悪霊 江戸川乱歩 5

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投稿者投稿者神楽@社長推しいいね1お気に入り登録
プレイ回数673難易度(4.5) 7046打 長文
江戸川乱歩の短編小説です
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 zero 6298 S 6.4 97.1% 1088.6 7063 206 99 2024/10/25
2 りく 5882 A+ 5.9 98.1% 1186.5 7112 132 99 2024/09/19
3 布ちゃん 5371 B++ 5.6 95.2% 1240.6 7010 346 99 2024/11/10

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問題文

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(つまり、これこそ、はなはだしくなんかいなざいりょうではあったけれど、さつじんしゃのすじょうを)

つまり、これこそ、甚しく難解な材料ではあったけれど、殺人者の素情を

(さぐりだすゆいいつのてがかりにちがいなかった。そのかみきれはながさもはばもあつみもちょうど)

探り出す唯一の手掛りに違いなかった。その紙切れは長さも幅も厚味も丁度

(かんせいはがきほどのせいかくなちょうほうけいで、ししつはじょうしつしとよばれているものであって、)

官製ハガキ程の正確な長方形で、紙質は上質紙と呼ばれているものであって、

(そのちゅうおうに、にほんのつののはえたいびつなほうけいのわくのうえにななめにいっぽんのぼうをよこたえた)

その中央に、二本の角の生えたいびつな方形の枠の上に斜に一本の棒を横たえた

(ずけいが、こいぼくじゅうでにくぶとにえがいてあるのだ。ぼくはそのかたちを)

図形が、濃い墨汁で肉太に描いてあるのだ。僕はその形を

(よくおぼえこんであるので、さんこうまでにつぎにちいさくもしゃしておく。きみはこのいような)

よく覚え込んであるので、参考までに次に小さく模写して置く。君はこの異様な

(ふごうをみてなにをれんそうするであろうか。ぼくはあんごうでもとくきになって、いろいろに)

符号を見て何を聯想するであろうか。僕は暗号でも解く気になって、色々に

(かんがえてみたが、なんだか、あああれだったのかとすぐわかりそうでいて、そのひみつが)

考えて見たが、何だか、アアあれだったのかと直ぐ分り相でいて、その秘密が

(いまにもいしきのひょうめんにうかびあがりそうでいて、だがどうしてもわからない。わたぬきしに)

今にも意識の表面に浮かび上り相でいて、だがどうしても分らない。綿貫氏に

(きくと、けいさつのほうでもまだこのなぞがとけないでいるということだ。もしきみが)

聞くと、警察の方でもまだこの謎が解けないでいるということだ。若し君が

(こんなずけいをどこかでみたことがあるか、あるいはずけいのいみをとくことができたら)

こんな図形をどこかで見たことがあるか、或は図形の意味を解くことが出来たら

(ぜひしらせてほしいとおもう。)

是非知らせてほしいと思う。

(さつじんのほうほうがあまりいようなので、これをたんなるとうぞくのしわざだとはだれも)

殺人の方法が余り異様なので、これを単なる盗賊の仕業だとは誰も

(かんがえなかったようだが、じゅんじょとして、いちおうとうなんひんのうむがしらべられた。)

考えなかった様だが、順序として、一応盗難品の有無が調べられた。

(そのけっかは、きみもそうぞうするとおり、ていないにはなにひとしなふんしつしたものも)

その結果は、君も想像する通り、邸内には何一品[ひとしな]紛失したものも

(ないことがたしかめられたにすぎない。それはひがいしゃのひだりのくすりゆびにはめられたこうかな)

ないことが確められたに過ぎない。それは被害者の左の薬指にはめられた高価な

(ほうせきいりのぷらちなのゆびわがそのままのこっていたことによっても)

宝石入りの白金[プラチナ]の指環がそのまま残っていた事によっても

(あきらかであった。)

