めおと鎧9

背景
投稿者投稿者omochiいいね0お気に入り登録
プレイ回数9難易度(4.0) 2869打 長文 かな 長文モード推奨

関連タイピング

問題文

ふりがな非表示 ふりがな表示

(としがあけて、けいちょうごねんとなった。)

年があけて、慶長五年となった。

(まごべえのいきやすむひまなきてんてんるろうのあとをしるすようはあるまい、)

孫兵衛の息やすむひまなき転々流浪のあとを記す要はあるまい、

(あきはちがつ、かれはかがのくにで、いしだみつなりのきょへいをきいた。)

秋八月、かれは加賀のくにで、石田三成の挙兵をきいた。

(じぶのしょうどののぐんぜいが、ふしみじょうをとりかこんだそうな。)

治部少輔どのの軍勢が、伏見城をとりかこんだそうな。

(つたわってきたふうひょうは、すでにいくさがかなりはってんしている)

伝わってきた風評は、すでに戦がかなり発展している

(ことをしめしていた。そしてそのじじつをしょうこだてるように、)

ことを示していた。そしてその事実を証拠だてるように、

(かなざわのまえだとしなががにわかにしゅっぺいし、おなじかがのだいしょうじ)

金沢の前田利長がにわかに出兵し、おなじ加賀の大聖寺

(とこまつじょうとのこうげきをはじめた。だいしょうじにはやまぐちむねなが、)

と小松城との攻撃をはじめた。大聖寺には山口宗永、

(こまつにはにわながしげがいる、りょうしゃともいしだぐんにぞくする)

小松には丹羽長重がいる、両者とも石田軍に属する

(ほっぽうのまもりだった。まごべえは、しまったとおもった。)

北方のまもりだった。孫兵衛は、しまったと思った。

(まちにまったときが、あまりはやくきた。)

待ちに待った時が、あまり早くきた。

(そしていくさは、きわめてきゅうそくにしんちょくしているようである。)

そして戦は、きわめて急速に進捗しているようである。

(もしかっせんにおくれたら。ああもしそんなことになったとしたら、)

もし合戦におくれたら。ああもしそんなことになったとしたら、

(ぶしのなもすたれ、にひゃくよじつのあいだいじをしのんで)

武士の名もすたれ、二百余日のあいだ意地をしのんで

(かくれまわったくしんが、みずのあわとなってしまう、)

隠れまわった苦心が、水の泡となってしまう、

(かれはとびたつようにしゅったつした。)

かれはとびたつように出立した。

(はるのころいちど、わかさのくにからつまへしょうそくをだしたが、)

春のころいちど、若狭のくにから妻へ消息をだしたが、

(はたしてとどいているかどうか、ともかくいちどおおさかへ)

はたして届いているかどうか、ともかくいちど大阪へ

(でようとかんがえた。しかし、だいしょうじとのかいせんで、えちぜんへのみちは)

出ようと考えた。しかし、大聖寺との開戦で、越前への道は

(みんなふさがっていた。きけんをおかしてゆくか、)

みんな塞がっていた。危険を冒してゆくか、

など

(それともひだをまわってゆくか、こころせきながら)

それとも飛騨をまわってゆくか、心せきながら

(どうしようかとまよっているうちに、いくさのようすが)

どうしようかと迷っているうちに、戦のようすが

(だんだんわかってきた。みつなりのきょへいはいえやすが)

だんだんわかってきた。三成の挙兵は家康が

(うえすぎしとうばつのぐんをひがしへすすめたあとのことで、)

上杉氏討伐の軍を東へすすめたあとのことで、

(ごしゅくんあさのよしながもそのとうばつぐんにくわわっているらしい。)

御主君浅野幸長もその討伐軍に加わっているらしい。

(それではおおさかへゆくいみはない。まごべえはすぐにおもいとまった。)

それでは大阪へゆく意味はない。孫兵衛はすぐに思いとまった。

(つまのことがきにかかったけれど、いまはどうするいとまもない。)

妻のことが気にかかったけれど、いまはどうするいとまもない。

(みちをひきかえしてえっちゅうからひだへとはいった。)

道をひきかえして越中から飛騨へとはいった。

(あさのけのりょうちはかいのくににじゅうまんごくで、)

