ビデオ 前編-6-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7550 7.6 98.1% 581.3 4473 84 82 2024/09/24
2 daifuku 3808 D++ 4.0 95.3% 1135.3 4548 224 82 2024/09/10

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問題文

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(「え?あのびでおのえきですか」)

「え? あのビデオの駅ですか」

(「がめんのはしに、いっしゅんだけつぎのていしゃえきがうつっている。たかとおえきだ。)

「画面の端に、一瞬だけ次の停車駅が映っている。高遠駅だ。

(きんりんのろせんずをにらんでみたが、がいとうするえきめいがあった。まちがいないだろう。)

近隣の路線図を睨んでみたが、該当する駅名があった。間違いないだろう。

(そのにしどなりのえきが、きたかわぐちえき、ひがしどなりがまえばらえき」)

その西隣の駅が、北河口駅、東隣が前原駅」

(ぐたいてきななまえがでてきたが、ここではえきめいやそれにかんれんするなまえは)

具体的な名前が出てきたが、ここでは駅名やそれに関連する名前は

(かりめいとしたほうがぶなんなようだ。)

仮名とした方が無難なようだ。

(「びでおのなかではつぎのていしゃえきのたかとおえきがひだりむきのやじるしでしめされている。)

「ビデオの中では次の停車駅の高遠駅が左向きの矢印で示されている。

(れいのでんしゃがむかったほうこうだね。そしてびでおをみるかぎり、むかいのほーむには)

例の電車が向かった方向だね。そしてビデオを見る限り、向かいのホームには

(かいさつらしきものがみあたらない。おそらく、かいさつがわからさつえいしていたんだ。)

改札らしきものが見あたらない。恐らく、改札側から撮影していたんだ。

(きたかわぐち、まえばら、りょうほうのえきにでんわでかくにんしてみたけど、)

北河口、前原、両方の駅に電話で確認してみたけど、

(どちらもかいさつはみなみがわにあった。ということはかいさつほうこうからむかってひだりがわは)

どちらも改札は南側にあった。ということは改札方向から向かって左側は

(ほうがくでいうとにしということになるんだから・・・・・・」)

方角でいうと西ということになるんだから……」

(「びでおがさつえいされたえきは、ひがしどなりのまえばらえきですね」)

「ビデオが撮影された駅は、東隣の前原駅ですね」

(そういうこと。と、ししょうはもういちどすぷーんをかれーのなかにつっこんだ。)

そういうこと。と、師匠はもう一度スプーンをカレーの中に突っ込んだ。

(まえばらえきか。よくしらないえきだ。けんがいなのにくわえ、)

前原駅か。よく知らない駅だ。県外なのに加え、

(とっきゅうやしんかんせんではとまらないえきのはずだ。)

特急や新幹線では止まらない駅のはずだ。

(「ほかにはなにかわかりましたか」ししょうはくちをうごかしながらくびをよこにふった。)

「他にはなにか分かりましたか」師匠は口を動かしながら首を横に振った。

(おれはついでにきのうのばんにあったきみょうなたいけんをはなして)

俺はついでに昨日の晩にあった奇妙な体験を話して

(いけんをもとめようかとかんがえたが、かべのとけいをちらりとみてから)

意見を求めようかと考えたが、壁の時計をちらりと見てから

(きゅうにかれーをたべるぴっちのあがったししょうのようすから、)

急にカレーを食べるピッチの上がった師匠の様子から、

など

(どうやらいそぎのようがあるらしいとおもい、ひかえることにした。)

どうやら急ぎの用があるらしいと思い、控えることにした。

(からになったこっぷをめのまえにさしだされ、あいこんたくとのひつようもなく)

空になったコップを目の前に差し出され、アイコンタクトの必要もなく

(おれはみずをくみにせきをたった。そのひのごごはばいとがあった。)

俺は水を汲みに席を立った。その日の午後はバイトがあった。

(えきのちかでようがしをうっているみせがあり、)

駅の地下で洋菓子を売っている店があり、

(そのみせでやくまえのきじをつくるさぎょうばがえきのちかくにあった。おれのしごとばだ。)

その店で焼く前の生地を作る作業場が駅の近くにあった。俺の仕事場だ。

(いつもぎょうれつができているはやりのみせであり、)

