時間割男子一巻 第一話 もう勉強なんてしない

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プレイ回数3難易度(4.4) 300秒 長文
時間割男子好きな人~!(は~い!)

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問題文

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(ただでさえきがおもい、くがつのとあるどようび。)

ただでさえ気が重い、九月のとある土曜日。

(「わあっ!?」)

「わあっ!?」

(ずざーっ)

ずざーっ

(げこうちゅうにぼんやりあるいていたら、おもいっきりこけた。)

下校中にぼんやり歩いていたら、思いっきりコケた。

(ろっくをかけてなかったらんどせるからきょうかしょがとびでて、)

ロックをかけてなかったランドセルから教科書がとびでて、

(そこらじゅうにちらばる。)

そこら中にちらばる。

((あいたたた・・・・・・))

(あいたたた・・・・・・)

(だれかにみられたかな、とおもったけど、さいわい、)

誰かに見られたかな、と思ったけど、さいわい、

(こうもんのまわりにはだれもいない。)

校門のまわりにはだれもいない。

(ほうかごのこうていから、さっかーぶがれんしゅうするこえがきこえるだけだ。)

放課後の校庭から、サッカー部が練習する声が聞こえるだけだ。

(「・・・・・・・・・・・・はぁ」)

「・・・・・・・・・・・・はぁ」

(ひざをさすりながら、ためいき。)

ひざをさすりながら、ため息。

(しかたなく、いっさつずつきょうかしょをひろいあつめる。)

しかたなく、一冊ずつ教科書をひろいあつめる。

(こくご、りか、しゃかい。そして、さんすう・・・・・・。)

国語、理科、社会。そして、算数・・・・・・。

(ぎゅっと、ゆびにちからがはいる。)

ぎゅっと、指に力がはいる。

(まいにちくりかえしめくったせいで、)

毎日くりかえしめくったせいで、

(どれもぺーじがぼろぼろになっているけど・・・・・・。)

どれもページがボロボロになっているけど・・・・・・。

(ほんとうは、べんきょうなんてぜんぜんすきじゃないんだ。)

本当は、勉強なんてぜんぜん好きじゃないんだ。

(よくわからないし、おもしろくないし。せいせきもずっとぺけ。)

よくわからないし、おもしろくないし。成績もずっとペケ。

(きょうかえってきたてすとだって、ぜんぶさいあくで。)

今日返ってきたテストだって、ぜんぶサイアクで。

など

(なかでもさんすうなんか、まさかの7てん・・・・・・。)

なかでも算数なんか、まさかの7点・・・・・・。

(しょうじき、ちょうへこむけど。)

正直、超へこむけど。

(それでも、わたしがいままでがんばってきたのは、)

それでも、わたしが今までがんばってきたのは、

(「いつもがんばってえらいね~!」)

「いつもがんばってえらいね~!」

(どきっとしてかおをあげる。)

どきっとして顔をあげる。

(こうもんちかくのどうろを、)

校門近くの道路を、

(ごさいくらいのおんなのことおかあさんがてをつないでとおりすぎていった。)

五歳くらいの女の子とお母さんが手をつないでとおりすぎていった。

(おかあさんがちいさなおんなのこをみつめる、やさしいひとみ。)

お母さんがちいさな女の子を見つめる、やさしい瞳。

(「・・・・・・・・・・・・」)

「・・・・・・・・・・・・」

(むいしきにぎりっと、くちびるをかみしめた。)

無意識にギリっと、くちびるをかみしめた。

(いつもべんきょうがんばってえらいね!)

いつも勉強がんばってえらいね!

(あたまのなかでひびく、ままのこえ。)

頭のなかでひびく、ママの声。

(・・・・・・わたしがべんきょうをがんばれたのは、)

・・・・・・私が勉強をがんばれたのは、

(ままがほめてくれるのがうれしかったから。)

ママがほめてくれるのがうれしかったから。

(よろこぶままののかおをそうぞうすれば、)

よろこぶママのの顔を想像すれば、

(どんなににがてなべんきょうでも、がんばれた・・・・・・。)

どんなにニガテな勉強でも、がんばれた・・・・・・。

(だけど、もう、いないんだ。)

だけど、もう、いないんだ。

(ままは1かげつまえ、とつぜん、てんごくへいってしまったから。)

ママは1か月前、とつぜん、天国へいってしまったから。

((・・・・・・もういい。もう、どうだっていい。))

(……もういい。もう、どうだっていい。)

(くびを、ぶんぶんよこにふる。)

首を、ブンブン横にふる。

(べんきょうしたって、いみないもん。)

勉強したって、意味ないもん。

(ほめてくれるひとが、よろこんでくれるひといないなら。)

ほめてくれる人が、よろこんでくれる人いないなら。

(もう、べんきょうなんてしない!)

