『さびしいお母さん』小川未明1【完】

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母親が恋しい少年の話
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております
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1 BE 4336 C+ 4.6 93.9% 691.8 3208 208 69 2024/10/17

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問題文

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(にじかんめのびじゅつのじかんに、)

二時間目の美術の時間に、

(せんせいが「みなさんのおかあさんを、かいてごらんなさい」と、おっしゃいました。)

先生が「みなさんのお母さんを、かいてごらんなさい」と、おっしゃいました。

(「せんせい、おかあさんがいないひとは、どうしますか」といったものがいます。)

「先生、お母さんがいない人は、どうしますか」と言った者がいます。

(「おかあさんがいないひとは、だれですか」)

「お母さんがいない人は、だれですか」

(「たけだくんは、おかあさんがいないです」)

「武田くんは、お母さんがいないです」

(「じゃ、いないひとは、おとうさんをかきなさい」と、せんせいはおっしゃいました。)

「じゃ、いない人は、お父さんをかきなさい」と、先生はおっしゃいました。

(みんなは、えをかくのにむちゅうになって、きょうしつはしずかになりました。)

みんなは、絵をかくのに夢中になって、教室は静かになりました。

(としちゃんは、まるまるとしたてにえんぴつをにぎって、)

トシちゃんは、まるまるとした手に鉛筆を握って、

(おかあさんのかおをおもいだしているうちに、)

お母さんの顔を思い出しているうちに、

(「いまごろ、おかあさんは、どうしているだろうか」とかんがえたのでした。)

「今頃、お母さんは、どうしているだろうか」と考えたのでした。

(きのうのよるでした。おとうさんが、おでかけなさろうとして、)

昨日の夜でした。お父さんが、お出かけなさろうとして、

(「まだ、きものはできないのか」と、おかあさんにおっしゃいました。)

「まだ、着物はできないのか」と、お母さんにおっしゃいました。

(「もうすこしですけれど、まだできあがっていないです」とおこたえなさると、)

「もう少しですけれど、まだできあがっていないです」とお答えなさると、

(「なにをぐずぐずしているんだ」と、おとうさんはおこりました。)

「なにをぐずぐずしているんだ」と、お父さんは怒りました。

(そのとき、おかあさんは「ひるまえに、おきゃくさまがきて、)

そのとき、お母さんは「昼前に、お客さまが来て、

(おかえりになると、もうおひるですし、)

お帰りになると、もうお昼ですし、

(ひるすぎにしごとをしかけますと、としちゃんがかえってきて、)

昼過ぎに仕事をしかけますと、トシちゃんが帰ってきて、

(そしてあそびにでて、ころんでかえってきましたので、せんたくをしました。)

そして遊びに出て、転んで帰ってきましたので、洗濯をしました。

(つぎに、はなこがかえってきて、)

次に、花子が帰ってきて、

(おともだちのところへいくから、かみをゆってくれといいますので、)

お友だちのところへ行くから、髪を結ってくれと言いますので、

など

(かみをゆったりしていますと、もうばんになりました。)

髪を結ったりしていますと、もう晩になりました。

(ばんには、おふろがありますので、)

晩には、お風呂がありますので、

(としちゃんはおふろにはいると、じきにねむたがりますから、)

トシちゃんはお風呂に入ると、じきにねむたがりますから、

(そのまえにがっこうのおさらいをしてやりますと、)

その前に学校のおさらいをしてやりますと、

(しごとをするじかんというものがなかったのです。)

仕事をする時間というものがなかったのです。

(こんやは、おそくなってもぬいあげるつもりでいます」と、)

今夜は、おそくなっても縫い上げるつもりでいます」と、

(おかあさんは、おっしゃいました。)

お母さんは、おっしゃいました。

(そばでこれをきいていたとしちゃんは、)

そばでこれを聞いていたトシちゃんは、

(もしそれでもおとうさんがおこるなら、おとうさんがわるいとおもいましたが、)

もしそれでもお父さんが怒るなら、お父さんが悪いと思いましたが、

(おとうさんは、だまっていました。)

お父さんは、だまっていました。

(そんなことをかんがえると、おかあさんが、なんだかかわいそうになりました。)

そんなことを考えると、お母さんが、なんだか可哀想になりました。

(「あのはらっぱで、あんなことをしてあそばなければ、)

「あの原っぱで、あんなことをして遊ばなければ、

(ころばずにすんだのにな」と、としちゃんはきのう、)

転ばずにすんだのにな」と、トシちゃんは昨日、

(ざいもくがたくさんつんであるうえを、)

材木がたくさん積んである上を、

(よしおくんやけんじくんといっしょに、かけあしをしてわたっているうちに、)

