卍 5
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問題文
(「はあ、それがよろしいわ、そしてこうちょうさんどんなかおしなさるか)
「はあ、それがよろしいわ、そして校長さんどんな顔しなさるか
(みてやりたいですわ」と、わたしもすぐそのきいになってしまいました。)
見てやりたいですわ」と、わたしもすぐその気イになってしまいました。
(「そしたら、あのう、おもしろいことありますねん」とみつこさんてえたたいて)
「そしたら、あのう、面白いことありますねん」と光子さん手エたたいて
(やんちゃのようにうれしがりなさって、「ほんまにこんどのにちように、ふたりでならい)
やんちゃのように嬉しがりなさって、「ほんまに今度の日曜に、二人で奈良い
(いきなされしませんか。」「ええ、いきまひょ、いきまひょ、それわかったら)
行きなされしませんか。」「ええ、行きまひょ、行きまひょ、それ分ったら
(えらいひょうばんになりますで。」ーーそんなことでさんじゅっぷんかいちじかんほどのあいだに、)
えらい評判になりますで。」ーーそんなことで三十分か一時間ほどの間に、
(おたがいにもうすっくりうちとけてしまいましてん。)
お互にもうすっくり打ち解けてしまいましてん。
(きょうはもうがっこいかえるのんもばかばかしいし、なんならしょうちくいでもいきませんか)
きょうはもう学校い帰るのんも馬鹿々々しいし、何なら松竹いでも行きませんか
(と、どっちからとものういいだしまして、そのひはゆうがたまでいっしょにあそんで、)
と、孰方からとものういい出しまして、その日は夕方まで一緒に遊んで、
(みつこさんは「ちょっとみせいよっていきます」としんさいばしすじさんぽしながらかえられて、)
光子さんは「ちょっと店い寄って行きます」と心斎橋筋散歩しながら帰られて、
(わたしはにほんばしからたくしーにのっていまばしのじむしょいいきました。そんで)
わたしは日本橋からタクシーに乗って今橋の事務所い行きました。そんで
(いつでもみたいにしゅじんさそてはんしんでんしゃでかえりましたのんですが、そのときしゅじんが、)
いつでもみたいに主人誘て阪神電車で帰りましたのんですが、その時主人が、
(「おまえきょうえらいそわそわしてるなあ、なんぞうれしいことでもあったのんか」)
「お前今日えらいそわそわしてるなあ、何ぞうれしい事でもあったのんか」
(いわれましたのんで、「やっぱりいつもとようすちごてるのかしらん、みつこさんと)
いわれましたのんで、「やっぱりいつもと様子違てるのかしらん、光子さんと
(ともだちになったことそないにじぶんこうふくにさしたのんかしらん」と、ひとりで)
友達になったことそないに自分幸福にさしたのんかしらん」と、ひとりで
(おもいました。「そんでもわたし、きょうほんまにええひととともだちになったんや)
思いました。「そんでもわたし、今日ほんまにええ人と友達になったんや
(もん。ーー」「なんちゅうひとや。」「なんちゅうひとやて、そらきれいなひとやもん。)
もん。ーー」「何んちゅう人や。」「何んちゅう人やて、そら綺麗な人やもん。
(ーーあんた、あのう、せんばのとくみついうらしゃどんやあることしらん?そこの)
ーーあんた、あのう、船場の徳光いう羅紗問屋あること知らん? そこの
(おじょうさんやねんけど。」「どこでともだちになったんや?」「おなじがっこのひとやわ、)
お嬢さんやねんけど。」「何処で友達になったんや?」「同じ学校の人やわ、
(ーーそれが、あのう、わたしとそのひとと、こないだからけったいなうわさ)
ーーそれが、あのう、わたしとその人と、こないだからけったいな噂
(たってなあ、ーー」わたしべつにやましいことやかいないもんですさかい、)
立ってなあ、ーー」わたし別に疚しいことやかいないもんですさかい、
(おもしろはんぶんにこうちょうせんせいとけんかしたことから、いちからじゅうまではなしてしまいますと、)
面白半分に校長先生と喧嘩したことから、一から十まで話してしまいますと、
(「ずいぶんひどいがっこやなあ。けどおまえがそないにびじんやいうのんなら、)
