梶井基次郎 ある崖上の感情 2 (1/2)

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1 じゅんこ 5313 B++ 5.5 95.8% 349.1 1938 83 34 2024/03/17
2 りっつ 5212 B+ 5.2 98.3% 359.5 1905 31 34 2024/03/18
3 文吾 5130 B+ 5.3 96.1% 359.8 1924 78 34 2024/03/12
4 kanta 4869 B 5.1 94.6% 370.3 1910 107 34 2024/03/02

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問題文

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(いくしま(これはよっていたほうのせいねん)はそのよるおそくじぶんのまがりしている)

生島(これは酔っていた方の青年)はその夜晩く自分の間借りしている

(がいかのいえへかえってきた。かれはとをあけるとき、)

崖下の家へ帰って来た。彼は戸を開けるとき、

(それがしゅうかんのなんともいえないゆううつをかんじた。)

それが習慣のなんとも言えない憂鬱を感じた。

(それはかれがそのいえのねているしゅふをおもいだすからであった。)

それは彼がその家の寝ている主婦を思い出すからであった。

(いくしまはそのよんじゅうをすぎたかふである「おばさん」と)

生島はその四十を過ぎた寡婦である「小母さん」と

(なんのあいじょうもないからだのかんけいをつづけていた。)

なんの愛情もない身体の関係を続けていた。

(こもなくおっとにもしにわかれたそのおんなにはどことなくあきらめたしずけさがあって、)

子もなく夫にも死に別れたその女にはどことなく諦らめた静けさがあって、

(そんなかんけいがしょうじたあとでもべつにまえとかわらない)

そんな関係が生じたあとでも別に前と変わらない

(れいたんさもしくはしんせつさでかれをあわしていた。)

冷淡さもしくは親切さで彼を遇していた。

(いくしまにはじぶんのあいじょうのなさをかのじょにいつわるひつようなどすこしもなかった。)

生島には自分の愛情のなさを彼女に偽る必要など少しもなかった。

(かれが「おばさん」をよんでねどこをともにする。)

彼が「小母さん」を呼んで寝床を共にする。

(そのあとでかのじょはすぐじぶんのねどこへかえってゆくのである。)

そのあとで彼女はすぐ自分の寝床へ帰ってゆくのである。

(いくしまはそのとうしょじぶんらのそんなかんけいにたんたんとしたあんいをかんじていた。)

生島はその当初自分らのそんな関係に淡々とした安易を感じていた。

(ところがまもなくかれはだんだんたまらないけんおをかんじだした。)

ところが間もなく彼はだんだん堪らない嫌悪を感じ出した。

(それはかれがあんいをみだしているとおなじげんいんがかれにはんぎゃくするのであった。)

それは彼が安易を見出していると同じ原因が彼に反逆するのであった。

(かれがかのじょのはだにふれているとき、そこにはなんのかんどうもなく、)

彼が彼女の膚に触れているとき、そこにはなんの感動もなく、

(いつもあるしらじらしいきもちがきえなかった。)

いつもある白じらしい気持が消えなかった。

(せいりてきなしゅうけつはあっても、くうそうのまんぞくがなかった。)

生理的な終結はあっても、空想の満足がなかった。

(そのことはだんだんおもくるしくかれのこころにのしかかってきた。)

そのことはだんだん重苦しく彼の心にのしかかって来た。

(そのうちにかれははればれとしたおうらいへでても、)

そのうちに彼は晴ればれとした往来へ出ても、

など

(じぶんにしなびたふるてぬぐいのようなにおいがしみているようなきがしてならなくなった。)

自分に萎びた古手拭のような匂いが沁みているような気がしてならなくなった。

(かおかたちにもなんだかいやなせんがあらわれてきて、だれのめにも)

顔貌にもなんだかいやな線があらわれて来て、誰の目にも

(かれのおちいっているじごくがかんづかれそうなふあんがたえずつきまとった。)

彼の陥っている地獄が感づかれそうな不安が絶えずつきまとった。

(そしておんなのあきらめたようなへいきさがきょくたんにいらいらしたけんおをしげきするのだった。)

そして女の諦めたような平気さが極端にいらいらした嫌悪を刺戟するのだった。

(しかしそのふんまんが「おばさん」のどこへむけられるべきだろう。)

しかしその憤懣が「小母さん」のどこへ向けられるべきだろう。

(かれがきょうにもでてゆくといってもかのじょがひとことのふへいもとなえないことは)

彼が今日にも出てゆくと言っても彼女が一言の不平も唱えないことは

(わかりきったことであった。それではなぜでてゆかないのか。)

わかりきったことであった。それでは何故出てゆかないのか。

(いくしまはそのとしのはるあるだいがくをでてまだしゅうしょくするくちがなく、)

生島はその年の春ある大学を出てまだ就職する口がなく、

(くにへはほんそうちゅうといってそのひそのひをまったくむきりょくなけんたいでおくっている)

国へは奔走中と言ってその日その日をまったく無気力な倦怠で送っている

(にんげんであった。かれはもうたてのものをよこにするにも、)

人間であった。彼はもう縦のものを横にするにも、

(みいられたようないしのなさをかんじていた。)

魅入られたような意志のなさを感じていた。

(かれがなになにをしようとおもうことはのうさいぼうのいしをしげきしないぶぶんを)

彼が何々をしようと思うことは脳細胞の意志を刺戟しない部分を

(とおってぬけてゆくのらしかった。けっきょくかれは)

通って抜けてゆくのらしかった。結局彼は

(いつまでたってもそこがうごけないのである。)

いつまで経ってもそこが動けないのである。

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