いつも行列が出来ている流行りの店であり、

(てんいんもわかくてかわいいおんなのこがおおかったので、なにかたのしいことが)

店員も若くて可愛い女の子が多かったので、なにか楽しいことが

(あるかもしれないというあわいきぼうをいだいてばいとぼしゅうにおうぼしてみたのだが、)

あるかも知れないという淡い希望を抱いてバイト募集に応募してみたのだが、

(てんぽすたっふはぜんいんじょせいであり、おとこのおれはとうぜんうらかたのせいぞうすたっふにまわされた。)

店舗スタッフは全員女性であり、男の俺は当然裏方の製造スタッフに回された。

(れいせいにかんがえればわかることだったはずなのにと、)

冷静に考えれば分かることだったはずなのにと、

(おれはじぶんのけいそつさをうらんだものだった。)

俺は自分の軽率さを恨んだものだった。

(ともあれ、そのころのおれはしゅうにに、さんにちのぺーすで)

ともあれ、そのころの俺は週に二、三日のペースで

(こむぎこやばたーをこねまわしていた。)

小麦粉やバターをこねまわしていた。

(そのみせはjrのかんれんがいしゃがけいえいしていて、せいしゃいんはふたりだけ。)

その店はJRの関連会社が経営していて、正社員は二人だけ。

(あとはみんなばいとだった。)

あとはみんなバイトだった。

(そのせいしゃいんのうちのひとりがきたむらさんといって、)

その正社員のうちの一人が北村さんといって、

(いぜんはえきいんをしていたというけいれきのもちぬしだった。)

以前は駅員をしていたという経歴の持ち主だった。

(そのひもついかのきじのちゅうもんがおおくはいり、いきをつくひまもなくはたらきつづけた。)

その日も追加の生地の注文が多く入り、息をつく暇もなく働き続けた。

(べつのえきにもしてんをひらいたので、れいとうしてはこぶためのきじも)

別の駅にも支店を開いたので、冷凍して運ぶための生地も

(よけいにつくらなくてはならず、だいぎょうれつのてんぽにまけずおとらずうらかたもしんどかった。)

余計に作らなくてはならず、大行列の店舗に負けず劣らず裏方もしんどかった。

(ようやくみせがしまるじかんになり、こちらもかたづけとそうじをはじめる。)

ようやく店が閉まる時間になり、こちらも片付けと掃除を始める。

(なかまどうしのわらいごえがきこえるおだやかなじかんだ。)

仲間同士の笑い声が聞こえる穏やかな時間だ。

(おれはとなりできんぞくとれーをあらっているきたむらさんにはなしかけた。)

俺は隣で金属トレーを洗っている北村さんに話しかけた。

(「えきいんをやってるころに、ほーむでじさつしたひとはいましたか」)

「駅員をやってるころに、ホームで自殺した人はいましたか」

(「いたいたぁ。そうじもしたよぉ」)

「いたいたぁ。掃除もしたよぉ」

(ずりおちそうになるめがねをゆびであげながらきたむらさんはあかるくしゃべる。)

ずり落ちそうになる眼鏡を指で上げながら北村さんは明るく喋る。

(よんじゅうだいもなかばすぎだったはずだが、そのきゃらくたーで)

四十代も半ば過ぎだったはずだが、そのキャラクターで

(ばいとたちからはあいされていた。せんろでのじんしんじこはひさんだ。)

バイトたちからは愛されていた。線路での人身事故は悲惨だ。

(しゃりんにまきこまれてげんけいをとどめないしたい。れきだんされてとびちったにくへん。)

車輪に巻き込まれて原型をとどめない死体。轢断されて飛び散った肉片。

(それらをかたづけるのはえきいんのしごとなのである。)

それらを片付けるのは駅員の仕事なのである。

(せいぞんしていたらきゅうきゅうたいいんがとうちゃくするまでたんかにのせるなどしてほごするが、)

生存していたら救急隊員が到着するまで担架に乗せるなどして保護するが、

(ぜんしんばらばらになっているようなばあいはできるかぎりからだのぱーつをあつめて)

全身バラバラになっているような場合は出来る限り体のパーツを集めて

(しろいぬのでおおっておく。)

