようになりました。

(おんなのこは、いつもよいおともだちとおとなしくあそんで、おとなしくべんきょうしました。)

女の子は、いつもよいお友達とおとなしく遊んで、おとなしく勉強しました。

(くるおともだちもみんなちえこさんのつくえのうえの、)

来るお友達もみんなチエ子さんの机の上の、

(いちりんざしにいけてあるしろいつばきのはなをほめました。)

一輪挿しに生けてある白いツバキの花をほめました。

(そのとき、おんなのこはいつもこうこたえました。)

その時、女の子はいつもこう答えました。

(「あたしは、このしろいつばきのようになりたいと、いつもおもっています」)

「あたしは、この白いツバキのようになりたいと、いつも思っています」

(「ほんとうにすごいね」と、ともだちはみんなおんなのこのきよいこころにかんしんして)

「本当にすごいね」と、友達はみんな女の子の清い心に感心して

(ためいきをしました。ちえこさんのしろいつばきは、)

ため息をしました。チエ子さんの白いツバキは、

(ひにひにさびしくて、かなしくなってきました。)

日に日に寂しくて、悲しくなってきました。

(「あたしのようなわるいこは、このままちってしまって、)

「あたしのような悪い子は、このまま散ってしまって、

(あのおんなのこがあたしのかわりになっているほうが、)

あの女の子があたしの代わりになっているほうが、

(みんなにとってしあわせなのかもしれない。)

みんなにとって幸せなのかもしれない。

(どうかかみさま、あたしのかわりにあのおんなのこがしあわせでいるように、)

どうか神様、あたしの代わりにあの女の子が幸せでいるように、

(そうしていつまでもかわらずにいるようにおねがいします」とこころからいのって、)

そうしていつまでも変わらずにいるようにお願いします」と心から祈って、

(なみだをほろほろとながしました。そのうちに、だんだんきがとおくなって、)

涙をホロホロと流しました。そのうちに、段々気が遠くなって、

(がっくりとうなだれてしまいました。)

ガックリとうなだれてしまいました。

(「まあちえこさん、たいへんじゃないの。おきなさいってば、ちえこさん。)

「まあチエ子さん、大変じゃないの。起きなさいってば、チエ子さん。

(そんなにべんきょうばかりしていると、からだにさわりますよ」とおかあさんのこえがします。)

そんなに勉強ばかりしていると、体にさわりますよ」とお母さんの声がします。

(ふっとめをあけてみると、ちえこさんはさんすうのほんをひらいて、)

フッと目をあけてみると、チエ子さんは算数の本をひらいて、

(そのうえにうたたねをしているのでした。)

その上にうたた寝をしているのでした。

(めのまえのつくえのうえのいちりんざしには、つばきのえだとはっぱだけがささっており、)

目の前の机の上の一輪挿しには、ツバキの枝と葉っぱだけが挿さっており、

(はなはしおれて、うつぶせにおちておりました。)

花はしおれて、うつぶせに落ちておりました。

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