紫式部 源氏物語 明石 2 與謝野晶子訳

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1 おもち 7882 8.1 97.1% 388.7 3157 93 45 2025/02/05
2 subaru 7630 7.8 96.8% 398.8 3146 103 45 2025/02/04
3 berry 7346 7.4 98.1% 419.0 3136 58 45 2025/03/04
4 ヤス 7191 7.5 95.9% 420.8 3160 134 45 2025/02/03
5 はく 6775 S++ 7.1 95.0% 444.4 3177 166 45 2025/03/03

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問題文

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(こんなことでこのよはほろんでいくのではないかとげんじはおもっていたが、)

こんなことでこの世は滅んでいくのではないかと源氏は思っていたが、

(そのよくじつからまたおおかぜがふいて、うしおがみち、たかくたつなみのおとはいわもやまも)

その翌日からまた大風が吹いて、海潮が満ち、高く立つ波の音は岩も山も

(くずしてしまうようにひびいた。らいめいとでんこうのさすことのはげしくなったことは)

崩してしまうように響いた。雷鳴と電光のさすことの烈しくなったことは

(そうぞうもできないほどである。このいえへかみなりがおちそうにもちかくなった。)

想像もできないほどである。この家へ雷が落ちそうにも近く鳴った。

(もうりちでものをみるひともなくなっていた。 「わたくしはどんなつみをぜんしょうでおかして)

もう理智で物を見る人もなくなっていた。 「私はどんな罪を前生で犯して

(こうしたかなしいめにあうのだろう。おやたちにもあえずかわいいさいしのかおもみずに)

こうした悲しい目に逢うのだろう。親たちにも逢えずかわいい妻子の顔も見ずに

(しなねばならぬとは」 こんなふうにいってなげくものがある。げんじはこころをしずめて、)

死なねばならぬとは」 こんなふうに言って歎く者がある。源氏は心を静めて、

(じぶんにはこのさびしいうみべでいのちをおとさねばならぬざいごうはないわけであると)

自分にはこの寂しい海辺で命を落とさねばならぬ罪業はないわけであると

(じしんするのであるが、ともかくもいじょうであるてんこうのためにはいろいろのへいはくを)

自信するのであるが、ともかくも異常である天候のためにはいろいろの幣帛を

(かみにささげていのるほかがなかった。 「すみよしのかみ、このふきんのあくてんこうを)

神にささげて祈るほかがなかった。 「住吉の神、この付近の悪天候を

(おしずめください。しんじつすいじゃくのかみでおいでになるのでしたらじひそのもので)

お鎮めください。真実垂迹の神でおいでになるのでしたら慈悲そのもので

(あなたはいらっしゃるはずですから」 とげんじはいっておおくのたいがんをたてた。)

あなたはいらっしゃるはずですから」 と源氏は言って多くの大願を立てた。

(これみつやよしきよらは、じしんたちのいのちはともかくもげんじのようなひとがみぞうなふこうに)

惟光や良清らは、自身たちの命はともかくも源氏のような人が未曾有な不幸に

(おわってしまうことがおおきなかなしみであることから、きをひきたてて、)

終ってしまうことが大きな悲しみであることから、気を引き立てて、

(すこしひとごこちのするものはみないのちにかえてげんじをすくおうといっしょけんめいになった。)

少し人心地のする者は皆命に代えて源氏を救おうと一所懸命になった。

(かれらはこえをあわせてぶっしんにいのるのであった。 「ていおうのしんきゅうにそだちたまい、)

彼らは声を合わせて仏神に祈るのであった。 「帝王の深宮に育ちたまい、

(もろもろのかんらくにおごりたまいしが、ぜつだいのあいをこころにもちたまい、じひをあまねく)

もろもろの歓楽に驕りたまいしが、絶大の愛を心に持ちたまい、慈悲をあまねく

(にっぽんこくじゅうにたれたまい、ふこうなるものをすくいたまえることかずをしらず、)

日本国じゅうに垂れたまい、不幸なる者を救いたまえること数を知らず、

(いまなんのむくいにてふうはのにえとなりたまわん。このことわりをあきらかにさせたまえ。)

今何の報いにて風波の牲となりたまわん。この理を明らかにさせたまえ。

(つみなくしてつみにあたり、かんいをはくだつされ、いえをはなれ、こきょうをすて、ちょうぼなげきに)

罪なくして罪に当たり、官位を剥奪され、家を離れ、故郷を捨て、朝暮歎きに

など

(ちんりんしたもう。いままたかかるかなしみをみていのちのつきなんとするはなにごとによるか、)

