『妖怪博士』江戸川乱歩10
○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ヌオー | 5720 | A | 6.1 | 93.3% | 777.4 | 4786 | 339 | 100 | 2024/12/16 |
2 | baru | 4552 | C++ | 4.9 | 91.8% | 975.1 | 4872 | 433 | 100 | 2024/11/29 |
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問題文
(おかあさんはぱじゃまのそでをつかんで、ひきとめよう)
お母さんはパジャマのそでをつかんで、引き留めよう
(としましたが、たいじくんはそれをはげしいいきおいではらい)
としましたが、泰二君はそれを激しい勢いで払い
(のけると、ひょいとふりかえって、ぞっとするほど)
のけると、ヒョイと振り返って、ゾッとするほど
(おそろしいかおで、おかあさんをにらみつけました。)
恐ろしい顔で、お母さんをにらみつけました。
(おかあさんはそれをみると、わがこながらそのおそろしさ)
お母さんはそれを見ると、我が子ながらその恐ろしさ
(に、おもわずたちすくんでしまいました。なんだか)
に、思わず立ちすくんでしまいました。なんだか
(いつものたいじくんと、まったくちがうひとのようにみえた)
いつもの泰二君と、まったく違う人のように見えた
(からです。ひょっとしたら、さいみんじゅつをかけている)
からです。ひょっとしたら、催眠術をかけている
(ひるたはかせのたましいがたいじくんにのりうつって、かおまでも)
ヒルタ博士の魂が泰二君に乗り移って、顔までも
(あのぶきみなひるたはかせとそっくりになっていた)
あの不気味なヒルタ博士とソックリになっていた
(のかもしれません。あまりのおそろしさとかなしさに、)
のかもしれません。 あまりの恐ろしさと悲しさに、
(おかあさんがためらっているあいだに、たいじくんはろうかの)
お母さんがためらっている間に、泰二君は廊下の
(まどにちかづくと、てばやくかけがねをはずしてがらすまどを)
窓に近づくと、手早く掛け金を外してガラス窓を
(ひらき、あっというまにそとのくらやみへとびだしていって)
ひらき、アッという間に外の暗闇へ飛び出して行って
(しまいました。それは、にんげんわざとはおもわれないほどの)
しまいました。それは、人間業とは思われないほどの
(すばやさでした。いっぴきのおおきなこうもりがさっとめを)
素速さでした。一匹の大きなコウモリがサッと目を
(かすめてとんでいったような、なんともいえない)
かすめて飛んで行ったような、何とも言えない
(ものおそろしいかんじでした。おかあさんはそのまま、)
物恐ろしい感じでした。 お母さんはそのまま、
(たおれてしまうほどのはげしいむなさわぎをじっとこらえて、)
倒れてしまうほどの激しい胸騒ぎをジッとこらえて、
(よろよろとまどにちかづき、まっくらなひろいにわをすかす)
ヨロヨロと窓に近づき、真っ暗な広い庭を透かす
(ようにしてのぞいていました。すると、おおにゅうどうの)
ようにしてのぞいていました。 すると、大入道の
(ようなたいじゅがむくむくとしげっているやみのなかを、だいしょう)
ような大樹がムクムクと茂っている闇の中を、大小
(ふたつのひとかげが、もののけのようにはしりさっていくのが)
二つの人影が、物の怪のように走り去って行くのが
(みえました。ちいさいほうのくろいかげがたいじくんである)
見えました。小さいほうの黒い影が泰二君である
(ことはわかっていますが、もうひとつのおおきいひとかげは)
ことは分かっていますが、もう一つの大きい人影は
(いったい、なにものでしょう。おかあさんはすこしもしらなかった)
一体、何者でしょう。お母さんは少しも知らなかった
(のですが、それはあのひるたはかせなのでした。)
のですが、それはあのヒルタ博士なのでした。
(はかせはいつのまにか、あいかわていのていえんにしのびこんで、)
博士はいつのまにか、相川邸の庭園に忍び込んで、
(たいじくんがしゅびよくもくてきをはたすかどうかを、)
泰二君が首尾よく目的を果たすかどうかを、
(まどのそとのくらやみからおそろしいめで、じっとみまもっていた)
窓の外の暗闇から恐ろしい目で、ジッと見守っていた
(のでした。たいじくんがしょるいをぬすみだすと、はかせは)