「ずいぶんひどい学校やなあ。けどお前がそないに美人やいうのんなら、
(ぼくもいっぺんおうてみたいもんやがなあ」と、じょうだんにそないいうてました。)
僕も一遍会うてみたいもんやがなあ」と、冗談にそないいうてました。
(「いまにきっとうちいもあそびにきなさるやろ。わたしこのつぎのにちようびに、いっしょに)
「いまにきっと内いも遊びに来なさるやろ。わたしこの次の日曜日に、一緒に
(ならいいくいうてやくそくしたんやけど、いったらいかん?」「そらいっても)
奈良い行くいうて約束したんやけど、行ったらいかん?」「そら行っても
(かめへん。」しゅじんはそないいいまして「こうちょうさんおこるぜえ」いうて)
かめへん。」主人はそないいいまして「校長さん怒るぜエ」いうて
(わろてましてん。)
笑てましてん。
(あくるひがっこにいきますと、きんのいっしょにごはんたべたことやえいがみにいった)
明くる日学校に行きますと、きんの一緒に御飯食べたことや映画見に行った
(こともういつのまにやらしれわたってて「かきうちさん、あんたきんのどうとんぼり)
こともういつの間にやら知れ渡ってて「柿内さん、あんたきんの道頓堀
(あるいてなさったなあ」「おたのしみやなあ」「あれいったいだれやったなあ」なんて、)
歩いてなさったなあ」「お楽しみやなあ」「あれ一体誰やったなあ」なんて、
(おんなのひというたら、も、ほんまにうるさいのんです。そしたらみつこさんはまた)
女の人いうたら、も、ほんまにうるさいのんです。そしたら光子さんはまた
(それおもしろがりなさって、しってそばいよってこられて、これみよがしに)
それ面白がりなさって、知って傍い寄って来られて、これ見よがしに
(しなさるのんです。そういうようなあんばいで、そいからに、さんにちするうちに、)
しなさるのんです。そういうようなあんばいで、そいから二、三日するうちに、
(えらいなかようなってしまいました。こうちょうさんはかいってあきれてしまわれた)
えらい仲好うなってしまいました。校長さんはかいって呆れてしまわれた
(のんか、ただこわいめえしてじっとにらんでおられるだけで、もうなんとも)
のんか、ただ恐い眼エしてじっと睨んでおられるだけで、もう何とも
(いいなされしません。みつこさんは「なあ、かきうちさん、あのかんのんさんのええ)
いいなされしません。光子さんは「なあ、柿内さん、あの観音さんの絵エ
(もっとわたしににるようにかいてごらん。そしたらどないにいやはるかしらん」)
もっと私に似るように画いて御覧。そしたらどないにいやはるかしらん」
(いいなさるのんで、まえよりももっとにるようになおしましてんけど、こうちょうさんは)
いいなさるのんで、前よりももっと似るように直しましてんけど、校長さんは
(そんなりきょうしついもきなされしません。わたしたちはええきいになって)
そんなり教室いも来なされしません。わたしたちはええ気イになって
(「つうかいやなあ」いうてましてん。)
「痛快やなあ」いうてましてん。
(そないなってくると、むりにならいいくひつようもないようになりましたが、)
そないなって来ると、無理に奈良い行く必要もないようになりましたが、
(ちょうどしがつのおわりのことで、えらいええおてんきのにちようでしたさかい、)
ちょうど四月の終りのことで、えらいええお天気の日曜でしたさかい、
(でんわかけてそうだんして、うえろくのしゅうてんでまちあいして、おひるすぎからわかくさやまのほう)
電話かけて相談して、上六の終点で待ち合いして、お午すぎから若草山の方
(ぶらぶらあるきまわりました。みつこさんはとしのわりにたいそうおませなとこも)
ぶらぶら歩き廻りました。光子さんは歳のわりにたいそうおませなとこも
(ありますし、またこどものようなむじゃきなとこもあって、やまのてっぺんい)
ありますし、また子供のような無邪気なとこもあって、山の頂辺い
(のぼりましたら、みかんいつつもむっつもこうて、「ちょっとみててごらん」と、)
上りましたら、蜜柑五つも六つも買うて、「ちょっと見てて御覧」と、
(それをうえからころこばしたりしました。するとみかんはてっぺんからしたまでころころと)