もう、勉強なんてしない!

(よんさつのきょうかしょをかかえて、きたみちをずんずんひきかえす。)

四冊の教科書をかかえて、来た道をずんずん引きかえす。

(しょうこうぐちのまえでみぎにまがり、こうしゃのうらてへ。)

昇降口の前で右に曲がり、校舎の裏手へ。

(ひあたりのわるいうらにわ。)

日当たりの悪い裏庭。

(がっこうちゅうのごみをあつめるごみすてばのまえで、あしをとめる。)

学校中のゴミをあつめるゴミ捨て場の前で、足を止める。

(「・・・・・・こんなもの、いらないっ!」)

「……こんなもの、いらないッ!」

(つみあがったごみぶくろにむかって、きょうかしょをちからいっぱいなげつけた。)

つみあがったゴミ袋にむかって、教科書を力いっぱい投げつけた。

(どがっ)

ドガッ

(「むぎゃっ」)

「むぎゃっ」

(えっ。)

えっ。

(なに?いま、ごみのなかからひめいみたいなものがきこえたような・・・・・・?)

なに?今、ゴミの中から悲鳴みたいなものが聞こえたような・・・・・・?

((ねこでもいたのかな。わるいことしちゃったな・・・・・・))

(ネコでもいたのかな。悪いことしちゃったな・・・・・・)

(はらはらとあしもとをみつめるけど、それらしきかげはみえない。)

はらはらと足下を見つめるけど、それらしきカゲは見えない。

((きのせい・・・・・・か))

(気のせい・・・・・・か)

(はぁといきをつき、)

ハァと息をつき、

(ごみすてばにちらばったよんさつのきょうかしょに、そっとめをおとす。)

ゴミ捨て場にちらばった四冊の教科書に、そっと目を落とす。

(はなまるえん)

花丸円

(うらびょうしにおおきくかかれた、じぶんのなまえ。)

裏表紙に大きく書かれた、自分の名前。

(しがつ、ごねんせいになりたてのころ。)

四月、五年生になりたてのころ。

(まあたらしいぴかぴかのきょうかしょをもちかえって、)

まあたらしいピカピカの教科書を持ち帰って、

(ままといっしょにかいたなまえ・・・・・・。)

ママといっしょに書いた名前・・・・・・。

(「えんってね、まんまるで、かけたところがないっていみなのよ。)

「円ってね、まんまるで、かけたところがないって意味なのよ。

(はなまるえん。100てんまんてんのいいなまえでしょ?」)

花丸円。100点満点のいい名前でしょ?」

(「でも、わたし100てんとったことないよ。)

「でも、わたし100点取ったことないよ。

(てすとはぺけだらけだし・・・・・・」)

テストはペケだらけだし・・・・・・」

(「あら。ままにとって、えんはいるだけで100てんまんてんだからいいのよ。)

「あら。ママにとって、円はいるだけで100点満点だからいいのよ。

(べんきょうはこれからがんばろう!」)

勉強はこれから頑張ろう!」

(ずきんっ)

ずきんっ

(むねにはしったいたみをふりはらうように、あたまをつよくよこにふる。)

胸に走った痛みをふりはらうように、頭をつよく横にふる。

((もうきょうかしょはいらない。もう・・・・・・べんきょうなんて、しない!))

(もう教科書はいらない。もう・・・・・・勉強なんて、しない!)

(ぜったいにやるもんか!)

ぜったいにやるもんか!

(ぐっとこぶしをかためて、かけだした。)

ぐっとこぶしをかためて、駆けだした。

(せなかで、からっぽのらんどせるが、かたかたなった。)

背中で、からっぽのランドセルが、カタカタ鳴った。

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