のでした。 泰二君が書類を盗み出すと、博士は
(そのがんこうをいっそうするどくし、さいみんじゅつのねんりきをつよめて、)
その眼光を一層鋭くし、催眠術の念力を強めて、
(たいじくんにまどのそとへにげだすように、とむごんのめいれいを)
泰二君に窓の外へ逃げ出すように、と無言の命令を
(つたえたのです。そして、とびだしてくるたいじくんのてを)
伝えたのです。そして、飛び出してくる泰二君の手を
(とると、おそろしいいきおいでやみのなかをぐんぐんはしりだし、)
とると、恐ろしい勢いで闇の中をグングン走りだし、
(あらかじめあけておいたうらぐちから、どこともしれず)
あらかじめあけておいた裏口から、どことも知れず
(にげさってしまったのです。ひるたはかせは、たいじくんの)
逃げ去ってしまったのです。 ヒルタ博士は、泰二君の
(おとうさんのたいせつなしょるいをてにいれたら、もうたいじくんに)
お父さんの大切な書類を手に入れたら、もう泰二君に
(ようはないはずではありませんか。しょるいだけうけとって)
用はないはずではありませんか。書類だけ受け取って
(にげだせばよいはずではありませんか。しかし)
逃げだせばよいはずではありませんか。 しかし
(はかせは、たいじくんのてをはなそうともしなかったのです。)
博士は、泰二君の手を放そうともしなかったのです。
(またしても、たいじくんをどこかへつれさってしまった)
またしても、泰二君をどこかへ連れ去ってしまった
(のです。いったいこれは、どんないみがあったので)
のです。一体これは、どんな意味があったので
(しょうか。それはともかく、このふしぎなありさまを)
しょうか。 それはともかく、この不思議な有り様を
(ごらんになった、おかあさんのおどろきはもうすまでも)
ごらんになった、お母さんの驚きは申すまでも
(ありません。けたたましいさけびごえをたててすくいを)
ありません。けたたましい叫び声をたてて救いを
(もとめたものですから、めしつかいたちもおきて、)
求めたものですから、召し使いたちも起きて、
(それからきんじょのひとがあつまってきて、でんわのうったえに)
それから近所の人が集まって来て、電話の訴えに
(よって、すうめいのけいかんがかけつけてくるというおおさわぎに)
よって、数名の警官が駆けつけて来るという大騒ぎに
(なりました。そして、そのよなかからあさにかけて、)
なりました。 そして、その夜中から朝にかけて、
(げんじゅうなそうさくがおこなわれたのですが、たいじくんが)
厳重な捜索がおこなわれたのですが、泰二君が
(なにものに、どこへつれさられたのか、そうぞうさえつき)
何者に、どこへ連れ去られたのか、想像さえつき
(ませんでした。にわのやわらかいつちのうえに、たいじくんの)
ませんでした。 庭のやわらかい土の上に、泰二君の
(はだしのあしあととならんで、おとなのくつあとがてんてんとのこって)
はだしの足跡と並んで、大人の靴跡が点々と残って
(いました。どくしゃしょくんは、そのあしあとがだれであるか)
いました。読者諸君は、その足跡がだれであるか
(けんとうがつくだろうが、たいじくんはひるたはかせのいえで)
検討がつくだろうが、泰二君はヒルタ博士の家で
(おそろしいめにあったことを、おかあさんにうちあけて)
恐ろしい目にあったことを、お母さんに打ち明けて
(いなかったものですから、そのくつあとのぬしがなにもので)
いなかったものですから、その靴跡のヌシが何者で
(あるか、だれにもまったくけんとうさえつきません)
あるか、だれにもまったく見当さえつきません
(でした。よくじつのおひるすぎには、たいじくんのおとうさんが)
でした。 翌日のお昼過ぎには、泰二君のお父さんが
(でんぽうのつうちをうけとって、おおいそぎでかんさいのしゅっちょうさき)
電報の通知を受け取って、大急ぎで関西の出張先
(からとっきゅうこだまでかいしゃへいき、きんきゅうかんぶかいぎを)
から特急こだまで会社へ行き、緊急幹部会議を
(ひらいて、じゅうようしょるいふんしつのぜんごさくをこうじました。)
ひらいて、重要書類紛失の善後策を講じました。
(このはんにんそうさくには、けいしちょうかんかつのぜんけいさつをあげて)
この犯人捜索には、警視庁管轄の全警察をあげて
(あたるという、ものものしいだいじけんになってしまい)
あたるという、物々しい大事件になってしまい
(ました。そのひのゆうかんには、たいじくんのふしぎないえでを)