それを上から転こばしたりしました。すると蜜柑は頂辺から下までころころと
(ころこんで、そのひょうしにぽんとひとつおうらいとびこえて、むかいがわのいえのなかい)
転こんで、その拍子にぽんと一つ往来飛び越えて、向い側の家の中い
(はいるのんで、おもしろがっていつまででもそないしてなさるのんです。)
這入るのんで、面白がっていつまででもそないしてなさるのんです。
(「みつこさん、そんなことしてたらきりがないよってわらびでもとりにいきまひょ。)
「光子さん、そんな事してたら切りがないよって蕨でも採りに行きまひょ。
(わたしこのやまにわらびやつくしのたんとはえてるとこようしってるわ」いうて、)
わたしこの山に蕨や土筆のたんと生えてるとこよう知ってるわ」いうて、
(そいからひのくれまでかかって、わらびやらぜんまいやら、つくしやら、たあんと)
そいから日の暮れまでかかって、蕨やらぜんまいやら、土筆やら、たあんと
(とりました。ーーはあ、そのばしょですか、あれはあのう、わかくさやまのやまがみっつ)
採りました。ーーはあ、その場所ですか、あれはあのう、若草山の山が三つ
(かさなってる、そのいちばんまえのやまと、そのつぎのやまとのあいだのへっこんだところ、)
重なってる、その一番前の山と、その次の山との間のへっこんだ所、
(ーーあそこらへんいったいに、ずっともういっぱいにはえてまして、あのやまのんは、)
ーーあそこら辺いったいに、ずっともう一杯に生えてまして、あの山のんは、
(まいとしはるにやまやきしますのんでとくべつおいしいのんです。ーーそんなことでもう)
毎年春に山焼きしますのんで特別おいしいのんです。ーーそんなことでもう
(そらだいぶくろなったじぶん、ふたりともまたまえのやまのほういもどってきまして、)
空大分暗なった時分、二人ともまた前の山の方い戻って来まして、
(あんまりくたぶれましたよって、やまのちゅうとへんいこしおろしてやすみながら、)
あんまりくたぶれましたよって、山の中途へんい腰おろして休みながら、
(しばらくぼんやりしてますときでした。「かきうちさん」と、きゅうにみつこさんがなんやこう)
暫くぼんやりしてます時でした。「柿内さん」と、急に光子さんが何やこう
(すこしあらたまったようすで、「わたしどうしてもあんたにおれいいわんならんこと)
すこし改まった様子で、「わたしどうしてもあんたにお礼いわんならんこと
(あるねんけど」いわれるのんです。「なんやのん?」とたんねますと、)
あるねんけど」いわれるのんです。「何やのん?」と尋ンねますと、
(「わたしあんたのおかげでなあ、あんないやなひとのとこいよめいりやかいせえでも)
「わたしあんたのお蔭でなあ、あんなイヤな人のとこい嫁入りやかいせえでも
(ええようになりそうやねんわ。」ーーそういうて、なんやしりませんけど)
ええようになりそうやねんわ。」ーーそういうて、何や知りませんけど
(にやにやわろてなさるのんです。「まあ、またなんでそんなことになったん?」)
ニヤニヤ笑てなさるのんです。「まあ、また何でそんな事になったん?」
(「ほんまにうわさいうもんはやいもんで、もうちゃあんと、あなたとわたしのこと)
「ほんまに噂いうもん早いもんで、もうちゃあんと、あなたと私のこと
(むこいしれてしもてるねん。」)
向い知れてしもてるねん。」
(「ゆんべなあ、うちでそのはなしがでてなあ」と、みつこさんはことばをつがれて、)
「ゆんべなあ、内でその話が出てなあ」と、光子さんは言葉をつがれて、
(「おかあさんがわたしをよびやはって、おまえ、がっこでこんなうわさあるそうやけど、)
「お母さんがわたしを呼びやはって、お前、学校でこんな噂あるそうやけど、
(それほんまでっか、いやはるねん。へえ、そらそんなうわさあることは)
それほんまでっか、いやはるねん。へえ、そらそんな噂あることは
(ありまっけども、いったいおかあさん、どこでききやはりましてん?)
ありまっけども、いったいお母さん、何処で聞きやはりましてん?
(そらまあどこでもよろしおまっしゃないか。それよかそらほんまのことでっか?)
そらまあ何処でもよろしおまっしゃないか。それよかそらほんまの事でっか?