明かであった。

(それから、ひがいしゃのじっけいとじょちゅうとぼくとは、かたどおりのじんもんをうけたが、ぼくの)

それから、被害者の実兄と女中と僕とは、型通りの訊問を受けたが、僕の

(はんだんするかぎりでは、けんじはこれというそうさじょうのざいりょうをつかむことはできなかった。)

判断する限りでは、検事はこれという捜査上の材料を掴むことは出来なかった。

など

(ひがいしゃのあねざきそえこさんは、いっしゅのしゃこうかではあったけれど、ひじょうにしとやかな)

被害者の姉崎曽恵子さんは、一種の社交家ではあったけれど、非常にしとやかな

(むしろうちきな、そしてこふうなどうとくかで、わかいみぼうじんにたちやすいうわさなども)

寧ろ内気な、そして古風な道徳家で、若い未亡人に立ち易い噂なども

(まったくきかなかったし、ましてひとにうらみをうけるようなひとがらではけっしてなかった。)

全く聞かなかったし、まして人に恨みを受ける様な人柄では決してなかった。

(けんじのうたがいぶかいじんもんにたいして、かのじょのにいさんとじょちゅうとは、くりかえしこのことを)

検事の疑深い訊問に対して、彼女の兄さんと女中とは、繰返しこの事を

(かくしんした。けっきょく、あねざきけおくないでのそうさは、みぎにずかいしたきみょうないちまいの)

確信した。結局、姉崎家屋内での捜査は、右に図解した奇妙な一枚の

(かみきれのほかには、まったくえるところがなかったのだ。そこで、もんだいはじょちゅうが)

紙切れの外には、全く得る所がなかったのだ。そこで、問題は女中が

(つかいにでてからきたくしたまでの、つまりひがいしゃがひとりぼっちでいえにいたじかん、)

使に出てから帰宅したまでの、つまり被害者が一人ぼっちで家にいた時間、

(ごごいちじごろからよじはんごろまでに、あねざきけにでいりしたじんぶつを、がいぶから)

午後一時頃から四時半頃までに、姉崎家に出入りした人物を、外部から

(さがしだすことができるかどうかのいってんにおしちぢめられた。これがけんじたちの)

探し出すことが出来るかどうかの一点に押し縮められた。これが検事達の

(さいごのたのみのつなであった。)

最後の頼みの綱であった。

(きょくめんがそこまできたとき、ぼくはとうぜんあるじんぶつをおもいださなければならなかった。)

局面がそこまで来た時、僕は当然ある人物を思出さなければならなかった。

(いうまでもなく、このてがみのはじめにかいたいざりこじきのことだ。あいつにもし)

云うまでもなく、この手紙の初めに書いたいざり乞食のことだ。あいつに若し

(たしょうでもしちからがあったならば、そして、きょうのごごずっとおなじあきちに)

多少でも視力があったならば、そして、今日の午後ずっと同じ空地に

(いたのだとすれば、あのあきちはちょうどあねざきけのもんのすじむかいに)

いたのだとすれば、あの空地は丁度姉崎家の門の斜向[すじむかい]に

(あたるのだから、そこをでいりしたじんぶつをもくげきしているにちがいない。)

当るのだから、そこを出入りした人物を目撃しているに違いない。

(あのかたわものこそ、ゆいいつのしょうにんにちがいない。ぼくはおもいだすとすぐ、そのことを)

あの片輪者こそ、唯一の証人に違いない。僕は思出すとすぐ、その事を

(わたぬきけんじにつげた。)

綿貫検事に告げた。

(「これからすぐいってみましょう。まだもとのところにいてくれればいいが」)

「これから直ぐ行って見ましょう。まだ元の所にいて呉れればいいが」

(わたぬきしというのは、そういうきがるな、しかしはんざいけんきゅうにはいじょうにねっしんな、)