白い布で覆っておく。

(そうしたそくしじょうたいのばあいは、あとでこうつうかんしきのげんばけんしょうがあるまで)

そうした即死状態の場合は、あとで交通鑑識の現場検証があるまで

(きゅうきゅうたいのほうでひきとったりはしない。)

救急隊のほうで引き取ったりはしない。

(そんなしたいのそばにいるのはほんとうにきもちがわるく、)

そんな死体のそばにいるのは本当に気持ちが悪く、

(はやいところけいさつがきてくれるのをいのったものだった。)

早いところ警察が来てくれるのを祈ったものだった。

(・・・・・・そんなことをきたむらさんはやけにたのしそうにはなす。)

……そんなことを北村さんはやけに楽しそうに話す。

(「とくにていしゃえきだとげんそくしているから、すぱっといかないのよ。)

「特に停車駅だと減速しているから、スパッといかないのよ。

(まきこまれてぐちゃぐちゃ。そんなときはこう、ばけついっぱいににくを、)

巻き込まれてぐちゃぐちゃ。そんな時はこう、バケツいっぱいに肉を、

(つまんでね、かなばさみで、いれていくわけよ。いや、あれはほんとに)

つまんでね、金バサミで、入れていくわけよ。いや、あれはホントに

(にくりょうりはむりだったぁ。にさんにち」)

肉料理は無理だったぁ。にさんにち」

(みぶりてぶりがおおきすぎたのか、「しゃべるあいだに、てをうごかす」と)

身振り手振りが大きすぎたのか、「喋る間に、手を動かす」と

(うしろからおこられた。てんちょうもあたまがあがらないばいとのおばちゃんだ。)

後ろから怒られた。店長も頭が上がらないバイトのおばちゃんだ。

(しかたなく、あとかたづけをすべておえてからひかえしつで)

仕方なく、後片付けをすべて終えてから控え室で

(もういちどきたむらさんにはなしかける。)

もう一度北村さんに話しかける。

(「まえばらえき?あんまりそっちはしらないなぁ」)

「前原駅? あんまりそっちは知らないなぁ」

(おれは、ししょうとみたびでおのじこのことをせつめいした。)

俺は、師匠と見たビデオの事故のことを説明した。

(たいしたきたいをしたわけではない。もとえきいんのたちばから、)

大した期待をしたわけではない。元駅員の立場から、

(なにかしっていることがないかとかるいきもちできいたのだ。)

なにか知っていることがないかと軽い気持ちで聞いたのだ。

(するときたむらさんはなにかをおもいだしたかおをして、かたをすくめると、)

すると北村さんはなにかを思い出した顔をして、肩をすくめると、

(そっとおれのみみにくちをよせてきた。)

そっと俺の耳に口を寄せてきた。

(「さとういちろうをかたづけたらのろわれる」)

「サトウイチロウを片付けたら呪われる」

(ひそひそとそんなことばがみみにはいる。おれはおもわずからだをかたくする。)

ひそひそとそんな言葉が耳に入る。俺は思わず体を硬くする。

(「そんなうわさがあったのよ」)

「そんな噂があったのよ」

(かおをはなすと、いってんしてあかるいくちょうにもどり、めがねをずりあげる。)

顔を離すと、一転して明るい口調に戻り、眼鏡をずり上げる。

(「あっちのほうのえりあで、じんしんじこがおおかったらしくてね。)

「あっちの方のエリアで、人身事故が多かったらしくてね。

(それもみもとふめいの。なんとかっていうらしいね。)

それも身元不明の。なんとかっていうらしいね。

(むえんぼとけ、じゃない、なんかむずかしいいいかた。まあそのむえんぼとけ、)

無縁仏、じゃない、なんか難しい言い方。まあその無縁仏、

(ほとけさんのしたいをかたづけたら、なんかよくないことがおこるって)

仏さんの死体を片付けたら、なんか良くないことが起こるって

(うわさがひろがってたらしいよ」うわさといっても、えきかんけいしゃのあいだでだけひっそりと)

噂が広がってたらしいよ」噂と言っても、駅関係者の間でだけひっそりと

(くちづたえされる、うらのはなしだ。「さとういちろうって、なんなんです」)

口伝えされる、裏の話だ。「サトウイチロウって、なんなんです」

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