紫式部 源氏物語 明石 6 與謝野晶子訳

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1 おもち 7519 7.7 96.6% 295.5 2301 79 34 2025/02/04

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(しゅじんのにゅうどうはしんこうせいかつをするせいしんてきなじんぶつで、ぞくけのないあいすべきおとこであるが、)

主人の入道は信仰生活をする精神的な人物で、俗気のない愛すべき男であるが、

(できあいするひとりむすめのことでは、げんじのめいわくにおもうことをしらずに、)

溺愛する一人娘のことでは、源氏の迷惑に思うことを知らずに、

(ちゅういをひこうとすることばもおりおりもらすのである。げんじもかねてきょうみをもって)

注意を引こうとする言葉もおりおり洩らすのである。源氏もかねて興味を持って

(うわさをきいていたおんなであったから、こんないがいなとちへくることになったのは、)

噂を聞いていた女であったから、こんな意外な土地へ来ることになったのは、

(そのひととのぜんしょうのえんにひきよせられているのではないかとおもうことはあるが、)

その人との前生の縁に引き寄せられているのではないかと思うことはあるが、

(こうしたきょうぐうにいるあいだはほとけづとめいがいのことにこころをつかうまい。)

こうした境遇にいる間は仏勤め以外のことに心をつかうまい。

(きょうのにょおうにきかれてもやましくないせいかつをしているのとはちがって、そうなれば)

京の女王に聞かれてもやましくない生活をしているのとは違って、そうなれば

(ちかってきたこともみなうそにとられるのがはずかしいとおもって、にゅうどうのむすめに)

誓ってきたことも皆嘘にとられるのが恥ずかしいと思って、入道の娘に

(きゅうこんてきなたいどをとるようなことはぜったいにしなかった。なにかのことにふれては)

求婚的な態度をとるようなことは絶対にしなかった。何かのことに触れては

(へいぼんなむすめではなさそうであるとこころのうごいていくことはないのではなかった。)

平凡な娘ではなさそうであると心の動いて行くことはないのではなかった。

(げんじのいるところへはにゅうどうじしんすらえんりょをしてあまりちかづいてこない。)

源氏のいる所へは入道自身すら遠慮をしてあまり近づいて来ない。

(ずっとはなれたかりやだてのほうにつめきっていた。こころのなかではうつくしいげんじを)

ずっと離れた仮屋建てのほうに詰めきっていた。心の中では美しい源氏を

(しじゅうみていたくてたまらないのである。ぜひきぼうすることを)

始終見ていたくてたまらないのである。ぜひ希望することを

(じつげんさせたいとおもって、いよいよぶっしんをねんじていた。としはろくじゅうくらいであるが)

実現させたいと思って、いよいよ仏神を念じていた。年は六十くらいであるが

(きれいなろうじんで、ほとけづとめにやせて、もとのみがらのよいせいであるか、がんこな、)

きれいな老人で、仏勤めに痩せて、もとの身柄のよいせいであるか、頑固な、

(そしてまたおいぼけたようなところもありながら、こてんてきなしゅみがわかっていて)

そしてまた老いぼけたようなところもありながら、古典的な趣味がわかっていて

(かんじはきわめてよい。そようもそうとうにあることがなにかのばあいにみえるので、)

感じはきわめてよい。素養も相当にあることが何かの場合に見えるので、

(わかいときにけんぶんしたことをかたらせてきくことでげんじのつれづれさも)

若い時に見聞したことを語らせて聞くことで源氏のつれづれさも

(まぎれることがあった。むかしからこうじんとして、しじんとして)

紛れることがあった。昔から公人として、私人として

(すこしのひまもないせいかつをしていたげんじであったから、ふるいじだいにあった)

少しの閑暇もない生活をしていた源氏であったから、古い時代にあった

など

(じつわなどをぼつぼつとすこしずつはなしてくれるろうじんのあることは)

実話などをぼつぼつと少しずつ話してくれる老人のあることは

(ちんちょうすべきであるとおもった。このひとにあわなかったら)

珍重すべきであると思った。この人に逢わなかったら

(れきしのりめんにあったようなことはわからないでしまったかもしれぬとまで)

歴史の裏面にあったようなことはわからないでしまったかもしれぬとまで

(おもしろくおもわれることもはなしのなかにはあった。こんなふうでにゅうどうはげんじに)

おもしろく思われることも話の中にはあった。こんなふうで入道は源氏に

(したしくあつかわれているのであるが、このけだかいきじんにたいしては、いぜんはあんなに)

親しく扱われているのであるが、この気高い貴人に対しては、以前はあんなに

(ひとりぎめをしていたにゅうどうではあっても、ぶえんりよにむすめのむこになってほしいなどとは)

独り決めをしていた入道ではあっても、無遠慮に娘の婿になってほしいなどとは

(いいだせないのを、じしんではがゆくおもってはつまとふたりでなげいていた。)

言い出せないのを、自身で歯がゆく思っては妻と二人で歎いていた。

(むすめじしんもなみなみのおとこさえもみることのまれないなかにそだって、)

娘自身も並み並みの男さえも見ることの稀な田舎に育って、

(げんじをすきみしたときから、こんなびぼうをもつひともこのよにはいるのであったかと)

源氏を隙見した時から、こんな美貌を持つ人もこの世にはいるのであったかと

(きょうたんはしたが、それによっていよいよじしんとそのひととのけんかくをめいりょうに)

驚歎はしたが、それによっていよいよ自身とその人との懸隔を明瞭に

(さとることになって、れんあいのたいしょうなどにすべきでないとおもっていた。)

悟ることになって、恋愛の対象などにすべきでないと思っていた。

(おやたちがねっしんにそのせいりつをいのっているのをみききしては、)

親たちが熱心にその成立を祈っているのを見聞きしては、

(ふにあいなことをおもうものであるとみているのであるが、)

不似合いなことを思うものであると見ているのであるが、

(それとともにひくいみのほどのかなしみをおぼえはじめた。)

それとともに低い身のほどの悲しみを覚え始めた。

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