綿貫氏というのは、そういう気軽な、併し犯罪研究には異常に熱心な、

(すこしふうがわりなけんじなのだ。そこでひとびとはあねざきけのてさげでんとうをかりて、ぞろぞろと)

少し風変りな検事なのだ。そこで人々は姉崎家の手提電燈を借りて、ゾロゾロと

(もんがいのあきちへとでていった。)

門外の空地へと出て行った。

(てさげでんとうのまるいひかりのなかに、うみぼうずみたいなかっこうをして、いざりこじきは)

手提電燈の丸い光の中に、海坊主みたいな格好をして、いざり乞食は

(もとのばしょにいた。かをふせぐためにあたまからきたないふろしきのようなものをかぶって、やっぱり)

元の場所にいた。蚊を防ぐ為に頭から汚い風呂敷の様なものを被って、やっぱり

(いざりぐるまのなかにじっとしていたのだ。ひとりのけいじが、いきなりそのふろしきを)

いざり車の中にじっとしていたのだ。一人の刑事が、いきなりその風呂敷を

(とりのけると、かたわものはひよっこのようにはのないくちをくろく)

取りのけると、片輪者は雛鶏[ひよっこ]の様に歯のない口を黒く

(おおきくひらいて、「いやー」と、かいちょうのひめいをあげ、にげだすちからはないので、)

大きく開いて、「イヤー」と、怪鳥の悲鳴を上げ、逃げ出す力はないので、

(かたっぽだけのほそいうでを、かおのまえでさゆうにふりうごかして、てきをふせぐしぐさをした。)

片っ方丈けの細い腕を、顔の前で左右に振り動かして、敵を防ぐ仕草をした。

(けっしておまえをしかるのではないととくしんさせて、ぼつぼつたずねていくと、こじきは)

決してお前を叱るのではないと得心させて、ボツボツ訊ねて行くと、乞食は

(しょうじょのようなかわいらしいこえで、ぞんがいはっきりとうべんすることができた。まずかれの)

少女の様な可愛らしい声で、存外ハッキリ答弁することが出来た。先ず彼の

(しろっぽくみえるひだりめはさいわいにもふつうのしりょくをもっていることがたしかめられた。)

白っぽく見える左眼は幸にも普通の視力を持っていることが確かめられた。

(きょうはおひるごろからずっとそのあきちにいて、まえのおうらいを(したがってあねざきけの)

今日はおひる頃からずっとその空地にいて、前の往来を(随って姉崎家の

(もんをも)ながめていたこともわかった。「では、おひるすぎからゆうがたまでのあいだに、)

門をも)眺めていたことも分った。「では、おひる過ぎから夕方までの間に、

(あのもんをでいりしたひとをみなかったか。ここにいるじょちゅうさんと、このおとこのひとの)

あの門を出入りした人を見なかったか。ここにいる女中さんと、この男の人の

(ほかにだよ」と、けんじは、そのすじのひとびとにまじってたっていたあねざきけのじょちゅうと)

外にだよ」と、検事は、その筋の人々に混って立っていた姉崎家の女中と

(ぼくとをゆびさして、ものやわらかにたずねた。するとこじきは、けいじの)

僕とを指さして、物柔[ものやわらか]に訊ねた。すると乞食は、刑事の

(てさげでんとうにいられたぼくとじょちゅうとをしろいめでみあげながら、ほかにふたり)

手提電燈に射られた僕と女中とを白い眼で見上げながら、外に二人

(あのもんをはいったひとがあると、ぺたぺたとはのないくちびるでこたえた。)

あの門を入った人があると、ペタペタと歯のない唇で答えた。

(そのうちのひとりはくろいようふくにくろいそふとぼうをかぶったちゅうねんのしんしで、かおは)

その内の一人は黒い洋服に黒いソフト帽を冠った中年の紳士で、顔は

(よくみえなかったが、めがねやひげはなかったようにおもう。そのひとがじょちゅうがでていって)

