卍 7
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問題文
(「いえにええへやあるわ。そこやったらだれにもみられへん、せいようまに)
「家にええ部屋あるわ。そこやったら誰にも見られへん、西洋間に
(なってるよって」と、わたしはそないいうてにかいのしんしついつれていきました、)
なってるよって」と、わたしはそないいうて二階の寝室い連れて行きました、
(「まあ、かんじのええへややなあ、とてもはいからなだぶるべっどあるなあ」と、)
「まあ、感じのええ部屋やなあ、とてもハイカラなダブルベッドあるなあ」と、
(みつこさんはそのべっどにこしかけて、おしりにはずみつけてすぷりんぐぐいぐい)
光子さんはそのベッドに腰かけて、お臀にはずみつけてスプリングぐいぐい
(たゆましたりしながら、しばらくおもてのうみのけしきみておられました。ーーたくは)
撓ましたりしながら、暫くおもての海のけしき見ておられました。ーー宅は
(かいがんのなみうちぎわにありますのんで、にかいはたいへんにみはらしええのんです。)
海岸の波打ち際にありますのんで、二階はたいへんに見晴らしええのんです。
(ひがしのほうと、みなみのほうと、りょうほうががらすまどになってまして、それはとてもあこうて、)
東の方と、南の方と、両方がガラス窓になってまして、それはとても明うて、
(あさやらおそうまではねてられしません。おてんきのええひいはまつばらのむこうに、)
朝やらおそうまでは寝てられしません。お天気のええ日イは松原の向うに、
(うみこえてとおくきしゅうあたりのやまや、こんごうさんなどがみえます。はあ?ーーはあ、)
海越えて遠く紀州あたりの山や、金剛山などが見えます。はあ?ーーはあ、
(かいすいよくもできるのんです。あそこらへんのうみはちょっといきますと、じきに)
海水浴も出来るのんです。あそこら辺の海はちょっと行きますと、じきに
(どかんとふこうになってますので、あぶないのんですけど、こうろえんだけは)
どかんと深うになってますので、あぶないのんですけど、香櫨園だけは
(かいすいよくじょうでけまして、なつはほんまににぎやかやのんです。ちょうどそのじぶんは)
海水浴場出来まして、夏はほんまに賑やかやのんです。ちょうどその時分は
(ごがつのなかばごろでしたから、「はようなつになったらええのんになあ、まいにちでも)
五月のなかば頃でしたから、「早う夏になったらええのんになあ、毎日でも
(およぎにくるのに」と、へやのなかみまわしながら、「うちもけっこんしたら、)
泳ぎに来るのに」と、部屋の中見廻しながら、「うちも結婚したら、
(こんなしんしつもちたいわ」などというたりしました。「あんたやったら、)
こんな寝室持ちたいわ」などというたりしました。「あんたやったら、
(これどころやあるかいな。もっともっとええとこいいけるやないか。」)
これどころやあるかいな。もっともっとええとこい行けるやないか。」
(「そやけど、けっこんしてしもたらどんなしんしつにすんでも、きれいなかごのなかに)
「そやけど、結婚してしもたらどんな寝室に住んでも、綺麗な籠の中に
(いれられたとりのようなもんとちがうかしらん?」「そら、そんなきいすることも)
入れられた鳥のようなもんと違うかしらん?」「そら、そんな気イすることも
(あるけど、ーー」「あんた、ここはふうふのひみつしつやないかいな。わたし)
あるけど、ーー」「あんた、此処は夫婦の秘密室やないかいな。わたし
(こんなへやいひっぱってきて、だんなさんにしかられへん?」「ひみつしつかって)
こんな部屋い引っ張って来て、旦那さんに叱られへん?」「秘密室かって
(かめへんやないか。あんただけはとくべつやもん。」「そないいうても、ふうふの)
かめへんやないか。あんただけは特別やもん。」「そないいうても、夫婦の
(しんしつはしんせいなもんやいうさかいに、・・・」「そしたらしょじょのらたいかって)