浅野家の領地は甲斐のくに二十万石で、

(きょじょうはこうふだった。りょうちからもしゅっぺいするにちがいないし、)

居城は甲府だった。領地からも出兵するにちがいないし、

(すればそのさいじょうするとちゅうであえるだろう、そうおもったのである。)

すればその西上する途中で会えるだろう、そう思ったのである。

(ひだのくにたかやまへでたのがくがつようかだった。)

飛騨のくに高山へでたのが九月八日だった。

(そこはかなもりひょうぶながちかのりょうちで、ひょうぶにゅうどうも、)

そこは金森兵部長近の領地で、兵部入道も、

(やはりいえやすのとうせいぐんにしたがっていたが、)

やはり家康の東征軍にしたがっていたが、

(そのこいずものかみありしげは)

その子出雲守可重は

(みつなりきょへいのしらせにはせもどり、はやくもみのへと)

三成挙兵の報にはせ戻り、はやくも美濃へと

(せめいったあとだった。それで、かなりくわしく)

攻め入ったあとだった。それで、かなり精く

(いくさのもようをきくことができた、それはかができいたものより)

戦の模様をきくことができた、それは加賀できいたものより

(もっときゅうはくしていた。すなわちふしみじょうをおとしいれたせいぐんは、)

もっと急迫していた。すなわち伏見城をおとしいれた西軍は、

(いせへしんにゅうするいっぽう、ほんたいはとうせいしておおがきじょうをだっしゅ、)

伊勢へ侵入する一方、本隊は東攻して大垣城を奪取、

(すでにみつなりはそこにえいをすすめている。)

すでに三成はそこに営をすすめている。

(またとうかいどうをせめのぼったとくがわぐんのうせんぽうは、)

また東海道を攻めのぼった徳川軍の先鋒は、

(はちがつにじゅうさんにちにせいぐんのぜんえいたるぎふじょうをこうりゃくし、)

八月二十三日に西軍の前衛たる岐阜城を攻略し、

(しょしょうはあかさかのえきまでじんをすすめているという。)

諸将は赤坂の駅まで陣をすすめているという。

(ぎふじょうのいくさはかなりげきせんであり、あさのよしながも)

岐阜城の戦はかなり激戦であり、浅野幸長も

(かっせんのいちよくにあって、はなばなしいてがら)

合戦の一翼にあって、はなばなしい手柄

(であったということだった。)

であったということだった。

(おくれた、おくれた。まごべえは、じだんだをふんだ。)

おくれた、おくれた。孫兵衛は、じだんだを踏んだ。

(つうしんのきわめてふべんなじだいであり、しょほういちどに)

通信のきわめて不便な時代であり、諸方いちどに

(いくさがおこっているので、ふうひょうをきいて)

戦が起っているので、風評をきいて

(とびだしたときにはもうおそかったのだ。)

とびだしたときにはもうおそかったのだ。

(かれは、よるもひるもなくみちをいそいだ。)

かれは、夜も日もなく道をいそいだ。

(りょうぐんのしゅりょくせんはこれからだ、いのちをかけるとしても)

両軍の主力戦はこれからだ、命を賭としても

(そのいくさにおくれてはならぬ。みちはきわめてこんなんだった。)

その戦におくれてはならぬ。道はきわめて困難だった。

(やまはけんけわしくたにはふかい、しかもようしょようしょには)

山は嶮けわしく谷は深い、しかも要所要所には

(げんじゅうにばんしょができていて、すこしあやしいものとみれば、)

厳重に番所ができていて、少し怪しい者とみれば、

(どしどしけんそくしてしまう。こころはせくが、)

どしどし検束してしまう。心はせくが、

(なかなかはかどらなかった。そしてようやく)

なかなかはかどらなかった。そしてようやく

(みのへはいったのがじゅうににち、ぎふじょうをみたのはじゅうさんにちだった。)

美濃へはいったのが十二日、岐阜城を見たのは十三日だった。

問題文を全て表示 一部のみ表示 誤字・脱字等の報告

omochiのタイピング

オススメの新着タイピング

タイピング練習講座 ローマ字入力表 アプリケーションの使い方 よくある質問

人気ランキング

注目キーワード