王子とこじき 10

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投稿者投稿者ローズマリーいいね0お気に入り登録
プレイ回数30難易度(4.5) 3869打 長文
作者 マーク・トウェイン

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問題文

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(さてこくおうは、ごじごろひるねからさめた。)

さて国王は、五時ごろ昼寝からさめた。

(だが、ひどくつらそうだった。)

だが、ひどくつらそうだった。

(「ああ、いやなゆめをみた。もはや、わしのいのちもながくないのかもしれん」)

「ああ、嫌な夢をみた。もはや、わしの命も長くないのかもしれん」

(そうつぶやいているうちに、こくおうのめはあやしくひかりはじめた。)

そうつぶやいているうちに、国王の目は怪しく光り始めた。

(いぎりすこくおうのくらいをねらった、のーふぉーくきょうのことをおもいだしたからだ。)

イギリス国王の位を狙った、ノーフォーク卿のことを思い出したからだ。

(そのきぞくは、いま、ろんどんとうにとじこめられていた。)

その貴族は、今、ロンドン塔に閉じ込められていた。

((ううむ・・・。あのあくにんよりさきに、わしはしねんぞ。)

(ううむ・・・。あの悪人より先に、わしは死ねんぞ。

(あいつをさきにころさねばならん。そうだ。さっそくしけいきょかしょにさいんして)

あいつを先に殺さねばならん。そうだ。さっそく死刑許可書にサインして

(こくいんをおしてしまおう))

国印を押してしまおう)

(こくいんとは、いぎりすこくのたいせつなぎょうじやほうりつをきめるとき)

国印とは、イギリス国の大切な行事や法律を決める時

(こくおうがじぶんでおすはんのことだった。)

国王が自分で押す判のことだった。

(こくおうはさっそく、しんしつにけらいをよびよせて)

国王は早速、寝室に家来を呼び寄せて

(「すぐさま、のーふぉーくきょうのしけいをおこなう。しょるいとこくいんをもってまいれ」)

「すぐさま、ノーフォーク卿の死刑を行う。書類と国印を持ってまいれ」

(とめいじた。しかし、けらいはくびをかしげた。)

と命じた。しかし、家来は首をかしげた。

(「おことばをかえしておそれいりますが、せんじつ、へいかはごじぶんで)

「お言葉を返して恐れ入りますが、先日、陛下はご自分で

(こくいんをおあずかりあそばしました」)

国印をお預かりあそばしました」

(「なに、わしが?」)

「なに、わしが?」

(こくおうはしらがあたまをさゆうにまげて、しきりにおもいだそうとしたが)

国王は白髪頭を左右に曲げて、しきりに思い出そうとしたが

(おもいびょうきのためか、うめくばかりだった。)

重い病気のためか、うめくばかりだった。

(まわりのけらいたちは、し、ごにんひそひそとそうだんしていたが、なかのひとりがすすみでた。)

周りの家来たちは、四、五人ひそひそと相談していたが、中の一人が進み出た。

など

(「へいか。ただいま、ここにおりますもののきおくによりますと、)

「陛下。ただ今、ここにおります者の記憶によりますと、

(へいかはこくいんをおあずかりになったあと、もしものことがあるといけない)

陛下は国印をお預かりになったあと、もしものことがあるといけない

(とおっしゃって、えどわーどおうじさまにおあずけになったようでございます」)

とおっしゃって、エドワード王子様にお預けになったようでございます」

(「そうであったか。では、すぐえどわーどからうけとってこい。)

「そうであったか。では、すぐエドワードから受け取ってこい。

(いっこくもはやくしけいをおこなうのだ」)

一刻も早く死刑を行うのだ」

(しかし、へやからとびだしていったけらいは、しばらくしてしおしおとかえってきた)

しかし、部屋から飛び出していった家来は、しばらくしてしおしおと帰ってきた

(「おうじさまには、すこしもおぼえていないとおっしゃるばかりでして・・・」)

「王子様には、少しも覚えていないとおっしゃるばかりでして・・・」

(ところで、いまはよるのくじ。ところは、てむずがわのほとりだった。)

ところで、今は夜の九時。ところは、テムズ川のほとりだった。

(いつもはまっくらなかわも、こんやはうつくしいいろのちょうちんでかざっただいしょうのふねが、)

いつもは真っ暗な川も、今夜は美しい色のちょうちんで飾った大小の船が、

(なんじゅっそうもゆうゆうとこぎまわっている。まるでよるのはなぞのだった。)

何十艘もゆうゆうと漕ぎまわっている。まるで夜の花園だった。

(かわぎしのいしだんのうえには、このえへいややくにんたちがはなやかなふくをきて)

川岸の石段の上には、近衛兵や役人たちが華やかな服を着て

(なにかのよういにいそがしかった。やがて、どこからかめいれいがつたえられたらしく)

なにかの用意に忙しかった。やがて、どこからか命令が伝えられたらしく

(そのひとかげも、いっせいにきえてしまった。)

その人影も、いっせいに消えてしまった。

(だが、そのしゅんかんからふねのうえのひとたちのめは、いしだんのうえのおおきなもんにそそがれた。)

だが、その瞬間から船の上の人たちの目は、石段の上の大きな門に注がれた。

(「おでましだ!」「さあ、かわいいおすがたがみられるわよ」)

「お出ましだ!」「さあ、可愛いお姿が見られるわよ」

(といったこえがかわのうえをつたわってくると、おおきなもんがひらいて、まずでてきたのは)

といった声が川の上を伝わってくると、大きな門が開いて、まず出てきたのは

(きんのふさがさがったやりをもったこのえへいのいったいだった。)