(へえ、ほんまです、そやけどなにがけったいでんねん?ともだちとなかよう)
へえ、ほんまです、そやけど何がけったいでんねん? 友達と仲好う
(してるぐらいで。ーーそういうたらおかあさんちょっとまごつきはってなあ、)
してるぐらいで。ーーそういうたらお母さんちょっとまごつきはってなあ、
(そらおまえ、なかようしてるだけやったらなんともないけど、なんやそれが)
そらお前、仲好うしてるだけやったら何ともないけど、何やそれが
(いやらしいこっちゃいうやおまへんか。いやらしいことてどんなことでんねん?)
イヤらしいこッちゃいうやおまへんか。イヤらしい事てどんな事でんねん?
(どんなことやかおかあさんはしりめえんけどな、べつにわるいことやなかったら)
どんな事やかお母さんは知りめえんけどな、別に悪いことやなかったら
(そんなうわさたつはずおまへんやないか。ああ、そらなんでやしってまんねん、)
そんな噂立つはずおまへんやないか。ああ、そら何でや知ってまんねん、
(そのおともだちいうのがなあ、うちのかおがすきやいやはってもでるにしやはり)
そのお友達いうのがなあ、うちの顔が好きやいやはってモデルにしやはり
(ましてん、そんなことからみんながうちらをはいせきしだしはりましてんやろ。)
ましてん、そんな事からみんながうちらを排斥し出しはりましてんやろ。
(そらもうがっこいうたらうるそうてなあ、ちょっとでもかおきれいかったら)
そらもう学校いうたらうるそうてなあ、ちょっとでも顔綺麗かったら
(なんやかやとにくまれるよって。ーーそらまあ、そんなこともありまっしゃろけど、)
何や彼やと憎まれるよって。ーーそらまあ、そんな事もありまっしゃろけど、
(と、わたしがせつめいしたげたらおかあさんもだんだんわかってきやはって、)
と、わたしが説明したげたらお母さんもだんだん分って来やはって、
(そんなことならかめへんけども、そないいうてもそのなんとかはんいうひとと)
そんな事ならかめへんけども、そないいうてもその何とかはんいう人と
(ばっかりなかようせんほうがよろしおまっしゃないか。おまえもこれからがだいじな)
ばっかり仲好うせん方がよろしおまっしゃないか。お前もこれからが大事な
(からだやよって、しょうむないことあんまりいわれんほうがよろしおまっせいうて、)
体やよって、しょうむない事あんまりいわれん方がよろしおまっせいうて、
(まあそんなりですんでしもてんけど、きっとあのしかいぎいんなあ、むこらへんの)
まあそんなりで済んでしもてんけど、きっとあの市会議員なあ、向らへんの
(れんちゅうがそんなうわさききさがしてmのほういしゃべったのんが、それがまた)
連中がそんな噂聞き捜してMの方いしゃべったのんが、それがまた
(おかあさんのみみにはいってしもてんわ。そやよって、たいていえんだんもあかんように)
お母さんの耳に這入ってしもてんわ。そやよって、大抵縁談もあかんように
(なるやろおもてんねん。」「そら、あんたはそんでええやろけど、おかあさんが)
なるやろ思てんねん。」「そら、あんたはそんでええやろけど、お母さんが
(きっとわたしをいやがってはるわ。いまにみててごらん、わたしとこうさいしたらいかん)
きっとわたしを嫌がってはるわ。今に見てて御覧、わたしと交際したらいかん
(いわれへんかしらん?もしごかいしられたらいややけどなあ」と、わたし)
いわれへんかしらん? もし誤解しられたらイヤやけどなあ」と、わたし
(それがきがかりで、そういいますと、「そんなことあんた、しんぱいせんかて)
それが気がかりで、そういいますと、「そんなことあんた、心配せんかて
(かめへんわ。そらほんまいうたら、こうちょうさんがよくばりのひとで、おかね)
かめへんわ。そらほんまいうたら、校長さんが慾張りの人で、お金
(かしてもらえなんだらわるぐちいうくせのあることや、しかいぎいんのひとに)
貸してもらえなんだら悪口いう癖のあることや、市会議員の人に
(ばいしゅうしられてることやらを、みんなおかあさんにいうてしまおかしらんおもたけど、)
買収しられてることやらを、みんなお母さんにいうてしまおか知らん思たけど、
(そんなけったいながっこならやめてしまいなはれいわれそうやよって、)
そんなけったいな学校なら止めてしまいなはれいわれそうやよって、
(いわんとおいといてんわ。そしたらあんたとあわれへんようになるよって。」)
いわんと置いといてんわ。そしたらあんたと会われへんようになるよって。」