寝室は神聖なもんやいうさかいに、……」「そしたら処女の裸体かって
(しんせいなもんやよって、ここでみせてもらうのがいちばんええわ。いまのうちやったら)
神聖なもんやよって、ここで見せてもらうのが一番ええわ。今のうちやったら
(こうせんのぐあいもちょうどええよって、はよみせてほしいわ。」わたしはそういうて)
光線の工合もちょうどええよって、はよ見せてほしいわ。」私はそういうて
(せきたてました。「うみのほうからだれぞみてはれへんやろか。」「あほらしい、)
急きたてました。「海の方から誰ぞ見てはれへんやろか。」「あほらしい、
(あんなおきのほうにいるふねからなにがみえるもんかいな。」「そやけど、ここは)
あんな沖の方にいる船から何が見えるもんかいな。」「そやけど、ここは
(がらすまどやよってなあ。ーーそこのかーてんしめてほしいわ。」ごがついうても)
ガラス窓やよってなあ。ーーそこのカーテン締めてほしいわ。」五月いうても
(めえいとうになるほどきらきらするおてんきでしたからまどはところどころ)
眼エ痛うになるほどキラキラするお天気でしたから窓はところどころ
(あけはなしてありましたが、それすっかりしめきってしもうたのんで、)
開け放してありましたが、それすっかり締め切ってしもうたのんで、
(へやのなかはあせがたらたらながれるぐらいのあつさでした。みつこさんはかんのんさんの)
部屋のなかは汗がたらたら流れるぐらいの暑さでした。光子さんは観音さんの
(ぽーずするのに、なんぞびゃくえのかわりになるようなしろいぬのがほしいいうのんで、)
ポーズするのに、なんぞ白衣の代りになるような白い布がほしいいうのんで、
(べっどのしーつはがしました。そしてようふくだんすのかげいいて、おびほどいて、)
ベッドのシーツ剥がしました。そして洋服箪笥の蔭い行て、帯ほどいて、
(かみばらばらにして、きれいにすいて、はだかのうえいそのしーつをちょうど)
髪ばらばらにして、きれいに梳いて、はだかの上いそのシーツをちょうど
(かんのんさんのようにあたまからゆるやかにまといました。「ちょっとみてごらん、)
観音さんのように頭からゆるやかにまといました。「ちょっと見てごらん、
(こないしてみたら、あんたのええとだいぶんちがうやろ。」そういうてみつこさんは、)
こないしてみたら、あんたの絵エと大分違うやろ。」そういうて光子さんは、
(たんすのとびらについているすがたみのまえいたって、じぶんでじぶんのうつくしさに)
箪笥の扉に附いている姿見の前い立って、自分で自分の美しさに
(ぼうっとしておられるのんでした。「まあ、あんた、きれいなからだしててんなあ。」)
ぼうっとしておられるのんでした。「まあ、あんた、綺麗な体しててんなあ。」
(ーーわたしはなんや、こんなみごとなたからもちながらいままでそれなんで)
ーーわたしはなんや、こんな見事な宝持ちながら今までそれ何で
(かくしてなさったのんかと、ひなんするようなきもちでいいました。わたしのええは)
隠してなさったのんかと、批難するような気持でいいました。わたしの絵エは
(かおこそにせてありますけど、からだはyこというもでるおんなうつしたのんですから、)
顔こそ似せてありますけど、体はY子というモデル女うつしたのんですから、
(にていないのはあたりまえです。それににほんがのほうのもでるおんなはからだよりも)
似ていないのはあたりまえです。それに日本画の方のモデル女は体よりも
(かおのきれいなのんがおおいのんで、そのyこというひとも、からだはそんなに)
顔のきれいなのんが多いのんで、そのY子という人も、体はそんなに
(りっぱではのうて、はだなんかもあれてまして、くろくにごったようなかんじでしたから、)
立派ではのうて、肌なんかも荒れてまして、黒く濁ったような感じでしたから、
(それみなれためえには、ほんまにゆきとすみほどのちがいのように)
それ見馴れた眼エには、ほんまに雪と墨ほどの違いのように
(おもわれました。「あんた、こんなきれいなからだやのんに、なんでいままで)