ました。その日の夕刊には、泰二君の不思議な家出を
(おおきくほうどうし、このじけんのかげにはおそるべきすぱいの)
大きく報道し、この事件の陰には恐るべきスパイの
(まのてがあるのではないかなどと、かきたてました)
魔の手があるのではないかなどと、書きたてました
(ので、たいじくんのがくゆうたちにもたちまち、このことが)
ので、泰二君の学友たちにもたちまち、このことが
(しれわたりました。たんにんのせんせいはもちろん、おなじくらすの)
知れ渡りました。担任の先生は勿論、同じクラスの
(おともだちは、みなひじょうにおどろいて、たいじくんのみのうえを)
お友だちは、みな非常に驚いて、泰二君の身の上を
(しんぱいしましたが、なかにもむねをさわがせたのはおおのくん、)
心配しましたが、中にも胸を騒がせたのは大野君、
(さいとうくん、うえむらくんの、さんにんのしょうねんたんていだんいんでした。)
斎藤君、上村君の、三人の少年探偵団員でした。
(しょうねんたんていだんというのは、めいたんていあけちこごろうのしょうねん)
少年探偵団というのは、名探偵明智小五郎の少年
(じょしゅであるこばやしよしおくんをだんちょうにした、ぼうけんずきな)
助手である小林芳雄君を団長にした、冒険好きな
(じゅうにんのしょうねんたちがそしきしているだんたいなのですが、)
十人の少年たちが組織している団体なのですが、
(そのだんいんはちゅうがくいちねんせいがさんにん、しょうがくごねんせいがひとり、)
その団員は中学一年生が三人、小学五年生が一人、
(あとのろくにんはしょうがくろくねんせいばかりで、がっこうもいろいろに)
あとの六人は小学六年生ばかりで、学校も色々に
(わかれているのですが、たいじくんのしょうがっこうには、)
別れているのですが、泰二君の小学校には、
(たいじくんのほかに、いまいったさんにんのだんいんがいたのです。)
泰二君の他に、今言った三人の団員が居たのです。
(そのさんにんのしょうねんはじけんのよくよくじつ、がっこうがおわると)
その三人の少年は事件の翌々日、学校が終わると
(はなしあって、あいかわくんのいえへおみまいにいきました。)
話し合って、相川君の家へお見舞いに行きました。
(そしておかあさんから、そのよるのたいじくんのふしぎな)
そしてお母さんから、その夜の泰二君の不思議な
(ようすや、にわのおそろしいひとかげのこと、けいさつでいっしょうけんめい)
様子や、庭の恐ろしい人影のこと、警察で一生懸命
(そうさくしているのだけれど、まだなんのてがかりも)
捜索しているのだけれど、まだ何の手がかりも
(えられないことなどをきいて、ますますむねをいため)
得られないことなどを聞いて、ますます胸を痛め
(ながら、あいかわていのもんをでました。さんにんはせんろの)
ながら、相川邸の門を出ました。 三人は線路の
(ほうへと、かたをならべてあるきながら、このふしぎなじけん)
ほうへと、肩を並べて歩きながら、この不思議な事件
(について、ひそひそとかたりあいました。「いったい、)
について、ヒソヒソと語り合いました。「一体、
(どうしたっていうんだろうね。あいかわくんがそんなどろぼうを)
どうしたっていうんだろうね。相川君がそんな泥棒を
(はたらくわけがないんだから、きっとわるものにおどかされ)
働く訳がないんだから、きっと悪者におどかされ
(たんだぜ。しょるいをぬすみださなければ、ころしてしまう)
たんだぜ。書類を盗み出さなければ、殺してしまう
(とかなんとか」うえむらくんがかんがえぶかくくちをきりました。)
とかなんとか」上村君が考え深く口を切りました。
(「うん、そうにきまっているさ。だが、そのくろいかげ)
「うん、そうに決まっているさ。だが、その黒い影
(みたいなやつっていったい、なにものなんだろうね。すぱいには)
みたいな奴って一体、何者なんだろうね。スパイには
(ちがいないんだけれど」と、おおのくんがこくびをかしげ)
違いないんだけれど」と、大野君が小首をかしげ
(ました。「ぼくは、にほんじんじゃないとおもうよ。)
ました。「ぼくは、日本人じゃないと思うよ。
(そいつ、きっとがいこくじんにちがいないよ」と、さいとうくんが)
そいつ、きっと外国人に違いないよ」と、斎藤君が
(いいます。すぱいといえば、だれしもが)
言います。スパイといえば、だれしもが
(まずがいこくじんをおもいうかべるでしょう。)
まず外国人を思い浮かべるでしょう。