沈淪したもう。今またかかる悲しみを見て命の尽きなんとするは何事によるか、

(ぜんしょうのむくいか、このよのおかしか、かみ、ほとけ、あきらかにましまさば)

前生の報いか、この世の犯しか、神、仏、明らかにましまさば

(このうれいをやすめたまえ」 すみよしのみやしろのほうをむいてこうさけぶひとびとは)

この憂いを息めたまえ」 住吉の御社のほうを向いてこう叫ぶ人々は

(さまざまのがんをたてた。またりゅうおうをはじめたいかいのもろがみにもげんじはがんをたてた。)

さまざまの願を立てた。また竜王をはじめ大海の諸神にも源氏は願を立てた。

(いよいよらいめいははげしくとどろいてげんじのいまにつづいたろうへらくらいした。)

いよいよ雷鳴ははげしくとどろいて源氏の居間に続いた廊へ落雷した。

(ひがもえあがってろうはやけていく。ひとびとはこころもきももみなうしなったようになっていた。)

火が燃え上がって廊は焼けていく。人々は心も肝も皆失ったようになっていた。

(うしろのほうのくりやそのたにつかっているたてもののほうへげんじをいてんさせ、じょうげのものが)

後ろのほうの厨その他に使っている建物のほうへ源氏を移転させ、上下の者が

(みないっしょにいてなくこえはひとつのおおきなおんきょうをつくって)

皆いっしょにいて泣く声は一つの大きな音響を作って

(らいめいにもおとらないのである。そらはすみをすったようにくろくなってひもくれた。)

雷鳴にも劣らないのである。空は墨を磨ったように黒くなって日も暮れた。

(そのうちかぜがおだやかになり、あめがこぶりになってほしのひかりもみえてきた。)

そのうち風が穏やかになり、雨が小降りになって星の光も見えてきた。

(そうなるとこのひとびとはげんじのいばしょがあまりにもったいなくおもわれて、)

そうなるとこの人々は源氏の居場所があまりにもったいなく思われて、

(しんでんのほうへせきをうつそうとしたが、そこもやけのこったたてものがすさまじくみえ、)

寝殿のほうへ席を移そうとしたが、そこも焼け残った建物がすさまじく見え、

(ざしきはたすうのにんげんがにげまわったときにふみしだかれてあるし、みすなどもみな)

座敷は多数の人間が逃げまわった時に踏みしだかれてあるし、御簾なども皆

(かぜにふきおとされていた。こんやよどおしにあとしまつをしてからのことにきめて、)

風に吹き落とされていた。今夜夜通しに後始末をしてからのことに決めて、

(みながそんなことにほんそうしているとき、げんじはしんぎょうをとなえながら、)

皆がそんなことに奔走している時、源氏は心経を唱えながら、

(しずかにかんがえてみるとあわただしいいちにちであった。つきがでてきてうしおのよせたあとが)

静かに考えてみるとあわただしい一日であった。月が出てきて海潮の寄せた跡が

(あらわにながめられる。とおくのいてもまだよせかえしするなみのあらいうみべのほうを)

顕わにながめられる。遠く退いてもまだ寄せ返しする浪の荒い海べのほうを

(とをあけてげんじはながめていた。きょうまでのことあすからのことを)

戸をあけて源氏はながめていた。今日までのこと明日からのことを

(いしきしていて、たいさくをこうじあうにたるようなひとはちかいせかいにぜつむであると)

意識していて、対策を講じ合うに足るような人は近い世界に絶無であると

(げんじはかんじた。ぎょそんのじゅうみんたちがきじんのいどころをきにかけて、)

源氏は感じた。漁村の住民たちが貴人の居所を気にかけて、

(あつまってきてわけのわからぬことばでしゃべりあっているのも)

集まって来て訳のわからぬ言葉でしゃべり合っているのも

(れいぎのないことであるが、それをおいはらうものすらない。)

礼儀のないことであるが、それを追い払う者すらない。

(「あのおおかぜがもうしばらくやまなかったら、しおはもっととおくへまでのぼって、)

「あの大風がもうしばらくやまなかったら、潮はもっと遠くへまで上って、

(このへんなどもかたちをのこしていまい。やはりかみさまのおたすけじゃ」)

この辺なども形を残していまい。やはり神様のお助けじゃ」

(こんなことのいわれているのもきくみにとってはひじょうにこころぼそいことであった。)

こんなことの言われているのも聞く身にとっては非常に心細いことであった。

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