よく見えなかったが、眼鏡や髭はなかった様に思う。その人が女中が出て行って

(まもなくもんないにすがたをけした。それからながいじかんののち、(こじきのきおくは)

間もなく門内に姿を消した。それから長い時間の後、(乞食の記憶は

(あいまいであったが、そのあいだはいちじかんほどとすいていされた)ひとりのわかくてうつくしいおんなが)

曖昧であったが、その間は一時間程と推定された)一人の若くて美しい女が

(もんをはいっていった。そのかみかたちとちゃくいとは、ひじょうにはっきりこじきのいんしょうに)

門を入って行った。その髪形と着衣とは、非常にハッキリ乞食の印象に

(のこっていたらしく、かみのほうは「いまどきみかけねえにひゃくさんこうちでさあ。わしらが)

残っていたらしく、髪の方は「今時見かけねえ二百三高地でさあ。わしらが

(わかいじぶんはやったはいからさんでさあ」といった。きみはたぶんしらないだろうが、)

若い時分流行ったハイカラさんでさあ」と云った。君は多分知らないだろうが、

(にひゃくさんこうちというのは、にちろせんそうのりょじゅんこうげきのきねんのようにしておこっためいしょうで、)

二百三高地と云うのは、日露戦争の旅順攻撃の記念の様にして起った名称で、

(まえがみにしんをいれて、ひたいのうえにおおきくふくらましたかたちの、ぞくにひさしがみ)

前髪に芯を入れて、額の上に大きくふくらました形の、俗に庇髪[ひさしがみ]

(といったこふうなようはつのことだ。それからちゃくいのほうは、むろんひとえものに)

と云った古風な洋髪のことだ。それから着衣の方は、無論単衣物に

(ちがいないのだが、「むらさきいろのやがすり」のきぬもので、おびはくろっぽいものであったと)

違いないのだが、「紫色の矢絣」の絹物で、帯は黒っぽいものであったと

(こたえた。やがすりというのもげんだいにはえんどおいがらで、かぶきしばいのこしもとのいしょうなどを)

答えた。矢絣というのも現代には縁遠い柄で、歌舞伎芝居の腰元の衣裳などを

(おもいださせるこふうなしろものだが、ろうねんのかたわこじきは、このわれわれにはむしろなんかいな)

思出させる古風な代物だが、老年の片輪乞食は、この我々には寧ろ難解な

(ごいをちゃんとこころえていて、さもむかしなつかしげなようすで、はのないくちびるをみかづきがたに)

語彙をちゃんと心得ていて、さも昔懐しげな様子で、歯のない唇を三日月型に

(にやにやさせながら、しょうじょのようにあどけないこえでとうべんした。かれはそのおんなが)

ニヤニヤさせながら、少女の様にあどけない声で答弁した。彼はその女が

(めがねをかけていたこともきおくしていた。)

眼鏡をかけていた事も記憶していた。

(このふたりのじんぶつがあねざきけのもんをはいったじかんは、くろふくのちゅうねんのおとこのほうは)

この二人の人物が姉崎家の門を入った時間は、黒服の中年の男の方は

(ごごいちじからいちじはんごろまでのあいだ、やがすりのわかいおんなのほうはごごにじから)

午後一時から一時半頃までの間、矢絣の若い女の方は午後二時から

(にじはんごろまでのあいだとはんだんすればたいかないようにかんがえられた。だが、かれらが)

二時半頃までの間と判断すれば大過ない様に考えられた。だが、彼等が

(もんをでていったじかんは、つまりかれらがそれぞれどれほどのあいだあねざきけに)

門を出て行った時間は、つまり彼等が夫々[それぞれ]どれ程の間姉崎家に

(とどまっていたかということは、ざんねんながらまったくしるよしがなかった。こじきはそれを)

留まっていたかという事は、残念ながら全く知る由がなかった。乞食はそれを

(みなかったのだ。ふたりともいつもんをでていったかすこしもきづかなかったと)

