《かんひも》2

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(kのいえにはいると、いままでかいだことのないいやなにおいがしました。)

kの家に入ると、今まで嗅いだことのない嫌なにおいがしました。

(ほこりっぽいような、すっぱいような。)

埃っぽいような、酸っぱいような。

(いまおもうと、あれがししゅうというやつなんでしょうか?)

今思うと、あれが死臭というやつなんでしょうか?

(「おい!k!!しっかりしろ!」おくのいまからは、)

「おい!k!!しっかりしろ!」奥の居間からは、

(kのちちのどなりごえがきこえていました。)

kの父の怒鳴り声が聞こえていました。

(じいちゃんは、ことわりもせずずかずかとkのいえにはいっていきました。)

爺ちゃんは、断りもせずずかずかとkの家に入っていきました。

(ばあちゃんとぼくもつづきました。)

婆ちゃんと僕も続きました。

(いまにはいると、さらにあのにおいがつよくなりました。)

居間に入ると、更にあのにおいが強くなりました。

(そこにkがよこたわっていました。そしてそのわきで、)

そこにkが横たわっていました。そしてその脇で、

(kのとうちゃん、かあちゃん、ばあちゃんがひっしになにかをしていました。)

kの父ちゃん、母ちゃん、婆ちゃんが必死に何かをしていました。

(kはいしきがあるのかないのか、めはあけていましたが、しょうてんがさだまらず、)

kは意識があるのかないのか、目は開けていましたが、焦点が定まらず、

(くちははんびらきで、あわでしろっぽいよだれをだらだらとたらしていました。)

口は半開きで、泡で白っぽいよだれをだらだらと垂らしていました。

(よくよくみると、みんなはkのうでからなにかをはずそうとしているようでした。)

よくよく見ると、みんなはkの腕から何かを外そうとしているようでした。

(それはまぎれもなくあのうでわでした。)

それはまぎれもなくあの腕輪でした。

(が、さっきみたときとはようすがちがっていました。)

が、さっき見た時とは様子が違っていました。

(きれいなひもはほどけて、よくみると、ほどけたいっぽんいっぽんが、)

綺麗な紐はほどけて、よく見ると、ほどけた一本一本が、

(うでにささっているようでした。kのてはうでわからさきがくろくなっていました。)

腕に刺さっているようでした。kの手は腕輪から先が黒くなっていました。

(そのくろいのは、みているとうごいているようで、)

その黒いのは、見ていると動いているようで、

(まるでうでわからささったいとが、kのてのなかでうごいているようでした。)

まるで腕輪から刺さった糸が、kの手の中で動いているようでした。

(「かんひもじゃ!」)

「かんひもじゃ!」

など

(じいちゃんはおおきなこえでさけぶとなにをおもったかkのいえのだいどころにはしっていきました。)

爺ちゃんは大きな声で叫ぶと何を思ったかkの家の台所に走っていきました。

(ぼくは、kのてからめがはなせません。)

僕は、kの手から目が離せません。

(まるで、ひふのしたでむすうのむしがはいまわっているようでした。)

まるで、皮膚の下で無数の虫が這い回っているようでした。

(すぐにじいちゃんがもどってきました。てにはやなぎばぼうちょうをもっていました。)

すぐに爺ちゃんが戻ってきました。手には柳葉包丁を持っていました。

(「なにするんですか!?」)

「何するんですか!?」

(とめようとするkのとうちゃんかあちゃんをふりはらって、)

止めようとするkの父ちゃん母ちゃんを振り払って、

(じいちゃんはkのばあちゃんにさけびました。)

爺ちゃんはkの婆ちゃんに叫びました。

(「うではもうだめじゃ!まだあたままではいっちょらん!!」)

「腕はもうダメじゃ!まだ頭まではいっちょらん!!」

(kのばあちゃんはなきながらうなずきました。)

kの婆ちゃんは泣きながら頷きました。

(じいちゃんはすこしちゅうちょしたあと、ほうちょうをkのうでにつきたてました。)

爺ちゃんは少し躊躇した後、包丁をkの腕につきたてました。

(ひめいをあげたのはkのりょうしんだけで、kはなんのはんのうもしめしませんでした。)

悲鳴を上げたのはkの両親だけで、kはなんの反応も示しませんでした。

(あのこうけいをぼくはわすれられません。)

あの光景を僕は忘れられません。

(kのうでからは、ちがいってきもでませんでした。)

kの腕からは、血が一滴も出ませんでした。

(かわりに、むすうのかみのけがぞわぞわときずぐちからそとにこぼれでてきました。)

代わりに、無数の髪の毛がぞわぞわと傷口から外に零れ出てきました。

(もう、てのなかのくろいのもうごいていませんでした。)

もう、手の中の黒いのも動いていませんでした。

(しばらくすると、ちかくのてらからぼうさまがかけつけてきました。)

暫くすると、近くの寺から坊様が駆け付けて来ました。

(ばあちゃんがでんわしたのはこのてらのようでした。)

婆ちゃんが電話したのはこの寺のようでした。

(ぼうさまはkをしんしつにうつすと、ひとばんちゅうどきょうをあげていました。)

坊様はkを寝室に移すと、一晩中読経をあげていました。

(ぼくもkのまえにどきょうをあげてもらい、そのひはいえにかえって、)

僕もkの前に読経を上げてもらい、その日は家に帰って、

(ねれないよるをすごしました。)

寝れない夜を過ごしました。

(つぎのひ、kはかおもみせずに、あさはやくからりょうしんといっしょにかえっていきました。)

次の日、kは顔も見せずに、朝早くから両親と一緒に帰って行きました。

(じもとのおおきなびょういんにいくとのことでした。)

地元の大きな病院に行くとのことでした。

(じいちゃんがいうのは、うではもうだめだということでした。)

爺ちゃんが言うのは、腕はもうだめだということでした。

(「あたままでいかずによかった」となんどもいっていました。)

「頭まで行かずに良かった」と何度も言っていました。

(ぼくは「かんひも」についてじいちゃんにきいてみましたが、)

僕は「かんひも」について爺ちゃんに聞いてみましたが、

(おしえてはくれませんでした。)

教えてはくれませんでした。

(ただ、「かんひも」とかいて「かんひも」とよむこと、)

ただ、「髪被喪」と書いて「かんひも」と読むこと、

(あのさいとしんは「あく(あく)」というなまえだということだけは)

あの道祖伸は「阿苦(あく)」という名前だということだけは

(ばあちゃんからおしえてもらいました。)

婆ちゃんから教えてもらいました。

(ふるくからつたわるまじないのようなものなんでしょうか?)

古くから伝わるまじないのようなものなんでしょうか?

(それいらい、じいちゃんたちにあっても、きくにきけずにいます。)

それ以来、爺ちゃんたちに会っても、聞くに聞けずにいます。

(だれか、にたようなものをごぞんじのほうがいらっしゃいましたら、)

誰か、似たような物をご存じの方がいらっしゃいましたら、

(おしえていただけるとありがたいです。)

教えていただけるとありがたいです。

(あれがあたままでいっていたらどうなるのか・・・?)

あれが頭までいっていたらどうなるのか・・・?

(いじょうが、ぼくが「かんひも」についてしっているすべてです。)

以上が、僕が「かんひも」について知っているすべてです。

(しつれいしました。)

失礼しました。

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