金の房が下がった槍を持った近衛兵の一隊だった。

(ふねのうえからは、にぎやかなおんがくがながれはじめた。いちだんとひかりかがやくちょうちんのうえには)

船の上からは、にぎやかな音楽が流れ始めた。一段と光輝く提灯の上には

(たかいおとをたててはなびがあがった。)

高い音を立てて花火が上がった。

(やがて、ろんどんしのやくにんとかきぞくたちがいしだんにならんで、だれかをおまちした。)

やがて、ロンドン市の役人とか貴族たちが石段に並んで、誰かをお待ちした。

(ながく、ゆるやかならっぱのおとがひびきわたると、はーふぉーどきょうがあらわれた。)

長く、緩やかなラッパの音が響き渡ると、ハーフォード卿があらわれた。

(「ああ、おうじさまのおじうえだ!」)

「ああ、王子様の叔父うえだ!」

(はーふぉーどきょうは、まっかなふくをきて、いかめしくあたりをみまわしてから)

ハーフォード卿は、真っ赤な服を着て、いかめしくあたりを見回してから

(はねかざりのついたぼうしをとって、うやうやしくもんのほうへおじぎをした。)

羽飾りのついた帽子を取って、恭しく門のほうへお辞儀をした。

(また、らっぱのおとがたからかになった。)

また、ラッパの音が高らかになった。

(わあっ、というかんげいのこえがわきおこるなかを、えどわーどおうじが)

わあっ、という歓迎の声が湧きおこる中を、エドワード王子が

(いや、とむきゃんてぃがすがたをあらわしてじつにどうどうと、ふねのうえのひとびとや)

いや、トム・キャンティが姿をあらわして実に堂々と、船の上の人々や

(いしだんのうえのきぞくたちにあいさつをしたのである。)

石段の上の貴族たちに挨拶をしたのである。

(ああ、ぶたごやのようなへやでそだち、こじきのくらしをしていたとむにとって)

ああ、豚小屋のような部屋で育ち、こじきの暮らしをしていたトムにとって

(ゆめよりもすばらしく、とくいなばめんだったのだ。)

夢よりも素晴らしく、とくいな場面だったのだ。

(とむは、しろとむらさきのきぬでできたふくを、ふうわりときこんでいた。)

トムは、白と紫の絹でできた服を、ふうわりと着こんでいた。

(えりのあたりには、だいやもんどがほしのようにぬいつけてあった。)

襟のあたりには、ダイヤモンドが星のように縫い付けてあった。

(そして、てんのけがわのふちがとってあった。)

そして、テンの毛皮のふちがとってあった。

(そのうえから、さんぼんばねのおうじのしるしがついた、おもてはしろでうちがわはみずいろの)

その上から、三本羽の王子の印がついた、表は白で内側は水色の

(がうんをきていたのである。)

ガウンを着ていたのである。

(「おうじさま、ばんざーい」「なんというけだかいおすがた・・・」)

「王子様、ばんざーい」「なんという気高いお姿・・・」

(「もうこくおうになったように、いげんがおありになるぞ」)

「もう国王になったように、威厳がおありになるぞ」

(ほとんどのひとたちは、このおうじのあたまがすこしおかしいとか、)

ほとんどの人たちは、この王子の頭が少しおかしいとか、

(じつはこじきのこどもだとは、もちろんきがつかなかったのである。)

実はこじきの子供だとは、もちろん気がつかなかったのである。

(ところで、えどわーどちゅーだー、ほんもののおうじは)

ところで、エドワード・チューダー、本物の王子は

(じょんきゃんてぃ、つまりとむのちちおやにつかまってからいったいどうなっただろうか)

ジョン・キャンティ、つまりトムの父親に捕まってから一体どうなっただろうか

(どうもこうもなかった。)

どうもこうもなかった。

(「こいつ、もらってきたかねをだせ。ええい、はやくだせ!」)

「こいつ、もらってきた金を出せ。ええい、早く出せ!」

(と、みっつもよっつもなぐられたが、このがらくたよこちょうをさがしだしただけで)

と、三つも四つも殴られたが、このがらくた横丁を探し出しただけで

(くちもきけないほどえどわーどはつかれていた。)

口もきけないほどエドワードは疲れていた。

(それでも「やめろ・・・やめろ。わたしは・・・おうじえどわーどだ」と)

それでも「やめろ・・・やめろ。私は・・・王子エドワードだ」と

(かぼそいこえでいったが、わめきちらすちちおやにきこえるはずがなかった。)

か細い声で言ったが、喚き散らす父親に聞こえるはずがなかった。

(せまいよこちょうには、やじうまがあつまってきたが、)

狭い横町には、野次馬が集まってきたが、

(「また、よっぱらいのじょんがむすこをいじめてるんだ。めずらしくもねえ」)

「また、酔っ払いのジョンが息子をいじめてるんだ。珍しくもねえ」

(そういって、あいてにしなかった。そして、なぐられるえどわーどのことを)

そう言って、相手にしなかった。そして、殴られるエドワードのことを

(たすけようとしたとしよりは、はんたいにぼうでなぐりたおされるしまつだった。)

助けようとした年寄りは、反対に棒で殴り倒される始末だった。

(「ええい、しぶといがきだ。うちのなかへはいりやがれ」)

「ええい、しぶといがきだ。うちの中へ入りやがれ」

(えどわーどはえりくびをつかまれて、ずるずると、すりへったかいだんを)

エドワードは襟首をつかまれて、ずるずると、すり減った階段を

(ひきずりあげられたのだった。)

引きずりあげられたのだった。

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