思われました。「あんた、こんな綺麗な体やのんに、なんで今まで
(かくしてたん?」と、わたしはとうとうくちにだしてうらみごというてしまいました。)
隠してたん?」と、わたしはとうとう口に出して恨みごというてしまいました。
(そして「あんまりやわ、あんまりやわ」いうてるうちに、どういうわけやなみだが)
そして「あんまりやわ、あんまりやわ」いうてるうちに、どういう訳や涙が
(いっぱいたまってきまして、うしろからみつこさんにだきついて、なみだのかおをびゃくえの)
一杯たまって来まして、うしろから光子さんに抱きついて、涙の顔を白衣の
(かたのうえにのせて、ふたりしてすがたみのなかをのぞきこんでいました。「まあ、あんた、)
肩の上に載せて、二人して姿見のなかを覗き込んでいました。「まあ、あんた、
(どうかしてるなあ」とみつこさんはかがみにうつってるなみだみながらあきれたように)
どうかしてるなあ」と光子さんは鏡に映ってる涙見ながら呆れたように
(いわれるのんです。「うち、あんまりきれいなもんみたりしたら、かんげきして)
いわれるのんです。「うち、あんまり綺麗なもん見たりしたら、感激して
(なみだがでてくるねん。」わたしはそういうたなり、とめどのうなみだながれるのん)
涙が出て来るねん。」私はそういうたなり、とめどのう涙流れるのん
(ふこうともせんと、いつまでもじっとだきついてました。)
拭こうともせんと、いつまでもじっと抱きついてました。
(「さあ、もうわかったやろうちきものきるわなあ」いわれるのんを、「いやや、)
「さあ、もう分ったやろうち着物きるわなあ」いわれるのんを、「イヤや、
(いやや、もっとみせてほしいいっ」と、わたしはあまえたみたいにくびふって)
イヤや、もっと見せてほしいイッ」と、わたしは甘えたみたいに首振って
(せがみました。「あほらしいもない、いつまではだかになってたかて)
せがみました。「あほらしいもない、いつまではだかになってたかて
(しょうがないやないか。」「しょうがあるとも。あんた、まだ、ほんとの)
しょうがないやないか。」「しょうがあるとも。あんた、まだ、ほんとの
(はだかになってえへんやないか。このしろいものとってしもたら、ーー」)
はだかになってえへんやないか。この白い物取ってしもたら、ーー」
(そういうていきなりかたにかかってるしーつつかみますと、「はなしてほし!)
そういうていきなり肩にかかってるシーツ掴みますと、「放してほし!
(はなしてほし!」と、いっしょけんめいにはがされまいとしなさるのんで、しーつが)
放してほし!」と、一所懸命に剥がされまいとしなさるのんで、シーツが
(びりびりやぶれました。わたしはかあっとぎゃくじょうしてしもて、くやしなみだいっぱい)
びりびり破れました。わたしはかあッと逆上してしもて、くやし涙一杯
(うかべて、「そんならいらん、うちあんたそんなみずくさいひとや)
浮かべて、「そんならいらん、うちあんたそんな水臭い人や
(おもてえへなんだのに、もうええわ。もうきょうかぎりともだちでもなんでもないわ」)
思てえへなんだのに、もうええわ。もうきょう限り友達でもなんでもないわ」
(とやぶれたしーつをくちでずたずたにひきさきました。「まあ、あんた、)
と破れたシーツを口でずたずたに引き裂きました。「まあ、あんた、
(きいでもちごうたんか。」「うちあんたみたいにはくじょうなひとしらんわ。あんた、)
気イでも違うたんか。」「うちあんたみたいに薄情な人知らんわ。あんた、
(こないだ、もうおたがいにいっさいかくしごとせんいうてやくそくしたやないか。あんたの)
こないだ、もうお互に一切隠しごとせんいうて約束したやないか。あんたの
(うそつき!」ーーそのときはよっぽどどうかしてたとみえまして、じぶんで)
うそつき!」ーーその時はよっぽどどうかしてたと見えまして、自分で
(おぼえないのんですけど、まっさおになってぶるぶるふるいながらみつこさんを)
覚えないのんですけど、まっさおになってぶるぶる顫いながら光子さんを