ヨシオくんやケンジくんと一緒に、駆け足をして渡っているうちに、

(みずたまりへおちて、きものをよごしてしまったことをおもったのです。)

水たまりへ落ちて、着物を汚してしまったことを思ったのです。

(「いまごろ、おかあさんは、どうしているだろうか」)

「今頃、お母さんは、どうしているだろうか」

(いつもおしごとをするところにすわって、おかあさんはひとりで、)

いつもお仕事をするところに座って、お母さんは一人で、

(がらすどのうちから、そとのおにわをみていらっしゃるすがたを、)

ガラス戸の内から、外のお庭を見ていらっしゃる姿を、

(としちゃんはあたまにうかべたのでした。)

トシちゃんは頭に浮かべたのでした。

(そして、うぐいすがきょうもひるまえにとんできて、)

そして、ウグイスが今日も昼前に飛んできて、

(あかいみのなった、うめもどきのきやつばきのえだにとまって、)

赤い実のなった、梅もどきの木やツバキの枝に止まって、

(むしをさがしているであろう、おかあさんのすがたをそうぞうしました。)

虫を探しているであろう、お母さんの姿を想像しました。

(しかし、そのおかあさんのかおはさびしそうでありました。)

しかし、そのお母さんの顔はさびしそうでありました。

(としちゃんはがようしのうえに、おかあさんのさびしそうなかおをかきました。)

トシちゃんは画用紙の上に、お母さんのさびしそうな顔をかきました。

(なんだか、そのおかあさんはないているようにみえます。)

なんだか、そのお母さんは泣いているように見えます。

(「こんなの、おかしいな」と、としちゃんはかんがえていましたが、)

「こんなの、おかしいな」と、トシちゃんは考えていましたが、

(そのかたわらに「ぼくたちがるすのときの、)

そのかたわらに「ボクたちが留守のときの、

(さびしいおかあさんのおかお」とかいて、せんせいへていしゅつしました。)

さびしいお母さんのお顔」と書いて、先生へ提出しました。

(せんせいは、それをごらんになって、どうおもわれるでしょうか。)

先生は、それをごらんになって、どう思われるでしょうか。

(それは、つぎのじゅぎょうでへんきゃくされるまで、わかりません。)

それは、次の授業で返却されるまで、分かりません。

(としちゃんははやくいえにかえって、おかあさんのかおをみたいとおもいました。)

トシちゃんは早く家に帰って、お母さんの顔を見たいと思いました。

(がっこうがおわると、いそいでいえへかえりました。)

学校が終わると、急いで家へ帰りました。

(「ただいま」と、いつものように、そとからこえをかけました。)

「ただいま」と、いつものように、外から声をかけました。

(すると、おかあさんは、いつものばしょにすわっていました。)

すると、お母さんは、いつもの場所に座っていました。

(「おかあさん、さびしくなかったかい」と、としちゃんはききました。)

「お母さん、さびしくなかったかい」と、トシちゃんは聞きました。

(「うるさいひとがみんなるすで、しずかでしたよ」と、おかあさんはいいました。)

「うるさい人がみんな留守で、静かでしたよ」と、お母さんは言いました。

(「うれしそうだね」「ほほほほ」「うぐいすはきたかい」)

「うれしそうだね」「ホホホホ」「ウグイスは来たかい」

(「きましたよ、きょうは、こうぐいすとははうぐいすのにわがきましたよ」)

「来ましたよ、今日は、子ウグイスと母ウグイスの二羽が来ましたよ」

(「おかあさんは、ぼくのことをおもっていたかい」)

「お母さんは、ボクのことを思っていたかい」

(「ええ、いまごろとしちゃんは、)

「ええ、今頃トシちゃんは、

(おやつがたべたいだろうなあとおもっておりました」と、)

おやつが食べたいだろうなあと思っておりました」と、

(おかあさんはわらいながらいいました。)

お母さんは笑いながら言いました。

(「そんなこと、おもうもんか」と、としちゃんがいいました。)

「そんなこと、思うもんか」と、トシちゃんが言いました。

(そしてらんどせるをなげだすと、おやつをにぎって、あそびにいきました。)

そしてランドセルを投げ出すと、おやつを握って、遊びに行きました。

(いえにかえると、それまであたまにうかんでいた、)

家に帰ると、それまで頭に浮かんでいた、

(さびしそうなおかあさんのかおはきえて、)

さびしそうなお母さんの顔は消えて、

(どこをみてもたのしくて、はればれとしている、)

どこを見ても楽しくて、晴れ晴れとしている、

(おかあさんのわらったかおへとぬりかえられたのでした。)

お母さんの笑った顔へと塗り替えられたのでした。

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