見なかったのだ。二人ともいつ門を出て行ったか少しも気附かなかったと

(いうのだ。いねむりをしていたか、いざりぐるまをうごかしてこんくりーとかんのかげへ)

いうのだ。居眠りをしていたか、いざり車を動かしてコンクリート管の蔭へ

(はいっていたか、それともほかのものにきをうばわれていたすきに、ふたりとも)

入っていたか、それとも他のものに気を奪われていた隙に、両人[ふたり]とも

(もんをでていったものであろう。)

門を出て行ったものであろう。

(きたひとがかえっていくのをみのがしていたほどだから、このりょうにんのほかに、こじきのめに)

来た人が帰って行くのを見逃していた程だから、この両人の外に、乞食の目に

(ふれなかったほうもんしゃがなかったとはいえないし、あねざきけへのいりぐちは)

触れなかった訪問者がなかったとは云えないし、姉崎家への入口は

(せいもんばかりにはかぎらないことをかんがえると、さつじんはんにんがそのくろふくのおとことやがすりのおんなの)

正門ばかりには限らないことを考えると、殺人犯人がその黒服の男と矢絣の女の

(どちらかであったときめてしまうのはむろんそうけいだけれど、あねざきけはしゅじんの)

どちらかであったと極めてしまうのは無論早計だけれど、姉崎家は主人の

(しぼういらいほうもんしゃもあまりおおくなかったということだから、そのとぼしいほうもんしゃのうちの)

死亡以来訪問者も余り多くなかったという事だから、その乏しい訪問者の内の

(ふたりがわかったのは、かなりのしゅうかくであったといっていい。)

二人が分ったのは、可成[かなり]の収穫であったと云っていい。

(それからそうさのひとたちはてわけをして、あねざきけのおもてもんうらもんへのつうろにあたる)

それから捜査の人達は手分けをして、姉崎家の表門裏門への通路に当る

(こうりしょうてんなどを、いっけんいっけんたずねまわって、うさんなつうこうしゃがなかったかをしらべたが、)

小売商店などを、一軒一軒尋ね廻って、胡散な通行者がなかったかを調べたが、

(べつだんのてがかりもえられなかった。ただそのうちのけいじのひとりが、でんしゃのていりゅうじょから)

別段の手掛りも得られなかった。ただその内の刑事の一人が、電車の停留所から

(あねざきけのおもてもんへのつうろにあたるいっけんのたばこやで、さいぜんのいざりこじきのしょうげんを)

姉崎家の表門への通路に当る一軒の煙草屋で、さい前のいざり乞食の証言を

(うらがきするききこみをつかんできたほかには。)

裏書きする聞込みを掴んで来た外には。

(そのたばこやのおかみさんがいうのには、くろいようふくをきたひとはいくにんもとおったので、)

その煙草屋のおかみさんが云うのには、黒い洋服を着た人は幾人も通ったので、

(どれがそうであったかはわからぬけど、やがすりのおんなのほうは、かみのかたちがあまり)

どれがそうであったかは分らぬけど、矢絣の女の方は、髪の形が余り

(とっぴだったので、よくきおくしているが、にじゅうにさんにみえるふちなしめがねをかけた)

突飛だったので、よく記憶しているが、二十二三に見える縁なし眼鏡をかけた

(あつげしょうのいようなむすめさんで、とおりかかったのはにじすこしすぎで)

濃化粧[あつげしょう]の異様な娘さんで、通りかかったのは二時少し過ぎで

(あった。「しんぱげきのぶたいからとびだしてきたんじゃないかとおもいましたよ。)

あった。「新派劇の舞台から飛び出して来たんじゃないかと思いましたよ。

(みょうなむすめさんでございますね」と、けいじはおかみさんのこわいろをまぜてほうこくした。)

妙な娘さんでございますね」と、刑事はおかみさんの声色を混ぜて報告した。

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