(にらみつけたかおつきが、ほんまにきでもくるうたようにおもえましたそうです。)
睨みつけた顔つきが、ほんまに気でも狂うたように思えましたそうです。
(そういうとみつこさんもやっぱりだまってわたしのかおじーっとみつめたまま、)
そういうと光子さんもやっぱり黙ってわたしの顔じーッと視つめたまま、
(ふるてなさったようでしたが、ついさっきまでのけだかいようりゅうかんのんのぽーず)
ふるてなさったようでしたが、ついさっきまでの気高い楊柳観音のポーズ
(くずれて、はずかしそうにりょうほうのかたおさえて、いっぽうのあしのさきをいっぽうのうえにかさねて、)
崩れて、羞かしそうに両方の肩おさえて、一方の足の先を一方の上に重ねて、
(かたひざを「く」のじなりにすぼめながらたってなさるのんが、あわれにもうるわしゅう)
片膝を「く」の字なりにすぼめながら立ってなさるのんが、哀れにも美しゅう
(おもえました。わたしはちょっといたいたしいきいしましてんけど、しーつの)
思えました。わたしはちょっといたいたしい気イしましてんけど、シーツの
(やぶれめからうずたかくもりあがったかたのにくがしろいはだをのぞかせてるのをみますと、)
破れ目から堆く盛り上った肩の肉が白い肌をのぞかせてるのを見ますと、
(いっそざんこくにひきちぎってやりとうなって、むちゅうでとびついてあらあらしゅう)
いっそ残酷に引きちぎってやりとうなって、夢中で飛びついて荒々しゅう
(しーつはがしました。わたしもしんけんなら、みつこさんもきいのまれたと)
シーツ剥がしました。わたしも真剣なら、光子さんも気イ呑まれたと
(みえまして、こっちのするままになりながら、もうなにごともいわれませなんだ。)
見えまして、こっちのするままになりながら、もう何事もいわれませなんだ。
(ただりょうほうがにくにくしいくらいなはげしいめつきかたときもそらさんとあいてのかおい)
ただ両方が憎々しいくらいな激しい眼つき片時も外らさんと相手の顔い
(そそいでました。わたしはとうどおもいどおりにしてやったいうしょうりのほほえみを、)
そそいでました。わたしはとうど思い通りにしてやったいう勝利のほほえみを、
(ーーひややかな、いじのわるいほほえみをくちもとにうかべて、からだに)
ーー冷ややかな、意地の悪いほほえみを口もとに浮かべて、体に
(まきついてるものをだんだんにほどいていきましたが、しだいにしんせいなしょじょの)
巻きついてるものをだんだんに解いて行きましたが、次第に神聖な処女の
(ちょうぞうがあらわれてきますと、しょうりのかんじがいつのまにやらきょうたんのこえにかわって)
彫像が現われて来ますと、勝利の感じがいつのまにやら驚歎の声に変って
(いきました。「ああにくたらしい、こんなきれいなからだしてて、ーーうちあんた)
行きました。「ああ憎たらしい、こんな綺麗な体してて、ーーうちあんた
(ころしてやりたい。」わたしはそういうてみつこさんのふるてるてくびしっかり)
殺してやりたい。」わたしはそういうて光子さんのふるてる手頸しっかり
(にぎりしめたまま、いっぽうのてえでかおひきよせて、くちびるもっていきました。)
握りしめたまま、一方の手エで顔引き寄せて、唇持って行きました。
(するととつぜんみつこさんのほうからも、「ころして、ころして、ーーうちあんたに)
すると突然光子さんの方からも、「殺して、殺して、ーーうちあんたに
(ころされたい、ーー」と、ものぐるおしいこえきこえて、それがあついいきといっしょにわたしの)
殺されたい、ーー」と、物狂おしい声聞えて、それが熱い息と一緒に私の
(かおいかかりました。みるとみつこさんのほおにもなみだながれてるのんです。ふたりは)
顔いかかりました。見ると光子さんの頬にも涙流れてるのんです。二人は
(うでとうでとをたがいのせなかでくみおうて、どっちのなみだやらわからんなみだのみこみました。)
腕と腕とを互の背中で組み合うて、どっちの涙やら分らん涙飲み込みました。