紫式部 源氏物語 澪標 3 與謝野晶子訳

順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | おもち | 7483 | 光 | 7.7 | 96.6% | 299.2 | 2320 | 81 | 33 | 2025/03/08 |
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問題文
(げんじはあかしのきみのにんしんしていたことをおもって、)
源氏は明石の君の妊娠していたことを思って、
(しじゅうきにかけているのであったが、こうしのことのおおさに、つかいをだして)
始終気にかけているのであったが、公私の事の多さに、使いを出して
(たずねることもできない。さんがつのはじめにこのごろがさんきになるはずであるとおもうと)
尋ねることもできない。三月の初めにこのごろが産期になるはずであると思うと
(あわれなきがしてつかいをやった。 「せんげつのじゅうろくにちにおんなのおこさまが)
哀れな気がして使いをやった。 「先月の十六日に女のお子様が
(おうまれになりました」 というしらせをきいたげんじはあいじんによってはじめての)
お生まれになりました」 という報せを聞いた源氏は愛人によってはじめての
(おんなのこをえたよろこびをふかくかんじた。なぜきょうへよんでさんをさせなかったかと)
女の子を得た喜びを深く感じた。なぜ京へ呼んで産をさせなかったかと
(ざんねんであった。げんじのうんせいをうらなって、こはさんにんで、みかどときさきがうまれる、)
残念であった。源氏の運勢を占って、子は三人で、帝と后が生まれる、
(いちばんおとったうんめいのこはだじょうだいじんで、じんしんのくらいをきわめるであろう、)
いちばん劣った運命の子は太政大臣で、人臣の位をきわめるであろう、
(そのなかのいちばんひくいおんながおんなのこのははになるであろうといわれた。)
その中のいちばん低い女が女の子の母になるであろうと言われた。
(またげんじがじんしんとしてさいこうのいちをしめることもいわれてあったので、)
また源氏が人臣として最高の位置を占めることも言われてあったので、
(それはゆうめいなそうにんたちのことばがみないっちするところであったが、)
それは有名な相人たちの言葉が皆一致するところであったが、
(ぎゃっきょうにいたなんねんかんはそんなこともこころにひていするほかはなかったのである。)
逆境にいた何年間はそんなことも心に否定するほかはなかったのである。
(とうだいがそくいされたことはげんじにうれしかったが、じしんのうえに)
当帝が即位されたことは源氏にうれしかったが、自身の上に
(たかみくらのえいよをねがわないことはしょうねんのひとすこしもことなっていなかった。)
高御座の栄誉を希わないことは少年の日と少しも異なっていなかった。
(あるまじいこととおもっている。おおくのおうじたちのなかにすぐれておあいしになった)
あるまじいことと思っている。多くの皇子たちの中にすぐれてお愛しになった
(ちちみかどがじんしんのれつにじぶんをおおきになったごせいしんをおもうと、じぶんのうんとてんいとは)
父帝が人臣の列に自分をお置きになった御精神を思うと、自分の運と天位とは
(べつなものであるとおもうげんじであった。げんじはそうにんのことばのよくあうじっしょうとして、)
別なものであると思う源氏であった。源氏は相人の言葉のよく合う実証として、
(きんていのごそくいがおもわれた。きさきがひとりじぶんからうまれるということに)
今帝の御即位が思われた。后が一人自分から生まれるということに
(あかしのしらせがふごうすることから、すみよしのかみのひごによってあのひとも)
明石の報せが符号することから、住吉の神の庇護によってあの人も
(きさきのははになるうんめいから、ちちのにゅうどうがしぜんかたよったむこえらびにしんめいをうちこむほどの)
后の母になる運命から、父の入道が自然片寄った婿選びに身命を打ち込むほどの
(きょうたいもみせたのであろう。きさきのくらいになるべきひとをいなかでうまれさせたのは)
狂態も見せたのであろう。后の位になるべき人を田舎で生まれさせたのは
(もったいないきのどくなことであるとげんじはおもって、しばらくすれば)
もったいない気の毒なことであると源氏は思って、しばらくすれば
(きょうへよぼうとおもって、ひがしのいんのけんちくをいそがせていた。あかしのようないなかに)
京へ呼ぼうと思って、東の院の建築を急がせていた。明石のような田舎に
(そうとうなめのとがありえようとはおもわれないので、ちちみかどのにょうぼうをしていたせんじという)
相当な乳母がありえようとは思われないので、父帝の女房をしていた宣旨という
(おんなのむすめでちちはくないきょうさいしょうだったひとであったが、ははにもしにわかれ、)
女の娘で父は宮内卿宰相だった人であったが、母にも死に別れ、
(さびしいせいかつをうるうちにれんあいかんけいからこどもをうんだというはなしを)
寂しい生活をうるうちに恋愛関係から子供を生んだという話を
(ちかごろげんじはきき、そのうわさをつたえたひとをよびだして、さいしょうのむすめに、)
近ごろ源氏は聞き、その噂を伝えた人を呼び出して、宰相の娘に、
(げんじのひめぎみのめのととしてあかしへおもむくことのこうしょうをはじめさせた。このおんなは)
源氏の姫君の乳母として明石へ赴くことの交渉を始めさせた。この女は
(まだわかくてむじゃきなせいしつから、さびしいあばらやでものおもいをばかりしてくらす)
まだ若くて無邪気な性質から、寂しい荒ら屋で物思いをばかりして暮らす
(あさゆうのせいかつにあいていて、ふかくもかんがえずに、げんじのえんのかかったところに)
朝夕の生活に飽いていて、深くも考えずに、源氏の縁のかかった所に
(せいかつのできることほどよいこともないようにこれまでからこがれていて、)
生活のできることほどよいこともないようにこれまでから焦れていて、
(すぐにしょうだくしてきた。げんじはいなかくだりをしてくれるさいしょうのむすめをあわれにおもって、)
すぐに承諾して来た。源氏は田舎下りをしてくれる宰相の娘を哀れに思って、
(いろいろとしゅったつのよういをしてやっていた。)
いろいろと出立の用意をしてやっていた。